イベントストーミング(EventStorming)は、業務で起きる出来事(ドメインイベント)をオレンジの付箋に過去形で書き、壁に貼った紙の上に時間の順に並べて、業務の流れと問題点をみんなで見つけるワークショップです。 考案者の Alberto Brandolini は「複雑な業務の領域を、協力して探るための柔軟なワークショップの形式」と説明しています。

付箋 色(公式の色) 書くこと 例(受注業務)
ドメインイベント オレンジ 業務で起きた出来事。過去形 注文を受け付けた
コマンド(アクション) 青 決定・操作・意図 注文を登録する
アクター 黄色(小さい付箋) 人・部署・チーム 営業担当
ポリシー ライラック(大きい付箋) 「X が起きたら Y をする」 注文を受け付けたら与信を確認する
外部システム(システム) ピンク(横長の付箋) 使っている IT システム 会計システム
リードモデル(情報) 緑 判断に使う情報・画面 在庫の一覧
ホットスポット ネオンピンク(少し傾けて貼る) 問題・疑問・対立 与信の基準が部署で違う?
制約(旧称:集約) 黄色(大きい付箋) コマンドを受けるときのルール 注文

確認環境:定義は eventstorming.com と、Brandolini の書籍『Introducing EventStorming』(Leanpub)の紹介ページ、Brandolini のブログ記事「Introducing Event Storming」(2013年)の原文で確かめました。付箋の色は、DDD-Crew が公開している「EventStorming Glossary & Cheat sheet」(CC BY 4.0)の原文と、同リポジトリの図「Software design Picture that explains "Almost" Everything」で確かめています。記事の図は Mermaid 12.1.0(@mermaid-js/mermaid-cli 12.0.0、Linux)で描画できることを確かめました(確認日 2026年10月13日)。

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「イベントストーミングのやり方|付箋の色・進め方・システム開発の例」

イベントストーミングとは

ドメインイベント(業務の専門家にとって意味のある出来事)を中心に、業務の流れを壁一面に描き出す方法です。 DDD-Crew の用語集では、ドメインイベントを「イベントストーミングの主要な概念」とし、「過去形の動詞」で書くとしています。

  • 生まれ:もとはドメイン駆動設計(DDD)の集約を設計するためのワークショップとして考えられ、今は業務全体の把握から、ソフトウェアの設計までに使われています(DDD-Crew の用語集の説明)。
  • 良さ:Brandolini は2013年のブログで、モデルが「数週間ではなく数時間で」できると書いています。
  • 必要なもの:同じブログでは、静かで広い部屋と、書き込める面(IKEA の紙のロール「MÅLA」)を挙げています。DDD-Crew の用語集では、6〜8 m ほどの書く面、材料を置く机、見える場所に貼った凡例を挙げ、椅子は置かないとしています。
  • 人:2013年のブログでは「質問を知っている人と、答えを知っている人」がそろった 6〜8人 の部屋を理想としています。

DDD の基本と、ドメインイベント・集約などの言葉は、関連記事「ドメイン駆動設計入門|DDDの基本と小さく始める手順をJavaで解説」で扱っています。

付箋の色と意味(くわしく)

イベントストーミングの付箋の色は、DDD-Crew の用語集で「公式の色(official colour)」として決められています。 色の意味を凡例として壁に貼り、新しい種類の付箋を使い始めるときに凡例に足していきます。

付箋 原文の名前 色と大きさ いつ使い始めるか 書き方のコツ
ドメインイベント Domain Event オレンジ 最初から 「〜した」「〜された」と過去形
ホットスポット HotSpot ネオンピンク。少し傾けて貼る 最初から(司会が貼る) 疑問・対立・痛みをそのまま書く
機会 Opportunity 緑 時系列がそろってから ホットスポットの逆。よい点・改善のたね
アクター(エージェント) Actor/Agent 黄色の小さい付箋 Big Picture の途中から 人・部署・チーム
システム System 横長のピンク 時系列がそろってから Excel でもマイクロサービスでも書く
価値 Value 赤と緑の小さい付箋 時系列がそろってから 赤=価値を損なう、緑=価値を生む
ポリシー Policy 大きいライラック Process Modelling から 「〜したら、〜する」
コマンド(アクション) Command/Action 青 Process Modelling から 「〜する」。業務の人には「アクション」が伝わりやすい
リードモデル(情報) Query Model/Information 緑 Process Modelling から 判断に使う画面・帳票・数字
制約 Constraint 大きい黄色 Software Design から 旧称は集約(aggregate)

付箋の色は、時代によって少し違います。 Brandolini の2013年のブログでは、基本の道具を「薄い黄色の長方形と、オレンジ・青・紫の正方形」とし、紫を外部システムや時間の経過で起きるイベントに使っていました。今の用語集では、紫(ライラック)はポリシー、外部システムは横長のピンクです。昔の資料と今の資料で色が違うのは、このためです。

ホットスポットと外部システムは、どちらもピンク系です。 混ざらないように、ホットスポットは濃いネオンピンクを傾けて貼り、外部システムは横長の付箋を使います。手に入る付箋の色が違うときは、凡例に「この色は何か」を書いておけば伝わります。

付箋どうしのつながり

DDD-Crew のリポジトリの図「Software design Picture that explains "Almost" Everything」の矢印を、そのまま日本語にしたものです。

flowchart LR
  A["アクター"] -- "決める" --> C["コマンド<br>(アクション)"]
  C -- "呼び出す" --> S["外部システム<br>/制約"]
  S -- "生み出す" --> E["ドメインイベント"]
  E -- "起動する" --> P["ポリシー"]
  P -- "発行する" --> C
  E -- "結果として1つ以上の" --> R["リードモデル<br>(情報)"]
  A -- "見る" --> R
  classDef evt fill:#FFA94D,stroke:#C26A00,color:#000
  classDef cmd fill:#74C0FC,stroke:#1C7ED6,color:#000
  classDef act fill:#FFF35C,stroke:#B5A800,color:#000
  classDef pol fill:#D0A9F5,stroke:#7B3FB8,color:#000
  classDef sys fill:#F49AC2,stroke:#C2255C,color:#000
  classDef rm fill:#B5E48C,stroke:#5C940D,color:#000
  class E evt
  class C cmd
  class A act
  class P pol
  class S sys
  class R rm

左から右へ、時間が流れます。 アクターがリードモデルを見て判断し、コマンドを出します。コマンドが外部システムや制約にかかり、ドメインイベントが生まれます。イベントがポリシーを起動し、ポリシーが次のコマンドを出します。

3つの種類:Big Picture・Process Modelling・Software Design

イベントストーミングは、目的に応じて3つの種類に分かれます。 書籍『Introducing EventStorming』の目次でも、Big Picture(第4章など)、Process Modeling(第13・14章)、Design-Level(第17章など)が別の章になっています。

種類 目的(原文の説明) 人数の目安 使う付箋 出てくるもの
Big Picture 事業全体の健全さを確かめる、新しい事業の成り立ちを探る 10〜30人以上(DDD-Crew)、15〜30人(Avanscoperta) イベント・ホットスポット・アクター・システム・価値・機会 業務全体の流れ、問題点、境界づけられたコンテキストの候補
Process Modelling 今のプロセスの健全さを確かめ、ボトルネックを見つける 少人数の、いろいろな役割のチーム +コマンド・ポリシー・リードモデル 1つのプロセスの流れと、自動化のルール
Software Design 変化に強い、イベント駆動のソフトウェアを設計する 開発者と業務の担当 +制約(集約) 集約・コマンド・イベントの設計
  • Big Picture は、DDD-Crew の用語集で「既存の事業の健全さを評価する、または新しいスタートアップの事業モデルの実現性を探る」ものとされています。1本の紙のロールに10〜30人以上で書けるとしています。
  • Process Modelling は、「今のプロセスの現状を共有し、ボトルネックを見つけ、今のソフトウェアから切り離す部分を見つける」ものです。
  • Software Design は、「1つの境界づけられたコンテキストの中で、問題を解く共有のモデルを作る」ものです。

順番は Big Picture → Process Modelling → Software Design が基本です。 ただし、業務の流れがすでに分かっていて、作るソフトウェアの設計だけをしたいときは、Process Modelling や Software Design から始めることもあります。

進め方(Big Picture)

DDD-Crew の用語集の「Cheat Sheet」の手順は、次の4ステップです。 その前後に、チェックイン(気持ちを場に向ける短い声かけ)とチェックアウト(感想の共有)を置いています。

flowchart LR
  s0["準備<br>招待・材料・部屋"] --> s1["1 混沌とした探索<br>各自がイベントを書いて貼る"]
  s1 --> s2["2 時系列をそろえる<br>重複を消し、順に並べる"]
  s2 --> s3["3 ホットスポット<br>対立・疑問を貼る"]
  s3 --> s4["4 概念を足す<br>アクター・システム・価値など"]
  s4 --> s5["ピボタルイベントで区切り、<br>コンテキストの候補を探す"]
  1. 混沌とした探索(Chaotic Exploration):各自が思いつくドメインイベントを、ひとりで書いて貼ります。ほかの人の考えに引っぱられないよう、このあいだは声に出して話し合いません。 用語集は「ここを急がない。イベントストーミング全体でいちばん大事な部分」としています。
  2. 時系列をそろえる(Enforce the Timeline):重複を取り除き、正しい時間の順に並べます。同じ言葉で別のことを指していないかも話し合います。用語集は、テープで区切りを入れるのは早すぎないように、と注意しています。
  3. ホットスポット:意見が分かれたところ、答えの出ない疑問、痛みのあるところにピンクの付箋を貼ります。この段階では司会が貼ります。 議論を長引かせず、付箋にして先に進むためです。
  4. 必要に応じて概念を足す:アクター・システム・価値・機会などを、凡例に足しながら使い始めます。

ピボタルイベントと境界

ピボタルイベント(Pivotal Events)は、流れの中でとくに大事な、少数のイベントです。 用語集では EC サイトの例として「商品がカタログに追加された」「注文が確定した」「注文が出荷された」「支払いを受けた」「注文が配達された」を挙げ、多くの人が関心を持つイベントであることが多いとしています。ピボタルイベントで流れを区切ると、境界づけられたコンテキストの候補(Emerging Bounded Contexts)が見えてきます。

時間配分の例

原典は、それぞれのステップの時間を決めていません。 以下は、半日(4時間)で Big Picture を行うときの配分の例です。

時間の例 やること 司会の動き
0:00〜0:15 チェックイン、目的と凡例の説明 オレンジの付箋の書き方を1枚見せる
0:15〜1:00 1 混沌とした探索 質問に答えすぎない。話し合いを止める
1:00〜1:10 休憩 窓を開ける
1:10〜2:10 2 時系列をそろえる 重複・言葉の揺れを指さす
2:10〜2:40 3 ホットスポット 対立をピンクの付箋にして先に進める
2:40〜2:50 休憩 壁の写真を撮る
2:50〜3:30 4 アクター・システム・ピボタルイベント 新しい付箋を凡例に足す
3:30〜3:50 大事なホットスポットに投票、次にやることを決める 担当と期日を決める
3:50〜4:00 チェックアウト 写真を全員に共有する

準備の目安:用語集は、知識を持つ人と知識が必要な人(多くは業務の専門家とエンジニア)を招待し、招待状にワークショップの目的とイベントストーミングの説明を書くことを勧めています。会議の進め方は、関連記事「会議ファシリテーションの進め方 アジェンダ設計とフレーズ集」で扱っています。

システム開発の例:受注業務

卸売の会社の受注業務(見積もりから入金まで)を例にします。 内容は説明のための仮のものです。

Big Picture:受注から入金まで

flowchart LR
  e1["見積を依頼された"] --> e2["見積書を送った"] --> e3["注文を受け付けた"]
  e3 --> e4["与信が承認された"] --> e5["在庫が引き当てられた"] --> e6["出荷を指示した"]
  e6 --> e7["商品が出荷された"] --> e8["請求書を発行した"] --> e9["入金を確認した"]
  a1["営業担当"] -.- e2
  a2["経理"] -.- e4
  a3["倉庫"] -.- e7
  x1["会計システム"] -.- e9
  x2["配送業者のシステム"] -.- e7
  h1["与信の基準が<br>部署で違う?"] -.- e4
  h2["在庫が足りないとき<br>誰が顧客に連絡する?"] -.- e5
  h3["入金の消し込みが<br>手作業で月末に集中"] -.- e9
  classDef evt fill:#FFA94D,stroke:#C26A00,color:#000
  classDef pivot fill:#FFA94D,stroke:#000,stroke-width:4px,color:#000
  classDef act fill:#FFF35C,stroke:#B5A800,color:#000
  classDef sys fill:#F49AC2,stroke:#C2255C,color:#000
  classDef hot fill:#FF3D8B,stroke:#A61E4D,color:#fff
  class e1,e2,e4,e5,e6,e8 evt
  class e3,e7,e9 pivot
  class a1,a2,a3 act
  class x1,x2 sys
  class h1,h2,h3 hot
  • 太い枠のオレンジが、ピボタルイベントです。「注文を受け付けた」「商品が出荷された」「入金を確認した」で区切ると、受注・出荷・請求の3つのまとまりが見えます。
  • ピンク(濃い色)がホットスポットです。「与信の基準が部署で違う?」は、言葉や決まりがそろっていない、というしるしです。

Process Modelling:注文の受け付けから在庫の引き当てまで

flowchart TB
  a["営業担当"] --> r1["在庫の一覧<br>顧客の与信枠"]
  r1 --> c1["注文を登録する"]
  c1 --> k1["注文"]
  k1 --> e1["注文を受け付けた"]
  e1 --> p1["注文を受け付けたら<br>与信を確認する"]
  p1 --> c2["与信を確認する"]
  c2 --> x1["与信管理システム"]
  x1 --> e2["与信が承認された"]
  x1 --> e2n["与信が否決された"]
  e2 --> p2["与信が承認されたら<br>在庫を引き当てる"]
  p2 --> c3["在庫を引き当てる"]
  c3 --> k2["在庫"]
  k2 --> e3["在庫が引き当てられた"]
  k2 --> e3n["在庫が不足した"]
  e3n --> h1["分納か、待つか<br>誰が決める?"]
  classDef evt fill:#FFA94D,stroke:#C26A00,color:#000
  classDef cmd fill:#74C0FC,stroke:#1C7ED6,color:#000
  classDef act fill:#FFF35C,stroke:#B5A800,color:#000
  classDef pol fill:#D0A9F5,stroke:#7B3FB8,color:#000
  classDef sys fill:#F49AC2,stroke:#C2255C,color:#000
  classDef rm fill:#B5E48C,stroke:#5C940D,color:#000
  classDef con fill:#FFF9B0,stroke:#B5A800,color:#000
  classDef hot fill:#FF3D8B,stroke:#A61E4D,color:#fff
  class e1,e2,e2n,e3,e3n evt
  class c1,c2,c3 cmd
  class a act
  class p1,p2 pol
  class x1 sys
  class r1 rm
  class k1,k2 con
  class h1 hot
  • ポリシー(ライラック)は「〜したら、〜する」のルールです。人が判断している場合も、システムで自動にする場合もあります。用語集は、ポリシーには「最初に思うより多くのことがある」としています。
  • 失敗のイベント(与信が否決された、在庫が不足した)も、オレンジの付箋で書きます。失敗の先にホットスポットが出やすくなります。

Software Design:制約(集約)を見つける

制約(集約)の候補 受けるコマンド 生まれるイベント 守るルールの例
注文 注文を登録する、注文を取り消す 注文を受け付けた、注文を取り消した 明細が1件以上ある。出荷後は取り消せない
在庫 在庫を引き当てる、引き当てを戻す 在庫が引き当てられた、在庫が不足した 引当数は在庫数を超えない
請求 請求書を発行する、入金を消し込む 請求書を発行した、入金を確認した 請求額は出荷した明細の合計と一致する

用語集では、Software Design で使う大きい黄色の付箋を「制約(Constraint)」と呼び、以前は「集約(aggregate)」と呼んでいたとしています。業務の担当者に「集約」という言葉を使わないためです。設計の段階では、制約の付箋が DDD の集約の候補になります。

集約・境界づけられたコンテキストへのつなぎ方

付箋は、そのままコードや設計の部品に対応させられます。 以下は、よく使われる対応のさせ方です。

付箋 設計での対応先 受注業務の例
ドメインイベント ドメインイベントのクラス、メッセージ OrderAccepted(注文を受け付けた)
コマンド API・ユースケースのメソッド POST /orders、placeOrder()
制約(集約) 集約のルートとなるエンティティ Order、Inventory
ポリシー イベントを受けて動く処理(ハンドラー) 注文を受け付けたら与信を確認する処理
リードモデル 画面・照会用のクエリ 在庫の一覧画面
外部システム 外部 API の呼び出し部分 与信管理システムの API
ピボタルイベントの区切り 境界づけられたコンテキスト 受注・在庫・請求
flowchart TB
  subgraph JC["受注コンテキスト"]
    O["注文(集約)"]
  end
  subgraph ZC["在庫コンテキスト"]
    I["在庫(集約)"]
  end
  subgraph SC["請求コンテキスト"]
    B["請求(集約)"]
  end
  O -- "注文を受け付けた" --> I
  I -. "在庫が引き当てられた" .-> O
  O -- "商品が出荷された" --> B
  classDef con fill:#FFF9B0,stroke:#B5A800,color:#000
  class O,I,B con
  • コンテキストの間は、イベントでつなぎます。 受注コンテキストは「注文を受け付けた」を出すだけで、在庫の引き当て方は知りません。
  • 同じ言葉が別の意味で使われているところ(例:受注の「顧客」と請求の「請求先」)は、コンテキストの境界の候補です。
  • コンテキストの間をイベントでつなぐと、書き込みと読み出しを分ける設計や、イベントの記録から状態を作る設計につながります。関連記事「CQRSとは|イベントソーシングとの違いをSQLとコードで解説」で扱っています。コンテキストをサービスに分けるかどうかは、関連記事「マイクロサービスとは|モノリスとの違い・採用判断・移行の進め方」で扱っています。

集約の中の構造(どのエンティティを持つか、多重度はどうか)は、ドメインモデル図で描くと整理できます。関連記事「ドメインモデル図の書き方|クラス図との違いと例」で扱っています。

業務フロー図・ユースケースとの違い

方法 中心に置くもの 得意なこと 向く場面
イベントストーミング ドメインイベント(起きたこと) 大人数で短時間に全体を出す。対立・疑問を見つける 業務が複雑で、全体を知る人がいない
業務フロー図 作業と担当(レーン) 誰が何をどの順でするかを正確に残す 業務の手順を文書にする
ユースケース記述 利用者の目的と、システムとのやりとり 1つの機能の流れと例外を細かく書く 要件を機能ごとに書く

イベントストーミングの結果は、業務フロー図やユースケース記述の材料になります。 壁の写真から、レーンを決めて業務フロー図に清書する、ポリシーとコマンドからユースケースを書き出す、という流れです。業務フロー図は関連記事「業務フロー図の書き方|記号一覧・スイムレーン例とMermaidテンプレート」で、ユースケース記述は「ユースケース記述の書き方|テンプレートと記入例(基本・代替・例外フロー)」で扱っています。

オンラインで行う場合

オンラインでは、ホワイトボードのツールに付箋の色の凡例を先に作っておきます。 Avanscoperta(Brandolini の会社)の説明では、オンラインは「分散したチームが参加しやすい」利点があるとし、まず対面のやり方を試しておくと、オンラインで仕組みがうまく働かなくなったときに気づける、としています。書籍『Introducing EventStorming』にも「Big Picture in remote mode」「Remote Event Storming」の章があります。

準備・工夫 理由
ボードに凡例と、色ごとの付箋の置き場を作っておく 色を選ぶ手間と、色の取り違えを減らす
時間の流れを示す長い矢印を、先に引いておく 紙のロールの代わり。左から右へ並べることを伝える
1回を短く区切り、複数の日に分ける 休憩を取りやすく、参加者の予定も合わせやすい
混沌とした探索のあいだは、マイクをミュートにする ひとりで書く時間を守る
全員がボードに直接書ける権限にしておく 司会だけが書く形になるのを防ぐ
終わったらボードを書き出して保存する 対面の写真の代わり

Avanscoperta のページでは、Process Modelling をオンラインで行うための無料の Miro のテンプレートを案内しています。DDD-Crew の用語集では、Web ブラウザで使えるオープンソースの「DDD Toolbox」が紹介されています。

よくある誤り

誤り 起きること 直し方
イベントを現在形・命令形で書く(「注文する」) コマンドと区別がつかない 「注文を受け付けた」と過去形で書く
最初から話し合いながら貼る 声の大きい人の考えに寄る 混沌とした探索は、ひとりで書く
早い段階でテープで区切る 区切りの外の気づきを落とす 時系列がそろうまで区切らない
対立をその場で解決しようとする 時間が足りなくなる ホットスポットにして先に進む
開発者だけで行う 業務の知識が出てこない 答えを知っている業務の人を招く
壁の写真を撮って終わる 次の作業につながらない ホットスポットに投票し、担当と期日を決める

よくある質問

Q. 付箋の色が手元にそろいません。 A. 用語集が「公式の色」としているのは、オレンジ(イベント)・青(コマンド)・黄色(アクター・制約)・ライラック(ポリシー)・ピンク(システム・ホットスポット)・緑(リードモデル・機会)です。そろわないときは、凡例に「この色は何か」を書いて貼っておくと、参加者の間で意味がそろいます。

Q. ドメインイベントの書き方の目安はありますか。 A. 用語集では「過去形の動詞」で、「業務の専門家にとって意味がある」ものとしています。「ボタンを押した」「レコードを更新した」のような画面やデータベースの操作は、業務の言葉に言い換えます(例:「注文を受け付けた」)。

Q. ユーザーストーリーにはどうつなげますか。 A. コマンドとアクターの組み合わせが、ストーリーの候補になります。「営業担当として、注文を登録したい。与信の確認を自動で始めるためだ」のように書けます。書籍の目次にも「From EventStorming to UserStories」の章があります。書き方は、関連記事「ユーザーストーリーの書き方と例30選|受け入れ基準Given-When-Then」で扱っています。

Q. 状態遷移図とはどう使い分けますか。 A. イベントストーミングで出た「注文を受け付けた」「商品が出荷された」などのイベントは、注文の状態が変わるきっかけです。1つの集約の状態の移り変わりを正確に描くときは、状態遷移図が向いています。関連記事「状態遷移図と状態遷移表の書き方|テスト設計とMermaid・PlantUML」で扱っています。

まとめ

  • イベントストーミングは、オレンジの付箋に過去形でドメインイベントを書き、時間の順に並べるワークショップ
  • 公式の色は、イベント=オレンジ、コマンド=青、アクター=小さい黄色、ポリシー=ライラック、システム=横長のピンク、リードモデル=緑、ホットスポット=ネオンピンク、制約(旧称:集約)=大きい黄色
  • 種類は Big Picture・Process Modelling・Software Design の3つ
  • Big Picture の手順は 混沌とした探索 → 時系列をそろえる → ホットスポット → 概念を足す
  • ピボタルイベントで区切ると、境界づけられたコンテキストの候補が見える。制約の付箋は集約の候補になる

参考・出典

確認日はいずれも 2026年10月13日です。

  • EventStorming(Alberto Brandolini):https://www.eventstorming.com/
  • Leanpub『Introducing EventStorming』(Alberto Brandolini):https://leanpub.com/introducing_eventstorming
  • Alberto Brandolini「Introducing Event Storming」(2013年):https://ziobrando.blogspot.com/2013/11/introducing-event-storming.html
  • DDD-Crew「EventStorming Glossary & Cheat sheet」(CC BY 4.0):https://github.com/ddd-crew/eventstorming-glossary-cheat-sheet
  • Avanscoperta「EventStorming」:https://www.avanscoperta.it/en/eventstorming/

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
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(記載例)出典:株式会社RJC「イベントストーミングのやり方|付箋の色・進め方・システム開発の例」

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