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Overleafの使い方|日本語の設定・料金・エラーの直し方を実例で解説
結論
Overleafとは、ブラウザでLaTeXを書いてPDFにするオンラインのエディターです。日本語の文書は、コンパイラをLuaLaTeXにして書くのが手軽です。
この記事でわかること
- 日本語を出す3通りの設定とコピペ用の雛形
- エラー17件の原文と直し方の表
- 無料と有料4プランの違いと10秒の制限の対策
Overleaf では、ブラウザで書いた .tex ファイルを Overleaf のサーバーにある TeX Live がコンパイルし、できた PDF が画面の右側に出ます。日本語が出るかどうかは、選ぶコンパイラで決まります。
flowchart TD
A[ブラウザで .tex を書く] --> B[Recompile を押す]
B --> C[Overleaf のサーバー<br>TeX Live]
C --> D{コンパイラ}
D -->|LuaLaTeX など日本語の設定あり| E[日本語の PDF]
D -->|pdfLaTeX のまま| F[日本語でエラー]
日本語の文書でよく使う設定を先にまとめます。
| やりたいこと | 設定・書き方 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本語の文書を新しく書く | コンパイラ LuaLaTeX+\documentclass{jlreq} |
公式ギャラリーの雛形と同じ |
| jsarticle 風の見た目にする | LuaLaTeX+\documentclass{ltjsarticle} |
LuaTeX-ja のクラス |
| 学会の upLaTeX 雛形を使う | コンパイラ LaTeX+latexmkrc |
中身は本文の節にコピペ用 |
| コンパイラを変える | 左下の Settings → Compiler | プロジェクトごとの設定 |
| 日本語のフォントを変える | \setmainjfont{Noto Serif CJK JP} |
luatexja-fontspec を読み込む |
| コンパイルを速くする | Recompile の横の矢印 → Fast [draft] | 画像を枠だけにする |
| エラーの場所を探す | Stop on first error | 最初のエラーで止める |
| 手元にバックアップ | File → Download → Download as source (.zip) | 無料プランでも使える |
| 手元の Git とつなぐ | git clone https://git.overleaf.com/プロジェクトID |
有料プランの機能 |
確認環境:Ubuntu 24.04.4・TeX Live 2023/Debian(pdfTeX 3.141592653-2.6-1.40.25・XeTeX 0.999995)・latexmk 4.83・BibTeX 0.99d・xdvipdfmx 20220710・pdftotext 24.02.0。見出し・数式・図・表・参考文献の雛形、日本語が出ないときの症状、エラー17件、画像の多い文書のコンパイル時間は、この TeX Live で実際にコンパイルし、ログと PDF の文字(pdftotext)を載せています。日本語の文書は XeLaTeX+fontspec で実際にコンパイルしました。Overleaf の画面・プラン・制限・Git 連携・AI 機能は docs.overleaf.com と overleaf.com の料金ページ、日本語の設定(LuaLaTeX・pLaTeX・upLaTeX・latexmkrc)は Overleaf の「Japanese」と「Does Overleaf support pTeX?」のページ、jlreq の雛形は Overleaf のテンプレートギャラリーで確かめました(確認日 2026年10月22日)。
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「Overleafの使い方|日本語の設定・料金・エラーの直し方を実例で解説」
Overleafとは(何ができるか・無料で使えるか)
この節では、Overleaf が何をするサービスで、どんな人が使っているかが分かります。
Overleaf は、LaTeX(ラテック、ラテフ)の文書をブラウザだけで書き、PDF にできるオンラインのエディターです。 パソコンに TeX Live などをインストールしなくても、アカウントを作ればすぐに論文・レポート・スライド(beamer)・履歴書などを書き始められます。無料プランがあり、有料プランでは共同編集の人数やコンパイルの時間が増えます。
公式の「About」ページによると、Overleaf は2011年に John Hammersley と John Lees-Miller が作り、2014年から Digital Science の一員、2017年に ShareLaTeX と統合しました。利用者は「20m+(2,000万人以上)」と書かれています。
1インストールが要らない
コンパイルは Overleaf のサーバーの TeX Live で行う。新しいプロジェクトは、サーバーにある最新の TeX Live を使う。
2同時に編集できる
共有のリンクを送ると、同じ文書を複数の人が同時に書ける。コメントや変更の提案(Track changes)もある。
3テンプレートが多い
論文誌・学会・卒論などのテンプレートを、ギャラリーから選んでそのまま書き始められる。
4履歴が残る
過去の版を見比べたり戻したりできる。無料プランで見られるのは直近24時間とラベルを付けた版。
LaTeX の文書は、Word のように見た目を直接作るのではなく、\section{はじめに} のような命令で構造を書き、コンパイル(PDF への変換)で見た目を作ります。数式・図表の番号・参考文献を自動で整えられるのが強みです。
Overleafの料金と無料プランの制限(2026年10月22日時点)
この節では、無料でどこまで使えるかと、有料プランで何が増えるかが分かります。
Overleaf の料金ページの表示です(米ドル。2026年10月22日時点)。年払いは月額に直した金額も表示されています。
| プラン | 月払い | 年払い | 共同編集者(1プロジェクト) |
|---|---|---|---|
| Free | 0ドル | 0ドル | 1人 |
| Student | 13ドル | 98ドル(月8.25ドル) | 10人 |
| Standard | 25ドル | 199ドル(月16.75ドル) | 10人 |
| Pro | 45ドル | 399ドル(月33.25ドル) | 無制限 |
| Organizations | 問い合わせ | 問い合わせ | プランによる |
Student は「学位を授与する教育機関に在籍している学生」が対象です。大学などが契約している場合(Overleaf Commons)は、その大学のアカウントで有料の機能が使えることがあります。
無料と有料で違う主な項目です(料金ページと docs.overleaf.com の「Plan limits」)。
| 項目 | Free | 有料(Student・Standard・Pro) |
|---|---|---|
| コンパイルのタイムアウト | 10秒 | 240秒 |
| 履歴 | 直近24時間+ラベルを付けた版 | すべて |
| Track changes(変更の提案) | なし | あり |
| Git・GitHub・Dropbox 連携 | なし | あり |
| Zotero・Mendeley 連携 | なし | あり |
| AI の1日の利用回数 | 5回 | Student 5回・Standard 10回・Pro 上限なし(公正利用) |
| プロジェクト数 | 無制限 | 無制限 |
プランに関係なく共通の上限もあります。
| 上限 | 値 |
|---|---|
| 1プロジェクトのファイル数 | 2,000 |
| 編集できるテキストの合計 | 7MB |
| 編集できる1ファイル | 2MB |
| アップロードする1ファイル | 50MB |
| プロジェクト全体の大きさの目安 | 500MB 未満(Git・GitHub 連携を使うなら 100MB 未満) |
無料プランのタイムアウトは10秒です。 Overleaf の公式ブログ「Changes to free compile timeout」によると、2025年6月に告知され、2025年夏から秋にかけてすべての無料ユーザーに適用されました。以前は動いていた大きな文書が、無料プランで急にタイムアウトするようになったのはこのためです。対策は後の「コンパイルのタイムアウト」の節にあります。
Overleafの始め方(アカウント登録・プロジェクト作成・画面の見方)
この節では、アカウントを作ってから最初の PDF を出すまでの手順と、画面のどこに何があるかが分かります。
アカウントを作る
overleaf.com/signup で、メールアドレスとパスワードを入れて「Sign up for free」を押します。Google・ORCID のアカウントでも登録できます。画面を日本語にしたいときは ja.overleaf.com を開きます。
プロジェクトを作る
プロジェクト一覧の緑の「New project」から選びます。Blank project(白紙)・Example project(図と参考文献の入った見本)・Upload project(zip を上げる)・Import from GitHub、またはテンプレートのギャラリーから始めます。
日本語ならコンパイラを変える
左下の Settings(または File → Settings)の Compiler タブで、Compiler を LuaLaTeX にします。同じタブで TeX Live の版と Main document(最初にコンパイルするファイル)も選べます。
書いて Recompile
真ん中で .tex を書き、PDF の上の「Recompile」を押すと右側に PDF が出ます。キーボードでは Ctrl+Enter または Ctrl+S(Mac は Cmd)です。
画面の主な部分です(docs.overleaf.com の「Redesigned Overleaf editor」)。
| 場所 | あるもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 上のメニュー | File・Edit・View・Insert・Format・Help | ダウンロード、設定を開く |
| 右上 | History・Share | 履歴を見る、人を招待する |
| 左の縦の列 | File tree・Search・Integrations・Review・Chat | ファイル操作、Git、コメント |
| 左の列の下 | Help・Settings | コンパイラ・TeX Live の版・Main document |
| 編集欄の左上 | Code と Visual の切り替え | ソースで書く/見た目に近い形で書く |
| PDF の左上 | Recompile と横の矢印 | Auto compile・Fast [draft]・Stop on first error |
Main document は、\documentclass を含むファイルにします。 章ごとにファイルを分けた文書で、章のファイルを開いたまま Recompile しても、Main document に選んだファイルからコンパイルされます。履歴から版を戻したあとに Main document が「None」になることがあり、その場合は選び直します(公式「The Main document」)。
Overleafで日本語を使う設定(コンパイラの選び方)
この節では、日本語の文書のために選べるコンパイラと、どれを選べばいいかの目安が分かります。
Overleaf で新しく作るプロジェクトの既定のコンパイラは pdfLaTeX です。 pdfLaTeX のまま日本語を書くと、後の節で示すとおりエラーになります。Overleaf の「Japanese」のページは、日本語を書く方法として次の4つを挙げています。
| コンパイラ | 日本語の書き方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| LuaLaTeX | jlreq・ltjarticle などのクラス、または luatexja パッケージ |
新しく書く文書。フォントも選べる |
| LaTeX(中身は pLaTeX・upLaTeX) | jsarticle・jlreq など+latexmkrc |
学会・論文誌の pLaTeX・upLaTeX 用の雛形 |
| XeLaTeX | xeCJK パッケージでフォントを指定 |
XeLaTeX 前提の雛形・ほかの言語と混ぜる文書 |
| pdfLaTeX | CJKutf8 パッケージと CJK* 環境 |
明朝とゴシックだけでよい短い文書 |
選び方の目安を図にしました。
flowchart TD
A[日本語の文書を書く] --> B{雛形の指定は?}
B -->|uplatex 等| C[LaTeX と<br>latexmkrc]
B -->|その他| D[雛形の<br>とおり]
B -->|無し| E[LuaLaTeX<br>と jlreq]
Overleaf の設定画面で変えるのは Compiler の1か所。latexmkrc が要るのは pLaTeX・upLaTeX の雛形を使うときだけ
LuaLaTeXで日本語の文書を書く(jlreq・ltjsarticle)
この節では、LuaLaTeX で日本語の文書を書くための雛形と、フォントの変え方が分かります。
Compiler を LuaLaTeX にし、日本語用のクラスを使います。 Overleaf のテンプレートギャラリーにある「日本語 (Japanese) jlreq」(東京工業大学 情報理工学院、CC BY 4.0)のプリアンブルは次の形です(\begin{document} 以降は例として足しました)。jlreq は TeX Live に入っているので、追加のファイルは要りません。
% Compiler: LuaLaTeX
\documentclass{jlreq}
\usepackage{hyperref}
\title{日本語 jlreq class 基本テンプレート}
\author{東京工業大学 情報理工学院}
\date{May 2021}
\begin{document}
\maketitle
\section{はじめに}
ここに本文を書きます。
\end{document}
jlreq はオプションで形を変えられます(同じテンプレートの説明)。
| 書き方 | できる文書 |
|---|---|
\documentclass{jlreq} |
横書きの article 風 |
\documentclass[report]{jlreq} |
章のある report 風 |
\documentclass[book]{jlreq} |
本の形 |
\documentclass[tate,book]{jlreq} |
縦書きの本 |
\documentclass[twoside]{jlreq} |
両面印刷 |
jsarticle に近い見た目にしたいときは、LuaTeX-ja のクラス ltjsarticle を使います(LuaTeX-ja の文書「ltjsclasses」)。Overleaf の「Japanese」のページは、LuaTeX-ja のいちばん簡単な使い方として ltjarticle・ltjbook・ltjreport を挙げ、ほかのクラスでは \usepackage{luatexja} を読み込む方法を載せています。
% Compiler: LuaLaTeX
\documentclass{ltjsarticle}
\usepackage{luatexja-fontspec} % 和文フォントを名前で指定するとき
\setmainjfont{Noto Serif CJK JP} % 本文(明朝)
\setsansjfont{Noto Sans CJK JP} % 見出しなど(ゴシック)
\begin{document}
\section{はじめに}
LuaLaTeX で日本語を書きます。
\end{document}
フォントは luatexja-fontspec の \setmainjfont・\setsansjfont・\setmonojfont で指定します。 Overleaf の「Japanese」のページによると、Noto Serif CJK JP・Noto Sans CJK JP・Noto Sans Mono CJK JP は Overleaf のサーバーに入っています。フォントを指定しなければ、LuaTeX-ja の標準の和文フォントで組まれます。
日本語でよく使う設定
| やりたいこと | 書き方 |
|---|---|
| 用紙を A4 にする | \documentclass[a4paper]{ltjsarticle} |
| 余白を変える | \usepackage[margin=25mm]{geometry} |
| 文字の大きさを 11pt にする | \documentclass[11pt]{ltjsarticle} |
| 2段組みにする | \documentclass[twocolumn]{ltjsarticle} |
| 目次を出す | \tableofcontents(2回コンパイルで反映) |
| PDF にリンクを付ける | \usepackage{hyperref} |
日本語の文書ではスペルチェックを切る
Overleaf のスペルチェックが対応している言語に、日本語は入っていません(公式「What languages are currently supported in the spell checker?」)。日本語の本文に赤い波線が大量に付くときは、Settings の Editor タブでスペルチェック(Spell check)をオフにします。
upLaTeX・pLaTeXのテンプレートを使う(latexmkrc)
この節では、学会や論文誌の pLaTeX・upLaTeX 用の雛形を Overleaf で動かす方法が分かります。
pLaTeX・upLaTeX はコンパイラの一覧にありません。 Overleaf の公式は、Compiler を「LaTeX」にして、プロジェクトのいちばん上に latexmkrc(拡張子なし)というファイルを作る方法を案内しています(「Does Overleaf support pTeX?」と「Japanese」のページ)。
雛形をアップロードする
New project → Upload project で、学会の zip を上げます。手元で作った .tex は UTF-8 で保存してから上げます。
Compiler を LaTeX にする
Settings → Compiler で「LaTeX」を選びます。pdfLaTeX ではありません。
latexmkrc を作る
ファイル一覧のいちばん上で New file → 名前を latexmkrc にし、下の内容を貼ります。名前を1文字でも違えると読まれません。
Main document を確かめて Recompile
\documentclass{jsarticle} などがあるファイルを Main document にして、Recompile します。
pLaTeX 用の latexmkrc です(公式のとおり)。
$latex = 'platex';
$bibtex = 'pbibtex';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex %O -o %D %S';
upLaTeX 用の雛形では、公式の説明どおり platex を uplatex に、pbibtex を upbibtex に変えます。
$latex = 'uplatex';
$bibtex = 'upbibtex';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex %O -o %D %S';
| 行 | 意味 |
|---|---|
$latex |
DVI を作るエンジン(platex か uplatex) |
$bibtex |
参考文献を作るプログラム(日本語対応の pbibtex・upbibtex) |
$dvipdf |
DVI を PDF に変えるコマンド(dvipdfmx) |
$makeindex |
索引を作るプログラム(日本語対応の mendex) |
Overleaf は、文書を latexmk というツールでコンパイルします。latexmk は、プロジェクトに latexmkrc があればそれを読み、使うエンジンを切り替えます。手元の latexmk 4.83 で、latexmkrc に $pdf_mode = 5;(XeLaTeX で PDF を作る設定)の1行だけを書いて、オプションなしで latexmk main.tex を動かした結果です。
Running 'xelatex -no-pdf -interaction=nonstopmode -recorder "main.tex"'
Running 'bibtex "main.aux"'
Running 'xelatex -no-pdf -interaction=nonstopmode -recorder "main.tex"'
Running 'xdvipdfmx -E -o "main.pdf" "main.xdv"'
latexmkrc の1行で、呼ばれるエンジンが変わりました。 参考文献のための bibtex と、2回目のコンパイルも latexmk が自動で入れています。Overleaf で latexmkrc が効くのも、この仕組みによります。
Qiita などで紹介されている latexmkrc には、$pdf_mode = 3;(DVI から dvipdfmx で PDF を作る)や、\today の時刻を日本時間にする $ENV{'TZ'}='Asia/Tokyo'; を足した例もあります。
日本語が出ない・崩れるときの原因(実物で確認)
この節では、日本語の設定が足りないときに実際に何が起きるかを、ログと PDF の中身で確かめられます。
pdfLaTeX のまま日本語を書く
次の文書を pdfLaTeX でコンパイルしました。
\documentclass{article}
\begin{document}
こんにちは、Overleaf。
\end{document}
ログには、日本語の文字ごとにエラーが出ました(7件)。
! LaTeX Error: Unicode character こ (U+3053)
not set up for use with LaTeX.
See the LaTeX manual or LaTeX Companion for explanation.
Type H <return> for immediate help.
PDF は作られましたが、中の文字を pdftotext で取り出すと Overleaf だけで、日本語はすべて消えていました。Overleaf で「エラーが出るのに PDF は出る」「PDF に日本語が無い」ときは、コンパイラが pdfLaTeX のままのことが多いです。直し方は、Compiler を LuaLaTeX にして日本語のクラスを使うことです。
日本語のフォントを指定せずに XeLaTeX・LuaLaTeX で書く
同じ文書を XeLaTeX でコンパイルすると、エラーは0件で PDF もできました。しかし、ログには次の警告が7件あり、PDF の日本語は文字化け(������Overleaf�)になっていました。
Missing character: There is no こ (U+3053) in font [lmroman10-regular]:mapping=t
Missing character: There is no ん (U+3093) in font [lmroman10-regular]:mapping=t
Missing character: There is no に (U+306B) in font [lmroman10-regular]:mapping=t
エラーにならず、警告だけで日本語が欠けます。 既定の欧文フォント(Latin Modern)に日本語の文字が無いためです。Overleaf では、右上のログの数字(警告の数)を開くと見つかります。日本語のクラス(LuaLaTeX なら jlreq・ltjsarticle)を使うか、XeLaTeX なら日本語のフォントを指定します。
フォントだけ指定すると改行されない
XeLaTeX で \usepackage{fontspec} と \setmainfont{Noto Serif CJK JP} だけを書くと、日本語は出ましたが、段落が1行のまま右へはみ出しました。
Overfull \hbox (655.01001pt too wide) in paragraph at lines 5--6
日本語の文字の間で改行してよいことが、TeX に伝わっていないためです。XeLaTeX では \XeTeXlinebreaklocale "ja" を足すと、3行に折り返されて警告が消えました。
Overleafは、ブラウザだけでLaTeXの文書を書いてPDFにできるオンラ
インのエディターです。インストールは要らず、共同編集や履歴の機能もあ
ります。日本語の文書を書くときは、コンパイラの設定に気をつけます。
日本語用でないクラスでは「Figure」「References」のまま
article クラスに日本語のフォントだけを足した文書では、図表の見出しが Figure 1:・Table 1:、参考文献の見出しが References と英語のままでした。また、ソースの途中で改行した所に空白が入り、「改行の前 改行の後」と出ました。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
日本語の文字ごとに Unicode character … not set up |
pdfLaTeX のまま | Compiler を LuaLaTeX にする |
| エラーは無いが日本語が空白・文字化け | 日本語のフォントが無い(Missing character) |
日本語のクラスを使う・フォントを指定する |
1行が右へはみ出す(Overfull \hbox) |
日本語の改行の規則が無い | LuaTeX-ja のクラスを使う(XeLaTeX なら \XeTeXlinebreaklocale "ja") |
| 「Figure」「References」が英語 | 欧文用のクラス | jlreq・ltjsarticle を使う、または \renewcommand{\figurename}{図} |
| 行の途中に余計な空白 | ソースの改行が空白になる | 日本語のクラスを使う、または改行せずに続けて書く |
\emph が効かない(斜体が無い) |
日本語のフォントに斜体が無い | 日本語の部分は \textbf で強調する |
| 日本語が文字化けした .tex | Shift_JIS で保存したファイルを上げた | UTF-8 で保存し直して上げる |
\renewcommand で見出しの語を日本語にした文書は、図 1: サンプルの図・表 1: 表の例 と出ました。日本語のクラスを使えば、この書き換えは要りません。
よく使う書き方の早見表(見出し・数式・図・表・参考文献)
この節では、LaTeX の基本の書き方と、実際に PDF でどう出るかが分かります。
| やりたいこと | 書き方 | 補足 |
|---|---|---|
| 見出し(大・中・小) | \section{}・\subsection{}・\subsubsection{} |
番号は自動 |
| 番号なしの見出し | \section*{はじめに} |
目次にも出ない |
| 段落を変える | 空行を1つ入れる | 改行1つは段落にならない |
| 強制改行 | \\ |
段落の先頭に書くとエラー |
| 太字 | \textbf{太字} |
Overleaf では Ctrl+B |
| 箇条書き | itemize 環境と \item |
番号つきは enumerate |
| 文中の数式 | $E = mc^2$ |
\( \) でも同じ |
| 番号つきの数式 | equation 環境 |
\label{eq:a} で参照 |
| 複数行の数式 | align 環境と &・\\ |
amsmath を読み込む |
| 図 | figure 環境と \includegraphics |
graphicx を読み込む |
| 表 | table 環境と tabular |
罫線は booktabs がきれい |
| 図表・節の参照 | \label{} と \ref{} |
2回コンパイルで番号が入る |
| 参考文献の引用 | \cite{キー} |
.bib ファイルと BibTeX |
| 脚注 | \footnote{} |
番号は自動 |
| コメント | % から行末まで |
Overleaf では Ctrl+/ |
| 記号そのもの | \%・\&・\_・\$・\# |
そのまま書くとエラーや欠落 |
上の書き方をまとめた文書です。手元では日本語の部分を XeLaTeX+Noto Serif CJK JP でコンパイルしたので、先頭の4行は XeLaTeX 用になっています。Overleaf で LuaLaTeX を使うときは、先頭の4行を \documentclass{ltjsarticle} の1行に変えます。
\documentclass{article}
\usepackage{fontspec}
\setmainfont{Noto Serif CJK JP}
\XeTeXlinebreaklocale "ja"
\XeTeXlinebreakskip=0pt plus 1pt
\usepackage{amsmath}
\usepackage{graphicx}
\usepackage{booktabs}
\usepackage{url}
\usepackage{hyperref}
\title{Overleafの試し書き}
\author{山田 太郎}
\date{2026年10月22日}
\begin{document}
\maketitle
\section{はじめに}\label{sec:intro}
本文は普通に書きます。\textbf{太字}や\emph{強調}も使えます。
空行を1つ入れると段落が変わります。\footnote{脚注はこう書きます。}
\subsection{箇条書き}
\begin{itemize}
\item 番号なしの項目
\item もう1つの項目
\end{itemize}
\begin{enumerate}
\item 番号つきの項目
\item 2番目の項目
\end{enumerate}
\section{数式}
文中の数式は $E = mc^2$ のように書きます。番号つきの式は次のとおりです。
\begin{equation}
\int_0^1 x^2 \, dx = \frac{1}{3} \label{eq:int}
\end{equation}
式(\ref{eq:int})のように番号で参照できます。複数行は align を使います。
\begin{align}
f(x) &= (x+1)^2 \\
&= x^2 + 2x + 1
\end{align}
\section{図と表}
図\ref{fig:sample}と表\ref{tab:price}を載せます。
\begin{figure}[htbp]
\centering
\includegraphics[width=0.5\linewidth]{fig1.pdf}
\caption{サンプルの図}\label{fig:sample}
\end{figure}
\begin{table}[htbp]
\centering
\caption{表の例}\label{tab:price}
\begin{tabular}{lrr}
\toprule
項目 & 数量 & 金額 \\
\midrule
りんご & 3 & 450 \\
みかん & 10 & 800 \\
\bottomrule
\end{tabular}
\end{table}
\section{参考文献}
\TeX の本\cite{knuth1984}と公式ドキュメント\cite{overleafdocs}を引用します。
第\ref{sec:intro}節に戻ります。
\bibliographystyle{unsrt}
\bibliography{refs}
\end{document}
latexmk -xelatex main.tex でコンパイルし、2ページの PDF ができました。PDF から取り出した文字です(空行は省きました)。
Overleafの試し書き
山田 太郎
2026年10月22日
1 はじめに
本文は普通に書きます。太字や強調も使えます。 空行を1つ入れると段落が
変わります。1
1.1 箇条書き
• 番号なしの項目
• もう1つの項目
1. 番号つきの項目
2. 2番目の項目
2 数式
文中の数式は E = mc2 のように書きます。番号つきの式は次のとおりです。
∫ 1
1
x2 dx = (1)
0 3
式(1)のように番号で参照できます。複数行は align を使います。
f (x) = (x + 1)2 (2)
2
= x + 2x + 1 (3)
3 図と表
図1と表1を載せます。
4 参考文献
TEXの本[1]と公式ドキュメント[2]を引用します。 第1節に戻ります。
References
[1] Donald E. Knuth. The TEXbook. Addison‑Wesley, 1984.
[2] Overleaf. Overleaf documentation. https://docs.overleaf.com/,
2026.
読み取れることは次の3つです。
\labelと\refで、式(1)・図1・表1・第1節の番号が自動で入った。式はequationが (1)、alignの2行が (2)・(3) になった。- 「強調も使えます。」と「空行を」の間に空白が入り、1つの段落のままだった。改行1つでは段落は変わらず、空行が要ります(この文書の文面はわざとそのままにしています)。
\emphは、日本語のフォントに斜体が無いため、ログにFont shape `TU/NotoSerifCJKJP(0)/m/it' undefinedの警告が出て、普通の字形で出た。
図・表・参考文献の入れ方(アップロードとBibTeX)
この節では、Overleaf に画像や .bib ファイルを上げて、本文から使うまでの流れが分かります。
図(画像)を入れる
- 左のファイル一覧の上にある「Upload」のアイコンを押し、画像をドラッグ&ドロップします。フォルダ(例
figs/)を作ってから上げると整理しやすいです。 - プリアンブル(
\begin{document}より前)に\usepackage{graphicx}を書きます。 - 本文で
\includegraphics[width=0.8\linewidth]{figs/graph.pdf}と、プロジェクトの一番上からのパスで書きます。
| 画像の種類 | 向いている形式 | 理由(公式のタイムアウト対策のページ) |
|---|---|---|
| グラフ・図 | 拡大しても粗くならず、変換の時間もかからない | |
| 写真 | JPEG | ファイルが小さく、コンパイルが速い |
| EPS・SVG | PDF に変えてから | 変換の分だけコンパイルが遅くなる |
ファイル名やパスを間違えると、File `figs/graph.png' not found のエラーになり、PDF には画像の代わりにファイル名だけの枠が出ました(後のエラー表)。
表を入れる
tabular 環境で、列の並び(l 左・c 中央・r 右)を {lrr} のように書き、セルを &、行の終わりを \\ で区切ります。罫線は booktabs の \toprule・\midrule・\bottomrule を使うと、上の文書のように縦罫の無い表になります。表の見出し(\caption)は表の上に、図の見出しは図の下に置くのが一般的です。
参考文献を入れる(BibTeX)
- New file で
refs.bibを作り、文献を BibTeX の形で書きます。Google Scholar などが出す「BibTeX」の形をそのまま貼り付けられます。 - 本文で
\cite{knuth1984}と、@book{の直後のキーで引用します。 - 文書の最後に
\bibliographystyle{unsrt}と\bibliography{refs}を書きます(.bibは付けない)。
上の文書で使った refs.bib です。
@book{knuth1984,
author = {Donald E. Knuth},
title = {The {\TeX}book},
publisher = {Addison-Wesley},
year = {1984}
}
@misc{overleafdocs,
author = {{Overleaf}},
title = {Overleaf Documentation},
year = {2026},
howpublished = {\url{https://docs.overleaf.com/}}
}
Overleaf は latexmk で BibTeX と再コンパイルを自動で回すので、自分で bibtex を実行する操作はありません。 引用が [?]、参照が ?? のままのときは、キーの綴りと .bib の書式を確かめます。Overleaf の「Creating a bibliography」は、テンプレートの指定が無ければ bibLaTeX を勧めています。日本語の文献を pLaTeX・upLaTeX で並べるときは、latexmkrc の pbibtex・upbibtex と、jplain などの日本語用のスタイルを使います。
Zotero・Mendeley・ReadCube から .bib を取り込む連携は、有料プランの機能です。
共同編集・コメント・変更履歴・履歴の使い方
この節では、ほかの人と一緒に書くための機能と、過去の版に戻す方法が分かります。
人を招待する(Share)
右上の「Share」を押し、メールアドレスで招待するか、「Turn on link sharing」で共有のリンクを作ります。権限は「見るだけ」「レビュー(編集が提案になる)」「編集できる」から選べます。リンクで編集に参加する人にも Overleaf のアカウントが要ります。
無料プランで編集者・レビュー担当として招待できるのは1プロジェクトに1人です。 2人以上は有料の機能です。編集者の上限に達しているとき、編集用のリンクで入った人は見るだけの権限になります(公式「Sharing a project」)。
変更を提案にする(Track changes)とコメント
編集画面の右上のアイコンから「Reviewing」に切り替えると、自分の変更が提案として記録され、相手が受け入れるか戻すかを選べます。本文を選択してコメントを付けることもできます。Track changes は有料プランの機能で、プロジェクトの所有者が有料プランなら招待された人も使えます。
履歴から戻す(History)
| 操作 | 手順(公式「History and versioning」) |
|---|---|
| 履歴を開く | PDF の上の「History」→「All history」 |
| 版に名前を付ける | 版の「︙」→「Label this version」 |
| 2つの版を比べる | 版の横のアイコンで比べる範囲を選ぶ |
| 1ファイルだけ戻す | ファイルを選んで「Restore this version」 |
| 消したファイルを戻す | 消した版で、取り消し線のファイルを選んで「Restore this version」 |
| 全体を戻す | 版の「︙」→「Restore project to this version」 |
| その版を zip で取る | 版の「︙」→「Download this version」 |
無料プランの History で見られるのは、直近24時間の変更と、ラベルを付けた版です。 提出前や大きく書き換える前に「Label this version」でラベルを付けておくと、無料プランでもその版に戻れます。プロジェクトをコピーすると、履歴は空から始まります。
Git連携・GitHub同期・ダウンロード(バックアップ)
この節では、手元のエディターや GitHub と Overleaf をつなぐ方法と、無料でもできるバックアップが分かります。
flowchart TD
A[Overleaf] <-->|Git 連携| B[手元の Git]
A <-->|GitHub 同期| C[GitHub]
A -->|zip| D[手元に保存]
Git 連携(有料プラン)
プロジェクトの URL が https://www.overleaf.com/project/1234567 なら、Git の URL は https://git.overleaf.com/1234567 です。左の Integrations → Git で確かめられます。
git clone https://git.overleaf.com/1234567
# Username: git
# Password: Account Settings で作ったトークン
| 項目 | 内容(公式の Git 連携のページ) |
|---|---|
| 認証 | ユーザー名は git、パスワードにトークンを入れる |
| トークン | Account Settings で作る。最大10個、1年で期限切れ |
| ブランチ | 使えない(新しく clone すると main) |
| タグ・Git LFS・submodule を含める | 使えない |
| ファイル名の変更 | 削除と作成になり、コメント・提案が消えることがある |
| 実行権限 | 残らない(git config core.fileMode false で差分を出さない) |
トークンを毎回入れないようにするには、公式のとおり git config --global credential.helper store を使います。この方法はトークンを手元のファイルに平文で保存するので、共用のパソコンでは使わない方が安全です。
git clone の使い方は、関連記事「git cloneの使い方|ブランチ指定とshallow clone」で扱っています。Overleaf の Git はブランチが使えないので、手元で作ったブランチは main にまとめてから push します。ブランチの仕組みは、関連記事「ブランチとは|Gitの作成・切り替え・マージと正体を実例で解説」で扱っています。
GitHub 同期(有料プラン)
Account Settings で GitHub のアカウントをつなぎ、Integrations → GitHub からリポジトリを作ります。New project → GitHub repo で、GitHub のリポジトリから始めることもできます。
- 同期は自動ではなく、「Push Overleaf changes to GitHub」のボタンで手動で行う。
- 両方で同じ所を変えて衝突すると、Overleaf は日付の付いたブランチに自分の版を push する。手元か GitHub のプルリクエストでまとめる。
- 既にある Overleaf のプロジェクトを、既にある GitHub のリポジトリにつなぐことはできない。
- 対応しているのは github.com だけ。
無料でもできるバックアップ
File → Download → 「Download as source (.zip)」で、プロジェクトの全ファイルを zip で保存できます。PDF は zip に入らないので、「Download as PDF」で別に保存します。プロジェクト一覧でチェックを付けて、まとめてダウンロードすることもできます。手元で LaTeX を動かせる環境があれば、この zip を展開してそのままコンパイルできます。
Overleafのよくあるエラーと直し方(原文)
この節では、ログに出たエラー文から、原因と直し方を引けます。エラー文は、手元の pdfLaTeX(TeX Live 2023)でわざと誤りを入れて出したものです。
Overleaf では、PDF の上のログのアイコン(エラー・警告の数)を押すと、エラーごとにファイル名と行番号が出ます。生のログの l.3 は「3行目」という意味です。
! Undefined control sequence.
l.3 \sectoin
{Intro}
The control sequence at the end of the top line
of your error message was never \def'ed. If you have
l.3 の行の、改行された所の直前(ここでは \sectoin)が原因の場所です。 正しくは \section です。
| エラー・症状(原文) | 原因の例 | 直し方 |
|---|---|---|
Undefined control sequence. |
\sectoin などの綴りの誤り |
命令の綴りを直す |
Undefined control sequence.(l.3 \url) |
パッケージを読み込んでいない | \usepackage{url} など、命令のパッケージを足す |
Missing $ inserted.(l.3 See file_) |
本文に _ を書いた |
\_ と書く |
Missing $ inserted.(l.3 The angle \alpha) |
数式の命令を $ の外で使った |
$\alpha$ と囲む |
Missing $ inserted. と Display math should end with $$. |
equation の中に空行がある |
空行を消すか % にする |
LaTeX Error: File `amsmaths.sty' not found. |
パッケージ名の誤り(PDF も出ない) | amsmath に直す |
File `figs/graph.png' not found: using draft setting. |
画像のパス・名前の誤り | ファイル一覧の名前と大文字小文字まで合わせる |
LaTeX Error: Environment itemise undefined. |
環境名の誤り | itemize に直す |
LaTeX Error: \begin{itemize} on input line 3 ended by \end{document}. |
\end{itemize} が無い |
開いた環境を閉じる |
Misplaced alignment tab character &. |
本文に & を書いた(R&D など) |
\& と書く |
(エラー無し)% から後ろが消える |
本文の % はコメントになる |
\% と書く |
Runaway argument? と File ended while scanning use of \textbf. |
{ を閉じていない(PDF も出ない) |
} を足す |
Too many }'s. |
} が多い |
余分な } を消す |
LaTeX Error: There's no line here to end. |
段落の先頭で \\ を使った |
段落は空行で分ける |
LaTeX Error: Something's wrong--perhaps a missing \item. |
itemize の中に \item が無い |
項目の先頭に \item を書く |
LaTeX Error: Missing \begin{document}. |
\begin{document} より前に本文を書いた |
本文を \begin{document} の後へ移す |
Package fontspec Error: The font "IPAexMincho" cannot be found. |
指定したフォントがサーバーに無い | フォント名を確かめる、または指定を外す |
本文の % は、エラーにならないので気づきにくい例です。Growth was 20% this year. をコンパイルすると、PDF には Growth was 20 までしか出ませんでした。
エラーではなく警告で出るもの
| 警告(原文) | PDF での見え方 | 直し方 |
|---|---|---|
Reference `fig:none' on page 1 undefined |
Figure ?? |
\label の名前と合わせる。合っていれば再コンパイル |
Citation `nokey' on page 1 undefined |
[?] |
.bib のキーと \bibliography{} の指定を確かめる |
Overfull \hbox (68.25102pt too wide) |
長い URL などが右へはみ出す | \url{} を使う、文を区切る |
Missing character: There is no こ (U+3053) in font … |
日本語が空白・文字化け | 日本語のクラス・フォントを使う |
Font shape `…/m/it' undefined |
斜体にならない | 日本語の部分は \textbf などにする |
PDF が出ていても、ログの警告に大事なことが書かれていることがあります。 提出前は、警告の一覧も見ておきます。
- 1エラーが0件かエラーがあっても PDF が出ることがある。ログの数字を開いて確かめる
- 2?? と [?] が残っていないかPDF を ?? で検索する。残っていれば label・cite のキーを確かめる
- 3Missing character の警告が無いかあれば、出ていない文字がある
- 4はみ出し(Overfull)が無いか余白にはみ出した行は、印刷で切れることがある
- 5この版にラベルを付けたかHistory の Label this version。無料プランでも残る
エラーの場所がつかめないときは、Recompile の横の矢印から「Stop on first error」を選ぶと、最初のエラーで止まり、1つずつ直せます。残っている一時ファイルが原因のときは「Recompile from scratch」で一時ファイルを消してからコンパイルし直します。
コンパイルのタイムアウト(無料は10秒)を防ぐ
この節では、タイムアウトになる原因と、速くする方法が分かります。
画像の多い文書は、コンパイルに時間がかかります。 2000×1500 ピクセルの透過 PNG を8枚(合計92MB)入れた文書を、手元の pdfLaTeX(2コアの仮想マシン)で3回ずつコンパイルして時間を測りました。
| 文書 | コンパイル時間(3回) | できた PDF |
|---|---|---|
| 透過 PNG 8枚 | 3.64秒・3.85秒・4.09秒 | 92MB |
同じ文書で graphicx に draft |
0.18秒・0.20秒・0.23秒 | 24KB |
| 同じ画像を JPEG(品質85)にした文書 | 0.29秒・0.29秒・0.25秒 | 18MB |
時間は手元の環境での値で、Overleaf のサーバーでの時間とは違います。それでも、画像の形式を変えるだけで10倍以上速くなることが分かります。参考文献のある文書は、latexmk が LaTeX を複数回と BibTeX を回すので、1回のコンパイルより時間がかかります(上の早見表の文書は、手元の XeLaTeX で全体1.86秒でした)。
公式の「Fixing and preventing compile timeouts」が挙げる対策です。
| 対策 | やり方 |
|---|---|
| 画像を枠にして試す | Recompile の横の矢印 → Fast [draft] |
| エラーで止める | Stop on first error(エラーのまま最後まで進んで時間を使うのを防ぐ) |
| 図は PDF、写真は JPEG | PNG の図は PDF に、写真は JPEG に変えて上げ直す |
| 重い TikZ・pgfplots | 図を外部化する(PDF にしておく) |
\tracingall |
消す |
| EPS・SVG | PDF にしてから上げる |
| 無限ループ | 自作の命令が自分を呼んでいないか確かめる |
| 前は動いていた | Recompile from scratch・History で変えた所を見る |
| 手元から上げたら遅い | TeX Live の版を手元と合わせ、Main document を一番上に置く |
画像の形式の変え方は、手元のツールで行います。PDF の結合や分割は、関連記事「Python pypdfでPDF操作|結合・分割・テキスト抽出のコード集」で扱っています。
それでも10秒に収まらない文書は、有料プラン(240秒)にするか、手元の TeX Live でコンパイルする方法があります。手元で書く場合は、ダウンロードした zip をそのまま使えます。
OverleafのAI機能
この節では、Overleaf に入っている AI の機能と、データの扱いが分かります(2026年10月22日時点、公式「AI features」)。
| 機能 | できること |
|---|---|
| Error Assist | エラーの説明と直し方の提案(「Suggest fix」→「Apply suggestion」) |
| AI assistant | プロジェクトについて質問・作業を頼む(有料プラン) |
| 言語の提案 | 英文の文法・言い回しの提案(Writefull のモデル) |
| 書き換え | Paraphrase・Make concise・Make scientific など |
| 生成 | 数式・表・タイトルと要旨・TeXGPT(文章から LaTeX を作る) |
- 1日の利用回数は24時間ごとに戻ります。回数はプランで違います(料金の節の表)。
- 公式は「Your data is never used to train AI models.」(データが AI の学習に使われることはない)と書いています。
- Error Assist は OpenAI を使い、「Suggest fix」を押したときに、エラー文・関係する行・プロジェクトのファイル名の一覧が送られます。押すまでは何も送られません。
- Account settings の Integrations の「Disable AI features」で、AI の機能をすべて切れます。
大学や会社の規程で、原稿を外部の AI に送ってよいかが決まっていることがあります。 未公開の論文を扱うときは、規程を確かめてから使います。
Overleafとローカル環境・Cloud LaTeX・Typstの違い
この節では、LaTeX を書くほかの方法との違いが、事実の比較で分かります(各公式サイト、2026年10月22日時点)。
| 項目 | Overleaf | Cloud LaTeX | 手元の TeX Live | Typst(Web アプリ) |
|---|---|---|---|---|
| 動く場所 | ブラウザ | ブラウザ | 自分のパソコン | ブラウザ(手元の CLI もある) |
| 書き方 | LaTeX | LaTeX | LaTeX | Typst 独自の記法 |
| 日本語 | コンパイラとクラスを選ぶ | 公式に「設定なしで日本語に対応」 | 日本語の TeX を入れる | 対応(記法は LaTeX と別) |
| 共同編集 | リアルタイム(無料は1人まで) | Dropbox 同期で共有 | Git などで共有 | あり |
| 無料で使えるか | Free プランあり | 登録して利用 | 無料(オープンソース) | Free プランあり |
| コンパイルの時間制限 | 無料10秒・有料240秒 | 公式トップに記載なし | 無し | 公式トップに記載なし |
Overleaf
インストール不要。どのパソコンからでも同じ環境
リアルタイムの共同編集・コメント・履歴
無料はコンパイル10秒・共同編集者1人まで
手元の TeX Live+エディター
時間の制限が無く、大きな文書も通せる
オフラインで使える
インストールと、日本語の TeX・フォントの用意が要る
手元で書くときのエディターに VS Code を使う場合、インストールと日本語化は関連記事「VSCode日本語化とインストール手順|Win/Mac/Linuxと直し方」で扱っています。LaTeX ほど細かい組版が要らないメモや README は、Markdown で書く方法もあります。関連記事「Markdownの書き方一覧|記法早見表と環境別の対応・変換結果つき」で扱っています。研究のメモと原稿を分けて管理する方法は、関連記事「Obsidianとは・使い方|保管庫の中身・同期・料金とNotionとの違い」で扱っています。
よくある質問
Q. Overleafは無料で使えますか? A. 使えます。Free プランでプロジェクトは無制限に作れます。制限は、コンパイル10秒・共同編集者1人・履歴は直近24時間とラベルの版です(2026年10月22日時点)。
Q. Overleafで日本語が表示されないのはなぜですか?
A. 多くはコンパイラが既定の pdfLaTeX のままだからです。Settings → Compiler を LuaLaTeX にし、\documentclass{jlreq} か \documentclass{ltjsarticle} を使います。XeLaTeX・LuaLaTeX でも日本語のフォントが無いと、エラーにならずに日本語が欠けます。
Q. 日本語にはどのコンパイラを選べばいいですか?
A. 新しく書く文書なら LuaLaTeX です。学会などの雛形が pLaTeX・upLaTeX 用なら、Compiler を LaTeX にして latexmkrc を置きます。雛形に指定があれば、その指定に従います。
Q. Overleafでplatex・uplatexは使えますか?
A. 使えます。Compiler を「LaTeX」にし、プロジェクトの一番上に latexmkrc を作って $latex = 'uplatex'; などを書きます。中身は「upLaTeX・pLaTeXのテンプレートを使う」の節にあります。
Q. Overleafの画面を日本語にできますか? A. できます。ja.overleaf.com を開くと、画面が日本語で表示されます。一部のボタンは英語のままです。
Q. コンパイルがタイムアウトします。どうすればいいですか? A. 無料プランの上限は10秒です。Fast [draft] で画像が原因か確かめ、図は PDF、写真は JPEG に変えます。手元の測定では、透過 PNG 8枚の文書が約4秒、JPEG にすると約0.3秒でした。
Q. 共同編集は何人までできますか? A. 1プロジェクトに招待できる編集者・レビュー担当は、Free が1人、Student と Standard が10人、Pro が無制限です。
Q. OverleafとGitHubを連携できますか?
A. 有料プランで、Git 連携(git clone https://git.overleaf.com/プロジェクトID)と GitHub 同期が使えます。どちらもブランチは使えません。無料プランでは、zip のダウンロードで手元に保存できます。
Q. Overleafはオフラインで使えますか? A. Overleaf はブラウザで使うサービスで、コンパイルはサーバーで行います。オフラインで書くときは、zip をダウンロードして手元の TeX Live でコンパイルするか、有料プランの Git 連携で手元と行き来します。
Q. Overleafのデータは AI の学習に使われますか? A. 公式の AI 機能の説明には「Your data is never used to train AI models.」とあります。Error Assist などを使うと、エラー文や関係する行が OpenAI に送られます。Account settings で AI の機能を切れます。
まとめ
- Overleaf は、ブラウザで LaTeX を書いて PDF にするオンラインのエディター。インストールは要らず、共同編集・履歴・テンプレートがある。
- 日本語は、Compiler を LuaLaTeX にして
jlreqかltjsarticleを使う。pLaTeX・upLaTeX の雛形は、Compiler を LaTeX にしてlatexmkrcを置く。 - pdfLaTeX のままだと
Unicode character … not set upのエラー、フォントが無いとMissing characterの警告で日本語が欠ける。 - エラーはログの
l.行番号の改行の直前が原因の場所。_・&・%は\_・\&・\%と書く。 - 無料プランはコンパイル10秒・共同編集者1人・履歴24時間(2026年10月22日時点)。画像は図を PDF、写真を JPEG にし、Fast [draft] で切り分ける。
- 有料プランでは Git 連携・GitHub 同期・Track changes が使える。無料でも zip のダウンロードと版のラベルで、手元の保存と戻す準備ができる。
参考・出典
確認日はいずれも 2026年10月22日です。
- Overleaf「Japanese」:https://www.overleaf.com/learn/latex/Japanese
- Overleaf「Does Overleaf support pTeX?」:https://www.overleaf.com/learn/latex/Questions/Does_Overleaf_support_pTeX%3F
- Overleaf「Plans and pricing」:https://www.overleaf.com/user/subscription/plans
- Overleaf Docs「Plan limits」:https://docs.overleaf.com/getting-started/free-and-premium-plans/plan-limits
- Overleaf Blog「Changes to free compile timeout」:https://www.overleaf.com/blog/changes-to-free-compile-timeout
- Overleaf Docs「Selecting a TeX Live version and LaTeX compiler」:https://docs.overleaf.com/getting-started/recompiling-your-project/selecting-a-tex-live-version-and-latex-compiler
- Overleaf Docs「TeX Live」:https://docs.overleaf.com/troubleshooting-and-support/tex-live
- Overleaf Blog「TeX Live 2026 is now available」:https://www.overleaf.com/blog/tex-live-2026-is-now-available
- Overleaf Docs「The Main document」:https://docs.overleaf.com/getting-started/recompiling-your-project/the-main-document
- Overleaf Docs「Your first project」:https://docs.overleaf.com/getting-started/your-first-project
- Overleaf Docs「Creating an account」:https://docs.overleaf.com/getting-started/creating-an-account
- Overleaf Docs「Redesigned Overleaf editor」:https://docs.overleaf.com/getting-started/how-do-i-use-overleaf/redesigned-overleaf-editor
- Overleaf Docs「Recompiling your project」:https://docs.overleaf.com/getting-started/recompiling-your-project
- Overleaf Docs「Keyboard shortcuts」:https://docs.overleaf.com/navigating-in-the-editor/keyboard-shortcuts
- Overleaf Docs「Fixing and preventing compile timeouts」:https://docs.overleaf.com/troubleshooting-and-support/fixing-and-preventing-compile-timeouts
- Overleaf Docs「Sharing a project」:https://docs.overleaf.com/collaborating/sharing-a-project
- Overleaf Docs「Track changes」:https://docs.overleaf.com/collaborating/track-changes
- Overleaf Docs「History and versioning」:https://docs.overleaf.com/writing-and-editing/history-and-versioning
- Overleaf Docs「Git integration」:https://docs.overleaf.com/integrations-and-add-ons/git-integration-and-github-synchronization/git-integration
- Overleaf Docs「Git integration authentication tokens」:https://docs.overleaf.com/integrations-and-add-ons/git-integration-and-github-synchronization/git-integration/git-integration-authentication-tokens
- Overleaf Docs「GitHub synchronization」:https://docs.overleaf.com/integrations-and-add-ons/git-integration-and-github-synchronization/github-synchronization
- Overleaf Docs「Downloading a project」:https://docs.overleaf.com/managing-projects-and-files/downloading-a-project
- Overleaf Docs「Creating a bibliography」:https://docs.overleaf.com/citing-and-references/creating-a-bibliography
- Overleaf Docs「AI features」:https://docs.overleaf.com/integrations-and-add-ons/ai-features
- Overleaf Docs「Error Assist」:https://docs.overleaf.com/integrations-and-add-ons/ai-features/error-assist
- Overleaf「Undefined control sequence」:https://www.overleaf.com/learn/latex/Errors/Undefined_control_sequence
- Overleaf「Missing $ inserted」:https://www.overleaf.com/learn/latex/Errors/Missing_$_inserted
- Overleaf「What languages are currently supported in the spell checker?」:https://www.overleaf.com/learn/how-to/What_languages_are_currently_supported_in_the_spell_checker%3F
- Overleaf「About」:https://www.overleaf.com/about
- Overleaf テンプレート「日本語 (Japanese) jlreq」:https://www.overleaf.com/latex/templates/ri-ben-yu-japanese-jlreq/jjkkyvjjvvgk
- CTAN「luatexja」:https://ctan.org/pkg/luatexja
- LuaTeX-ja「ltjsclasses」(CTAN の文書):https://ctan.math.illinois.edu/macros/luatex/generic/luatexja/doc/ltjsclasses.pdf
- Cloud LaTeX:https://cloudlatex.io/ja
- Typst「Pricing」:https://typst.app/pricing
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(記載例)出典:株式会社RJC「Overleafの使い方|日本語の設定・料金・エラーの直し方を実例で解説」
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