生成AIにメールを書かせるプロンプトは、「相手との関係・目的・必ず入れる事実・文体・長さ」の5項目を埋めれば、場面が変わっても同じ1本を使い回せます。 場面ごとに別のプロンプトを探す必要はなく、変えるのは5項目の中身だけです。

この記事では、{相手}{用件}{期限}を差し替える共通テンプレート1本と、依頼・お礼・お詫び・催促・お断り・日程調整の差分だけをまとめた一覧表を載せました。あわせて、新規作成・添削・言い換えの選び方、敬語の言い換え早見表30組(Markdown と CSV)、送信前のチェックリスト、個人名を伏せ字にして渡す手順も付けています。扱うのはメールやチャットのような短い連絡文と敬語で、設計書や報告書のような長い文書の点検は対象外です。

確認環境:Ubuntu 24.04.4、Python 3.11.15(確認日 2026-10-06)。テンプレートに値を差し込むコード、伏せ字にするコード、送信前の確認コードは、この環境で実行した出力を載せています。プロンプトの組み立て方は、同日に開いた Anthropic の公式ドキュメントの記載に沿っています。この記事はテンプレート集で、AIの回答例は載せていません。確認コードにかけているメール文は、手で書いた見本です。

この記事の結論

  • プロンプトに書くのは5項目:相手との関係/目的/必ず入れる事実/文体/長さ。
  • 場面が変わっても枠は同じ:依頼・お礼・お詫び・催促・お断り・日程調整は、5項目の中身の差分で書き分けます。
  • 事実が固まっているなら、下書きを自分で書いて添削させます。語調だけ直したいなら言い換えを頼みます。
  • 送信前に見るのは6点:宛名・日付・金額・固有名詞・二重敬語・AIが足した事実。

メール作成プロンプトの早見表

項目 書くこと 書き方の例 省くとどうなるか
相手との関係 社内か社外か、立場、やり取りの回数 社外。2回やり取りした取引先の担当者 敬語の強さが場面に合わなくなる
目的 読んだ相手にしてほしいこと1つ 画面案を確認し、意見を返してもらう 用件が複数になり、何を頼んでいるかが伝わりにくい
必ず入れる事実 日付・数量・場所・添付の有無 PDF 1件を添付。期限は10月16日(金)17時 AIがそれらしい日付や数を補うことがある
文体 丁寧さ、硬さ、避けたい言い回し です・ます。硬すぎない。クッション言葉は2つまで 長い前置きや重ねた敬語が増える
長さ 本文の字数、箇条書きの数 本文200〜300字。箇条書きは3項目まで 画面を何度も送らないと読めない長さになる

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「生成AIメール作成プロンプト集|敬語の言い換えと添削」

なぜ5項目で足りるのか

メールの文面は、誰に(関係)・何のために(目的)・何を(事実)・どんな調子で(文体)・どのくらい(長さ)の5つで決まります。場面の名前(依頼、お詫びなど)は、この5つの組み合わせに付いた呼び名です。

Anthropic の公式ドキュメント(Prompting best practices)は、明確で具体的な指示を出すこと、求める出力の形式と制約を具体的に書くこと、指示の背景や理由を添えることを勧めています。5項目は、これをメールに当てはめたものです。同じドキュメントは、指示・文脈・例・差し替える入力が混ざるプロンプトではタグで区切ると解釈のぶれが減る、とも説明しています。下のテンプレートでは、5項目をタグで区切っています。

いちばん大切なのは「必ず入れる事実」です。 日付・数量・名前は、書かれていなければAIは知りようがありません。事実はすべて自分で渡し、「ここに無いことは足さない」と決まりに書きます。

共通テンプレート(差し替え式)

波かっこの部分を差し替えて使います。

あなたはビジネスメールの下書きを作る担当です。次の条件でメール文を1通書いてください。

<相手との関係>
{相手}({関係})
</相手との関係>

<目的>
{用件}
</目的>

<必ず入れる事実>
{事実}
期限:{期限}
</必ず入れる事実>

<文体>
{文体}
</文体>

<長さ>
{長さ}
</長さ>

<決まり>
- 「必ず入れる事実」に無い日付・数量・名前・約束を足さない。足りない情報は本文に書かず、最後に「確認したい点」として箇条書きにする。
- 件名を1行、本文、署名の順に書く。署名は「{署名}」とする。
- 敬語は重ねない(例:「おっしゃられる」ではなく「おっしゃる」)。
</決まり>

テンプレートに値を差し込むコード

毎回手で書き換えると、差し替え忘れが起こります。Python の str.format を使うと、埋めていない項目があるとエラーで止まるので、忘れに気づけます。次の fill.py は、依頼メールの値を差し込む例です。

TEMPLATE = """あなたはビジネスメールの下書きを作る担当です。次の条件でメール文を1通書いてください。

<相手との関係>
{相手}({関係})
</相手との関係>

<目的>
{用件}
</目的>

<必ず入れる事実>
{事実}
期限:{期限}
</必ず入れる事実>

<文体>
{文体}
</文体>

<長さ>
{長さ}
</長さ>

<決まり>
- 「必ず入れる事実」に無い日付・数量・名前・約束を足さない。足りない情報は本文に書かず、最後に「確認したい点」として箇条書きにする。
- 件名を1行、本文、署名の順に書く。署名は「{署名}」とする。
- 敬語は重ねない(例:「おっしゃられる」ではなく「おっしゃる」)。
</決まり>"""

values = {
    "相手": "[会社A] [人物A]様",
    "関係": "社外。2回やり取りしたことがある取引先の担当者",
    "用件": "備品貸出システムの画面案について、確認と意見をお願いする",
    "事実": "- 画面案は PDF 1件(全8ページ)を添付\n- 特に見てほしいのは3ページ目の貸出申請画面",
    "期限": "10月16日(金)17時",
    "文体": "です・ます。丁寧だが硬すぎない。クッション言葉は1通に2つまで",
    "長さ": "本文200〜300字。箇条書きは3項目まで",
    "署名": "[自社] [自分]",
}

print(TEMPLATE.format(**values))

実行結果です。

あなたはビジネスメールの下書きを作る担当です。次の条件でメール文を1通書いてください。

<相手との関係>
[会社A] [人物A]様(社外。2回やり取りしたことがある取引先の担当者)
</相手との関係>

<目的>
備品貸出システムの画面案について、確認と意見をお願いする
</目的>

<必ず入れる事実>
- 画面案は PDF 1件(全8ページ)を添付
- 特に見てほしいのは3ページ目の貸出申請画面
期限:10月16日(金)17時
</必ず入れる事実>

<文体>
です・ます。丁寧だが硬すぎない。クッション言葉は1通に2つまで
</文体>

<長さ>
本文200〜300字。箇条書きは3項目まで
</長さ>

<決まり>
- 「必ず入れる事実」に無い日付・数量・名前・約束を足さない。足りない情報は本文に書かず、最後に「確認したい点」として箇条書きにする。
- 件名を1行、本文、署名の順に書く。署名は「[自社] [自分]」とする。
- 敬語は重ねない(例:「おっしゃられる」ではなく「おっしゃる」)。
</決まり>

values から「期限」を消して実行すると、次のように止まりました。

KeyError: '期限'

場面別の差分一覧(依頼・お礼・お詫び・催促・お断り・日程調整)

共通テンプレートのうち、場面ごとに変える部分だけを並べました。表の内容を、テンプレートの該当する項目に入れてください。

場面 {用件}の書き方 必ず入れる事実 文体に足す指定 長さの目安 決まりに足す1行
依頼 相手にしてほしいことを1つ、動詞で終える 頼む内容、期限、添付や参照先、返信の方法 冒頭にクッション言葉を1つ。頼む理由を1文 本文200〜300字 頼みごとは1通に1つ。複数あるときは箇条書きにする
お礼 何に対するお礼かを1つ いつ・何をしてもらったか、その結果どう助かったか 具体的な感想を1文。定型のあいさつは短く 本文120〜200字 新しい依頼を混ぜない
お詫び 何が起きたかと、今後どうするか 起きたこと、相手への影響、原因(分かっている範囲)、対応と時期 言い訳に読める表現を避ける。お詫びは冒頭と結びの2回まで 本文250〜400字 原因が分かっていない部分は「確認中」と書き、推測で埋めない
催促 何の返事を、いつまでにほしいか 元の依頼の日付と件名、新しい期限、行き違いへの配慮 責める表現を避ける。相手の都合を気づかう1文 本文150〜250字 「行き違いでしたらご容赦ください」に類する1文を入れる
お断り 何を断るかと、代わりの案があるか 断る対象、理由(言える範囲)、代わりの案の有無 感謝→結論→理由→代案の順。結論をぼかさない 本文200〜300字 結論は最初の3行以内に書く
日程調整 いつ・何の打ち合わせの候補を出すか 候補日時を3つ(曜日つき)、所要時間、場所または方法、返信期限 候補は箇条書き。前置きは短く 本文150〜250字 候補日時は渡したものだけを使い、曜日を変えない

表計算ソフトに貼るための CSV です。

場面,{用件}の書き方,必ず入れる事実,文体に足す指定,長さの目安,決まりに足す1行
依頼,相手にしてほしいことを1つ、動詞で終える,頼む内容、期限、添付や参照先、返信の方法,冒頭にクッション言葉を1つ。頼む理由を1文,本文200〜300字,頼みごとは1通に1つ。複数あるときは箇条書きにする
お礼,何に対するお礼かを1つ,いつ・何をしてもらったか、その結果どう助かったか,具体的な感想を1文。定型のあいさつは短く,本文120〜200字,新しい依頼を混ぜない
お詫び,何が起きたかと、今後どうするか,起きたこと、相手への影響、原因(分かっている範囲)、対応と時期,言い訳に読める表現を避ける。お詫びは冒頭と結びの2回まで,本文250〜400字,原因が分かっていない部分は「確認中」と書き、推測で埋めない
催促,何の返事を、いつまでにほしいか,元の依頼の日付と件名、新しい期限、行き違いへの配慮,責める表現を避ける。相手の都合を気づかう1文,本文150〜250字,「行き違いでしたらご容赦ください」に類する1文を入れる
お断り,何を断るかと、代わりの案があるか,断る対象、理由(言える範囲)、代わりの案の有無,感謝→結論→理由→代案の順。結論をぼかさない,本文200〜300字,結論は最初の3行以内に書く
日程調整,いつ・何の打ち合わせの候補を出すか,候補日時を3つ(曜日つき)、所要時間、場所または方法、返信期限,候補は箇条書き。前置きは短く,本文150〜250字,候補日時は渡したものだけを使い、曜日を変えない

たとえば催促なら、テンプレートの各項目を次のように埋めます。

{相手} = [会社A] [人物A]様
{関係} = 社外。2回やり取りしたことがある取引先の担当者
{用件} = 10月9日に送った「画面案のご確認のお願い」への返事を、10月20日(火)までにもらう
{事実} = - 元のメールは10月9日(金)送信、件名「備品貸出システム 画面案のご確認のお願い」
         - 行き違いで返信済みの場合は読み流してよいと伝える
{期限} = 10月20日(火)17時
{文体} = です・ます。責める表現を避け、相手の都合を気づかう1文を入れる
{長さ} = 本文150〜250字

新規作成・添削・言い換えの違いと選び方

AIへの頼み方は3つあります。違いは、文面の中身を誰が決めるかです。

頼み方 自分が用意するもの AIがすること 向いている場面 気をつける点
新規作成 5項目(事実を含む) 文面を一から組み立てる 書き出しに迷う、型どおりの連絡 渡していない事実が入っていないかを読む
添削 自分で書いた下書き 誤字、敬語、分かりにくい文を指摘して直す 事実が固まっている、自分の言葉を残したい 直した理由も一緒に出させる
言い換え 直したい文や段落 意味を変えずに語調だけ変える きつく読める、硬すぎる、くだけすぎている 言い換えの前後で事実が変わっていないかを比べる

どれを選ぶかは、次の条件で決めます。

条件 選ぶもの
伝える事実が固まっていて、下書きを書ける 自分で書いて添削
伝える事実は固まっているが、書き出しが浮かばない 5項目を埋めて新規作成
文面はできていて、語調だけ直したい 言い換え
お詫びやお断りなど、言い回しで印象が大きく変わる 自分で書いて添削(事実と結論は自分で決める)
事実がまだ固まっていない AIに頼む前に、事実を確かめる

添削を頼むプロンプト

次のメールの下書きを添削してください。

<下書き>
{下書き}
</下書き>

<相手との関係>
{相手}({関係})
</相手との関係>

<見てほしい点>
1. 誤字・脱字、表記のゆれ
2. 敬語の誤り(重ねた敬語、尊敬語と謙譲語の取り違え)
3. 一文が長い、主語が分かりにくい文
4. 用件と期限が最初の5行以内にあるか
5. 相手にきつく読める表現
</見てほしい点>

<決まり>
- 日付・数量・名前・約束の内容は変えない。おかしいと思った場合は直さずに指摘する。
- 指摘は「元の文/直した文/理由」の3列の表にする。
- 表の後に、直した後の全文を載せる。
- 直すところが無い観点は「指摘なし」と書く。
</決まり>

言い換えを頼むプロンプト

次の文を、意味と事実を変えずに言い換えてください。

<文>
{文}
</文>

<変えたい方向>
{方向}
</変えたい方向>

<決まり>
- 案を3つ出す。それぞれ「丁寧さ(高・中・低)」と「どんな相手向きか」を1行で添える。
- 日付・数量・名前は元のまま使う。
- 情報を足さない。削った情報がある場合は、何を削ったかを書く。
</決まり>

{方向}には、「もう少しやわらかく」「社内の先輩向けに少しくだけて」「結論を先に、短く」のように書きます。

敬語の言い換え早見表30組

メールでよく使われる言い換えを30組まとめました。「向き」の列は、自分の動作に使うか、相手の動作に使うか、言い回しの置き換えかを示しています。どれも「必ずこう書く」という決まりではなく、社外や目上の相手に送るときによく選ばれる形です。社内の近い相手には、言い換え前のままで自然な場面もあります。

No 言い換え前 言い換え後 向き ひとこと
1 了解しました 承知いたしました 自分の動作 社外や目上の相手に向く
2 わかりました かしこまりました 自分の動作 依頼を引き受けるとき
3 すみません 申し訳ございません 言い回し お詫びのとき
4 すみませんが 恐れ入りますが 言い回し 依頼の前置き
5 できません いたしかねます 自分の動作 断るとき。理由や代案を添える
6 わかりません わかりかねます 自分の動作 確認して返すと添えると親切
7 知っています 存じております 自分の動作 物事を知っているとき
8 知りません 存じません 自分の動作 物事を知らないとき
9 見ました 拝見しました 自分の動作 相手の資料やメールを見たとき
10 見てください ご覧ください 相手の動作 添付や資料を案内するとき
11 聞きました 伺いました 自分の動作 相手や第三者から聞いたとき
12 言いました(自分が) 申し上げました 自分の動作 相手に伝えた内容を指すとき
13 言っていました(相手が) おっしゃっていました 相手の動作 相手の発言を指すとき
14 行きます 伺います 自分の動作 相手のところへ行くとき
15 来てください お越しください 相手の動作 来訪をお願いするとき
16 もらいました いただきました 自分の動作 資料や返事を受け取ったとき
17 送ります お送りします 自分の動作 添付や郵送の案内
18 します いたします 自分の動作 対応を伝えるとき
19 どうですか いかがでしょうか 言い回し 意見や都合を尋ねるとき
20 いいですか よろしいでしょうか 言い回し 許可や確認を求めるとき
21 教えてください ご教示ください 相手の動作 方法や情報を尋ねるとき
22 確認してください ご確認をお願いいたします 相手の動作 確認の依頼
23 あとで 後ほど 言い回し 時間を置いて連絡するとき
24 ちょっと 少々 言い回し 待ってもらうとき
25 すぐに 早急に 言い回し 急いで対応するとき
26 忙しいところ ご多用のところ 言い回し 依頼やお礼の前置き
27 なるほど おっしゃるとおりです 言い回し 相手の意見に同意するとき
28 おっしゃられる おっしゃる 重なりを直す 尊敬語に「れる」を重ねない
29 ご覧になられる ご覧になる 重なりを直す 尊敬語に「れる」を重ねない
30 拝見させていただきました 拝見しました 重なりを直す 謙譲語に「させていただく」を重ねない

CSV 版です。プロンプトに貼って「この表に沿って言い換えて」と頼む使い方もできます。

No,言い換え前,言い換え後,向き,ひとこと
1,了解しました,承知いたしました,自分の動作,社外や目上の相手に向く
2,わかりました,かしこまりました,自分の動作,依頼を引き受けるとき
3,すみません,申し訳ございません,言い回し,お詫びのとき
4,すみませんが,恐れ入りますが,言い回し,依頼の前置き
5,できません,いたしかねます,自分の動作,断るとき。理由や代案を添える
6,わかりません,わかりかねます,自分の動作,確認して返すと添えると親切
7,知っています,存じております,自分の動作,物事を知っているとき
8,知りません,存じません,自分の動作,物事を知らないとき
9,見ました,拝見しました,自分の動作,相手の資料やメールを見たとき
10,見てください,ご覧ください,相手の動作,添付や資料を案内するとき
11,聞きました,伺いました,自分の動作,相手や第三者から聞いたとき
12,言いました(自分が),申し上げました,自分の動作,相手に伝えた内容を指すとき
13,言っていました(相手が),おっしゃっていました,相手の動作,相手の発言を指すとき
14,行きます,伺います,自分の動作,相手のところへ行くとき
15,来てください,お越しください,相手の動作,来訪をお願いするとき
16,もらいました,いただきました,自分の動作,資料や返事を受け取ったとき
17,送ります,お送りします,自分の動作,添付や郵送の案内
18,します,いたします,自分の動作,対応を伝えるとき
19,どうですか,いかがでしょうか,言い回し,意見や都合を尋ねるとき
20,いいですか,よろしいでしょうか,言い回し,許可や確認を求めるとき
21,教えてください,ご教示ください,相手の動作,方法や情報を尋ねるとき
22,確認してください,ご確認をお願いいたします,相手の動作,確認の依頼
23,あとで,後ほど,言い回し,時間を置いて連絡するとき
24,ちょっと,少々,言い回し,待ってもらうとき
25,すぐに,早急に,言い回し,急いで対応するとき
26,忙しいところ,ご多用のところ,言い回し,依頼やお礼の前置き
27,なるほど,おっしゃるとおりです,言い回し,相手の意見に同意するとき
28,おっしゃられる,おっしゃる,重なりを直す,尊敬語に「れる」を重ねない
29,ご覧になられる,ご覧になる,重なりを直す,尊敬語に「れる」を重ねない
30,拝見させていただきました,拝見しました,重なりを直す,謙譲語に「させていただく」を重ねない

敬語の種類について補足します。文化審議会の答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)は、敬語を尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に分けて説明しています。尊敬語は「いらっしゃる・おっしゃる」型、謙譲語Ⅰは「伺う・申し上げる」型、謙譲語Ⅱは「参る・申す」型です。早見表の「相手の動作」は主に尊敬語、「自分の動作」は主に謙譲語にあたります。AIの直しに迷ったときは、その動作をするのは自分か相手かを先に確かめると判断しやすくなります。

早見表を使った言い換えプロンプト

次のメール文を、下の言い換え表に沿って直してください。

<メール文>
{メール文}
</メール文>

<言い換え表>
{上の CSV を貼る}
</言い換え表>

<決まり>
- 表にある「言い換え前」の表現だけを直す。それ以外の文は変えない。
- 直した箇所を「元の表現/直した表現/表のNo」の一覧で示す。
- 自分の動作か相手の動作かが文から読み取れない箇所は、直さずに質問する。
</決まり>

個人名を伏せ字にして渡す手順

下書きや過去のメールをAIに渡すときは、個人名・会社名・メールアドレス・電話番号を伏せ字にしてから渡すと、文面づくりに関係のない情報を渡さずに済みます。入力してよい情報の範囲は、自社の規程と、使うサービスの利用条件に従ってください。

手順は3つです。

  1. 対応表を作る:実名と伏せ字([人物A] など)の組を、自分の手元にだけ置く。
  2. 伏せ字にして渡す:対応表で置き換えた文面をAIに渡す。
  3. 戻して確かめる:返ってきた文面の伏せ字を実名に戻し、戻し残りがないかを見る。

次の mask.py は、名前の置き換えと、メールアドレス・電話番号の置き換えを行う例です。名前・会社名・連絡先はすべて架空のものです。

import re

NAMES = {
    "山田太郎": "[人物A]",
    "山田": "[人物A]",
    "佐藤花子": "[人物B]",
    "佐藤": "[人物B]",
    "株式会社サンプル商事": "[会社A]",
    "株式会社あおぞら工房": "[自社]",
}
PATTERNS = [
    (re.compile(r"[\w.+-]+@[\w-]+(\.[\w-]+)+"), "[メール]"),
    (re.compile(r"0\d{1,4}-\d{1,4}-\d{3,4}"), "[電話]"),
]


def mask(text: str) -> str:
    for name in sorted(NAMES, key=len, reverse=True):
        text = text.replace(name, NAMES[name])
    for pattern, label in PATTERNS:
        text = pattern.sub(label, text)
    return text


def unmask(text: str, full: dict[str, str]) -> str:
    for label, name in full.items():
        text = text.replace(label, name)
    return text


draft = """株式会社サンプル商事 山田太郎様
株式会社あおぞら工房の佐藤花子です。
先日は山田様にお時間をいただき、ありがとうございました。
ご不明な点は sato@aozora-kobo.example または 03-0000-0000 までご連絡ください。"""

masked = mask(draft)
print(masked)
print("---")
restore = {"[人物A]": "山田", "[人物B]": "佐藤花子", "[会社A]": "株式会社サンプル商事", "[自社]": "株式会社あおぞら工房"}
print(unmask("[会社A] [人物A]様\n[自社]の[人物B]です。", restore))

実行結果です。前半が伏せ字にした文面、後半が伏せ字を実名に戻した文面です。

[会社A] [人物A]様
[自社]の[人物B]です。
先日は[人物A]様にお時間をいただき、ありがとうございました。
ご不明な点は [メール] または [電話] までご連絡ください。
---
株式会社サンプル商事 山田様
株式会社あおぞら工房の佐藤花子です。

名前は長いものから先に置き換えます。 「山田」を先に置き換えると、「山田太郎」が「[人物A]太郎」になり、下の名前が残るためです。コードでは sorted(..., key=len, reverse=True) で長い順にしています。

送信前の確認チェックリスト

AIが書いた文面も、自分が書いた文面と同じく、送る人が内容を確かめます。

No 見る点 確かめ方 確認
1 宛名 会社名・部署・氏名・敬称が、元の署名や名刺と一字ずつ合っているか □
2 日付 日付と曜日の組が合っているか。年をまたぐ時期は年も見る □
3 金額 数字、単位、税の扱いが元の資料と合っているか □
4 固有名詞 製品名・資料名・件名が、元の表記と合っているか □
5 二重敬語 「おっしゃられる」「ご覧になられる」のような重なりがないか □
6 AIが足した事実 渡していない日付・数量・約束・理由が入っていないか □
7 伏せ字の残り [人物A] などが本文に残っていないか □
8 添付 「添付します」と書いた資料が実際に付いているか □
No,見る点,確かめ方,確認
1,宛名,会社名・部署・氏名・敬称が、元の署名や名刺と一字ずつ合っているか,□
2,日付,日付と曜日の組が合っているか。年をまたぐ時期は年も見る,□
3,金額,数字、単位、税の扱いが元の資料と合っているか,□
4,固有名詞,製品名・資料名・件名が、元の表記と合っているか,□
5,二重敬語,「おっしゃられる」「ご覧になられる」のような重なりがないか,□
6,AIが足した事実,渡していない日付・数量・約束・理由が入っていないか,□
7,伏せ字の残り,[人物A] などが本文に残っていないか,□
8,添付,「添付します」と書いた資料が実際に付いているか,□

チェックの一部をコードで確かめる

日付と曜日の組、敬語の重なり、伏せ字の残りは、機械的に確かめられます。次の precheck.py は、手で書いた見本のメール文に、わざと合っていない点を4つ入れて確かめる例です。

import datetime
import re

YEAR = 2026
MUST = ["10月16日", "17時", "3ページ目", "全8ページ"]
DOUBLE = ["おっしゃられ", "ご覧になられ", "お越しになられ", "拝見させていただ", "伺わせていただ"]
CASUAL = ["了解しました", "すみません", "できません", "わかりません", "ご苦労様"]
YOUBI = "月火水木金土日"

mail = """件名:備品貸出システム 画面案のご確認のお願い

[会社A] [人物A]様

いつもお世話になっております。[自社]の[自分]です。
備品貸出システムの画面案(PDF、全8ページ)をお送りします。
特に3ページ目の貸出申請画面について、ご意見をいただけますでしょうか。
先日[人物A]様がおっしゃられていた点も反映しました。ご指摘の件は了解しました。
恐れ入りますが、10月16日(木)17時までにご返信をお願いいたします。
10月20日の定例会でも改めてご説明します。"""

print("1. 必ず入れる事実")
for fact in MUST:
    print("  ", "OK  " if fact in mail else "なし", fact)

print("2. 日付と曜日")
for m, d, w in re.findall(r"(\d{1,2})月(\d{1,2})日((.))", mail):
    real = YOUBI[datetime.date(YEAR, int(m), int(d)).weekday()]
    print("  ", f"{m}月{d}日({w})", "OK" if real == w else f"→ 実際は({real})")

print("3. 敬語の重なり・言い換え候補")
for word in DOUBLE + CASUAL:
    if word in mail:
        print("   あり", word)

print("4. 伏せ字の残り")
print("  ", sorted(set(re.findall(r"\[[^\]]+\]", mail))))

print("5. 事実の一覧に無い数字・日付を含む行")
known = "".join(MUST) + "8"
for line in mail.splitlines():
    nums = re.findall(r"\d+", line)
    if nums and not all(n in known for n in nums):
        print("  ", line)
print("   (数字を含まない約束ごとは目で読む)")

実行結果です。

1. 必ず入れる事実
   OK   10月16日
   OK   17時
   OK   3ページ目
   OK   全8ページ
2. 日付と曜日
   10月16日(木) → 実際は(金)
3. 敬語の重なり・言い換え候補
   あり おっしゃられ
   あり 了解しました
4. 伏せ字の残り
   ['[人物A]', '[会社A]', '[自分]', '[自社]']
5. 事実の一覧に無い数字・日付を含む行
   10月20日の定例会でも改めてご説明します。
   (数字を含まない約束ごとは目で読む)

曜日の取り違え、敬語の重なり、言い換え候補、伏せ字の残り、渡していない日付(10月20日)が見つかりました。5番の確認は数字を手がかりにしているので、「来週ご説明します」のような数字のない約束ごとは見つけられません。 6番の「AIが足した事実」は、最後は目で読んで確かめます。

確かめて分かったこと

  • 差し込みをコードにすると、埋め忘れが実行時に分かりました。 「期限」を渡さずに実行すると KeyError: '期限' で止まり、空欄のままのプロンプトは作られませんでした。
  • 伏せ字は長い名前から置き換える必要がありました。 短い姓を先に置き換えると、フルネームの下の名前が残ります。
  • 伏せ字を戻すときの対応表は、伏せ字にするときの表と1対1になりません。 「山田太郎」と「山田」を同じ [人物A] にまとめたので、戻すときはどちらの表記にするかを自分で決めます(例では「山田」に戻しました)。
  • 日付と曜日の食い違いは、年を決めれば機械的に見つかりました。 2026年10月16日は金曜日で、見本の「(木)」は datetime の計算で検出できました。
  • 数字を手がかりにした確認は、数字のない約束ごとを素通りします。 決まりに「足さない」と書くことと、目で読むことの両方が要ります。

よくある質問

Q. メール作成のプロンプトには何を書けばよいですか? A. 相手との関係・目的・必ず入れる事実・文体・長さの5項目です。日付や数量などの事実はすべて自分で渡し、「ここに無いことは足さない」と決まりに書きます。

Q. 新規作成と添削の違いは?どちらを使えばよいですか? A. 新規作成はAIが文面を組み立て、添削は自分の下書きをAIが直します。伝える事実が固まっていて下書きを書けるなら添削、書き出しが浮かばないなら新規作成が向いています。

Q. 「了解しました」は使ってはいけませんか? A. 使ってはいけない言葉ではありません。社外や目上の相手には「承知いたしました」がよく選ばれる、という使い分けです。社内の近い相手なら自然な場面もあるので、相手との関係で決めます。

Q. AIが敬語を重ねてしまうときは? A. 決まりに「敬語は重ねない」と例つきで書き、添削のプロンプトで「重ねた敬語」を見てほしい点に入れます。この記事の早見表 No.28〜30 を貼って渡す方法もあります。

Q. 取引先の名前をそのままAIに入力してもよいですか? A. 自社の規程と、使うサービスの利用条件によります。迷うときは伏せ字にして渡すと、文面づくりに関係のない情報を渡さずに済みます。

まとめ

  • プロンプトは5項目:相手との関係・目的・必ず入れる事実・文体・長さ。
  • 共通テンプレート1本を使い回す:場面ごとの違いは、差分一覧の内容を各項目に入れるだけ。
  • 事実は自分で渡し、「足さない」と決まりに書く:日付・数量・名前はAIに任せない。
  • 事実が固まっていれば添削、語調だけなら言い換え:頼み方は3つから選ぶ。
  • 敬語は「自分の動作か相手の動作か」で確かめる:早見表30組を CSV で渡すこともできる。
  • 送信前に6点:宛名・日付・金額・固有名詞・二重敬語・AIが足した事実。
  • 個人名は伏せ字にして渡し、戻し残りを確かめる。

参考・出典

  • Anthropic「Prompting best practices」https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices (2026-10-06 閲覧)
  • 文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf (2026-10-06 閲覧)

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(記載例)出典:株式会社RJC「生成AIメール作成プロンプト集|敬語の言い換えと添削」

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