結論

IPアドレスとは、インターネットや社内・家庭のネットワークにつながった機器を見分けるための番号です。データの「宛先」と「送信元」として、通信のたびに使われます。家の中で使う番号(プライベートIPアドレス)は、ルーターがインターネット用の番号(グローバルIPアドレス)に書き換えてから外へ送ります。

この記事でわかること

  • IPアドレスの意味と、192.168.1.10 のような数字の読み方
  • グローバルとプライベートの違い、範囲、NATで変わる様子(実物)
  • Windows・Mac・iPhone・Android・Linuxでの確認方法

2026年10月29日更新|Ubuntu 24.04・iproute2 6.1・nftables 1.0.9・Python 3.13で実行確認

家庭のネットワークを例にすると、パソコンやスマホには「家の中だけで通じる番号」が付き、ルーターだけが「インターネットで通じる番号」を持っています。外へ出るデータは、ルーターを通るときに送信元の番号が書き換えられます。

flowchart TD
    PC1[パソコン<br>192.168.1.10] --> R
    PC2[スマホ<br>192.168.1.11] --> R
    R[家庭用ルーター<br>内側 192.168.1.1<br>外側 203.0.113.10] -->|送信元を書き換え NAT| N[プロバイダー<br>インターネット]
    N --> S[Webサーバー<br>198.51.100.80]

よく調べられることの答えを先にまとめます。

知りたいこと 答え 詳しい節
IPアドレスとは ネットワーク上の機器を見分ける番号。データの宛先と送信元に使う IPアドレスとは
IPアドレスの読み方 0〜255の数を4つ、点で区切る(IPv4)。中身は32ビットの数 IPv4アドレスの読み方
グローバルIPアドレスとは インターネットで重複しない番号。ふつうはルーターが持つ グローバルとプライベートの違い
プライベートIPアドレスとは 家庭・社内だけで使う番号。10.・172.16〜31.・192.168. で始まる プライベートIPアドレスの範囲
自分のIPアドレスの確認方法 Windowsは設定の「IPv4 アドレス」か ipconfig、Linuxは ip addr 自分のIPアドレスの確認方法
家の中の番号が外で通じる仕組み ルーターのNATが送信元をグローバルIPに書き換える NATの仕組み
固定IPと動的IPの違い 動的は自動で配られ変わることがある。固定は変わらない 固定IPと動的IP
IPv4とIPv6の違い IPv4は32ビット・約43億個、IPv6は128ビット IPv4とIPv6の違い

確認環境:Ubuntu 24.04.5 LTS(Linux カーネル 6.18)の上に、ip netns(ネットワーク名前空間)で7つの小さなネットワークを作り、「家庭A(パソコン2台)」「家庭B(パソコン1台)」「家庭用ルーター2台」「プロバイダー役」「Webサーバー」を再現しました。家庭Aと家庭Bは、どちらも同じ 192.168.1.0/24 を使っています。インターネット側の番号には、説明用に予約された 203.0.113.0/24 と 198.51.100.0/24(RFC 5737)を使い、本物のインターネットには一切つないでいません。ルーターの NAT は netns の中の nftables 1.0.9、通信の確認は iproute2 6.1.0 の ip・ss、iputils 20240117 の ping、traceroute 2.1.5、curl 8.5.0、tcpdump 4.99.4、計算は Python 3.13.18 の ipaddress モジュールで行いました。Windows・Mac・iPhone・Android の画面での確認方法は、Microsoft・Apple・Google の公式ヘルプで確かめた範囲だけを書いています。範囲の定義は RFC 1918・RFC 5737・RFC 6598・RFC 3927、割り当てと枯渇の経緯は JPNIC の公開資料で確かめました。図は mermaid 11.16.0 で描画を確かめています(確認日 2026年10月29日)。

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「IPアドレスとは?仕組み・グローバルとプライベートの違いをNATで実演」

IPアドレスとは(意味をわかりやすく)

この節では、IPアドレスが何のための番号で、通信のどこで使われているのかが分かります。

IPアドレス(Internet Protocol address)は、ネットワークにつながった機器を1台ずつ見分けるための番号です。 インターネットの通信は、データを「パケット」という小さな包みに分けて送ります。1つ1つのパケットには、手紙の封筒と同じように「宛先のIPアドレス」と「送信元のIPアドレス」が書かれています。途中のルーターは宛先を見て次の行き先を決め、受け取った側は送信元を見て返事を出します。

よく「住所」や「電話番号」にたとえられます。Ubuntu の公式ヘルプも、IPアドレスを電話番号にたとえ、コンピューター同士がデータを送り合うときに相手を見分ける番号だと説明しています。たとえと違うのは、同じ機器でも、つなぐ場所や時間によって番号が変わることがある点です。自宅の Wi-Fi と会社の Wi-Fi では、同じノートパソコンでも別の番号になります。

1宛先になる

Webサイトを開くと、パソコンはサーバーのIPアドレス宛てにパケットを送る。ドメイン名(例:www.example.com)は、DNSでIPアドレスに変換してから使われる。

2送信元になる

サーバーは、届いたパケットの送信元のIPアドレスへ返事を送る。送信元が正しくないと、返事が戻ってこない。

3道順を決める手がかりになる

途中のルーターは、宛先の番号の前半(ネットワーク部)を見て、どちらへ送るかを決める。

パソコンに付いているIPアドレスは、Linux なら ip addr で見られます。手元の「家庭Aのパソコン」で実行した結果です。

$ ip addr show
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
    inet 127.0.0.1/8 scope host lo
       valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0@if3: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc noqueue state UP group default qlen 1000
    link/ether 0a:60:11:53:5a:7e brd ff:ff:ff:ff:ff:ff link-netns t39-r1
    inet 192.168.1.10/24 scope global eth0
       valid_lft forever preferred_lft forever
表示 意味
eth0 ネットワークの差し込み口(インターフェース)の名前。Wi-Fi なら wlan0 などになる
inet 192.168.1.10/24 この差し込み口のIPアドレス(IPv4)。/24 は「前から24ビットがネットワークの番号」という意味
link/ether 0a:60:… MACアドレス。差し込み口そのものに付いた番号で、IPアドレスとは別もの
inet 127.0.0.1/8(lo) 自分自身を指す特別なアドレス(ループバック)。どの機器にもある

1台の機器が複数のIPアドレスを持つことは珍しくありません。上の例でも、自分自身用の 127.0.0.1 と、ネットワーク用の 192.168.1.10 の2つがあります。IPアドレスは「機器」ではなく「差し込み口(インターフェース)」ごとに付くと覚えると、有線と Wi-Fi で番号が違う理由も分かります。

IPv4アドレスの読み方とサブネットマスク・CIDR

この節では、192.168.1.10 のような数字の意味と、/24 や 255.255.255.0 が何を表すのかが、計算の結果で分かります。

いま広く使われている IPv4 のアドレスは、32ビット(0と1が32個)の数を、8ビットずつ4つに区切って10進数で書いたものです。 1つの区切りは0〜255の範囲になります。Python の ipaddress モジュールで、192.168.1.10 を2進数に直しました。

import ipaddress as ia
a = ia.ip_address("192.168.1.10")
print(a, "->", ".".join(f"{o:08b}" for o in a.packed), "=", int(a))
192.168.1.10 -> 11000000.10101000.00000001.00001010 = 3232235786
32ビットIPv4アドレスの長さ8ビット×4つ。1つは0〜255
約43億個IPv4の総数2の32乗 = 4,294,967,296
254台/24 に付けられる機器の数256個から先頭と末尾を除く

数字の範囲を外れた書き方は、IPアドレスとして読めません。Python に渡すと次のエラーになりました。

192.168.1.256 -> '192.168.1.256' does not appear to be an IPv4 or IPv6 address
192.168.1 -> '192.168.1' does not appear to be an IPv4 or IPv6 address
192.168.01.1 -> '192.168.01.1' does not appear to be an IPv4 or IPv6 address

256 は0〜255の範囲外、3つしかないものは区切りが足りず、先頭に0を付けた 01 は8進数と取り違える恐れがあるため、Python 3.13 は受け付けません。設定画面に入力するときも、0を付けずに書くのが確実です。

ネットワーク部とホスト部(/24 の意味)

IPアドレスは、前半の「ネットワーク部(どのネットワークか)」と、後半の「ホスト部(その中のどの機器か)」に分かれます。 どこで分けるかを示すのが、サブネットマスク(255.255.255.0)と、CIDR表記(/24)です。この2つは同じことを別の書き方で表しています。

n = ia.ip_interface("192.168.1.10/24").network
print("ネットワーク", n, "マスク", n.netmask, "ブロードキャスト", n.broadcast_address,
      "総数", n.num_addresses, "機器に使える数", n.num_addresses - 2)
print("同じネットワーク?", ia.ip_address("192.168.1.11") in n, ia.ip_address("192.168.2.11") in n)
ネットワーク 192.168.1.0/24 マスク 255.255.255.0 ブロードキャスト 192.168.1.255 総数 256 機器に使える数 254
同じネットワーク? True False

192.168.1.10/24 なら、前の 192.168.1 がネットワーク部、最後の 10 がホスト部です。192.168.1.11 は同じネットワーク、192.168.2.11 は別のネットワークだと判定されました。同じネットワークの相手には直接届き、別のネットワークの相手にはルーター(デフォルトゲートウェイ)を通して届けます。 この違いは、あとの「ルーティング」の節で実際に通信して確かめます。

CIDR サブネットマスク アドレスの数 よく使う場面
/8 255.0.0.0 16,777,216 10.0.0.0/8 全体
/16 255.255.0.0 65,536 クラウドのネットワーク全体(例:VPC)
/24 255.255.255.0 256 家庭・小さな事務所のLAN
/26 255.255.255.192 64 /24 を4つに分けたとき
/28 255.255.255.240 16 小さなサブネット・固定IPの割り当て
/30 255.255.255.252 4 ルーター同士を1対1でつなぐ線
/32 255.255.255.255 1 アドレス1個だけを指す(許可リストなど)

表の値はすべて Python で計算して確かめました。/24 を4つに分けると、192.168.1.0/26・192.168.1.64/26・192.168.1.128/26・192.168.1.192/26 になります。サブネットマスクの計算方法は関連記事「サブネットマスクとは|計算方法・早見表・確認方法を図と実例で解説」で、/0〜/32 の全一覧は関連記事「CIDR計算・サブネット早見表|/0〜/32一覧とPython計算コード」で扱っています。

グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの違い

この節では、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスがそれぞれ何で、なぜ2種類あるのかが分かります。

グローバルIPアドレスは、インターネットの中で重複しない番号です。プライベートIPアドレスは、家庭や会社の中だけで使う番号で、ほかの家庭や会社と同じ番号を使っても問題になりません。 会社の電話にたとえると、グローバルIPアドレスは外線の電話番号、プライベートIPアドレスは社内の内線番号です。

グローバルIPアドレス

インターネットで重複しない(パブリックIPとも呼ぶ)

プロバイダー(ISP)から割り当てられる

家庭では、ふつうルーターの外側だけが持つ

Webサーバーなど、外から接続される機器に必要

プライベートIPアドレス

家庭・社内だけで使う(ローカルIPとも呼ぶ)

ルーターが自動で配る(DHCP)か、自分で決める

10.・172.16〜31.・192.168. で始まる

そのままではインターネットに出られず、NATで変換する

2種類ある理由(IPv4アドレスの枯渇)

IPv4 のアドレスは約43億個しかありません。世界中のパソコン・スマホ・家電に1つずつ配ると足りないため、インターネットに直接出る機器(ルーターやサーバー)にだけグローバルIPアドレスを配り、家の中・社内の機器にはプライベートIPアドレスを使うという形が広まりました。

JPNIC によると、世界全体のアドレスを管理する IANA の在庫は2011年2月3日に、アジア太平洋地域を管理する APNIC の通常の在庫は2011年4月15日になくなりました。日本の JPNIC は APNIC と在庫を共有しているため、同じ時点で通常の割り振りが終わっています。

グローバルIPアドレスは誰が配っているか

グローバルIPアドレスは、重複しないように階層的に管理されています(JPNIC「IPアドレス管理の基礎知識」)。

  1. 1IANA(ICANN の機能の1つ)世界全体のアドレスを持ち、地域ごとに分ける
  2. 2地域インターネットレジストリ(RIR)アジア太平洋は APNIC
  3. 3国別インターネットレジストリ(NIR)日本は JPNIC
  4. 4IPアドレス管理指定事業者(プロバイダーなど)自社の持つアドレスから、契約者のネットワークに割り当てる
  5. 5利用者(家庭のルーター・会社のサーバー)動的または固定のグローバルIPアドレスを受け取る

プライベートIPアドレスは、この管理の外にあり、誰でも申請なしに使えます。そのかわり、インターネット上ではその番号宛てにパケットを届けられません。次の節で、その様子を実際に確かめます。

プライベートIPアドレスの範囲(RFC 1918)と特別なアドレス

この節では、プライベートIPアドレスの正確な範囲と、ほかに用途が決まっている特別なアドレスが一覧で分かります。

プライベートIPアドレスとして使える範囲は、RFC 1918(1996年2月)で次の3つに決められています。

範囲 CIDR アドレスの数 よく見る場所
10.0.0.0 〜 10.255.255.255 10.0.0.0/8 16,777,216 会社のネットワーク・クラウド
172.16.0.0 〜 172.31.255.255 172.16.0.0/12 1,048,576 会社のネットワーク・コンテナの内部
192.168.0.0 〜 192.168.255.255 192.168.0.0/16 65,536 家庭用ルーター(192.168.0.x・192.168.1.x など)

まぎらわしいのは 172 の範囲です。 プライベートなのは 172.16〜172.31 だけで、172.32.0.1 はプライベートではありません。Python で判定すると、はっきり分かれました。

192.168.1.10     private=True  global=False loopback=False link_local=False
10.0.0.5         private=True  global=False loopback=False link_local=False
172.16.0.1       private=True  global=False loopback=False link_local=False
172.32.0.1       private=False global=True  loopback=False link_local=False
100.64.0.1       private=False global=False loopback=False link_local=False
127.0.0.1        private=True  global=False loopback=True  link_local=False
169.254.10.20    private=True  global=False loopback=False link_local=True
203.0.113.10     private=True  global=False loopback=False link_local=False
8.8.8.8          private=False global=True  loopback=False link_local=False

Python の is_private は、RFC 1918 の3つだけでなく、IANA の特別用途の一覧で「インターネットで届かない」とされたもの全部を True にします(Python 公式ドキュメント)。説明用の 203.0.113.10 が True になっているのはそのためです。また 100.64.0.0/10 だけは is_private も is_global も False になる、と公式ドキュメントに書かれています。

覚えておきたい特別なアドレス

1

127.0.0.1(ループバック)

自分自身を指す。127.0.0.0/8 全体が自分用。「localhost」はふつうこの番号になる。

開発用のサーバーでよく使う

2

169.254.x.x(リンクローカル)

DHCP から番号をもらえなかったとき、機器が自分で付ける番号(RFC 3927)。これが出たら、ルーターから番号をもらえていない合図。

つながらない時の手がかり

3

100.64.x.x(共有アドレス)

プロバイダーが大きな NAT(CGNAT)の内側で使う範囲(RFC 6598)。ルーターの外側がこの番号なら、グローバルIPを直接は持っていない。

100.64.0.0/10

4

0.0.0.0

サーバーの待ち受けでは「この機器のすべてのアドレス」の意味になる。宛先として使う番号ではない。

待ち受けの設定で見る

5

x.x.x.255(ブロードキャスト)

/24 なら末尾 255 は「そのネットワークの全員宛て」。先頭の x.x.x.0 はネットワーク自体を指す。機器には付けない。

/24 では .0 と .255

6

192.0.2.x ほか(説明用)

192.0.2.0/24・198.51.100.0/24・203.0.113.0/24 は、資料や例に使うために予約された番号(RFC 5737)。この記事の例もこれを使っている。

本物の通信には使わない

NATの仕組み:プライベートIPがグローバルIPに変わる様子を実際に見る

この節では、家の中のプライベートIPアドレスが、ルーターを通るときにグローバルIPアドレスへ書き換えられる様子が、実際に流れたパケットで分かります。

NAT(Network Address Translation、アドレス変換)は、パケットの送信元のIPアドレスを、ルーターの外側のIPアドレスに書き換える仕組みです。 家庭用ルーターでは、ポート番号も合わせて書き換えて、1つのグローバルIPアドレスを家の中の何台もの機器で分け合います(NAPT・IPマスカレードとも呼びます)。

NATが無いと、行きは届いても返事が戻らない

まず、ルーターの NAT を設定しないまま、家庭Aのパソコン(192.168.1.10)から Webサーバー(198.51.100.80)へ接続しました。結果はタイムアウトです。

$ ping -c 2 -W 1 198.51.100.80
PING 198.51.100.80 (198.51.100.80) 56(84) bytes of data.

--- 198.51.100.80 ping statistics ---
2 packets transmitted, 0 received, 100% packet loss, time 1007ms

$ curl -m 3 http://198.51.100.80/
curl: (28) Connection timed out after 3002 milliseconds

サーバー側で tcpdump を取ると、何が起きたかが見えます。

IP 192.168.1.10.50922 > 198.51.100.80.80: Flags [S], seq 2243561552, ...
IP 198.51.100.80.80 > 192.168.1.10.50922: Flags [S.], seq 1641598338, ack 2243561553, ...
IP 198.51.100.1 > 198.51.100.80: ICMP net 192.168.1.10 unreachable, length 68
  • 1行目:パソコンからの接続要求(SYN)は、送信元 192.168.1.10 のまま、サーバーに届いています。
  • 2行目:サーバーは 192.168.1.10 宛てに返事(SYN-ACK)を出しました。
  • 3行目:プロバイダー役のルーター(198.51.100.1)が「192.168.1.10 というネットワークへの道が無い(net unreachable)」と返しました。

インターネット側のルーターは、192.168.1.10 がどこにあるのかを知りません。 192.168.1.10 は世界中の家庭で同時に使われている番号なので、知りようがないのです。RFC 1918 も、プライベートアドレスの経路の情報を組織の外へ流さず、送信元や宛先がプライベートアドレスのパケットを外へ転送しないように求めています。本物のインターネットでは、1行目の段階で途中のネットワークに捨てられることもあります。

NATを設定すると、送信元が書き換わる

家庭用ルーター役の netns の中で、nftables に NAT(masquerade)の設定を1行足しました。ホストの nftables・iptables は変えていません。

table ip t39nat {
  chain postrouting {
    type nat hook postrouting priority srcnat; policy accept;
    oifname "wan" ip saddr 192.168.1.0/24 counter masquerade
  }
}

「192.168.1.0/24 から来て、外側(wan)へ出ていくパケットは、送信元を wan のアドレスに書き換える」という意味です。同じ接続を、ルーターの内側(br0)と外側(wan)の両方で tcpdump で記録しました。

== ルーターの内側(家の中)
21:50:36.315919 IP 192.168.1.10.50428 > 198.51.100.80.80: Flags [S], seq 832565250, ...
21:50:36.316414 IP 198.51.100.80.80 > 192.168.1.10.50428: Flags [S.], seq 2581224284, ack 832565251, ...
21:50:36.360876 IP 192.168.1.10.50428 > 198.51.100.80.80: Flags [P.], seq 1:77, ... HTTP: GET / HTTP/1.1

== ルーターの外側(インターネット側)
21:50:36.316376 IP 203.0.113.10.50428 > 198.51.100.80.80: Flags [S], seq 832565250, ...
21:50:36.316408 IP 198.51.100.80.80 > 203.0.113.10.50428: Flags [S.], seq 2581224284, ack 832565251, ...
21:50:36.360889 IP 203.0.113.10.50428 > 198.51.100.80.80: Flags [P.], seq 1:77, ... HTTP: GET / HTTP/1.1

同じパケット(seq 832565250)が、内側では送信元 192.168.1.10、外側では送信元 203.0.113.10 になっています。 返事は 203.0.113.10 宛てに戻り、ルーターが宛先を 192.168.1.10 に戻してパソコンに渡しました。ルーターは、どの接続を誰に戻すかを表(コネクション追跡の表)で覚えています。ルーターの netns で中身を見ると、変換の前と後が1行に並んでいました。

$ cat /proc/net/nf_conntrack
ipv4 2 tcp 6 119 TIME_WAIT src=192.168.1.10 dst=198.51.100.80 sport=56334 dport=80 src=198.51.100.80 dst=203.0.113.10 sport=80 dport=56334 [ASSURED] ...
ipv4 2 tcp 6 93 TIME_WAIT src=192.168.1.11 dst=198.51.100.80 sport=41076 dport=80 src=198.51.100.80 dst=203.0.113.10 sport=80 dport=41076 [ASSURED] ...
ipv4 2 icmp 1 29 src=192.168.1.10 dst=198.51.100.80 type=8 code=0 id=6543 src=198.51.100.80 dst=203.0.113.10 type=0 code=0 id=6543 ...

サーバーから見えるのはグローバルIPだけ

Webサーバーは、接続してきた相手のIPアドレスを返すように作りました。家庭Aの2台と、家庭Bの1台から接続した結果です。家庭Bのパソコンは、家庭Aのパソコンとまったく同じ 192.168.1.10 を使っています。

$ curl http://198.51.100.80/     # 家庭A 192.168.1.10 から
サーバーから見えた接続元のIPアドレス: 203.0.113.10(ポート 50428)
$ curl http://198.51.100.80/     # 家庭A 192.168.1.11 から
サーバーから見えた接続元のIPアドレス: 203.0.113.10(ポート 41076)
$ curl http://198.51.100.80/     # 家庭B 192.168.1.10 から
サーバーから見えた接続元のIPアドレス: 203.0.113.20(ポート 50440)
2台→1個家庭Aの機器とグローバルIPどちらも 203.0.113.10 に見えた
同じ番号家庭Aと家庭Bの 192.168.1.10重複していても両方つながった
2パケットNATの規則に当たった数接続の最初だけ数えられる

サーバーの ss -tn でも、相手は 203.0.113.10 と表示されました。パソコン側の ss -tn では、自分は 192.168.1.10 です。同じ1本の接続が、内側と外側で別の番号に見えています。

$ ss -tn        # パソコン側
State Recv-Q Send-Q Local Address:Port   Peer Address:Port
ESTAB 0      0       192.168.1.10:55170 198.51.100.80:80
$ ss -tn        # サーバー側
State Recv-Q Send-Q Local Address:Port Peer Address:Port
ESTAB 0      0      198.51.100.80:80   203.0.113.10:55170

NAT の規則のカウンターは「packets 2」でした。2回の HTTP 接続で、それぞれ最初のパケットだけが規則を通り、あとのパケットはコネクション追跡の表で自動的に書き換えられるためです。自宅のグローバルIPアドレスを外部のサービスで確かめる方法や、CGNAT・VPN で結果が食い違う理由は、関連記事「グローバルIPの確認方法|コマンド・プライベートIPとの違いとNATを実演」で扱っています。

外から家の中へは、そのままでは届かない(ポート転送)

NAT は「内側から始めた接続」の返事を戻す仕組みです。外のサーバーから家のパソコンへ接続しようとすると、届きません。

$ curl http://192.168.1.10/          # サーバーから家のプライベートIPへ
curl: (7) Failed to connect to 192.168.1.10 port 80 after 0 ms: Couldn't connect to server
$ ping -c 1 192.168.1.10
From 198.51.100.1 icmp_seq=1 Destination Net Unreachable
$ curl http://203.0.113.10:8080/     # ルーターのグローバルIPへ
curl: (7) Failed to connect to 203.0.113.10 port 8080 after 0 ms: Couldn't connect to server

家のパソコンを外から使えるようにするには、ルーターに「8080番に来たものは 192.168.1.10 の8000番へ渡す」という設定(ポート転送・ポート開放)を足します。手元のルーター役で設定すると、つながりました。

iifname "wan" tcp dport 8080 counter dnat to 192.168.1.10:8000

$ curl http://203.0.113.10:8080/
pc1(192.168.1.10) が受けた。接続元: 198.51.100.80

ポート転送は、家の中の機器をインターネットからの接続に直接さらす設定です。使い終わったら消し、パスワードの無い機器を出さないようにします。この実験でも、確かめたあとすぐに規則を消しました。

ルーティング:同じネットワークと違うネットワークへの届き方

この節では、パケットがどの道を通るのかを決める「ルーティング」の考え方と、ip route・traceroute での確かめ方が分かります。

機器は、宛先が同じネットワークなら直接、違うネットワークならデフォルトゲートウェイ(ふつうは家庭用ルーター)へパケットを渡します。 どちらにするかは、機器の中の「経路表(ルーティングテーブル)」で決まります。

$ ip route
default via 192.168.1.1 dev eth0
192.168.1.0/24 dev eth0 proto kernel scope link src 192.168.1.10

$ ip route get 192.168.1.11
192.168.1.11 dev eth0 src 192.168.1.10 uid 0

$ ip route get 198.51.100.80
198.51.100.80 via 192.168.1.1 dev eth0 src 192.168.1.10 uid 0

192.168.1.0/24 dev eth0 は「192.168.1.0〜255 の相手には eth0 から直接送る」、default via 192.168.1.1 は「それ以外は全部ルーターに渡す」という意味です。ip route get の結果に via があればルーター経由です。

同じネットワークの 192.168.1.11 への ping は、ルーターを通らずに届きます。届いたあと ip neigh を見ると、相手の IPアドレスと MACアドレスの対応(ARP で調べた結果)が記録されていました。

$ ping -c 3 192.168.1.11
64 bytes from 192.168.1.11: icmp_seq=1 ttl=64 time=0.478 ms
64 bytes from 192.168.1.11: icmp_seq=2 ttl=64 time=0.056 ms
64 bytes from 192.168.1.11: icmp_seq=3 ttl=64 time=0.038 ms
3 packets transmitted, 3 received, 0% packet loss, time 2040ms

$ ip neigh
192.168.1.11 dev eth0 lladdr 06:cb:8e:62:4e:47 REACHABLE

別のネットワークのサーバーまでの道順は、traceroute で見られます。家庭用ルーター→プロバイダー役→サーバーの順に通っていました。

$ traceroute -n -q 1 -w 1 198.51.100.80
traceroute to 198.51.100.80 (198.51.100.80), 30 hops max, 60 byte packets
 1  192.168.1.1  0.118 ms
 2  203.0.113.1  0.070 ms
 3  198.51.100.80  0.021 ms

$ ping -c 2 198.51.100.80
64 bytes from 198.51.100.80: icmp_seq=1 ttl=62 time=0.071 ms
64 bytes from 198.51.100.80: icmp_seq=2 ttl=62 time=0.074 ms

同じネットワークの相手は ttl=64、ルーターを2つ通ったサーバーは ttl=62 でした。TTL はルーターを1つ通るごとに1ずつ減る数で、64から始まる機器なら、減った数で通ったルーターの数の目安が分かります(最初の値は OS によって違います)。Windows の tracert も同じ考え方のコマンドです。

ip・ss・nc を使った切り分けの手順は、関連記事「Linuxネットワークコマンド一覧|ip/ss/ncで障害切り分け」で扱っています。

自分のIPアドレスの確認方法(Windows・Mac・iPhone・Android・Linux)

この節では、自分の機器のIPアドレス(主にプライベートIPアドレス)を、OS ごとに確かめる方法が分かります。

機器の設定画面やコマンドで分かるのは、その機器に付いたIPアドレスです。家庭ではふつうプライベートIPアドレス(192.168.x.x など)が表示されます。 インターネットから見えるグローバルIPアドレスは機器の中には無いため、ルーターの管理画面か、外部の確認サービスで調べます(この記事の実験では外部のサービスには問い合わせていません)。

1

Windows 11・10(設定アプリ)

「スタート」→「設定」→「ネットワーク & インターネット」を開き、Wi-Fi なら「Wi-Fi」→接続中のネットワーク、有線なら「イーサネット」を選ぶ。「IPv4 アドレス」の横に表示される番号がIPアドレス。タスクバーのネットワークのアイコンを右クリックして「ネットワークとインターネットの設定」からも開ける(Microsoft サポート)。

Microsoft 公式ヘルプで確認

2

Windows(コマンド:ipconfig)

コマンドプロンプトか PowerShell で ipconfig と入力する。Microsoft Learn によると、パラメーターなしで、すべてのアダプターの IPv4・IPv6 アドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイを表示する。ipconfig /all は MACアドレスや DHCP サーバーも含めた全部の設定を表示する。

Microsoft Learn で確認

3

Mac(システム設定)

アップルメニュー →「システム設定」→ サイドバーの「Wi-Fi」を選び、接続中のネットワークの「詳細」を開くと、「IPアドレス」と「ルーター」のアドレスが表示される。同じ画面の「TCP/IP」で IPv4・IPv6 の設定と DHCP リースの更新ができる(Apple「Macの「Wi-Fi」設定」)。

Apple 公式ガイド(macOS 27 の版)で確認

4

iPhone・iPad

「設定」→「Wi-Fi」で、接続中のネットワーク名の横にある詳細情報ボタン(ⓘ)をタップすると、そのネットワークの詳細画面が開く(Apple サポート「Apple製デバイスでプライベートWi-Fiアドレスを使う」)。Apple の公式ページで確かめられたのは詳細画面の開き方までで、IPアドレスの欄の位置の記述は見つからなかった。この画面の「プライベートWi-Fiアドレス」は MACアドレスの設定で、IPアドレスとは別もの。

開き方は Apple 公式で確認

5

Android

「設定」→「ネットワークとインターネット」→「インターネット」→ 接続中のネットワークの横の設定アイコンを開くと、そのネットワークの詳細画面(ランダム MAC アドレスなどが並ぶ)が開く。Google のヘルプにはIPアドレスの欄の記述は無く、メニュー名や場所が機種や Android の版によって違い、見つからなければ端末のメーカーに問い合わせるよう案内している。

開き方は Google 公式で確認

6

Linux(コマンド)

ip addr(短く ip a)で全部、ip -br addr で1行ずつ、hostname -I で番号だけを表示する。デフォルトゲートウェイは ip route の default の行で分かる。

この環境で実行して確認

Linux で手元のパソコン役に実行した結果です。

$ ip -br addr
lo               UNKNOWN        127.0.0.1/8
eth0@if3         UP             192.168.1.10/24

$ hostname -I
192.168.1.10

$ ip -4 -o addr show | awk '{print $2, $4}'
lo 127.0.0.1/8
eth0 192.168.1.10/24

Windows の ipconfig の出力の読み方や /all・/flushdns の使い方は、関連記事「ipconfigの使い方とMTUとは|/all・/flushdnsとMTUの実例」で扱っています。

表示された番号が 169.254 で始まるならルーターから番号をもらえていない、ルーターの外側が 100.64〜100.127 で始まるならプロバイダーの CGNAT の内側、という見分け方は、上の「特別なアドレス」の一覧で確かめられます。

固定IPアドレスと動的IPアドレスの違い(DHCP)

この節では、IPアドレスが自動で配られる仕組みと、固定IPアドレスが必要になる場面が分かります。

家庭や会社のパソコン・スマホのIPアドレスは、ふつう DHCP という仕組みで自動的に配られます(動的IPアドレス)。 ルーターなどの DHCP サーバーが、空いている番号を「何時間まで使ってよい」という期限(リース)付きで貸し出し、期限が近づくと機器が延長を頼みます。Apple のルーター設定の推奨値の資料は、リース時間の目安を家庭・事務所で8時間、ホットスポットや来客用で1時間としています。

動的IPアドレス 固定IPアドレス
決まり方 DHCP で自動的に配られる 手で設定する、または DHCP で毎回同じ番号を予約する
変わるか 再接続や期限切れで変わることがある 変わらない
手間 設定いらず。番号の重複が起きにくい 番号の管理が要る。重複に気をつける
向いている機器 パソコン・スマホ・タブレット プリンター・NAS・サーバー・ルーター
グローバルIPの場合 家庭向けの回線の標準 プロバイダーのオプション(追加料金のことが多い)

「固定IP」という言葉は、2つの意味で使われます。1つは家の中のプリンターなどに決まった番号を付けること(プライベートの固定)、もう1つはプロバイダーから毎回同じグローバルIPアドレスをもらうこと(グローバルの固定)です。前者はルーターの DHCP の予約で無料でできることが多く、後者はプロバイダーとの契約が要ります。グローバルの固定IPは、自社のサーバーを公開する、VPN で社外から接続する、クラウドサービスの接続元を IP で制限する、といった場面で使われます。

手で固定の番号を付けるときは、DHCP が配る範囲と重ならない番号を選びます。重なると、あとで別の機器に同じ番号が配られ、次の節の「IPアドレスの重複」が起きます。

IPアドレスとMACアドレス・ドメイン名・ポート番号の違い

この節では、IPアドレスとよく一緒に出てくる番号や名前との違いが分かります。

通信には、役割の違う「番号」がいくつも使われます。 どれも「相手を特定する」ためのものですが、特定する範囲が違います。

名前 例 何を指すか 変わるか
IPアドレス 192.168.1.10 ネットワーク上の機器(の差し込み口) つなぐ場所で変わる
MACアドレス 0a:60:11:53:5a:7e 差し込み口そのもの。同じネットワークの中での配達に使う 基本は変わらない(スマホは場所ごとに変えることがある)
ドメイン名 www.example.com 人が覚えやすい名前。DNS でIPアドレスに変換する 名前は同じでも、指すIPは変えられる
ポート番号 80・443・22 機器の中の、どのソフト(サービス)か サービスごとに決まる
  • IPアドレスとMACアドレス:IPアドレスは「最終的な宛先」、MACアドレスは「同じネットワークの中で、次に渡す相手」です。実験の ip neigh の結果のように、機器は ARP で「192.168.1.11 の MACアドレスは何か」を調べてから送ります。iPhone の「プライベートWi-Fiアドレス」や Android の「ランダム MAC アドレス」は、この MACアドレスをネットワークごとに変える機能です(Apple・Google の公式ヘルプ)。
  • IPアドレスとドメイン名:ブラウザに URL を入れると、まず DNS でドメイン名をIPアドレスに変えてから接続します。
  • IPアドレスとポート番号:IPアドレスが「建物」なら、ポート番号は「部屋番号」です。実験の ss -tn の 192.168.1.10:55170 の、コロンの後ろがポート番号です。Web は80(HTTP)と443(HTTPS)、SSH は22のように、サービスごとに番号が決まっています。

IPv4とIPv6の違い(概要)

この節では、IPv6 が何で、IPv4 と何が違うのかの要点が分かります。詳しい読み方や確認方法は、IPv6 の別記事に分けています。

IPv6 は、IPv4 のアドレス不足を解決するために作られた新しい版で、アドレスの長さが128ビットあります。 2の128乗は約340澗(かん、3.4×10の38乗)個で、事実上使い切れない数です。

IPv4 IPv6
長さ 32ビット 128ビット
書き方 10進数4つを点で区切る(192.168.1.10) 16進数8つをコロンで区切る(2001:db8::1)
数 約43億個 約3.4×10の38乗個
家庭のNAT ほぼ必ず使う 前提にしない設計(機器ごとにグローバルなアドレスを持てる)

IPv6 には、0が続く部分を :: で省略する決まりがあります。Python で同じアドレスを長い形と短い形に直しました。

2001:0db8:0000:0000:0000:0000:0000:0001  ⇄  2001:db8::1

いまの家庭や会社では、IPv4 と IPv6 を同時に使う「デュアルスタック」が一般的です。IPv6 のアドレスの種類(リンクローカル・ユニークローカル)、省略の規則、IPv6 で通信しているかの確かめ方は、IPv6 の別記事(IPv6とは)で実物つきで扱います。

IPアドレスで分かること・分からないこと(安全に使うために)

この節では、IPアドレスが相手に伝わると何が分かるのか、どこまで気にすればよいのかが分かります。

Webサイトを見るだけで、サイトの運営者には接続元のグローバルIPアドレスが伝わります。 実験のサーバーが 203.0.113.10 を記録したのと同じことが、ふだんの通信でも起きています。

グローバルIPから一般に分かること

どのプロバイダー(会社)の回線か

おおよその地域(都道府県・市区町村の程度で、外れることも多い)

同じ接続元からのアクセスかどうか

IPアドレスだけでは分からないこと

名前・住所・電話番号などの個人の情報

家の中のどの機器か(NATの内側は見えない)

プライベートIPアドレス(外には出ていかない)

プロバイダーは契約者とIPアドレスの対応を記録していますが、その情報が開示されるのは法律に基づく手続きなどの場合に限られます。気をつけたいのは、IPアドレスそのものより、ルーターやポート転送で、パスワードの弱い機器をインターネットからつながる状態にしてしまうことです。

ポート転送

避けるカメラや NAS の管理画面を、試しに開けたまま放置する
→
代わりに使い終わったら規則を消す。外から使うなら VPN やメーカーのクラウド機能を使う

実験でも、確かめたあとすぐに規則を消した

IP制限

避ける動的IPの回線を、管理画面の許可リストに登録する
→
代わりに固定のグローバルIPか VPN の出口を登録する。許可リストは /32 で必要な番号だけにする

動的IPは変わると締め出される

よくあるエラー・つまずき(IPアドレスが原因の通信トラブル)

この節では、IPアドレスの設定の誤りで起きるエラーの文言と、原因の見分け方が、手元で再現した結果で分かります。

「つながらない」の多くは、IPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイの3つのどれかがずれていることで起きます。 わざと設定を間違えて、出たエラーをそのまま並べました。

わざと起こした状態 出たエラーの原文 原因と直し方
デフォルトゲートウェイを消した ping: connect: Network is unreachable/curl (7) Couldn't connect to server 外へ出る道が無い。ゲートウェイ(ルーターの番号)を設定する
自分の番号を別のネットワーク(192.168.2.11/24)にした ゲートウェイの設定で Error: Nexthop has invalid gateway./ping で Network is unreachable ルーター 192.168.1.1 と同じネットワークの番号にする
サブネットマスクを /32 にした ping: connect: Network is unreachable 家庭なら /24(255.255.255.0)に直す
2台に同じ 192.168.1.10 を付けた 片方だけ curl (28) Connection timed out、もう片方は成功 IPアドレスの重複。どちらかの番号を変え、DHCP の範囲と固定の番号を分ける
NAT を設定しないで外へ出た curl (28) Connection timed out/途中のルーターから ICMP net 192.168.1.10 unreachable プライベートIPのままでは返事が戻らない。ルーターの NAT を有効にする
サーバーを 127.0.0.1 だけで待ち受けた 別の機器から curl (7) Couldn't connect to server 自分自身からしか届かない。0.0.0.0 か自分の 192.168.x.x で待ち受ける
外から家の中の番号へ接続した Destination Net Unreachable プライベートIPは外から届かない。ポート転送か VPN を使う

IPアドレスの重複で起きたこと

家庭Aの2台に、同じ 192.168.1.10 を付けて、両方から Webサーバーへ接続しました。

pc1 exit=28        # タイムアウト
サーバーから見えた接続元のIPアドレス: 203.0.113.10(ポート 49716)
pc2 exit=0         # 成功
(3回繰り返して、3回とも同じ結果)

$ ip neigh show dev br0      # ルーター側
192.168.1.10 lladdr 06:cb:8e:62:4e:47 REACHABLE

ルーターは「192.168.1.10 の MACアドレスは 06:cb:8e:…(pc2)」と覚えていたため、pc1 宛ての返事もすべて pc2 に届き、pc1 はタイムアウトになりました。「ある機器だけ、ときどきつながらない」ときは、IPアドレスの重複を疑います。

127.0.0.1 と 0.0.0.0 の違い(開発でよくあるつまずき)

$ ss -tlnp | grep 8000
LISTEN 0 5 127.0.0.1:8000 0.0.0.0:*    users:(("python3",...))
$ curl http://127.0.0.1:8000/          # 同じ機器から → 200
$ curl http://192.168.1.10:8000/       # 別の機器から
curl: (7) Failed to connect to 192.168.1.10 port 8000 after 0 ms: Couldn't connect to server

$ ss -tlnp | grep 8000                 # --bind 0.0.0.0 で起動し直した
LISTEN 0 5 0.0.0.0:8000 0.0.0.0:*      users:(("python3",...))
$ curl http://192.168.1.10:8000/       # 別の機器から → 200

開発用のサーバーを起動したのに、スマホや別のパソコンから開けないときは、待ち受けのアドレスが 127.0.0.1 になっていないかを ss -tlnp(Windows は netstat -an)で見ます。localhost でつながらないときの原因は、関連記事「localhostで接続が拒否されましたの原因と解決方法」で扱っています。

つながらないときの確かめる順番

  • 1自分のIPアドレスが付いているか169.254.x.x や空欄なら、Wi-Fi・ケーブル・ルーターの DHCP を見る
  • 2サブネットマスクとゲートウェイが正しいかゲートウェイが自分と同じネットワークの番号か(192.168.1.x なら 192.168.1.1 など)
  • 3ゲートウェイに ping が届くか届かなければ家の中の問題。届けば外側の問題
  • 4IPアドレスで外に届くか、名前で届くかIPなら届いて名前だと届かないなら DNS の問題
  • 5同じ番号の機器がほかにいないかときどき切れる・特定の機器だけ切れるときに疑う

判断表:この場面ではどのIPアドレスを使うか

この節では、設定や開発の場面ごとに、どの種類のIPアドレスを使えばよいかが一覧で分かります。

場面 使うIPアドレス 理由
家庭・社内のパソコン・スマホ プライベート・動的(DHCP) 設定いらずで重複しにくい
家庭・社内のプリンター・NAS プライベート・固定(DHCPの予約) 番号が変わると印刷・接続の設定が切れる
自分のパソコンだけで動かす開発用サーバー 127.0.0.1 外から接続されない
同じ Wi-Fi のスマホから開発中の画面を見る 0.0.0.0 で待ち受け、自分の 192.168.x.x で開く 127.0.0.1 では別の機器から届かない
インターネットに公開するサーバー グローバル・固定(クラウドなら固定のパブリックIP) 外から同じ番号で届く必要がある
取引先のシステムに接続元IPを登録する 固定のグローバルIP(/32) 動的IPは変わる
社内ネットワークを新しく作る 10.0.0.0/8 から、ほかの拠点・VPN と重ならない範囲 192.168.1.0/24 は家庭と重なりやすく、VPN で衝突する
資料・ブログに例として書く 192.0.2.x・198.51.100.x・203.0.113.x 説明用に予約されていて、実在の相手と重ならない

社内ネットワークでよく起きるのが、自宅の 192.168.1.0/24 と、会社の VPN の先の 192.168.1.0/24 が重なることです。どちらへ送ればよいか機器が判断できず、会社のサーバーに届かなくなります。会社側の範囲を 10.x や 172.16〜31.x の中から選んでおくと、家庭のネットワークと重なりにくくなります。

よくある質問

Q. IPアドレスとは何ですか?簡単に言うと? A. ネットワークにつながった機器を見分けるための番号です。データを送るときの宛先と送信元として使われます。住所や電話番号にたとえられますが、つなぐ場所によって変わることがあります。

Q. 自分のIPアドレスを調べる一番簡単な方法は? A. Windows は「設定」→「ネットワーク & インターネット」→ 接続中のネットワークの「IPv4 アドレス」、Mac は「システム設定」→「Wi-Fi」→「詳細」です。コマンドなら Windows は ipconfig、Linux は ip addr です。ここで分かるのは家の中の番号(プライベートIP)です。

Q. グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの違いは? A. グローバルはインターネットで重複しない番号で、プロバイダーから割り当てられます。プライベートは家庭・社内だけで使う番号で、ほかの家と同じ番号でも問題ありません。家の中から外へ出るときは、ルーターの NAT でグローバルに書き換えられます。

Q. 192.168.1.1 とは何ですか? A. 多くの家庭用ルーターが、家の中側に使っている番号です。パソコンやスマホのデフォルトゲートウェイになっていて、ブラウザで開くとルーターの管理画面が出る機種が多くあります。番号は機種によって違い、192.168.0.1 などのこともあります。

Q. IPアドレスは変わりますか? A. 家の中の番号は、DHCP のリースの期限や再接続で変わることがあります。グローバルIPも、家庭向けの回線では、ルーターの再起動などで変わることがあります。変わってほしくない機器は、DHCP の予約や固定IPのオプションを使います。

Q. IPアドレスから住所や名前は分かりますか? A. IPアドレスだけで分かるのは、一般にプロバイダーとおおよその地域までです。名前や住所は分かりません。プロバイダーの記録が開示されるのは、法律に基づく手続きなどの場合です。

Q. 169.254 で始まる番号になりました。 A. ルーターなどの DHCP サーバーから番号をもらえず、機器が自分で付けた番号(リンクローカル)です。この状態ではインターネットにつながりません。Wi-Fi の接続し直し、ケーブル、ルーターの再起動を順に試し、Windows なら ipconfig /renew で取り直せます。

Q. 172.20.x.x はプライベートIPですか? A. はい。172.16.0.0〜172.31.255.255(172.16.0.0/12)はプライベートIPです。172.32 以上はプライベートではありません。コンテナやクラウドのネットワークでもよく見かけます。

まとめ

  • IPアドレスは、ネットワーク上の機器(の差し込み口)を見分ける番号で、パケットの宛先と送信元に使われる。IPv4 は32ビットで約43億個。
  • グローバルIPはインターネットで重複しない番号、プライベートIP(10.0.0.0/8・172.16.0.0/12・192.168.0.0/16)は家庭・社内だけの番号。
  • 手元の実験では、NAT が無いと「行きは届くが返事が戻らない」状態になり、NAT を有効にすると 192.168.1.10 が 203.0.113.10 に書き換わった。別の家庭の同じ 192.168.1.10 も問題なく通信できた。
  • 同じネットワークの相手には直接、違うネットワークにはデフォルトゲートウェイ経由で届く。ip route・traceroute で道順を確かめられる。
  • つながらないときは、IPアドレス・サブネットマスク・ゲートウェイ・重複・待ち受けのアドレス(127.0.0.1 か 0.0.0.0 か)を順に見る。

次に読むとよい記事です。サブネットの計算は関連記事「サブネットマスクとは|計算方法・早見表・確認方法を図と実例で解説」、自宅のグローバルIPの調べ方は関連記事「グローバルIPの確認方法|コマンド・プライベートIPとの違いとNATを実演」で扱っています。

参考・出典

確認日はいずれも 2026年10月29日です。

  • IETF「RFC 1918 Address Allocation for Private Internets」:https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1918
  • IETF「RFC 5737 IPv4 Address Blocks Reserved for Documentation」:https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5737
  • IETF「RFC 6598 IANA-Reserved IPv4 Prefix for Shared Address Space」:https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc6598
  • IETF「RFC 3927 Dynamic Configuration of IPv4 Link-Local Addresses」:https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc3927
  • IANA「IANA IPv4 Special-Purpose Address Registry」:https://www.iana.org/assignments/iana-ipv4-special-registry/iana-ipv4-special-registry.xhtml
  • JPNIC「IPv4アドレスの在庫枯渇に関して」:https://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv4pool/
  • JPNIC「IPアドレス管理の基礎知識」:https://www.nic.ad.jp/ja/ip/admin-basic.html
  • Python ドキュメント「ipaddress — IPv4/IPv6 manipulation library」:https://docs.python.org/3/library/ipaddress.html
  • Microsoft サポート「Windows での重要なネットワーク設定とタスク」:https://support.microsoft.com/ja-jp/windows/experience/connectivity-networking/essential-network-settings-and-tasks-in-windows
  • Microsoft Learn「ipconfig」:https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-server/administration/windows-commands/ipconfig
  • Apple サポート「Macの「Wi-Fi」設定」:https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mh11935/mac
  • Apple サポート「Apple製デバイスでプライベートWi-Fiアドレスを使う」:https://support.apple.com/ja-jp/102509
  • Apple サポート「Recommended settings for Wi-Fi routers and access points」:https://support.apple.com/en-us/102766
  • Google「Android スマートフォンでネットワークの詳細設定を管理する」:https://support.google.com/android/answer/9654714?hl=ja
  • Ubuntu デスクトップガイド(IP アドレスの説明のページ):https://help.ubuntu.com/stable/ubuntu-help/net-what-is-ip-address.html.ja

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「IPアドレスとは?仕組み・グローバルとプライベートの違いをNATで実演」

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