- マネジメント
意思決定フレームワーク一覧|決め方の選び方と意思決定マトリクス例
意思決定のフレームワークは、「何を選ぶか」を比べる評価の道具と、「誰がどう決めるか」を定める決定ルールの2種類に分かれます。 意思決定マトリクスで点数を出しても、最後にだれが決めるのかが決まっていないと話は終わりません。反対に、多数決で決めると決まっていても、比べる材料が無ければ票は印象で入ります。2つを分けて選ぶのが近道です。
この記事では、評価の道具6種と決定ルール6種をそれぞれ一覧表にし、重み付き意思決定マトリクスは表計算ソフトに貼れるテンプレートと数式、架空の3案での記入例、重みを変えたときに順位が入れ替わるかどうかの検算まで載せています。決定ルールは「元に戻せるか × 影響範囲」で選ぶフローを Mermaid のコードで示します。
確認環境:Ubuntu 24.04、Python 3.11.15(合計点・感度・期待値の計算)、LibreOffice Calc 24.2.7(SUMPRODUCT と RANK の数式を xlsx で再計算)、@mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0 と Chromium(フローの描画)。確認日は 2026-10-06 です。記入例の案・点数・時間はすべて架空の例です。
この記事の結論
- 評価の道具と決定ルールは別々に選ぶ。 「マトリクスで比べ、相談後にリーダーが決める」のように、組み合わせて使います。
- 案が2〜3個で評価項目が多いなら意思決定マトリクス、案が多くてまず絞りたいならペイオフマトリクス、確率と結果の分かれ道があるなら決定木が向きます。
- 決定ルールは「元に戻せるか」と「だれに影響するか」で選ぶ。 戻せて影響が小さいなら委任、戻しにくく影響が広いなら時間をかけて合意を作ります。
- マトリクスの合計点は、重みを変えて順位が入れ替わるかを確かめてから使う。 今回の例では、1つの重みを4から1に下げたときだけ1位が入れ替わりました。
- 決めたら、内容・理由・見直す日を1行ずつ残す。 どの道具とルールで決めたかも書いておくと、あとから経緯をたどれます。
意思決定フレームワークの早見表
一覧1:何を選ぶか(評価の道具)
| 道具 | 何をするか | 向く案の数 | 所要時間の目安 | 向く場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|---|---|
| プロコン表 | 1つの案のよい点と気になる点を並べる | 1〜2 | 10〜20分 | 「やるか、やらないか」を決める | 項目の数で決めない。重さが違う |
| 意思決定マトリクス(重み付き) | 評価項目に重みを付け、案ごとの点数を掛けて合計する | 2〜5 | 30〜60分 | 評価項目が4つ以上あり、理由を説明したい | 重みと点数を先に決めてから合計を見る |
| ペイオフマトリクス | 効果と取り組みやすさの2軸で4つに分ける | 5〜30 | 20〜40分 | 出てきた案をまず絞る | 2軸に入らない条件(期限など)は別に見る |
| 決定木 | 選択と起こりうる結果を枝に書き、確率と結果から期待値を出す | 2〜4 | 30〜90分 | 結果が確率で分かれる、段階的な判断 | 確率は見積もり。幅を持たせて確かめる |
| 一対比較 | 案を2つずつ比べ、勝った数で順位を付ける | 3〜7 | 15〜30分 | 評価項目を言葉にしにくい | 案が増えると比べる組が急に増える(7案で21組) |
| ドット投票 | 1人が数票を持ち、よいと思う案に印を付ける | 5〜30 | 5〜10分 | 多くの案から話し合う対象を絞る | 最終決定ではなく、絞り込みに使う |
一覧2:誰がどう決めるか(決定ルール)
| 決定ルール | 決め方 | 所要時間 | 納得度 | 向く場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 独断 | 決定者が1人で決める | 最も短い | 低〜中 | 急ぐ、影響が自分の担当内 | 決めた理由をあとで共有する |
| 相談後に決定 | 決定者が関係者の意見を聞いてから1人で決める | 短い | 中 | 影響はあるが期限がある。日常の多くの決定 | だれが決定者かを先に伝える |
| 多数決 | 票が多い案に決める | 短い | 中(少数側は低くなりやすい) | 好みで分かれ、どの案でも大きな差が無い | 投票の前に各案のよい点・気になる点を出す |
| コンセンサス | 全員が賛成するまで話し合う | 長い | 高 | 全員が実行に関わる決まり、戻しにくい決定 | 終わりの時刻と、まとまらないときの決め方を先に決める |
| コンセント(同意) | 「目的に照らして進められない理由があるか」を聞き、無ければ決まる | 中 | 中〜高 | まず試したい、見直す日を決められる | 好みの違いと、進められない理由を分ける |
| 委任 | 範囲を決めて担当者に決定を任せる | 最も短い(決定者にとって) | 担当者は高い | 担当者が最も詳しい、戻せる | 任せる範囲と報告の仕方を先に決める |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「意思決定フレームワーク一覧|決め方の選び方と意思決定マトリクス例」
所要時間と納得度は、決定ルールどうしを比べたときの相対的な目安です。
評価の道具と決定ルールの組み合わせ方
決める場は、次の3つの段に分けると進めやすくなります。
| 段 | すること | 使うもの |
|---|---|---|
| 1. 決め方を決める | 決定者、決定ルール、期限を先に共有する | 一覧2と、後半の判断フロー |
| 2. 比べる | 案を出し、同じ物差しで比べる | 一覧1の道具 |
| 3. 決めて残す | ルールに沿って決め、内容・理由・見直す日を記録する | 記録の1行テンプレート |
1を飛ばして2から始めると、点数が出たあとで「これで決まりなのか」という話になります。 最初の1分で「今日はマトリクスで比べ、意見を聞いたうえで〇〇さんが決めます」と伝えるだけで、参加者は自分の役割(意見を出す人か、決める人か)が分かります。
どの評価の道具を選ぶか
| 条件 | 選ぶ道具 |
|---|---|
| 案は1つで、やるかどうかを決めたい | プロコン表 |
| 案が2〜5個で、評価項目が4つ以上ある | 意思決定マトリクス |
| 案が10個以上あり、まず絞りたい | ドット投票 → ペイオフマトリクス |
| うまくいく場合といかない場合で結果が大きく違う | 決定木 |
| 評価項目を言葉にしにくいが、2つ並べれば選べる | 一対比較 |
| 絞ったあと、残った2〜3案を詳しく比べたい | 意思決定マトリクス |
プロコン表の例
題材:社内勉強会を毎月の定例にするかどうか(架空の例)。
| よい点(Pros) | 重さ | 気になる点(Cons) | 重さ |
|---|---|---|---|
| チームをまたいで知識が広がる | 大 | 準備の時間が毎月かかる | 中 |
| 発表の機会が増える | 中 | 参加できない人が出る | 中 |
| 質問しやすい関係ができる | 中 | 発表者が同じ人に寄りやすい | 小 |
項目の数は3対3ですが、「重さ」の列を足すと判断しやすくなります。気になる点には「準備は30分までと決める」「録画を残す」のように、小さくする手だてを横に書くと次の一歩が見えます。
重み付き意思決定マトリクスの例とテンプレート
題材:社内勉強会の開催形式を3案から選ぶ(架空の例)。点数は1〜5で、5が最もよいにそろえます。「準備の手間」「費用」のように小さいほどよい項目は、「準備の手間の少なさ」「費用の少なさ」と言い換えて向きをそろえます。
| 評価項目 | 重み | A案 会議室で対面 | B案 オンライン | C案 録画+質問会 |
|---|---|---|---|---|
| 参加しやすさ | 5 | 2 | 4 | 5 |
| 質問のしやすさ | 4 | 5 | 4 | 2 |
| 準備の手間の少なさ | 3 | 3 | 4 | 2 |
| 費用の少なさ | 2 | 3 | 5 | 4 |
| あとから見返せる | 3 | 1 | 3 | 5 |
| 合計点 | 17 | 48 | 67 | 62 |
| 満点に対する割合 | 56% | 79% | 73% | |
| 順位 | 3 | 1 | 2 |
合計点は「重み×点数」を項目ごとに足したものです。B案なら 5×4+4×4+3×4+2×5+3×3=67 です。満点は「5点×重みの合計17」で85点なので、割合は 67÷85=79% になります。
タブ区切りテンプレート(数式入り)
次のブロックをコピーし、表計算ソフトのセル A1 に貼ります。数式はセル A1 から始まる配置を前提にしています。
評価項目 重み A案 会議室で対面 B案 オンライン C案 録画+質問会
参加しやすさ 5 2 4 5
質問のしやすさ 4 5 4 2
準備の手間の少なさ 3 3 4 2
費用の少なさ 2 3 5 4
あとから見返せる 3 1 3 5
合計点 =SUM(B2:B6) =SUMPRODUCT($B$2:$B$6,C2:C6) =SUMPRODUCT($B$2:$B$6,D2:D6) =SUMPRODUCT($B$2:$B$6,E2:E6)
満点に対する割合 =C7/(5*$B$7) =D7/(5*$B$7) =E7/(5*$B$7)
順位 =RANK(C7,$C$7:$E$7) =RANK(D7,$C$7:$E$7) =RANK(E7,$C$7:$E$7)
| セル | 数式 | 意味 |
|---|---|---|
| C7 | =SUMPRODUCT($B$2:$B$6,C2:C6) |
重みの列と、その案の点数の列を掛けて足す |
| C8 | =C7/(5*$B$7) |
満点(5点×重みの合計)に対する割合 |
| C9 | =RANK(C7,$C$7:$E$7) |
3案の中での順位(大きいほど上位) |
重みの範囲を $B$2:$B$6 と絶対参照にしてあるので、C7 を右へコピーするだけで D7・E7 ができます。同じ数式を入れた xlsx を LibreOffice Calc で再計算した結果は次のとおりで、上の表と一致しました。
合計点,17,48,67,62
満点に対する割合,,0.564705882352941,0.788235294117647,0.729411764705882
順位,,3,1,2
作る手順
| 手順 | すること | こつ |
|---|---|---|
| 1 | 評価項目を4〜7個出す | 似た項目はまとめる。同じことを2回数えると、その観点が2倍に効く |
| 2 | 重みを決める(1〜5) | 点数を付ける前に決める。あとから動かすと結論に合わせたくなる |
| 3 | 項目の向きをそろえる | 5が最もよい、に統一する |
| 4 | 案ごとに点数を付ける | 横(項目ごと)に付けると、案どうしを比べやすい |
| 5 | 合計点と順位を出す | SUMPRODUCT を使う |
| 6 | 重みを変えて順位が入れ替わるかを見る | 次の節の検算をする |
| 7 | 決定ルールに沿って決める | 合計点は材料。決めるのは人 |
Pythonで合計点と感度を検算する
感度とは、重みや点数を少し変えたときに結論がどれだけ動くかのことです。1位と2位の差が小さいときは、重みの付け方ひとつで順位が入れ替わることがあります。次のコードで、重みを1つずつ1〜5に動かしたときの1位を調べます。
# 重み付き意思決定マトリクス:合計点と、重みを変えたときの順位
criteria = ["参加しやすさ", "質問のしやすさ", "準備の手間の少なさ", "費用の少なさ", "あとから見返せる"]
weights = [5, 4, 3, 2, 3]
scores = {
"A案 会議室で対面": [2, 5, 3, 3, 1],
"B案 オンライン": [4, 4, 4, 5, 3],
"C案 録画+質問会": [5, 2, 2, 4, 5],
}
def totals(w):
return {name: sum(x * y for x, y in zip(w, s)) for name, s in scores.items()}
def ranking(w):
t = totals(w)
return sorted(t, key=lambda n: -t[n])
base = totals(weights)
print("== 合計点(重み", weights, ")")
for name in ranking(weights):
print(f"{name}\t{base[name]}\t{base[name] / (5 * sum(weights)):.0%}")
print("\n== 重みを1つだけ 1〜5 に変えたときの1位")
for i, c in enumerate(criteria):
row = []
for v in range(1, 6):
w = weights.copy(); w[i] = v
t = totals(w); top = ranking(w)[0]
second = ranking(w)[1]
mark = "*" if v == weights[i] else ""
row.append(f"{v}{mark}:{top[0]}({t[top]}-{t[second]})")
print(f"{c}\t" + " ".join(row))
print("\n== すべての重みを同じ(1)にしたとき")
eq = totals([1] * 5)
print(" ".join(f"{n[0]}={eq[n]}" for n in ranking([1] * 5)))
print("\n== 点数を1つだけ±1したとき1位が変わる箇所")
first = ranking(weights)[0]
for name, s in scores.items():
for i, c in enumerate(criteria):
for d in (-1, 1):
if not 1 <= s[i] + d <= 5: continue
s[i] += d
if ranking(weights)[0] != first:
print(f"{name[:2]} の「{c}」を {s[i]-d}→{s[i]} にすると1位は {ranking(weights)[0][:2]}")
s[i] -= d
print("(該当なしなら、上に行は出ません)")
実行結果:
== 合計点(重み [5, 4, 3, 2, 3] )
B案 オンライン 67 79%
C案 録画+質問会 62 73%
A案 会議室で対面 48 56%
== 重みを1つだけ 1〜5 に変えたときの1位
参加しやすさ 1:B(51-42) 2:B(55-47) 3:B(59-52) 4:B(63-57) 5*:B(67-62)
質問のしやすさ 1:C(56-55) 2:B(59-58) 3:B(63-60) 4*:B(67-62) 5:B(71-64)
準備の手間の少なさ 1:B(59-58) 2:B(63-60) 3*:B(67-62) 4:B(71-64) 5:B(75-66)
費用の少なさ 1:B(62-58) 2*:B(67-62) 3:B(72-66) 4:B(77-70) 5:B(82-74)
あとから見返せる 1:B(61-52) 2:B(64-57) 3*:B(67-62) 4:B(70-67) 5:B(73-72)
== すべての重みを同じ(1)にしたとき
B=20 C=18 A=14
== 点数を1つだけ±1したとき1位が変わる箇所
(該当なしなら、上に行は出ません)
「重みを1つだけ 1〜5 に変えたときの1位」の読み方:4*:B(67-62) は「重みが4(* は元の値)のとき1位はB案、1位67点・2位62点」という意味です。
結果から読み取れること
| 確かめたこと | 結果 | 読み取り |
|---|---|---|
| 元の重みでの順位 | B案67、C案62、A案48 | B案が1位。差は5点 |
| 「質問のしやすさ」の重みを 4→1 | C案56、B案55 | 1位が入れ替わる。この項目をどれだけ重く見るかが結論を左右する |
| 「質問のしやすさ」の重みを 4→2 | B案59、C案58 | 1点差まで縮まる |
| 「あとから見返せる」の重みを 3→5 | B案73、C案72 | 1点差まで縮まるが、入れ替わらない |
| すべての重みを同じにする | B案20、C案18、A案14 | 順位は変わらない |
| 点数を1か所だけ±1する | 入れ替わる箇所なし | 点数の付け方の1点の揺れには強い |
この例では、「B案でよいか」は「質問のしやすさを重く見るか」という1つの問いに置き換えられます。話し合う時間は、25マスすべてではなく、この1項目の重みに使えばよいと分かります。感度を見る目的は、合計点を疑うことではなく、話し合う論点を絞ることです。
ペイオフマトリクスの例
効果(大・小)と取り組みやすさ(易しい・手間がかかる)の2軸で、案を4つに分けます。題材は「問い合わせ対応を速くする案」(架空の例)です。
| 取り組みやすい | 手間がかかる | |
|---|---|---|
| 効果が大きい | すぐ取りかかる:受付フォームに必須項目を置く、回答のひな形を作る | 計画を立てて進める:窓口を1つにまとめる |
| 効果が小さい | 空いた時間に進める:件名の付け方をそろえる | 見送る:過去の全件を分類し直す |
タブ区切り版(案を1行ずつ書く形):
案 効果 取り組みやすさ 区分
受付フォームに必須項目を置く 大 易しい すぐ取りかかる
回答のひな形を作る 大 易しい すぐ取りかかる
窓口を1つにまとめる 大 手間がかかる 計画を立てて進める
件名の付け方をそろえる 小 易しい 空いた時間に進める
過去の全件を分類し直す 小 手間がかかる 見送る
決定木の例と期待値の計算
決定木は、選択のあとに起こりうる結果を枝として書き、確率×結果を足して期待値を出します。題材は「備品予約システムの改修を、一度に全部作るか、小さく作って広げるか」(数値はすべて架空の例)です。
flowchart LR
D["改修の進め方"] --> A["一度に全部作る<br/>工数 120時間"]
D --> B["小さく作って広げる<br/>工数 60時間"]
A -- "確率 0.6" --> A1["年間 200時間 減る"]
A -- "確率 0.4" --> A2["年間 50時間 減る"]
B -- "確率 0.9" --> B1["年間 120時間 減る"]
B -- "確率 0.1" --> B2["年間 60時間 減る"]
# 決定木の期待値(数値はすべて架空の例。単位は「年間で減らせる作業時間」)
options = {
"一度に全部作る": {"cost": 120, "branches": [(0.6, 200), (0.4, 50)]},
"小さく作って広げる": {"cost": 60, "branches": [(0.9, 120), (0.1, 60)]},
}
for name, o in options.items():
assert abs(sum(p for p, _ in o["branches"]) - 1) < 1e-9
ev = sum(p * v for p, v in o["branches"])
worst = min(v for _, v in o["branches"]) - o["cost"]
print(f"{name}: 期待値 {ev:.0f} - 工数 {o['cost']} = {ev - o['cost']:.0f} 時間 / 最も低い場合 {worst} 時間")
実行結果:
一度に全部作る: 期待値 140 - 工数 120 = 20 時間 / 最も低い場合 -70 時間
小さく作って広げる: 期待値 114 - 工数 60 = 54 時間 / 最も低い場合 0 時間
期待値で比べると「小さく作って広げる」が上です。あわせて、最も低い場合の値も見ておくと、期待値が近い案どうしを選びやすくなります。確率は見積もりなので、0.6 を 0.5 や 0.7 に変えても結論が同じかを確かめると、マトリクスの感度と同じ考え方で使えます。
決定ルールの比較:多数決・コンセンサス・コンセントの違い
合意を作る3つの方法は、参加者に投げかける問いが違います。
| 多数決 | コンセンサス | コンセント(同意) | |
|---|---|---|---|
| 問い | どの案がよいですか | 全員がこの案に賛成ですか | この案で進められない理由はありますか |
| 決まる条件 | 票が最も多い(または過半数) | 全員の賛成 | 進められない理由が出ない |
| 少数の意見 | 票数で決まる | 全員が賛成するまで調整する | 理由が示されれば案を直す |
| 所要時間 | 短い | 長い | 中 |
| 決まったあとの見直し | 決めておかないと起きにくい | 起きにくい | 見直す日を決めるのが前提 |
| 向く場面 | どの案でも大きな差が無い | 全員が毎日守る決まり | まず試して、結果を見て直したい |
コンセントは、ソシオクラシーという組織運営の方法で使われる決め方です。Sociocracy For All の解説ページでは、「賛成ですか」ではなく「異議はありますか」と尋ね、異議が無ければ同意が成立すると説明されています。異議は個人の好みではなく、チームの目的を損なうかどうかに基づくものとされています。また、第一希望ではないが異議を唱えるほどでもない範囲を「許容範囲(range of tolerance)」と呼び、全員の第一希望が重なる範囲よりも、全員の許容範囲が重なる範囲のほうが広いため、より多くのことを決められると説明されています。
決定ルールごとの進め方の例
| 決定ルール | 最初に言うこと | 進め方 |
|---|---|---|
| 独断 | 「これは私が決めます。理由は〜です」 | 決めて、内容と理由を共有する |
| 相談後に決定 | 「〇日に私が決めます。それまでに意見をください」 | 意見を集める → 決める → 採らなかった意見への答えを返す |
| 多数決 | 「意見を出したあと、投票で決めます」 | 各案のよい点・気になる点を出す → 投票 → 少数側の心配ごとへの手だてを決める |
| コンセンサス | 「全員が賛成できる案を作ります。〇時までにまとまらなければ〇〇さんが決めます」 | 案を出す → 心配ごとを出す → 案を直す → 全員に確認 |
| コンセント | 「2週間試す案です。進められない理由があれば教えてください」 | 提案 → 質問 → 感想を一巡 → 進められない理由の確認 → あれば案を直す |
| 委任 | 「この範囲は〇〇さんが決めてください。結果だけ教えてください」 | 範囲と報告の仕方を決めて渡す |
決定ルールを選ぶ判断フロー(Mermaid)
「あとから元に戻せるか」と「影響するのはだれか」の2つで選びます。
flowchart TD
S["決めたいことが出てきた"] --> Q1{"あとから<br/>元に戻せるか"}
Q1 -- "戻せる" --> Q2{"影響するのは<br/>だれか"}
Q1 -- "戻しにくい" --> Q3{"影響するのは<br/>だれか"}
Q2 -- "自分の担当内" --> R1["委任/独断<br/>担当者がその場で決める"]
Q2 -- "チーム全体" --> R2["相談後に決定<br/>または コンセント(同意)"]
Q2 -- "複数のチーム" --> R3["コンセント(同意)<br/>試す期間を決めて見直す"]
Q3 -- "自分の担当内" --> R4["相談後に決定<br/>詳しい人に意見を聞く"]
Q3 -- "チーム全体" --> R5["コンセンサス<br/>または 相談後に決定"]
Q3 -- "複数のチーム" --> R6["評価の道具で比較し<br/>決定者を1人決めて相談後に決定"]
R1 --> E["決めた内容・理由・見直す日を記録する"]
R2 --> E
R3 --> E
R4 --> E
R5 --> E
R6 --> E
同じ内容の早見表:
| 元に戻せるか \ 影響範囲 | 自分の担当内 | チーム全体 | 複数のチーム |
|---|---|---|---|
| 戻せる | 委任/独断 | 相談後に決定、またはコンセント | コンセント(試す期間を決める) |
| 戻しにくい | 相談後に決定 | コンセンサス、または相談後に決定 | 評価の道具で比較し、決定者を1人決めて相談後に決定 |
- 戻せる決定は、速さを優先します。 試して合わなければ直せるので、決めるまでの時間を短くするほうが学びが早くなります。
- 戻しにくい決定は、比べる材料を増やします。 意思決定マトリクスや決定木で材料をそろえ、意見を聞く範囲を広げます。
- 多数決は、フローのどの枝でも「どの案でも大きな差が無く、好みで分かれている」ときに使えます。
「戻せるかどうか」の目安:
| 戻せる例 | 戻しにくい例 |
|---|---|
| 定例の曜日、会議の進め方 | 公開したデータ形式や外部に知らせた仕様 |
| ブランチの命名、レビューの担当の回し方 | 移行が終わったデータの持ち方 |
| 2週間だけ試す運用の決まり | 長い期間の約束を伴う取り決め |
決めた内容を残す1行テンプレート
決定日 決めたこと 決定者 決定ルール 評価の道具 理由 見直す日
2026-10-06 勉強会はオンライン(B案)で開催する 佐藤 相談後に決定 意思決定マトリクス 合計点67で1位。質問のしやすさを重く見た 2027-01-12
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 決めたこと | 1文で。採らなかった案も理由に書く |
| 決定者 | 1人の名前 |
| 決定ルール | 一覧2のどれか |
| 評価の道具 | 一覧1のどれか(使わなければ「なし」) |
| 理由 | 決め手になった項目。感度で分かった論点を書くと後から読みやすい |
| 見直す日 | 戻せる決定ほど近い日付にする |
似た手法との違いと選び方
| 手法 | 決める対象 | 出てくるもの | この記事との関係 |
|---|---|---|---|
| 意思決定フレームワーク(この記事) | 複数の案から1つを選ぶ。だれがどう決めるか | 選んだ案と、決め方の記録 | ― |
| 緊急度×重要度マトリクス | すでにあるタスクの順番 | 取りかかる順 | 「どれを選ぶか」ではなく「どれから着手するか」 |
| 技術選定の評価表 | 言語・ライブラリ・製品の採用 | 評価軸ごとの比較と採用理由 | 意思決定マトリクスを技術向けの評価軸で使ったもの |
| 稟議書 | 組織としての承認 | 承認の記録 | 決めた内容を承認の経路に乗せる書類 |
どれを使うかの判断表
| 条件 | 使うもの |
|---|---|
| 案が複数あり、どれにするか決まっていない | この記事の評価の道具 |
| だれが決めるのか、どこまで意見を聞くのかが決まっていない | この記事の決定ルール |
| やることは決まっていて、順番を決めたい | 緊急度×重要度マトリクス |
| 技術や製品を比べる評価軸を知りたい | 技術選定の評価表 |
| 案は決まり、費用の承認を得たい | 稟議書 |
確かめて分かったこと
- 1位と2位の差が5点(67対62)あっても、重み1つで順位は入れ替わりました。 「質問のしやすさ」を4から1に下げるとC案56・B案55になります。合計点だけを見て「B案で確定」とは言い切れません。
- 入れ替わるのは5項目のうち1項目だけでした。 ほかの4項目は、重みを1〜5のどこに動かしてもB案が1位のままです。話し合う論点は1つに絞れます。
- 点数を1か所だけ±1しても、1位は変わりませんでした。 点数の細かな付け方より、重みの置き方のほうが結論に効く例です。
- すべての重みを同じにしても順位は同じでした(20・18・14)。 重みを付ける前に、まず同じ重みで並べてみると、重みが結論を動かしているかどうかが分かります。
- SUMPRODUCT の数式は LibreOffice Calc で再計算して、Python と同じ 48・67・62 になりました。 重みの範囲を絶対参照にすると、右へコピーするだけで案を増やせます。
- 決定木では、期待値が上の案(54時間)は、最も低い場合の値も上(0時間と−70時間)でした。 期待値と最も低い場合の両方を出すと、2つの見方で同じ結論かどうかを確かめられます。
よくある質問
Q. 意思決定マトリクスとは何ですか? A. 評価項目に重みを付け、案ごとの点数と掛けて合計し、案を比べる表です。評価項目が多く、選んだ理由を説明したいときに向いています。合計点は判断の材料で、決めるのは決定ルールに沿った人です。
Q. 多数決とコンセンサスの違いは何ですか? A. 多数決は票が多い案に決め、コンセンサスは全員が賛成するまで話し合います。多数決は短い時間で決まり、コンセンサスは時間がかかる分、全員が実行に関わる決まりに向きます。
Q. コンセンサスとコンセント(同意)の違いは何ですか? A. コンセンサスは「全員が賛成か」を、コンセントは「進められない理由があるか」を確かめます。コンセントは第一希望でなくても許容できれば決まるので、まず試して見直す進め方と相性がよい方法です。
Q. 意思決定マトリクスの重みが決められないときはどうすればよいですか? A. まず全部を同じ重みにして合計を出し、次に重みを1つずつ動かして順位が変わる項目を探します。順位が変わる項目だけを話し合えば、すべての重みを細かく決める必要はありません。
Q. 話し合っても決まらないときはどうすればよいですか? A. 決定者と期限が決まっているかを確かめます。決まっていなければ「〇日に〇〇さんが決める」と決め、決め方を相談後に決定へ切り替えます。戻せる決定なら、期間を区切って1つの案を試す方法もあります。
まとめ
- 意思決定のフレームワークは、評価の道具と決定ルールの2種類。 別々に選んで組み合わせます。
- 評価の道具は案の数と性質で選ぶ。 2〜5案を多くの項目で比べるなら意思決定マトリクスです。
- 合計点は SUMPRODUCT で出し、重みを変えて順位が入れ替わるかを確かめる。
- 感度を見ると、話し合う論点を絞れる。 今回の例では1項目の重みだけが結論を左右しました。
- 決定ルールは「元に戻せるか × 影響範囲」で選ぶ。 戻せるものは速く、戻しにくいものは材料をそろえて決めます。
- コンセントは「進められない理由があるか」を聞く決め方。 見直す日とセットで使います。
- 決めたら、内容・決定者・ルール・理由・見直す日を1行で残す。
参考・出典
- Sociocracy For All「Consent Decision Making」 https://www.sociocracyforall.org/consent-decision-making/ (2026-10-06 に確認。コンセント、異議、許容範囲の説明)
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(記載例)出典:株式会社RJC「意思決定フレームワーク一覧|決め方の選び方と意思決定マトリクス例」
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