- マネジメント
ROIの計算方法|システム投資の回収期間・NPVをExcel数式で
ROI(投資利益率)とは、投資した金額に対してどれだけの利益(効果)が得られたかを割合で表す指標で、「(効果−費用)÷費用×100」で計算します。 ただしシステム投資は、最初に大きな費用が出て効果が数年かけて積み上がるため、単年のROIだけを見ると実態より小さくも大きくも見えます。
この記事では、初期費用・年間運用費・年間効果を5年分並べた計算表を1つ用意し、ROI・回収期間・NPV(正味現在価値)・IRR(内部利益率)を同じ表から求めます。表はタブ区切りでそのまま表計算ソフトに貼れる形にし、数式の結果はPythonでも検算しました。
確認環境(確認日 2026-10-06):数式は LibreOffice Calc 24.2.7 のヘッドレス実行で計算し、Python 3.11 の検算コードと一致することを確かめました。Excel の NPV 関数・IRR 関数の仕様は Microsoft サポートのページの記載を引用しています。金額・人数・時間はすべて架空の例です。投資の勧めや会計・税務の助言ではなく、計算の組み立て方の解説です。
この記事の結論
- 単年のROIだけでは判断できない。同じ投資でも1年目だけなら−72.8%、5年間なら46.5%になる
- 回収期間で「速さ」、NPVで「規模」、IRRで「利回り」を見る。3つは答える問いが違う
- NPV関数は、渡した最初の値を1期目の期末として割り引く。0年目の初期費用は範囲に入れず、関数の外で足す
- 効果は7割・5割に見積もった場合も並べる。この記事の例では、効果7割でROIはプラスなのにNPVはマイナスになった
- 計算の前に、効果を「削減時間・ミス件数・保守費」の式で金額に直す
ROI・回収期間・NPV・IRRの早見表
この記事の計算例(初期費用600万円、年間運用費80万円、5年間、割引率5%)の結果もあわせて示します。
| 指標 | 答える問い | 計算式 | 表計算の数式 | 例の結果 |
|---|---|---|---|---|
| ROI | 使ったお金に対して何%増えたか | (効果合計−費用合計)÷費用合計 | =(B9-B10)/B10 |
46.5% |
| 回収期間 | 何年で元が取れるか | 累計が0以上になるまでの年数 | =COUNTIF(B6:G6,"<0") ほか |
4年目(3.06年) |
| NPV | お金の時間的な価値を考えて、いくら増えるか | 各年の純額を割引率で割り引いた合計 | =NPV(B8,C5:G5)+B5 |
3,105,030円 |
| IRR | 年あたり何%の利回りに相当するか | NPVが0になる割引率 | =IRR(B5:G5) |
20.36% |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「ROIの計算方法|システム投資の回収期間・NPVをExcel数式で」
計算の題材と前提
架空の会社が「社内問い合わせ管理システム」を導入する場合を考えます。メールと表計算で受けていた社内の問い合わせを、1つのシステムで受け付けて記録します。
| 前提 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 6,000,000円 | 導入時(0年目)に支出 |
| 年間運用費 | 800,000円 | 1年目から毎年 |
| 年間効果(1年目) | 1,850,000円 | 定着の途中のため、時間とミスの効果を半分で見込む |
| 年間効果(2〜5年目) | 3,200,000円 | 下の金額換算表の合計 |
| 評価期間 | 5年 | システムを使う見込みの年数 |
| 割引率 | 5% | 社内で決められた率を使う(ここでは例) |
効果の金額換算表(削減時間・ミス件数・保守費)
ROIの分子になる「効果」は、まず金額に直す必要があります。システム投資の効果は、時間・件数・費用の3種類の式でほぼ表せます。
| 効果の種類 | 式 | この例の数字 | 年間の金額 |
|---|---|---|---|
| 作業時間の削減 | 人数 × 月の削減時間 × 時間単価 × 12 | 30人 × 3時間 × 2,000円 × 12 | 2,160,000円 |
| ミス・手戻りの削減 | 月に減る件数 × 1件の対応時間 × 時間単価 × 12 | 15件 × 1.5時間 × 2,000円 × 12 | 540,000円 |
| 保守費・利用料の削減 | 不要になる既存の年間費用 | 既存の仕組みの保守費 | 500,000円 |
| 合計 | 3,200,000円 |
タブ区切り版(数式入り。A1セルに貼り付け):
効果の種類 人数・件数 月の時間 時間単価 年間の金額
作業時間の削減 30 3 2000 =B2*C2*D2*12
ミス・手戻りの削減 15 1.5 2000 =B3*C3*D3*12
保守費・利用料の削減 500000
合計 =SUM(E2:E4)
金額に直すときの注意点は次のとおりです。
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 時間単価 | 社内で決められた換算単価を使う。決まりが無ければ管理部門に確認する |
| 削減時間 | 「現在の時間−導入後の時間」。導入後の時間は試用やデモで測る |
| 1年目の効果 | 利用が定着するまでは満額にならない前提で、割合を下げて置く |
| 金額にしにくい効果 | 回答の速さ、記録が残ることなどは、金額の表とは別に「数字にしない効果」として書く |
| 二重に数えない | 同じ時間を「作業時間の削減」と「ミスの削減」の両方に入れない |
5年分の計算表
前提を年ごとに並べ、純キャッシュフロー(その年の効果−費用) と 累計 を出します。
| 項目 | 0年目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 初期費用 | 6,000,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 年間運用費 | 0 | 800,000 | 800,000 | 800,000 | 800,000 | 800,000 |
| 年間効果 | 0 | 1,850,000 | 3,200,000 | 3,200,000 | 3,200,000 | 3,200,000 |
| 純キャッシュフロー | −6,000,000 | 1,050,000 | 2,400,000 | 2,400,000 | 2,400,000 | 2,400,000 |
| 累計 | −6,000,000 | −4,950,000 | −2,550,000 | −150,000 | 2,250,000 | 4,650,000 |
累計は3年目まではマイナスで、4年目にプラスへ転じます。
表計算ソフトに貼れる計算表(数式入り)
次のタブ区切りを A1 セルに貼り付けると、5行目から下が自動で計算されます。2〜4行目と B8 を自社の数字に置き換えてください。
年 0 1 2 3 4 5
初期費用 6000000 0 0 0 0 0
年間運用費 0 800000 800000 800000 800000 800000
年間効果 0 1850000 3200000 3200000 3200000 3200000
純キャッシュフロー =B4-B2-B3 =C4-C2-C3 =D4-D2-D3 =E4-E2-E3 =F4-F2-F3 =G4-G2-G3
累計 =B5 =B6+C5 =C6+D5 =D6+E5 =E6+F5 =F6+G5
割引率 0.05
効果合計 =SUM(B4:G4)
費用合計 =SUM(B2:G3)
ROI =(B9-B10)/B10
累計がプラスに転じる年 =IF(G6<0,"期間内に回収しない",COUNTIF(B6:G6,"<0"))
回収期間(年) =IF(G6<0,"期間内に回収しない",B12-1+(-INDEX(B6:G6,B12))/INDEX(B5:G5,B12+1))
NPV =NPV(B8,C5:G5)+B5
IRR =IRR(B5:G5)
LibreOffice Calc 24.2.7 での計算結果:
| セル | 項目 | 計算結果 |
|---|---|---|
| B9 | 効果合計 | 14650000 |
| B10 | 費用合計 | 10000000 |
| B11 | ROI | 0.465 |
| B12 | 累計がプラスに転じる年 | 4 |
| B13 | 回収期間(年) | 3.0625 |
| B14 | NPV | 3105029.72379968 |
| B15 | IRR | 0.203555504608548 |
ROIの計算式
ROI(%)=(効果合計 − 費用合計)÷ 費用合計 × 100
=(14,650,000 − 10,000,000)÷ 10,000,000 × 100
= 46.5%
費用合計には、初期費用だけでなく評価期間中の運用費も入れます。ROIは「何年分で計算したか」で値が変わるため、必ず期間を添えて書きます。
| 何年目までで計算するか | 効果合計 | 費用合計 | ROI |
|---|---|---|---|
| 1年目まで | 1,850,000 | 6,800,000 | −72.8% |
| 2年目まで | 5,050,000 | 7,600,000 | −33.6% |
| 3年目まで | 8,250,000 | 8,400,000 | −1.8% |
| 4年目まで | 11,450,000 | 9,200,000 | 24.5% |
| 5年目まで | 14,650,000 | 10,000,000 | 46.5% |
同じ投資でも、1年目だけなら−72.8%、5年間なら46.5%です。「ROI 46.5%(5年間)」のように期間を付けると、読み手が条件をそろえて比べられます。
回収期間の求め方(累計がプラスに転じる年)
回収期間は、累計が0以上になるまでの年数です。
何年目に転じるかは、累計の行にマイナスの値がいくつあるかを数えると求まります。0年目から数えているため、マイナスの個数がそのまま「プラスに転じる年」になります。
=COUNTIF(B6:G6,"<0")
この例では −6,000,000/−4,950,000/−2,550,000/−150,000 の4個がマイナスなので、結果は4(4年目)です。累計が一度プラスになったあと再びマイナスになる表では使えないため、途中で追加の投資がある場合は累計の行を目で確かめます。
年の途中まで含めた回収期間は、転じる前の年の残り(マイナスの累計)を、転じる年の純キャッシュフローで割って足します。
回収期間 = 3年 + 150,000 ÷ 2,400,000 = 3.0625年(約3年1か月)
評価期間内に回収しない場合は COUNTIF の結果が列数と同じになり、INDEX が範囲の外を指します。計算表の数式では IF(G6<0,"期間内に回収しない", …) で先に判定しています。
NPV(正味現在価値)の求め方
NPVは、将来の金額を割引率で現在の価値に直してから合計した値です。NPVがプラスなら、割引率で求められる水準を上回る投資と読めます。
NPV = CF0 + CF1÷(1+r)^1 + CF2÷(1+r)^2 + … + CF5÷(1+r)^5
= −6,000,000 + 1,050,000÷1.05 + 2,400,000÷1.05^2 + … + 2,400,000÷1.05^5
= 3,105,030円
NPV関数は1期目の期末から割り引く
表計算の NPV 関数には、押さえておきたい前提があります。Microsoft サポートの NPV 関数のページには、次の記載があります。
- 「値 1, 値 2, ... は定期的に、各期末に発生するものです」
- 「最初のキャッシュ フローが 1 期目の期首に発生する場合、このキャッシュ フローを引数として指定せずに、NPV 関数の計算結果に加算する必要があります」
つまり、0年目(導入時)の初期費用は NPV 関数の範囲に入れず、関数の外で足します。
| 書き方 | 数式 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 初期費用を外で足す | =NPV(B8,C5:G5)+B5 |
3,105,030 | 0年目は割り引かない |
| 0年目から全部を範囲に入れる | =NPV(B8,B5:G5) |
2,957,171 | すべてが1年ずつ余分に割り引かれる |
| 関数を使わずに式で書く | =B5+C5/(1+B8)^1+D5/(1+B8)^2+E5/(1+B8)^3+F5/(1+B8)^4+G5/(1+B8)^5 |
3,105,030 | 1行目と一致 |
全部を範囲に入れた場合の 2,957,171 は、正しい値 3,105,030 を 1.05 で割った値と同じで、差は147,859円でした。初期費用の支払いが1年後になる契約であれば2行目の書き方が合いますが、導入時に支払う場合は1行目を使います。
同じページには、空白セル・論理値・文字列は無視されるという記載もあります。効果が0の年を空白にすると、その年が詰められて以降の年が1年早く計算されるため、0の年には 0 を入力します。
割引率を変えたときのNPV
割引率は結果を大きく動かします。社内で決められた率が無い場合は、複数の率で計算して並べます。
| 割引率 | NPV |
|---|---|
| 0% | 4,650,000 |
| 3% | 3,680,618 |
| 5% | 3,105,030 |
| 8% | 2,332,504 |
| 10% | 1,870,616 |
| 20% | 52,469 |
| 25% | −625,728 |
割引率0%のNPVは、累計の最終値(4,650,000)と同じになります。20%と25%の間でNPVの符号が変わっており、この境目がIRRです。
IRR(内部利益率)の求め方
IRRは、NPVがちょうど0になる割引率です。Microsoft サポートの IRR 関数のページにも「IRR 関数の計算結果は、正味現在価値が 0 (ゼロ) であるときの利益率となります」とあります。
=IRR(B5:G5)
結果は 0.2036(20.36%)でした。IRR 関数には 0年目の初期費用も含めた範囲を渡します(NPV 関数と扱いが違う点です)。求めたIRRを割引率にして =NPV(B15,C5:G5)+B5 を計算すると、0になることを確かめられます。
同じページで確認できた、IRR 関数の前提は次のとおりです。
| 項目 | Microsoft サポートの記載 |
|---|---|
| 範囲の条件 | 正の値と負の値が少なくとも1つずつ含まれている必要がある |
| 推定値 | 省略すると 0.1(10%)が指定されたと見なされる |
| 計算の方法 | 反復計算。20回行っても結果が得られない場合は #NUM! が返される |
| #NUM! のとき | 推定値を変えてやり直す |
IRRは割合なので、投資の大きさは表しません。小さな投資で高いIRRの案と、大きな投資で中くらいのIRRの案を比べるときは、NPVも並べて見ます。
Pythonで検算する
表計算の結果を、関数に頼らない計算で確かめます。標準ライブラリだけで動きます。
# 5年間の計算表(金額は架空の例、単位は円)
initial = 6_000_000 # 初期費用(0年目)
running = 800_000 # 年間運用費
effect = [1_850_000, 3_200_000, 3_200_000, 3_200_000, 3_200_000] # 年間効果(1〜5年目)
rate = 0.05 # 割引率
def flows(scale=1.0):
return [-initial] + [round(e * scale) - running for e in effect]
def npv(rate, cf): # cf[0] は0年目(割り引かない)
return sum(c / (1 + rate) ** t for t, c in enumerate(cf))
def irr(cf, lo=-0.99, hi=1.0): # 二分法。NPVが0になる率を探す
if npv(lo, cf) * npv(hi, cf) > 0:
return None
for _ in range(100):
mid = (lo + hi) / 2
if npv(lo, cf) * npv(mid, cf) <= 0:
hi = mid
else:
lo = mid
return (lo + hi) / 2
def payback(cf): # 累計が0以上になる年と、月割りの回収期間
total = 0
for t, c in enumerate(cf):
if total + c >= 0 and t > 0:
return t, (t - 1) + (-total) / c
total += c
return None, None
def report(label, scale):
cf = flows(scale)
cum = [sum(cf[:i + 1]) for i in range(len(cf))]
gain = sum(round(e * scale) for e in effect)
cost = initial + running * len(effect)
year, pb = payback(cf)
r = irr(cf)
print(label)
print(" 純キャッシュフロー:", cf)
print(" 累計:", cum)
print(f" 効果合計 {gain:,} / 費用合計 {cost:,} / ROI {(gain - cost) / cost:.1%}")
print(" 回収:", f"{year}年目({pb:.2f}年)" if year else "5年以内に回収しない")
print(f" NPV(割引率{rate:.0%}) {npv(rate, cf):,.0f}")
print(" IRR:", f"{r:.2%}" if r is not None else "求まらない")
report("効果100%", 1.0)
report("効果70%", 0.7)
report("効果50%", 0.5)
実行結果:
効果100%
純キャッシュフロー: [-6000000, 1050000, 2400000, 2400000, 2400000, 2400000]
累計: [-6000000, -4950000, -2550000, -150000, 2250000, 4650000]
効果合計 14,650,000 / 費用合計 10,000,000 / ROI 46.5%
回収: 4年目(3.06年)
NPV(割引率5%) 3,105,030
IRR: 20.36%
効果70%
純キャッシュフロー: [-6000000, 495000, 1440000, 1440000, 1440000, 1440000]
累計: [-6000000, -5505000, -4065000, -2625000, -1185000, 255000]
効果合計 10,255,000 / 費用合計 10,000,000 / ROI 2.5%
回収: 5年目(4.82年)
NPV(割引率5%) -665,554
IRR: 1.27%
効果50%
純キャッシュフロー: [-6000000, 125000, 800000, 800000, 800000, 800000]
累計: [-6000000, -5875000, -5075000, -4275000, -3475000, -2675000]
効果合計 7,325,000 / 費用合計 10,000,000 / ROI -26.8%
回収: 5年以内に回収しない
NPV(割引率5%) -3,179,276
IRR: -15.42%
ROI・回収期間・NPV・IRRのすべてが、表計算の結果と一致しました。
効果を7割・5割に見積もった感度表
効果の見込みは外れることがあります。見込みどおり・7割・5割の3通りを並べると、どこまで下振れしても成り立つ投資かを示せます。運用費は効果に関係なくかかるため、そのままにしています。
| 指標 | 効果100% | 効果70% | 効果50% |
|---|---|---|---|
| 効果合計(5年) | 14,650,000 | 10,255,000 | 7,325,000 |
| 費用合計(5年) | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
| ROI(5年) | 46.5% | 2.55% | −26.75% |
| 累計がプラスに転じる年 | 4年目 | 5年目 | 5年以内に回収しない |
| 回収期間 | 3.06年 | 4.82年 | ― |
| NPV(割引率5%) | 3,105,030 | −665,554 | −3,179,276 |
| IRR | 20.36% | 1.27% | −15.42% |
| 読み取り | 進める根拠になる | 元は取れるが、割引率5%の水準には届かない | 見直しが必要 |
タブ区切り版:
指標 効果100% 効果70% 効果50%
効果合計(5年) 14650000 10255000 7325000
費用合計(5年) 10000000 10000000 10000000
ROI(5年) 0.465 0.0255 -0.2675
累計がプラスに転じる年 4 5 期間内に回収しない
回収期間(年) 3.0625 4.8229 期間内に回収しない
NPV(割引率5%) 3105030 -665554 -3179276
IRR 0.2036 0.0127 -0.1542
表計算で感度を出すときは、年間効果の行(C4〜G4)を =ROUND(1850000*0.7,0) のように倍率を掛けた式に置き換えます。Calc でこの置き換えを行い、上の表と同じ値になることを確かめました。
効果が何割まで下がるとNPVが0になるかも計算しました。割引率5%の場合、境目は効果75.3%です。「見込みの4分の3を下回ると、割引率5%の水準に届かなくなる」と一言添えると、判断する人が余裕の大きさをつかめます。
# NPVが0になる効果の割合と、割引率を変えたときのNPV
initial, running = 6_000_000, 800_000
effect = [1_850_000, 3_200_000, 3_200_000, 3_200_000, 3_200_000]
def npv(rate, scale=1.0):
return -initial + sum((e * scale - running) / (1 + rate) ** t
for t, e in enumerate(effect, start=1))
lo, hi = 0.0, 1.0
for _ in range(60):
mid = (lo + hi) / 2
if npv(0.05, mid) < 0:
lo = mid
else:
hi = mid
print(f"NPVが0になる効果の割合(割引率5%): {hi:.1%}")
for r in (0.0, 0.03, 0.05, 0.08, 0.10, 0.20, 0.25):
print(f"割引率 {r:>4.0%}: NPV {npv(r):>12,.0f}")
実行結果:
NPVが0になる効果の割合(割引率5%): 75.3%
割引率 0%: NPV 4,650,000
割引率 3%: NPV 3,680,618
割引率 5%: NPV 3,105,030
割引率 8%: NPV 2,332,504
割引率 10%: NPV 1,870,616
割引率 20%: NPV 52,469
割引率 25%: NPV -625,728
ROI・ROAS・回収期間・NPV・IRRの違い
| 指標 | 単位 | 見ているもの | 時間の価値 | 得意なこと | 気をつけること |
|---|---|---|---|---|---|
| ROI | % | 費用に対する利益の割合 | 考えない | 一言で伝えやすい | 期間を添えないと比べられない |
| ROAS | % | 広告費に対する売上の割合(売上÷広告費×100) | 考えない | 広告の効き目の比較 | 利益ではなく売上を見る指標で、システム投資には使わない |
| 回収期間 | 年・月 | 元が取れるまでの速さ | 考えない | 資金の戻りの早さを示す | 回収後にどれだけ増えるかは表さない |
| NPV | 円 | 割り引いたあとの増加額 | 考える | 投資の規模を金額で示す | 割引率の置き方で結果が変わる |
| IRR | % | 年あたりの利回り | 考える | 割引率を決めずに比べられる | 投資の大きさは表さない |
どの場面でどれを使うかの判断基準
| 場面 | 使う指標 |
|---|---|
| 稟議書や報告で、効果を一言で伝えたい | ROI(期間を添える)と回収期間 |
| 1〜2年で使い終わる小さな投資 | ROI と回収期間で足りる |
| 3年以上使うシステムで、初期費用が大きい | NPV と回収期間 |
| 規模の違う複数の案から1つを選ぶ | NPV(金額の大きい案を選ぶ) |
| 社内に「この利回り以上」という基準がある | IRR を基準と比べる |
| 資金の戻りの早さを重く見る | 回収期間 |
| 効果の見込みに幅がある | 感度表(100%・70%・50%)を全指標に付ける |
| 広告や販促の効き目を比べたい | ROAS |
計算書にまとめるときのひな形
計算結果を1枚にまとめるときは、前提・結果・感度の順に置きます。
## 投資効果の計算(社内問い合わせ管理システム)
### 前提
- 初期費用 6,000,000円/年間運用費 800,000円/評価期間 5年/割引率 5%
- 年間効果 3,200,000円(作業時間 2,160,000円、ミス対応 540,000円、保守費 500,000円)
- 1年目は定着の途中として 1,850,000円で見込む
### 結果
| 指標 | 値 |
|---|---|
| ROI(5年間) | 46.5% |
| 回収期間 | 3.06年(4年目に累計がプラス) |
| NPV(割引率5%) | 3,105,030円 |
| IRR | 20.36% |
### 効果が下振れした場合
- 効果70%:ROI 2.55%、回収 4.82年、NPV −665,554円
- 効果50%:5年以内に回収しない
- NPVが0になる境目は効果75.3%
### 効果の確かめ方
- 導入3か月後と12か月後に、問い合わせ1件の対応時間と差し戻し件数を測る
確かめて分かったこと
- NPV関数に0年目から全部を渡すと、結果が1.05分の1になる:正しい 3,105,030 に対して 2,957,171 となり、147,859円小さく出ました。エラーにはならないため、数式を見ないと気づけません。
- IRR関数には0年目を含め、NPV関数には含めない:同じ表でも範囲の取り方が違います。
=IRR(B5:G5)と=NPV(B8,C5:G5)+B5を並べて書いておくと取り違えを防げます。 - ROIがプラスでもNPVがマイナスになることがある:効果70%のケースは、ROIが2.55%、累計も5年目にプラスですが、割引率5%のNPVは−665,554円でした。「元が取れる」と「求める水準を上回る」は別の判定です。
- 割引率0%のNPVは累計の最終値と同じ:どちらも4,650,000でした。割引率を0にして累計と一致するかを見ると、数式の範囲の誤りを見つけやすくなります。
- IRRがマイナスでも値は返る:効果50%のケースで、Calc の IRR 関数は −0.1542 を返しました。エラーにならないので、符号まで見る必要があります。
- Pythonの「.1%」表示では 2.55% が 2.5% と表示された:0.0255 は浮動小数点の内部では 2.55 よりわずかに小さい値として持たれるためです。境目の値は桁数を増やして表示するか、表計算の値(0.0255)と突き合わせます。
よくある質問
Q. ROIとは何ですか? A. 投資した費用に対して得られた利益(効果)の割合で、(効果−費用)÷費用×100 で求めます。システム投資では、費用に初期費用と評価期間中の運用費を入れ、何年間で計算したかを添えます。
Q. ROIと回収期間の違いは? A. ROIは「どれだけ増えたか」の割合、回収期間は「何年で元が取れるか」の速さです。ROIが高くても回収に時間がかかる投資があるため、2つを並べて示します。
Q. NPV関数の結果が手計算と合わないときは? A. 0年目の初期費用を NPV 関数の範囲に入れていないかを確かめます。NPV 関数は最初の値を1期目の期末として割り引くため、導入時の支出は関数の外で足します。空白セルが範囲にある場合は 0 を入力します。
Q. IRR関数が #NUM! になるときは? A. 範囲に正の値と負の値が両方あるかを確かめ、あれば第2引数の推定値を変えて計算し直します。Microsoft サポートの記載では、推定値の既定は10%で、20回の反復で結果が得られないと #NUM! が返されます。
Q. 割引率は何%にすればよいですか? A. 社内で決められた率があればそれを使います。決まりが無い場合は、経理・財務の担当に確認したうえで、複数の率(例:3%・5%・8%)のNPVを並べて示す方法があります。
まとめ
- ROI=(効果合計−費用合計)÷費用合計×100。費用には運用費を含め、期間を添える
- 単年のROIだけでは判断できない。回収期間で速さ、NPVで規模、IRRで利回りを見る
- 回収する年は累計のマイナスの個数で求まる(COUNTIF で「0未満」を数える)
- NPV関数は1期目の期末から割り引く。0年目は範囲に入れず「=NPV(率,1年目以降)+0年目」
- IRR関数には0年目を含めた範囲を渡す
- 効果100%・70%・50%の感度表と、NPVが0になる境目を付ける
- 効果は削減時間・ミス件数・保守費の式で金額に直し、数字の出どころを書く
参考・出典
- Microsoft サポート「NPV 関数」 https://support.microsoft.com/ja-jp/office/npv-関数-8672cb67-2576-4d07-b67b-ac28acf2a568 (2026-10-06 確認)
- Microsoft サポート「IRR 関数」 https://support.microsoft.com/ja-jp/office/irr-関数-64925eaa-9988-495b-b290-3ad0c163c1bc (2026-10-06 確認)
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(記載例)出典:株式会社RJC「ROIの計算方法|システム投資の回収期間・NPVをExcel数式で」
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