- マネジメント
Fit&Gap分析のやり方|フィットギャップ分析表テンプレートと対応方針
Fit&Gap分析(フィットギャップ分析)とは、パッケージやクラウドサービスなどの既製品の標準機能と、自社の業務要件を1件ずつ突き合わせて、合う部分(Fit)と合わない部分(Gap)を判定し、Gapごとに対応方針を決める作業です。 判定して終わりではなく、「誰が・どの方針で・どれだけの工数で埋めるか」まで決めて初めて、導入の費用と期間が見積もれるようになります。
この記事では、そのまま使える分析表テンプレート、架空の受注管理業務での記入例15行、対応方針6分類の比較表と判断フロー、候補製品を比べるための適合率の計算例までをまとめます。要件そのものの洗い出し方や製品候補の探し方には立ち入らず、「既製品に業務を当てはめる判定と、方針の決定」に絞ります。
確認環境:Ubuntu 24.04、Python 3.11.15(適合率と工数の計算を実行)、@mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0+Chromium(判断フローの Mermaid コードが描画できることを確認)。確認日 2026-10-06。題材・製品・工数はすべて架空の例です。
この記事の結論
- ギャップは、まず「業務を標準機能に合わせられないか」から検討します。追加開発は最後の手段です。
- 分析表は「要件ID・業務・要件・重要度・判定・対応方針・概算工数・決定者」の8列で作り、1行=1要件にします。
- 判定は Fit/一部Fit/Gap の3段階、対応方針は6分類から選びます。
- 候補製品の比較は、重要度で重み付けした適合率と必須要件のGap件数の2つを並べて見ます。
Fit&Gap分析の早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 既製品で業務をどこまでまかなえるかを判定し、合わない部分の埋め方を決める |
| 行う時期 | 製品候補を2〜3個に絞ったあと、契約・導入方針を決める前 |
| 入力 | 業務要件の一覧(重要度つき)、製品の標準機能の資料・デモ・試用環境 |
| 判定 | Fit(標準機能のままで満たす)/一部Fit(設定変更や軽い工夫で満たす)/Gap(標準機能では満たせない) |
| 対応方針 | 1. 標準に合わせて業務変更 2. 設定で対応 3. 運用で回避 4. 追加開発 5. 外部ツール連携 6. 要件取り下げ |
| 出力 | Fit&Gap分析表、適合率、対応方針ごとの件数と概算工数、未決事項の一覧 |
| 参加者 | 業務部門の担当者と決定者、情報システム部門、製品の提供元(機能の確認役) |
| 仕上がりの目安 | すべてのGapと一部Fitに、対応方針・概算工数・決定者が入っている |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「Fit&Gap分析のやり方|フィットギャップ分析表テンプレートと対応方針」
Fit&Gap・Fit to Standard・要件定義・As-Is/To-Be分析の違い
名前の似た作業が4つあり、扱う対象と出てくるものが違います。
| 作業 | 何と何を比べるか | 主な成果物 | 基本の姿勢 |
|---|---|---|---|
| Fit&Gap分析 | 自社の業務要件 と 製品の標準機能 | 分析表(判定と対応方針) | 要件を軸に、合わない部分の埋め方を決める |
| Fit to Standard | 製品の標準の業務の流れ と 自社の業務 | 標準に合わせるための業務変更の一覧 | 標準を軸に、業務の側を合わせる |
| 要件定義 | 利用者の要望 と 作る・導入するシステムの範囲 | 要件定義書(機能・非機能の要件) | 何を実現するかを文書で合意する |
| As-Is/To-Be分析 | 現状の業務 と あるべき業務 | 業務フロー2枚と課題整理表 | 業務そのものの変え方を決める |
どれを使うかの判断表
| 状況 | 使うもの |
|---|---|
| 業務の課題がまだ整理できていない | As-Is/To-Be分析 → その結果を要件にする |
| ゼロから作るシステムの範囲を決めたい | 要件定義 |
| 既製品の候補があり、どれが合うか・いくら掛かるかを知りたい | Fit&Gap分析 |
| 既製品を入れることは決まっていて、追加開発を最小にしたい | Fit to Standard(判定の記録には同じ分析表が使える) |
| 自社独自の強みになっている業務を既製品に載せたい | Fit&Gap分析(その業務だけ追加開発や連携を検討) |
Fit&Gap分析と Fit to Standard は対立するものではありません。この記事の分析表は、「標準に合わせて業務変更」を対応方針の1番目に置くことで、Fit to Standard の考え方を Fit&Gap分析の中に取り込んでいます。
Fit&Gap分析のやり方(6つの手順)
| 手順 | やること | できあがるもの |
|---|---|---|
| 1. 要件を1行1件に分ける | 業務の流れに沿って要件を書き出し、要件IDを振る | 分析表の左3列 |
| 2. 重要度を付ける | 必須・重要・希望の3段階を、判定の前に業務部門が決める | 重要度の列 |
| 3. 標準機能を確かめる | 資料だけでなく、デモや試用環境で実際の画面を見て確認する | 確認メモ |
| 4. 判定する | Fit/一部Fit/Gap を付ける。迷ったら厳しい方にする | 判定の列 |
| 5. 対応方針を決める | 一部FitとGapに、6分類から方針を1つ選び、概算工数を入れる | 方針・工数の列 |
| 6. 決定者が確定する | 行ごとに決定者が方針を承認し、未決の行を残さない | 決定者の列、未決一覧 |
重要度は判定の前に決める
重要度を判定のあとに付けると、「Gapになった要件ほど必須にしたくなる」方向に引っ張られます。製品を見る前に重要度を確定させるのが、分析表を公平に保つコツです。
| 重要度 | 基準 | 重み(計算例で使用) |
|---|---|---|
| 必須 | 無いと業務が止まる、または規程上どうしても必要 | 3 |
| 重要 | 無いと手作業が大きく増える | 2 |
| 希望 | あると便利だが、無くても業務は回る | 1 |
判定の基準をそろえる
| 判定 | 基準 | 例 |
|---|---|---|
| Fit | 標準機能を初期設定のまま使って満たせる | 受注登録と同時に在庫を引き当てる |
| 一部Fit | 設定変更・帳票の様式調整・既存機能の組み合わせで満たせる | 承認の金額条件を設定画面で指定する |
| Gap | 標準機能と設定の範囲では満たせない | 入荷予定からの仮の引き当て |
「一部Fit」は便利な逃げ場になりやすいので、何を設定すれば満たせるのかを書けるものだけを一部Fitにします。書けないものは Gap です。
Fit&Gap分析表テンプレート(空欄)
表計算ソフトに貼るときは CSV を、文書に貼るときは Markdown の表を使ってください。
要件ID,業務,要件,重要度,判定,対応方針,概算工数(人日),決定者
R-01,,,,,,,
R-02,,,,,,,
R-03,,,,,,,
| 要件ID | 業務 | 要件 | 重要度 | 判定 | 対応方針 | 概算工数(人日) | 決定者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R-01 | |||||||
| R-02 | |||||||
| R-03 |
| 列 | 書くこと | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| 要件ID | R-01 のような連番 | 一度振ったら変えない。会議では ID で呼ぶ |
| 業務 | 見積・受注登録・承認など業務の区分 | 業務の流れの順に並べる |
| 要件 | 「〜する」で終わる1文 | 1行に1つ。「〜し、〜する」は2行に分ける |
| 重要度 | 必須/重要/希望 | 判定の前に確定させる |
| 判定 | Fit/一部Fit/Gap | 画面で確かめた結果を書く |
| 対応方針 | 6分類のどれか(Fit は「-」) | 1行に1つ。複数になるなら要件を分ける |
| 概算工数(人日) | 方針を実行するための工数 | 業務変更や運用回避にも、周知や手順書の工数を入れる |
| 決定者 | その方針を承認する人の役職 | 部門名ではなく役職で書く |
記入例:受注管理業務の15行
架空の卸売業の受注管理業務を、候補の製品A(架空の販売管理パッケージ)と突き合わせた例です。
要件ID,業務,要件,重要度,判定,対応方針,概算工数(人日),決定者
R-01,見積,見積書を得意先別の様式で出力する,重要,一部Fit,設定で対応,2,営業課長
R-02,見積,見積の有効期限が近づいたら担当者に通知する,希望,Gap,運用で回避,0.5,営業課長
R-03,受注登録,受注を画面から登録し受注番号を自動で振る,必須,Fit,-,0,-
R-04,受注登録,得意先ごとの掛率で単価を自動計算する,必須,Fit,-,0,-
R-05,受注登録,CSVファイルから受注を一括で取り込む,重要,Fit,-,0,-
R-06,受注登録,受注番号を「年度+部門+連番」の独自体系にする,重要,Gap,標準に合わせて業務変更,1,業務部長
R-07,承認,一定額以上の受注は上長の承認を必須にする,必須,一部Fit,設定で対応,1,業務部長
R-08,承認,承認を課長・部長・役員の3段階にする,希望,Gap,標準に合わせて業務変更,0.5,業務部長
R-09,在庫引当,受注登録と同時に在庫を自動で引き当てる,必須,Fit,-,0,-
R-10,在庫引当,在庫不足のとき入荷予定から仮に引き当てる,重要,Gap,追加開発,15,業務部長
R-11,出荷指示,出荷指示書を倉庫別に出力する,必須,Fit,-,0,-
R-12,出荷指示,配送業者の送り状発行システムへデータを渡す,重要,Gap,外部ツール連携,5,情報システム課長
R-13,請求,締日ごとに請求書を一括で発行する,必須,Fit,-,0,-
R-14,集計,得意先別・月別の受注集計をグラフで見る,希望,一部Fit,外部ツール連携,1,営業課長
R-15,集計,FAXで届いた注文書の画像を受注に添付する,希望,Gap,要件取り下げ,0,営業課長
| 要件ID | 業務 | 要件 | 重要度 | 判定 | 対応方針 | 概算工数(人日) | 決定者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R-01 | 見積 | 見積書を得意先別の様式で出力する | 重要 | 一部Fit | 設定で対応 | 2 | 営業課長 |
| R-02 | 見積 | 見積の有効期限が近づいたら担当者に通知する | 希望 | Gap | 運用で回避 | 0.5 | 営業課長 |
| R-03 | 受注登録 | 受注を画面から登録し受注番号を自動で振る | 必須 | Fit | - | 0 | - |
| R-04 | 受注登録 | 得意先ごとの掛率で単価を自動計算する | 必須 | Fit | - | 0 | - |
| R-05 | 受注登録 | CSVファイルから受注を一括で取り込む | 重要 | Fit | - | 0 | - |
| R-06 | 受注登録 | 受注番号を「年度+部門+連番」の独自体系にする | 重要 | Gap | 標準に合わせて業務変更 | 1 | 業務部長 |
| R-07 | 承認 | 一定額以上の受注は上長の承認を必須にする | 必須 | 一部Fit | 設定で対応 | 1 | 業務部長 |
| R-08 | 承認 | 承認を課長・部長・役員の3段階にする | 希望 | Gap | 標準に合わせて業務変更 | 0.5 | 業務部長 |
| R-09 | 在庫引当 | 受注登録と同時に在庫を自動で引き当てる | 必須 | Fit | - | 0 | - |
| R-10 | 在庫引当 | 在庫不足のとき入荷予定から仮に引き当てる | 重要 | Gap | 追加開発 | 15 | 業務部長 |
| R-11 | 出荷指示 | 出荷指示書を倉庫別に出力する | 必須 | Fit | - | 0 | - |
| R-12 | 出荷指示 | 配送業者の送り状発行システムへデータを渡す | 重要 | Gap | 外部ツール連携 | 5 | 情報システム課長 |
| R-13 | 請求 | 締日ごとに請求書を一括で発行する | 必須 | Fit | - | 0 | - |
| R-14 | 集計 | 得意先別・月別の受注集計をグラフで見る | 希望 | 一部Fit | 外部ツール連携 | 1 | 営業課長 |
| R-15 | 集計 | FAXで届いた注文書の画像を受注に添付する | 希望 | Gap | 要件取り下げ | 0 | 営業課長 |
15行の内訳は、Fit 6件・一部Fit 3件・Gap 6件です。対応が必要な9件のうち、追加開発を選んだのは R-10 の1件だけで、残りは業務変更・設定・運用・連携・取り下げで埋めています。
対応方針6分類の比較
| 対応方針 | 内容 | 初期費用 | 保守への影響 | 向く条件 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 標準に合わせて業務変更 | 業務のやり方を製品の標準の流れに変える | 小(周知・教育) | なし(製品の更新にそのまま追従できる) | 独自のやり方に強い理由が無い。番号体系や承認段階など慣習によるもの |
| 2. 設定で対応 | 製品が用意している設定・パラメータ・帳票様式で実現する | 小 | 小(設定内容の記録が必要) | 製品の設定画面で指定できる範囲に収まる |
| 3. 運用で回避 | システム化せず、手作業や確認表で補う | 小(手順書) | なし(人の作業として残る) | 発生頻度が低い。件数が少なく手作業で回る |
| 4. 追加開発 | 製品に独自の機能を作り足す | 大 | 大(製品の更新のたびに動作確認と改修が要る) | 無いと業務が止まり、他の方針では埋まらない。自社の強みに直結する |
| 5. 外部ツール連携 | 表計算ソフトや別のサービスにデータを渡して補う | 中 | 中(連携部分の維持が要る) | すでに使っているツールがある。製品にデータの出力・連携の口がある |
| 6. 要件取り下げ | その要件をやめる、または次期へ見送る | なし | なし | 重要度が希望で、費用に見合う効果が見込めない |
費用と保守への影響が最も大きいのが追加開発です。作る時の費用だけでなく、製品が更新されるたびに確認と改修が発生し続ける点が他の方針との大きな違いです。そのため、検討の順番は「1 → 2 → 3 → 5 → 4 → 6」とし、追加開発は他の方針で埋まらなかった時だけ選びます。
対応方針を選ぶ判断フロー
flowchart TD
A[ギャップを1件取り出す] --> B{業務のやり方を<br>標準機能に合わせられるか}
B -- はい --> P1[1. 標準に合わせて業務変更]
B -- いいえ --> C{設定・パラメータの変更で<br>実現できるか}
C -- はい --> P2[2. 設定で対応]
C -- いいえ --> D{発生が少なく<br>手作業で回せるか}
D -- はい --> P3[3. 運用で回避]
D -- いいえ --> E{すでに使っている外部ツールで<br>補えるか}
E -- はい --> P5[5. 外部ツール連携]
E -- いいえ --> F{無いと業務が止まるか<br>重要度が必須か}
F -- はい --> P4[4. 追加開発]
F -- いいえ --> P6[6. 要件取り下げ<br>または次期へ見送り]
フローの最初の問いを「業務を標準機能に合わせられるか」にしているのが要点です。ここを飛ばして「どう作り足すか」から話し始めると、追加開発の件数が膨らみます。
記入例の6件のGapに当てはめる
| 要件ID | 要件 | フローでの判断 | 方針 |
|---|---|---|---|
| R-06 | 受注番号の独自体系 | 番号体系は慣習で、標準の採番に変えても業務は回る | 標準に合わせて業務変更 |
| R-08 | 承認を3段階に | 標準の2段階に合わせ、役員へは月次の報告で代える | 標準に合わせて業務変更 |
| R-02 | 見積の期限通知 | 件数が少なく、週1回の一覧確認で足りる | 運用で回避 |
| R-12 | 送り状発行システムへの連携 | 製品にCSV出力があり、送り状側に取込機能がある | 外部ツール連携 |
| R-10 | 入荷予定からの仮引当 | 無いと納期回答が止まり、手作業では件数が多い | 追加開発 |
| R-15 | FAX画像の添付 | 重要度は希望で、紙の保管で代えられる | 要件取り下げ |
適合率を計算して候補製品を比べる
候補が複数あるときは、同じ要件一覧で製品ごとに判定し、適合率を出して比べます。件数だけの適合率では必須要件も希望要件も同じ1件として数えてしまうので、重要度で重みを付けます。
- 重み付きの適合率 =(重み × 判定の点数)の合計 ÷ 重みの合計
- 重み:必須 3、重要 2、希望 1(例)
- 判定の点数:Fit 1.0、一部Fit 0.5、Gap 0(例)
記入例の CSV を fitgap.csv として保存し、次のコードを同じフォルダで実行します。製品Bの判定は、同じ15要件を別の架空の製品で判定した結果です。
import csv
from collections import Counter
WEIGHT = {"必須": 3, "重要": 2, "希望": 1} # 重要度の重み
SCORE = {"Fit": 1.0, "一部Fit": 0.5, "Gap": 0.0} # 判定の点数
with open("fitgap.csv", encoding="utf-8", newline="") as f:
rows = list(csv.DictReader(f))
# 製品Bの判定(同じ15要件を別の候補製品で判定した結果。要件IDの順)
judge_b = ["Fit", "Fit", "Fit", "一部Fit", "Fit", "Fit", "Gap", "Fit",
"一部Fit", "Fit", "Fit", "Gap", "Fit", "Fit", "Gap"]
def summarize(name, judges):
total_w = sum(WEIGHT[r["重要度"]] for r in rows)
got = sum(WEIGHT[r["重要度"]] * SCORE[j] for r, j in zip(rows, judges))
simple = sum(SCORE[j] for j in judges) / len(judges)
must_gap = [r["要件ID"] for r, j in zip(rows, judges)
if r["重要度"] == "必須" and j == "Gap"]
c = Counter(judges)
print(f"{name}: Fit {c['Fit']} / 一部Fit {c['一部Fit']} / Gap {c['Gap']}")
print(f" 単純な適合率 = {simple:.1%}")
print(f" 重み付きの適合率 = {got} / {total_w} = {got / total_w:.1%}")
print(f" 必須要件のGap = {len(must_gap)}件 {must_gap}")
summarize("製品A", [r["判定"] for r in rows])
summarize("製品B", judge_b)
print("--- 製品Aの対応方針ごとの件数と概算工数 ---")
effort = Counter()
count = Counter()
for r in rows:
if r["対応方針"] != "-":
effort[r["対応方針"]] += float(r["概算工数(人日)"])
count[r["対応方針"]] += 1
for k in count:
print(f"{k}: {count[k]}件 {effort[k]:g}人日")
print(f"合計: {sum(count.values())}件 {sum(effort.values()):g}人日")
実行結果です。
製品A: Fit 6 / 一部Fit 3 / Gap 6
単純な適合率 = 50.0%
重み付きの適合率 = 20.0 / 32 = 62.5%
必須要件のGap = 0件 []
製品B: Fit 10 / 一部Fit 2 / Gap 3
単純な適合率 = 73.3%
重み付きの適合率 = 23.0 / 32 = 71.9%
必須要件のGap = 1件 ['R-07']
--- 製品Aの対応方針ごとの件数と概算工数 ---
設定で対応: 2件 3人日
運用で回避: 1件 0.5人日
標準に合わせて業務変更: 2件 1.5人日
追加開発: 1件 15人日
外部ツール連携: 2件 6人日
要件取り下げ: 1件 0人日
合計: 9件 26人日
結果の読み方
| 見る数字 | 製品A | 製品B | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 単純な適合率 | 50.0% | 73.3% | 件数だけで見ると製品Bが大きく上回る |
| 重み付きの適合率 | 62.5% | 71.9% | 重みを付けると差は縮まる(製品Aは必須要件をよく満たしている) |
| 必須要件のGap | 0件 | 1件(R-07) | 製品Bは「上長承認」が標準機能に無い |
適合率が高い製品Bに、必須要件のGapが1件あります。 必須のGapは追加開発になりやすく、費用と保守への影響が大きい行です。適合率の数字だけで決めず、次の順で判断します。
| 順番 | 確認すること | 判断 |
|---|---|---|
| 1 | 必須要件のGapがあるか | あれば、その行の対応方針と概算工数を先に出す |
| 2 | 必須のGapを埋める工数は受け入れられるか | 受け入れられなければ、その製品は候補から外す |
| 3 | 重み付きの適合率 | 残った候補を高い順に並べる |
| 4 | 対応方針ごとの概算工数の合計 | 追加開発の人日が小さい方を優先する |
製品Aの対応工数は合計26人日で、そのうち15人日が追加開発1件(R-10)です。件数では9件中1件でも、工数では半分以上を追加開発が占めています。 工数を減らしたい時にまず見直す行が、この集計で分かります。
分析表を仕上げるチェックリスト
| 確認項目 | 見るところ |
|---|---|
| 1行に要件が1つだけ書かれている | 要件の列に「〜し、〜する」が無い |
| 重要度が判定の前に確定している | 重要度の確定日が判定の日より前 |
| 判定がデモや試用環境で確かめた結果になっている | 確認メモが行ごとにある |
| 一部Fitに「何を設定するか」が書ける | 書けない行は Gap に直す |
| Gapと一部Fitのすべてに対応方針が1つ入っている | 空欄・複数記入が無い |
| 追加開発の行に「他の方針では埋まらない理由」がある | 備考や議事メモに残す |
| 業務変更・運用回避の行にも工数が入っている | 周知・教育・手順書の工数 |
| すべての行に決定者が入り、承認されている | 未決の行が0件 |
確かめて分かったこと
- 単純な適合率と重み付きの適合率で、製品間の差が変わった。記入例では差が 23.3 ポイントから 9.4 ポイントに縮まりました。件数だけの適合率は、希望要件を多く満たす製品に有利に出ます。
- 適合率が高い製品に必須要件のGapがあった。適合率とは別に、必須のGap件数を必ず並べて出す必要があります。
- 追加開発は9件中1件でも、概算工数では26人日中15人日を占めた。件数の集計だけでは費用の偏りが見えません。
- Fit の行の対応方針を空欄ではなく「-」にしておくと、集計のコードで除外しやすい。空欄は「未記入」と区別が付きません。
- 判断フローの Mermaid は、分岐の文に改行(br)を入れた形で描画できた。問いの文が長くても図の幅が広がりすぎません。
つまずきやすい点と直し方
| つまずき | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 現状の業務をそのまま要件にする | Gapが増え、追加開発が膨らむ | 「なぜそのやり方なのか」を聞き、慣習によるものは業務変更の候補にする |
| 資料だけで判定する | 導入後に「思っていた動きと違う」が出る | デモや試用環境で、実際のデータに近い例を流して確かめる |
| 方針を決めずに Gap の件数だけ報告する | 費用も期間も見積もれない | すべての Gap に方針と概算工数を入れてから報告する |
| 決定者が部門名になっている | 誰も承認せず未決のまま残る | 役職で書き、期限を決めて承認をもらう |
| 追加開発の要望をその場で受ける | 判断フローの前半が飛ばされる | 「まず標準に合わせられないか」の問いを会議の進め方として固定する |
よくある質問
Q. Fit&Gap分析とは? A. 既製品の標準機能と自社の業務要件を1件ずつ突き合わせ、合う・合わないを判定して、合わない部分の対応方針を決める作業です。判定の一覧に加えて、方針・概算工数・決定者まで入れた分析表が成果物になります。
Q. Fit&Gap分析と要件定義の違いは? A. 要件定義は「何を実現するか」を決める作業、Fit&Gap分析は「その要件を既製品がどこまで満たすか」を判定する作業です。要件の一覧が Fit&Gap分析の入力になり、分析の結果(業務変更や取り下げ)が要件の一覧に戻ります。
Q. Fit&Gap分析と Fit to Standard の違いは? A. 軸にするものが違います。Fit&Gap分析は自社の要件を軸に製品との差を見て、Fit to Standard は製品の標準を軸に業務の側を合わせます。対応方針の1番目を「標準に合わせて業務変更」にすると、同じ分析表で両方の考え方を扱えます。
Q. 適合率は何%あれば導入できる? A. 一律の合格ラインはありません。重みや点数の付け方で数字が変わるためです。必須要件のGapが0件であること、またはそのGapを埋める工数が受け入れられることを先に確かめ、そのうえで候補同士の比較に適合率を使います。
Q. Gapが多すぎて決められないときは? A. 重要度が「希望」のGapから要件取り下げを検討し、次に慣習による要件を業務変更に回します。それでも必須・重要のGapが多く残る場合は、製品の候補そのものを見直す合図です。
まとめ
- Fit&Gap分析は、判定に加えて対応方針・概算工数・決定者まで決める作業です。
- ギャップはまず業務を標準機能に合わせられないかを検討し、追加開発は最後の手段にします。
- 分析表は8列・1行1要件で作り、重要度は判定の前に確定させます。
- 対応方針は6分類(業務変更/設定/運用回避/追加開発/外部ツール連携/要件取り下げ)から1つ選びます。
- 候補製品の比較は、重み付きの適合率と必須要件のGap件数を並べて見ます。
- 追加開発は件数より工数で見ると、費用の偏りが分かります。
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「Fit&Gap分析のやり方|フィットギャップ分析表テンプレートと対応方針」
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