業務フロー図は、「誰が(レーン)」「何を(作業)」「どの順で(矢印)」「何を使って(帳票・システム)」行うかを、1枚に並べた図です。 書くときは、①目的と範囲 → ②登場人物(レーン) → ③作業 → ④順番と分岐 → ⑤帳票・システム の順に決めます。

図に書くもの 書き方 例(受注〜請求)
誰が レーン(横または縦の帯)を担当ごとに分ける 顧客/営業/倉庫/経理/受注管理システム
何を 処理の四角に「〜を〜する」と動詞で書く 受注を登録する、出荷する
どの順で 矢印でつなぎ、分岐はひし形で問いの形にする 在庫はあるか → ある/ない
何を使って 書類・データベースの記号を作業の横に置く 注文書、受注DB、在庫DB
どこから・どこまで 端子(角の丸い形)で始まりと終わりを1つずつ置く 注文する → 入金を消し込む

確認環境:この記事の Mermaid の図は、すべて Mermaid 12.1.0(@mermaid-js/mermaid-cli 12.0.0、Linux)で SVG に描画できることを確かめました。記号の名前は JIS X 0121:1986 と OMG の BPMN 2.0.2 で確かめています(確認日 2026年10月12日)。

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(記載例)出典:株式会社RJC「業務フロー図の書き方|記号一覧・スイムレーン例とMermaidテンプレート」

業務フロー図とほかの図の違い

業務フロー図は「人と組織の仕事の流れ」を描く図です。 システムの中の処理の順番を描くフローチャートや、データの流れだけを描く DFD とは、見るものが違います。システム開発では、要件定義の前半で「今の業務(As-Is)」と「システム導入後の業務(To-Be)」を描くのに使います。

図 主に見るもの 担当(誰が)を描くか 主な読者
業務フロー図 人・部署・システムの作業の順番 描く(レーン) 利用部門、発注者、開発チーム
フローチャート 1つの処理の中の手順・分岐・繰り返し 描かないことが多い 開発者
DFD データがどこから来て、どこへ行くか 描かない(順番も描かない) 開発チーム
アクティビティ図(UML) 振る舞いの流れ(パーティションで担当も描ける) 描ける 開発チーム
BPMN 業務プロセスを決まった記法で描く(実行エンジン向けにも使う) 描く(プール・レーン) 業務改善の担当、BPM ツールの利用者

1つの処理の中の分岐や繰り返しは、関連記事「フローチャートの書き方と記号一覧|分岐・繰り返しの例とMermaid」で扱っています。

記号一覧(JIS X 0121・BPMN・Mermaid の対応表)

業務フロー図の記号は、JIS X 0121(流れ図の記号)か BPMN(業務プロセスの記法)のどちらかに合わせると、読み手が迷いません。 どちらにも合わせない場合は、図の端に「凡例(記号の意味の一覧)」を置きます。

JIS X 0121:1986「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号」は、国際規格 ISO 5807 に対応する規格です。BPMN(Business Process Model and Notation)は OMG が定めた業務プロセスの記法で、2.0.2 版は 2014年1月の公開です。

意味 JIS X 0121 の記号名 BPMN 2.0.2 の要素 Mermaid の書き方
始まり・終わり 端子 開始イベント・終了イベント(丸) A([注文する])
作業 処理 タスク(角の丸い四角) A[受注を登録する]
人の手で行う作業 手作業 手動タスク(Manual Task) A@{ shape: trap-t, label: "検品する" }
分岐(条件) 判断 排他ゲートウェイ(ひし形) A{在庫はあるか}
同時に進める・待ち合わせる 並列処理 並列ゲートウェイ A@{ shape: fork }
帳票・書類 書類 データオブジェクト A@{ shape: doc, label: "注文書" }
システム・DB 記憶データ データストア A[(受注DB)]
別の図に分けた作業 定義済み処理 サブプロセス A[[与信審査]]
ページをまたぐ 結合子 リンクイベント A((A))
作業の順番 線 シーケンスフロー(実線の矢印) A --> B
組織の外とのやり取り 通信 メッセージフロー(破線の矢印) A -.-> B
担当ごとの帯 (規定なし) プール・レーン subgraph 営業 ... end
補足の説明 注釈 テキスト注釈 %% コメント(図には出ない)

業務フロー図でよく使うのは、上の表の「端子・処理・判断・書類・記憶データ・線」とレーンです。 ほかの記号は、必要になったときに足します。記号を増やすほど、読み手が覚えることも増えます。

  • Mermaid の A@{ shape: ... } の書き方は、Mermaid のドキュメントでは v11.3.0 から使えると書かれています。表示するサイトやツールの Mermaid が v11.3.0 より前の版だと描画されないため、そのときは A[検品する(手作業)] のように、文字で補います。
  • BPMN では、同じプール(組織)の中の順番はシーケンスフロー、プールをまたぐやり取り(顧客や取引先との注文・請求)はメッセージフローで描きます。

システム開発の例:受注から出荷・請求まで

例として、通販の受注から入金の消し込みまでを、5つのレーンで描きます。 「受注管理システム」もレーンの1つにして、どの作業でシステムを使うかを点線で示しています。

flowchart TB
  subgraph C["顧客"]
    c1([注文する])
    c9[請求書を受け取る]
  end
  subgraph S["営業"]
    s1[受注を登録する]
    s2{在庫はあるか}
    s3[納期を回答する]
  end
  subgraph W["倉庫"]
    w1[ピッキング・梱包する]
    w2[出荷する]
  end
  subgraph A["経理"]
    a1[請求書を発行する]
    a2([入金を消し込む])
  end
  subgraph SYS["受注管理システム"]
    d1[(受注DB)]
    d2[(在庫DB)]
  end
  c1 --> s1 --> s2
  s2 -- ある --> w1 --> w2 --> a1 --> c9
  s2 -- ない --> s3 --> c1
  a1 --> a2
  s1 -.-> d1
  s2 -.-> d2
  w2 -.-> d2

Mermaid にはスイムレーン専用の書き方がないため、subgraph(グループ)をレーンの代わりに使っています。 置き場所は自動で決まるので、レーンがきれいな帯に並ぶとは限りません。発注者に見せる清書は、draw.io などの作図ツールや BPMN のツールで描き、Mermaid は「設計書の中で、差分を Git で追える下書き」として使う、という分け方ができます。

同じ流れを表(業務記述書)にする

図だけでは、作業の中身(入力・出力・ルール)が書ききれません。 図の番号と対応させた表を一緒に作ると、要件定義書や画面設計書に引き継ぎやすくなります。

No. 担当 作業 使うもの(入力→出力) ルール・例外
1 顧客 注文する 注文フォーム → 注文データ 1回の注文は最大 99 品目(例)
2 営業 受注を登録する 注文データ → 受注DB 同じ注文番号は二重に登録しない
3 営業 在庫はあるか判断する 在庫DB 在庫不足は No.4 へ
4 営業 納期を回答する 入荷予定 → 回答メール 回答は受注の翌営業日まで(例)
5 倉庫 ピッキング・梱包する 出荷指示書 品目ごとに数量を照合する
6 倉庫 出荷する 送り状 → 在庫DB(引当を出荷済みに) 15時までの受注は当日出荷(例)
7 経理 請求書を発行する 出荷データ → 請求書 月末締め・翌月末払い(例)
8 経理 入金を消し込む 入金明細 → 売掛金 金額が合わないものは確認の一覧へ

「(例)」と書いた数値は、説明のための架空のルールです。実際の値は、ヒアリングで決めて表に書き込みます。

例外の流れを別の図に分ける

キャンセル・返品・在庫不足のような例外を1枚に全部入れると、矢印が交差して読めなくなります。 正常の流れの図には分岐の入口だけを書き、例外は「定義済み処理(サブプロセス)」として別の図に分けます。

flowchart LR
  s1[受注を登録する] --> s2{与信は通るか}
  s2 -- 通る --> s3[在庫を引き当てる]
  s2 -- 通らない --> x1[[与信NGの対応<br>(別図 F-02)]]
  s3 --> s4{全数あるか}
  s4 -- ある --> s5[出荷を指示する]
  s4 -- 一部ない --> x2[[分納の対応<br>(別図 F-03)]]

業務フロー図を書く手順

いきなり図を描き始めず、先に「範囲・登場人物・作業」を文字で書き出します。 文字の段階で抜けを見つけたほうが、図を描き直す手間が減ります。

手順 やること 決めておくこと
① 目的と範囲 何のために描くかと、始まり・終わりを決める 始まりのきっかけ(注文が届く)と終わり(入金を消し込む)
② 登場人物 関わる人・部署・外部・システムを洗い出す レーンの並び順(流れの順に上から、または左から)
③ 作業の洗い出し 「〜を〜する」の形で作業を並べる 1つの作業=1人が続けて行う1回分
④ 順番と分岐 時系列に並べ、分岐を問いの形にする 分岐の出口すべてにラベル(ある/ない)
⑤ 帳票・システム 各作業で使う書類・画面・DB を置く 帳票名・画面名は設計書と同じ名前にする
⑥ 確かめる 担当者に図を見せ、例外と抜けを聞く 「この作業の前に何を受け取りますか」と1つずつ聞く

③の作業は、付箋や表で先に並べると速く進みます。 作業の名前は「受注」ではなく「受注を登録する」のように、目的語と動詞で書きます。名詞だけだと、誰が何をするのかが読み手によって変わります。

ヒアリングで聞く項目は、関連記事「要件ヒアリングの質問一覧60項目|シートのテンプレートと記入例」で扱っています。

粒度の決め方

粒度(1つの作業の大きさ)は、図ごとに1つの段階にそろえます。 同じ図の中に「受注業務」と「数量を入力する」が並ぶと、どこまで細かく見ればよいか分からなくなります。

段階 1つの四角の大きさ 例 向く場面
レベル0(業務の全体) 業務のまとまり 受注 → 出荷 → 請求 → 入金 経営層・発注者への説明、範囲の合意
レベル1(業務) 担当者が行う1回分の作業 受注を登録する、在庫を引き当てる 要件定義の業務フロー(この記事の例)
レベル2(作業の手順) 画面の操作・確認の1手順 得意先を検索する、数量を入力する 操作マニュアル、画面設計

粒度をそろえる目安として、次の3つを確かめます。

  • 担当が変わるところで四角を分ける(同じ担当が続けて行う作業は、1つにまとめられないかを考える)
  • 画面・帳票が変わるところで四角を分ける(1つの四角に2つの画面が入っていたら分ける)
  • 1枚に収まらないときは、細かくするのではなく図を分ける(レベル0の1つの四角を、レベル1の別の図にする)

レベル0の四角を作業に分けていく考え方は、WBS の分解と同じです。関連記事「WBSの作り方|システム開発の実例表と分解を止める判断基準」で扱っています。

よくある誤りのチェックリスト

描き終えたら、次の表で見直します。 上の行ほど、読み手が誤解しやすい誤りです。

確かめること 誤りの例 起きること 直し方
分岐の出口すべてにラベルがあるか ひし形から矢印が2本出ているがラベルがない どちらが「はい」か分からない 「ある/ない」「通る/通らない」と書く
行き止まりがないか 「納期を回答する」の後に矢印がない その後の業務が抜けている 終わりの端子か、次の作業につなぐ
作業が動詞で書かれているか 「在庫」「請求」とだけ書いてある 何をするのかが読み手で変わる 「在庫を引き当てる」と目的語と動詞で書く
1つの四角に担当が1人か 「営業・倉庫で確認」 責任の所在が分からない 担当ごとに四角を分け、レーンに置く
粒度がそろっているか 「受注業務」と「数量を入力する」が並ぶ 細かさが場所によって違う レベルを決め、細かい部分は別図にする
例外の入口があるか 在庫不足・キャンセルの分岐がない 要件の漏れになる 分岐を描き、中身は別図に分ける
帳票・システムの名前がそろっているか 「注文書」と「受注票」が同じものを指す 設計書との対応が取れない 用語集を作り、名前を1つにする
矢印が逆流・交差していないか 下から上へ戻る線が多い 流れを追いにくい レーンの並び順を流れの順に入れ替える
始まりと終わりがはっきりしているか 端子がない、または複数ある 範囲の合意が取れない 始まりのきっかけと終わりの状態を書く

DFD・アクティビティ図・As-Is/To-Be との使い分け

「何を決めたいか」で図を選びます。 1つの図ですべてを表そうとすると、どの図も中途半端になります。

決めたいこと 向く図 理由
誰がどの順で作業するか 業務フロー図 担当(レーン)と順番を同時に見られる
どのデータがどこから来てどこへ行くか DFD データの出入りだけに絞って描ける
システムの振る舞いの流れ(並行処理を含む) アクティビティ図 UML の記法で、設計書のほかの図とそろう
今の業務と導入後の業務の差 業務フロー図を2枚(As-Is・To-Be) 同じ記号で並べると、変わる作業が見える
夜間処理などのジョブの順番 ジョブフロー図 ジョブの先行関係を描く

DFD は関連記事「DFD(データフロー図)の書き方と記号|コンテキスト図・レベル0の例」で、アクティビティ図は「アクティビティ図の書き方と記号一覧 スイムレーン例をPlantUMLで」で、ジョブフロー図は「ジョブフロー図の書き方|ジョブ一覧と先行関係をMermaidで描く例」で扱っています。As-Is と To-Be を比べて課題を整理する手順は、関連記事「As-Is/To-Be分析のやり方|業務フローと課題整理テンプレート」で扱っています。

コピペ用の Mermaid テンプレート

レーンの名前と作業を書き換えると、そのまま使えます。 subgraph の ID(L1 など)は英数字にし、表示名は ["..."] の中に書きます。

flowchart TB
  %% ===== レーン(担当)=====
  subgraph L1["顧客"]
    start([開始のきっかけ])
  end
  subgraph L2["担当部署A"]
    t1[作業1を行う]
    q1{条件を満たすか}
    t2[作業2を行う]
  end
  subgraph L3["担当部署B"]
    t3[作業3を行う]
    goal([終わりの状態])
  end
  subgraph L4["システム"]
    db[(データベース)]
  end
  %% ===== 流れ =====
  start --> t1 --> q1
  q1 -- はい --> t3 --> goal
  q1 -- いいえ --> t2 --> t1
  %% ===== システムの利用(点線)=====
  t1 -.-> db
  t3 -.-> db

Mermaid は、設計書を Markdown で書いている場合に、図とテキストを同じファイルで管理できるのが利点です。生成AIに業務フローの下書きを Mermaid で出させる方法は、関連記事「生成AIで設計書を作るプロンプト集|要件定義から詳細設計まで」で扱っています。

よくある質問

Q. 業務フロー図は、どの工程で誰が書きますか。 A. 多くは要件定義の前半で、発注者側の業務担当と、開発側の要件定義の担当が一緒に書きます。今の業務(As-Is)は業務担当への聞き取りから、導入後の業務(To-Be)は要件を決めながら書きます。要件定義書との関係は、関連記事「要件定義書の書き方|記入例と要件ID・受け入れ基準」で扱っています。

Q. レーンは縦と横のどちらにしますか。 A. どちらでも描けます。横に長い流れ(時間が左から右)ならレーンは横の帯、A4 縦の資料に収めるならレーンは縦の帯にすることが多いです。1つのプロジェクトの中では、向きをそろえます。

Q. BPMN で書くほうがよいですか。 A. BPMN は記号の意味が決まっているので、読み手が BPMN を知っていれば誤解が減ります。一方で、記号が多く、知らない人には読みにくいこともあります。発注者の業務担当が読む図なら、この記事の表の基本の記号だけに絞り、凡例を付ける方法もあります。

Q. システムの画面操作まで書くべきですか。 A. 業務フロー図(レベル1)には「受注を登録する」までを書き、画面の操作の順番は画面設計書や画面遷移図に書くと、図の粒度がそろいます。画面の項目は、関連記事「画面設計書の書き方|項目一覧・テンプレート・記入例まとめ」で扱っています。

まとめ

  • 業務フロー図は 「誰が・何を・どの順で・何を使って」 を1枚に並べた図
  • 記号は JIS X 0121 か BPMN に合わせるか、凡例を付ける。よく使うのは 端子・処理・判断・書類・記憶データ・線とレーン
  • 書く順番は 範囲 → 登場人物 → 作業 → 順番と分岐 → 帳票・システム → 確かめる
  • 粒度は 図ごとに1つの段階にそろえ、収まらないときは 図を分ける
  • Mermaid では subgraph をレーンにして描ける。A@{ shape: doc } などは v11.3.0 以降の書き方

参考・出典

確認日はいずれも 2026年10月12日です。

  • JIS X 0121:1986 情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号(本文の記号名):https://kikakurui.com/x0/X0121-1986-01.html
  • OMG「Business Process Model and Notation(BPMN)Version 2.0.2」:https://www.omg.org/spec/BPMN/2.0.2/About-BPMN
  • Camunda「BPMN 2.0 Symbols - A complete guide with examples」:https://camunda.com/bpmn/reference/
  • Mermaid「Flowcharts - Basic Syntax」(Expanded Node Shapes・subgraph):https://mermaid.js.org/syntax/flowchart.html

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(記載例)出典:株式会社RJC「業務フロー図の書き方|記号一覧・スイムレーン例とMermaidテンプレート」

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