ジョブ理論(JTBD:Jobs to Be Done)は、「顧客は、ある状況で片付けたい用事(ジョブ)があり、そのために製品を『雇う』」と考える理論です。 Clayton M. Christensen らが、2016年の Harvard Business Review の論文「Know Your Customers' "Jobs to Be Done"」で示しました。

論文・解説での要点 内容
製品を「雇う」 顧客は製品を買うとき、ジョブを片付けるために雇っている
ジョブの3つの面 機能的な面だけでなく、社会的・感情的な面がある
状況が大切 顧客の属性(年齢・業種)より、ジョブを片付けようとしている状況のほうが大切
ジョブとは 目標に向かって、顧客が進もうとしている前進(progress)(Christensen Institute)

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(記載例)出典:株式会社RJC「ジョブ理論(JTBD)とは|ペルソナとの違い」

ミルクシェイクの例

Christensen Institute で紹介されている例です。

時間帯 顧客が片付けたいジョブ ミルクシェイクの本当の競合
朝 車での通勤を退屈せずに過ごしたい。腹持ちがよく、持ち運びやすいもの バナナ・ベーグルなど
午後 子どもへのちょっとしたごほうび 別のお菓子など

同じミルクシェイクでも、朝と午後では「雇われている理由(ジョブ)」が違いました。 朝の客にとって、競合は他店のミルクシェイクではなく、バナナやベーグルでした。ジョブが分かると、比べるべき相手と、改善の方向がはっきりします。

論文では、住宅の開発会社が、家を住み替える退職者を「生活の移り変わりを助ける」ジョブとして捉え直し、引っ越しや片付けの支援を加えて販売を伸ばした例も紹介されています。

ペルソナとの違い

ペルソナ ジョブ(JTBD)
何を描くか どんな人か(年齢・職業・性格) どんな状況で、何を片付けたいか
例 「35歳、経理担当、几帳面」 「月末の締めの前日に、勤怠のずれを直して、定時に帰りたい」
競合の見え方 同じ種類の製品 同じジョブを片付ける、あらゆる手段(表計算・手作業・外注)
向いている用途 画面や文章のトーンを決める 何を作るか・何と戦うかを決める

ペルソナとジョブは、どちらかを選ぶものではありません。 ジョブで「何を作るか」を決め、ペルソナで「どう伝えるか」を決める、と使い分けられます。

インタビューでジョブを聞き出す質問

「どんな機能が欲しいですか」と聞いても、ジョブは出てきません。 実際に起きた行動と状況を聞きます。

聞くこと 質問の例
きっかけ 「その作業を始めたのは、何があったときですか」
状況 「そのとき、どこで、誰と、何をしていましたか」
今の手段 「今はどうやって片付けていますか(表計算・手作業・人に頼む)」
不満 「今のやり方で、一番困るのはどこですか」
社会的・感情的な面 「それが片付くと、誰にどう見られますか」「どんな気持ちになりますか」
乗り換え 「前のやり方から今のやり方に変えたとき、決め手は何でしたか」

「乗り換えたときの話」は、ジョブを知る手がかりになります。 何から何に変えたか、その間に何に迷ったかに、片付けたかったジョブが表れます。

BtoB のシステム導入に当てはめた例

例(架空):中小企業の勤怠管理システム

項目 内容
状況 月末の締めの前日、各部署から勤怠の修正の依頼が集中する
機能的なジョブ 修正の依頼をまとめて受け、給与の計算に間に合わせたい
社会的なジョブ 社長や社員から「締めが遅い」と言われたくない
感情的なジョブ 締め日の前日の残業と、ミスの不安から解放されたい
今の手段(競合) 表計算とメールでの修正の依頼、社労士への依頼

このジョブから考えると、競合は他社の勤怠システムだけでなく、「表計算とメール」です。 機能の多さより、「締めの前日の修正の依頼を、まとめて片付けられるか」が選ばれる理由になります。受託開発の要件定義でも、利用部門のジョブ(状況・今の手段・不満)を先に聞くと、要らない機能を作らずに済みます。

課題の検証の進め方は、関連記事の「PSFとPMFの違い|検証の順番と判断基準」で扱っています。

よくある質問

Q. ジョブは1つの製品に1つですか。 A. ミルクシェイクの例のように、同じ製品でも状況によって別のジョブで雇われます。主な状況ごとに分けて考えます。

まとめ

  • 顧客は、ある状況のジョブを片付けるために、製品を「雇う」(Christensen ら, 2016)
  • ジョブには 機能的・社会的・感情的な面がある
  • ミルクシェイクの朝の競合は、バナナとベーグル
  • ペルソナは「どんな人か」、ジョブは「どんな状況で何を片付けたいか」
  • インタビューは、実際の状況・今の手段・乗り換えたときの話を聞く

参考・出典

確認日はいずれも 2026年10月11日です。

  • Clayton M. Christensen ほか「Know Your Customers' "Jobs to Be Done"」(Harvard Business Review, 2016年9月):https://hbr.org/2016/09/know-your-customers-jobs-to-be-done
  • Christensen Institute「Jobs to Be Done」:https://www.christenseninstitute.org/theory/jobs-to-be-done/

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(記載例)出典:株式会社RJC「ジョブ理論(JTBD)とは|ペルソナとの違い」

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