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生成AI壁打ちプロンプト|要件定義でAIに質問させる型
生成AIとの壁打ちは、AIに答えを出させるのではなく、AIに1回1問ずつ質問させ、最後に「決まったこと・未決のこと・前提」を表にまとめさせると、要件の整理に使えます。 答えを持っているのは自分や関係者のほうで、AIの役目は、聞かれないと出てこない考えを質問で引き出すことです。
この記事では、その進め方を開始・深掘り・反対意見役・まとめの4本のプロンプトにしました。発散・収束・検証のどの段階でどの型を使うかの判断表、質問の観点一覧(誰が・何を・いつ・例外・件数・権限・非機能)、対話を終える条件、まとめの出力先になる要件一覧・未決事項一覧・用語集の雛形(Markdown 表と CSV)を、架空の備品貸出システムの記入例つきで載せています。扱うのはAIとの対話の進め方で、要件定義書そのものの書き方や、人への聞き取りの質問集は対象外です。
確認環境:Ubuntu 24.04.4、Python 3.11.15(確認日 2026-10-06)。雛形の CSV を読み込んで整合を確かめるコードは、この環境で実行した出力を載せています。プロンプトの組み立て方は、同日に開いた Anthropic の公式ドキュメントの記載に沿っています。この記事はテンプレート集で、AIの回答例は載せていません。表の記入例は手で書いたものです。
この記事の結論
- AIには質問させる:1回1問、選択肢つきで聞かせ、こちらは答えるだけにします。
- 型は4本:開始(質問させる)→ 深掘り(1点を掘る)→ 反対意見役(抜けと反論を出させる)→ まとめ(表にする)。
- 終わりを先に決める:観点を一巡したら、または決めた質問数に達したら、まとめに進みます。
- まとめは3つの表:要件一覧(決定・未決・前提の状態つき)、未決事項一覧、用語集。
壁打ちプロンプトの早見表
| 型 | AIの役目 | 使う段階 | こちらがすること | 次へ進む目安 |
|---|---|---|---|---|
| 開始 | 観点に沿って1回1問ずつ質問する | 発散〜収束の入口 | 短く答える。分からないことは「未決」と答える | 7つの観点を一巡した/15問に達した |
| 深掘り | 1つの答えについて、理由・条件・例外を続けて聞く | 収束 | 掘りたい答えを1つ指定する | 同じ答えの繰り返しになった/3問聞いた |
| 反対意見役 | 決まった内容に対して、抜け・矛盾・反論を挙げる | 検証 | 挙がった点を「直す・未決にする・対象外にする」に分ける | 新しい指摘が出なくなった/1回実施した |
| まとめ | 対話の内容を3つの表に整理する | 収束の出口 | 表を読み、自分の答えと違う行を直す | 表の整合を確かめた |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「生成AI壁打ちプロンプト|要件定義でAIに質問させる型」
なぜ「質問させる」のか
「備品貸出システムの要件を考えて」と頼むと、AIはそれらしい要件の一覧を返します。ただ、その一覧は一般的な内容で、自分の組織の人数、今の運用、例外の扱いは入っていません。これらを知っているのは自分や関係者です。
AIに質問させる形にすると、役割が入れ替わります。AIは観点の抜けを防ぐ聞き手になり、こちらは知っていることを答え、知らないことを「未決」と認める側になります。1回1問にするのは、一度に5問も6問も並ぶと、答えやすいものだけに答えて残りが流れてしまうためです。
Anthropic の公式ドキュメント(Prompting best practices)は、明確で具体的な指示を出すこと、順序が大事な手順は番号つきで書くこと、指示の背景や理由を添えること、役割を与えると振る舞いが目的に合いやすくなること、指示や入力が混ざるプロンプトはタグで区切ることを勧めています。下の4本は、この書き方に沿って、役割・進め方・終わり方を明示しています。
発散・収束・検証の違いと選び方
壁打ちには3つの段階があります。今どの段階にいるかを決めてから型を選ぶと、対話が散らかりません。
| 段階 | 目的 | AIに頼むこと | 出てくるもの | 向かない使い方 |
|---|---|---|---|---|
| 発散(アイデア出し) | 選択肢を増やす | 案を多く出す、別の見方を示す | 案の一覧、切り口 | 出た案をその場で評価する |
| 収束(要件の整理) | 決める、絞る | 質問する、条件や例外を確かめる | 決定・未決・前提の区別 | 新しい案を足し続ける |
| 検証(抜け漏れ・反論) | 穴を見つける | 反対の立場から指摘する | 抜け、矛盾、リスク | 指摘をすべて要件に取り込む |
| 今の状況 | 段階 | 使う型 |
|---|---|---|
| 何を作るかがまだぼんやりしている | 発散 | 開始プロンプトの「目的」を広く書き、観点を「誰が」「何を」に絞る |
| 作るものは決まっていて、細部を詰めたい | 収束 | 開始 → 深掘り |
| ある1点について答えがあいまいだった | 収束 | 深掘り |
| ひととおり決まり、抜けがないか確かめたい | 検証 | 反対意見役 |
| 人に見せる前に整理したい | 収束の出口 | まとめ |
| 対話が長くなり、何が決まったか分からなくなった | 収束の出口 | まとめ(途中でも使う) |
プロンプト1:開始(AIに1回1問ずつ質問させる)
波かっこの部分を差し替えて使います。
あなたは要件定義の聞き手です。答えを出すのではなく、私に質問をして、作るものの要件を引き出してください。
<題材>
{作りたいものを2〜3行で。例:社員が共用の備品を借りるための申請と返却を記録する社内システム}
</題材>
<分かっていること>
{今の運用、困っていること、決まっている条件を箇条書きで。無ければ「なし」}
</分かっていること>
<進め方>
1. 質問は1回に1つだけにする。
2. 質問には、答えやすいように選択肢を2〜3個添える。選択肢に当てはまらない答えも受け付ける。
3. 次の質問の前に、私の直前の答えを1行で言い直す。言い直しが違っていたら私が直す。
4. 観点は「誰が → 何を → いつ → 例外 → 件数 → 権限 → 非機能」の順に進める。1つの観点につき2問までとする。
5. 私が「分からない」「未決」と答えたら、理由を尋ねずに未決として記録し、次の質問に進む。
6. 要件や解決策を先回りして提案しない。提案したくなったら、質問の形にする。
</進め方>
<終わり方>
次のどれかに当てはまったら質問をやめ、「まとめに進みますか」とだけ尋ねる。
- 7つの観点を一巡した
- 質問が15問に達した
- 私が「まとめ」と書いた
</終わり方>
最初の質問から始めてください。
ポイントは3つです。選択肢を添えさせると、答えるのが速くなります。直前の答えを言い直させると、取り違えにその場で気づけます。終わり方を書いておくと、質問がいつまでも続きません。
プロンプト2:深掘り(1つの答えを掘る)
開始の対話の途中や後で、あいまいだった答えを1つ選んで使います。
次の答えについて、もう少し掘り下げたいです。聞き手として質問を続けてください。
<掘り下げる答え>
{例:貸出期間は最長14日にしたい}
</掘り下げる答え>
<進め方>
1. 質問は1回に1つ。最大3問までとする。
2. 次の順に聞く:その答えにした理由 → 当てはまらない場合(例外) → 当てはまらなかったときにどうするか。
3. 数字が出たら、その根拠(今の件数、決まり、経験からの目安のどれか)を確かめる。
4. 3問終わったら、「決まったこと」「未決のこと」「前提にしたこと」を1行ずつで言い直し、質問をやめる。
</進め方>
プロンプト3:反対意見役(抜けと反論を出させる)
ひととおり決まった後に使います。ここではAIに意見を言わせますが、取り込むかどうかを決めるのは自分です。
ここまでに決まった内容に対して、反対の立場から点検してください。
<決まった内容>
{要件一覧を貼る。まだ表にしていなければ、決まったことを箇条書きで}
</決まった内容>
<立場>
次の3つの立場から、それぞれ指摘を挙げてください。
- 毎日使う利用者(手間が増える点、迷う点)
- 管理する担当者(例外の対応、問い合わせが増える点)
- 作って運用する担当者(あいまいで作れない点、件数が増えたときに困る点)
</立場>
<決まり>
- 指摘は立場ごとに最大3件。重要だと考える順に並べる。
- 1件ごとに「どの要件についてか/何が起きうるか/確かめるための質問」を書く。
- 解決策は書かない。確かめるための質問で止める。
- 指摘が無い立場は「指摘なし」と書く。
- 一般論ではなく、上の内容に書かれていることだけを対象にする。
</決まり>
挙がった指摘は、次の3つに分けます。
| 分け方 | 条件 | 行き先 |
|---|---|---|
| 直す | すぐ答えられ、要件が変わる | 要件一覧の該当行を直す |
| 未決にする | 自分だけでは決められない | 未決事項一覧に足す |
| 対象外にする | 今回は扱わないと決める | 要件一覧に「対象外」として1行残す |
プロンプト4:まとめ(決まったこと・未決のこと・前提を表にする)
ここまでの対話を、次の3つの表にまとめてください。
<表1 要件一覧>
列:ID/区分/要件/状態/根拠/受け入れ条件
- ID は R-01 からの連番。
- 区分は「業務・機能・権限・非機能・対象外」のどれか。
- 状態は「決定・未決・前提」のどれか。私がはっきり答えたものだけを「決定」にする。私が数字や条件を仮に置いたものは「前提」にする。
- 根拠には、何問目の私の答えにもとづくかを書く。
- 受け入れ条件は、私が答えた内容から書ける場合だけ書く。書けない場合は空欄にする。
</表1 要件一覧>
<表2 未決事項一覧>
列:ID/内容/関連要件ID/決める人/期限/決まらない場合の仮置き
- ID は Q-01 からの連番。
- 状態が「未決」の要件には、必ず1行以上を対応させる。
- 決める人と期限は、私が答えていなければ空欄にする。
</表2 未決事項一覧>
<表3 用語集>
列:用語/意味/使わない言い方/例
- 対話の中で、同じものを別の言い方で呼んでいた語を拾う。
- 用語は1つに決め、ほかの言い方は「使わない言い方」に入れる。
</表3 用語集>
<決まり>
- 私が答えていないことを、推測で埋めない。
- 表は Markdown で出し、続けて同じ内容を CSV のコードブロックでも出す。
- 最後に、表にするときに迷った点を3件まで箇条書きにする。
</決まり>
「私がはっきり答えたものだけを決定にする」「推測で埋めない」の2行が要です。まとめの表は、読みやすく整っているぶん、答えていない内容が混ざっていても気づきにくくなります。
質問の観点一覧(誰が・何を・いつ・例外・件数・権限・非機能)
開始プロンプトの「進め方 4」で使っている7つの観点です。AIに任せきりにせず、自分でもこの表を見ながら、聞かれていない観点がないかを確かめます。 質問の例は、備品貸出システムを題材にしています。
| 順番 | 観点 | 確かめること | 質問の例 | 答えが入る表 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 誰が | 使う人の種類、人数、立場の違い | 備品を借りるのは社員全員ですか、特定の部署だけですか | 要件一覧(業務)、用語集 |
| 2 | 何を | 扱う対象、できること、対象外 | 貸し出す備品にはどんな種類がありますか | 要件一覧(機能・対象外) |
| 3 | いつ | きっかけ、順番、期限、時間帯 | 申請は借りる何日前までに出しますか | 要件一覧(機能) |
| 4 | 例外 | いつもと違う場合、取り消し、遅れ | 返却予定日を過ぎたときは、今どうしていますか | 要件一覧(機能)、未決事項一覧 |
| 5 | 件数 | 人数、対象の数、1か月あたりの回数、増え方 | 貸出は月に何件くらいありますか | 要件一覧(前提) |
| 6 | 権限 | 誰が何をしてよいか、承認、代理 | 備品の登録や廃棄は誰が行いますか | 要件一覧(権限) |
| 7 | 非機能 | 使える時間帯、速さ、保存期間、止まったときの扱い | システムを使えないと困る時間帯はいつですか | 要件一覧(非機能) |
順番,観点,確かめること,質問の例,答えが入る表
1,誰が,使う人の種類、人数、立場の違い,備品を借りるのは社員全員ですか、特定の部署だけですか,要件一覧(業務)、用語集
2,何を,扱う対象、できること、対象外,貸し出す備品にはどんな種類がありますか,要件一覧(機能・対象外)
3,いつ,きっかけ、順番、期限、時間帯,申請は借りる何日前までに出しますか,要件一覧(機能)
4,例外,いつもと違う場合、取り消し、遅れ,返却予定日を過ぎたときは、今どうしていますか,要件一覧(機能)、未決事項一覧
5,件数,人数、対象の数、1か月あたりの回数、増え方,貸出は月に何件くらいありますか,要件一覧(前提)
6,権限,誰が何をしてよいか、承認、代理,備品の登録や廃棄は誰が行いますか,要件一覧(権限)
7,非機能,使える時間帯、速さ、保存期間、止まったときの扱い,システムを使えないと困る時間帯はいつですか,要件一覧(非機能)
対話を終える条件
壁打ちは、終わりを決めておかないと続けられてしまいます。次のどれかに当てはまったら、まとめに進みます。
| 終える条件 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 観点を一巡した | 7つの観点すべてに1問以上答えた | 抜けの確認という目的を果たした |
| 質問数に達した | 15問(1問2分として30分) | 長くなるほど、前半の答えとの食い違いが増える |
| 「未決」が続いた | 3問続けて未決と答えた | 自分だけでは決められない段階に来ている。人に確かめる番 |
| 同じ内容の質問が出た | 言い回しを変えた同じ質問が2回出た | 新しい論点が尽きている |
3問続けて「未決」になったら、壁打ちをいったんやめる合図です。未決事項一覧に書き出し、決められる人に確かめてから再開します。
まとめの出力先:3つの表の雛形と記入例
架空の備品貸出システムを題材にした記入例です。人数や件数はすべて架空の値です。
要件一覧
| ID | 区分 | 要件 | 状態 | 根拠 | 受け入れ条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| R-01 | 業務 | 社員が共用の備品を借りる申請から返却までを記録する | 決定 | 2問目 | 申請・承認・貸出・返却の4つの記録が1件の貸出としてたどれる |
| R-02 | 機能 | 社員は備品を選び、貸出開始日と返却予定日を指定して申請できる | 決定 | 3問目 | 同じ備品で期間が重なる申請は登録されず、理由が表示される |
| R-03 | 機能 | 申請は申請者の上長が承認する | 未決 | 5問目 | |
| R-04 | 機能 | 返却予定日を過ぎた貸出は、申請者に通知する | 決定 | 7問目 | 返却予定日の翌日9時に、申請者へ通知が1通届く |
| R-05 | 機能 | 貸出の期間は最長14日とする | 未決 | 6問目 | |
| R-06 | 権限 | 備品の登録と廃棄は総務担当だけが行える | 決定 | 8問目 | 総務担当以外には登録と廃棄の操作が表示されない |
| R-07 | 非機能 | 社員は約300人、備品は約500点、貸出は月に約400件を想定する | 前提 | 9問目 | |
| R-08 | 非機能 | 平日の8時から20時まで使える | 決定 | 10問目 | 平日8時から20時の間、申請と承認ができる |
| R-09 | 対象外 | 備品の購入手続きは扱わない | 決定 | 11問目 | 購入に関する画面と項目が無い |
ID,区分,要件,状態,根拠,受け入れ条件
R-01,業務,社員が共用の備品を借りる申請から返却までを記録する,決定,2問目,申請・承認・貸出・返却の4つの記録が1件の貸出としてたどれる
R-02,機能,社員は備品を選び、貸出開始日と返却予定日を指定して申請できる,決定,3問目,同じ備品で期間が重なる申請は登録されず、理由が表示される
R-03,機能,申請は申請者の上長が承認する,未決,5問目,
R-04,機能,返却予定日を過ぎた貸出は、申請者に通知する,決定,7問目,返却予定日の翌日9時に、申請者へ通知が1通届く
R-05,機能,貸出の期間は最長14日とする,未決,6問目,
R-06,権限,備品の登録と廃棄は総務担当だけが行える,決定,8問目,総務担当以外には登録と廃棄の操作が表示されない
R-07,非機能,社員は約300人、備品は約500点、貸出は月に約400件を想定する,前提,9問目,
R-08,非機能,平日の8時から20時まで使える,決定,10問目,平日8時から20時の間、申請と承認ができる
R-09,対象外,備品の購入手続きは扱わない,決定,11問目,購入に関する画面と項目が無い
未決事項一覧
| ID | 内容 | 関連要件ID | 決める人 | 期限 | 決まらない場合の仮置き |
|---|---|---|---|---|---|
| Q-01 | 上長が不在のとき、誰が代わりに承認するか | R-03 | 総務課長 | 2026-10-13 | 上長のさらに上の役職者が承認する |
| Q-02 | 14日を超える貸出を認めるか | R-05 | 総務課長 | 2026-10-13 | 14日までとし、続けて使う場合は申請し直す |
| Q-03 | 続けて借りる申請の回数に上限を設けるか | R-05 | 総務担当 | 2026-10-20 | 1回までとする |
ID,内容,関連要件ID,決める人,期限,決まらない場合の仮置き
Q-01,上長が不在のとき、誰が代わりに承認するか,R-03,総務課長,2026-10-13,上長のさらに上の役職者が承認する
Q-02,14日を超える貸出を認めるか,R-05,総務課長,2026-10-13,14日までとし、続けて使う場合は申請し直す
Q-03,続けて借りる申請の回数に上限を設けるか,R-05,総務担当,2026-10-20,1回までとする
「決まらない場合の仮置き」の列があると、未決のままでも先の作業を止めずに進められます。仮置きで進めたものは、要件一覧では「前提」として扱います。
用語集
| 用語 | 意味 | 使わない言い方 | 例 |
|---|---|---|---|
| 貸出 | 備品を社員に渡してから返却されるまでの1件 | レンタル/貸し出し | 貸出1件につき申請は1つ |
| 備品 | 総務が管理番号を付けて管理している共用の機器 | 機材/資産 | ノートPC、プロジェクター |
| 申請者 | 貸出を申請した社員 | 借り手/依頼者 | 申請者に通知する |
| 上長 | 申請者が所属する課の課長 | 上司 | 上長が承認する |
| 返却予定日 | 申請のときに指定する、備品を返す予定の日 | 返却期限/締切 | 返却予定日の翌日に通知する |
用語,意味,使わない言い方,例
貸出,備品を社員に渡してから返却されるまでの1件,レンタル/貸し出し,貸出1件につき申請は1つ
備品,総務が管理番号を付けて管理している共用の機器,機材/資産,ノートPC、プロジェクター
申請者,貸出を申請した社員,借り手/依頼者,申請者に通知する
上長,申請者が所属する課の課長,上司,上長が承認する
返却予定日,申請のときに指定する、備品を返す予定の日,返却期限/締切,返却予定日の翌日に通知する
まとめの表をコードで確かめる
AIがまとめた表は、表どうしのつながりが切れていることがあります。未決の要件に対応する未決事項が無い、存在しない要件IDを指している、用語集で決めた言い方と違う語が要件に残っている、といった点です。これらは機械的に確かめられます。
上の3つの CSV を、requirements.csv、open_issues.csv、glossary.csv という名前で同じフォルダに保存し、次の check_summary.py を実行します。
import csv
import sys
from collections import Counter
folder = sys.argv[1] if len(sys.argv) > 1 else "."
def load(name: str) -> list[dict]:
with open(f"{folder}/{name}", encoding="utf-8", newline="") as f:
return list(csv.DictReader(f))
reqs = load("requirements.csv")
issues = load("open_issues.csv")
terms = load("glossary.csv")
problems = []
print("要件", len(reqs), "件", dict(Counter(r["状態"] for r in reqs)))
print("未決事項", len(issues), "件 / 用語", len(terms), "件")
for rows, label in ((reqs, "要件"), (issues, "未決事項")):
for key, count in Counter(r["ID"] for r in rows).items():
if count > 1:
problems.append(f"{label}のIDが重複: {key}")
req_ids = {r["ID"] for r in reqs}
linked = set()
for i in issues:
for rid in i["関連要件ID"].split("/"):
linked.add(rid)
if rid not in req_ids:
problems.append(f"{i['ID']} の関連要件ID {rid} が要件一覧に無い")
for r in reqs:
if r["状態"] == "未決" and r["ID"] not in linked:
problems.append(f"{r['ID']} は未決だが、未決事項一覧に対応する行が無い")
if r["状態"] == "決定" and r["ID"] in linked:
problems.append(f"{r['ID']} は決定だが、未決事項が残っている")
if r["状態"] == "決定" and not r["受け入れ条件"]:
problems.append(f"{r['ID']} は決定だが、受け入れ条件が空")
for t in terms:
for ng in filter(None, t["使わない言い方"].split("/")):
for r in reqs:
if ng in r["要件"] or ng in r["受け入れ条件"]:
problems.append(f"{r['ID']} に「{ng}」がある(用語集では「{t['用語']}」)")
print("指摘", len(problems), "件")
for p in problems:
print(" -", p)
記入例の CSV に対する実行結果です。
python3 check_summary.py .
要件 9 件 {'決定': 6, '未決': 2, '前提': 1}
未決事項 3 件 / 用語 5 件
指摘 0 件
次に、表のつながりが切れた場合を確かめます。記入例を写したフォルダ broken で、3か所を書き換えました。R-03 の状態を「決定」に、Q-03 の関連要件IDを「R-10」に、R-04 の「返却予定日」を「返却期限」にしています。
python3 check_summary.py broken
要件 9 件 {'決定': 7, '未決': 1, '前提': 1}
未決事項 3 件 / 用語 5 件
指摘 4 件
- Q-03 の関連要件ID R-10 が要件一覧に無い
- R-03 は決定だが、未決事項が残っている
- R-03 は決定だが、受け入れ条件が空
- R-04 に「返却期限」がある(用語集では「返却予定日」)
書き換えた3か所から、4件の指摘が出ました。R-03 を「決定」に変えただけで2件(未決事項が残っている、受け入れ条件が空)出ているとおり、状態の列を1つ変えると、ほかの表や列とのつながりも一緒に変わります。
壁打ち・聞き取り・要件定義書の違い
| 項目 | AIとの壁打ち | 人への聞き取り | 要件定義書 |
|---|---|---|---|
| 相手 | AI | 利用者、依頼する側の担当者 | 読み手(合意する相手) |
| 目的 | 自分の考えを整理し、聞くことを洗い出す | 事実と要望を集める | 合意した内容を残す |
| 得られるもの | 自分が知っていること・知らないことの区別 | 自分が知らなかった事実 | 合意の記録 |
| 得られないもの | 自分も知らない事実、決める権限 | (相手の時間が要る) | (書く前に中身が要る) |
| 向いている時期 | 聞き取りの前の準備、聞き取り後の整理 | 壁打ちで未決事項が見えた後 | 未決事項が減った後 |
| 状況 | 選ぶもの |
|---|---|
| 何を聞けばよいかが分からない | AIとの壁打ち(開始) |
| 聞くことは分かっているが、答えを自分は知らない | 人への聞き取り |
| 聞き取りのメモが散らかっている | AIとの壁打ち(まとめ) |
| 決まった内容を関係者と合意したい | 要件定義書 |
壁打ちで出てきた未決事項一覧は、そのまま次の聞き取りの質問リストになります。
なお、AIに入力してよい情報の範囲は、自社の規程と、使うサービスの利用条件に従ってください。題材の説明は、組織名や個人名を書かなくても成り立ちます。
確かめて分かったこと
- 状態を1か所変えると、指摘が2件出ました。 R-03 を「未決」から「決定」に書き換えると、「未決事項が残っている」「受け入れ条件が空」の両方に当たりました。状態・未決事項・受け入れ条件は一緒に動かす必要があります。
- 用語のゆれは、用語集に「使わない言い方」の列があって初めて機械的に見つけられました。 用語と意味だけの用語集では、要件に「返却期限」と書かれていても照合する相手がありません。
- 「前提」の行は受け入れ条件が空でも指摘に入れませんでした。 件数の想定のように、確かめる対象ではなく設計の出発点になる行があるためです。「決定」と「前提」を分けておくと、空欄の意味を区別できます。
- 関連要件IDを複数書けるようにすると、区切り文字を決める必要がありました。 コードでは「/」で区切っています。カンマにすると CSV の列の区切りと重なるためです。
- Anthropic の Prompting best practices には、「AIに質問させる」ことを扱う独立した節はありませんでした(2026-10-06 に開いたページの節の一覧で確認)。この記事の4本は、同ページの「明確に指示する」「背景を添える」「役割を与える」「タグで区切る」という一般的な勧めを、質問させる進め方に当てはめたものです。
よくある質問
Q. 生成AIの壁打ちとは何ですか? A. 自分の考えをAIに投げ、返ってきた質問や指摘を手がかりに考えを整理することです。要件定義では、AIに答えを出させるより、AIに質問させて自分が答える形にすると、決まっていることと決まっていないことが分かれます。
Q. AIが質問せずに答えを書き始めてしまうときは? A. 「答えを出すのではなく質問をする」「質問は1回に1つ」「提案したくなったら質問の形にする」を進め方に書きます。それでも提案が始まったら、「質問に戻ってください。次の質問を1つだけ」と返します。
Q. 壁打ちとブレインストーミングの違いは? A. ブレインストーミングは案を増やす発散の進め方で、壁打ちは発散にも収束にも検証にも使える対話の形です。この記事の4本は、主に収束と検証に向けています。
Q. 壁打ちだけで要件定義はできますか? A. できません。AIとの対話で分かるのは、自分が知っていることと知らないことの区別までです。知らないことは人に確かめ、決まった内容は関係者と合意して文書に残します。
Q. 質問は何問くらいで終えればよいですか? A. 7つの観点を一巡するか、15問に達したら終えるのが目安です。3問続けて「未決」と答えたら、その時点でまとめに進み、決められる人に確かめます。
まとめ
- AIに1回1問ずつ質問させる:答えを出させるのではなく、自分が答える側に回る。
- 型は4本:開始 → 深掘り → 反対意見役 → まとめ。
- 段階を決めてから型を選ぶ:発散・収束・検証で、AIに頼むことが変わる。
- 観点は7つ:誰が・何を・いつ・例外・件数・権限・非機能。
- 終わりを先に決める:一巡、15問、未決が3問続いたら、まとめへ。
- まとめは3つの表:要件一覧(決定・未決・前提)、未決事項一覧、用語集。表どうしのつながりはコードで確かめられる。
- 未決事項一覧は、次の聞き取りの質問リストになる。
参考・出典
- Anthropic「Prompting best practices」https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices (2026-10-06 閲覧)
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「生成AI壁打ちプロンプト|要件定義でAIに質問させる型」
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