QCDとは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の頭文字で、仕事の成果を測る3つの要素です。 3つは互いに引っ張り合う関係にあり、1つを動かすと残りのどれかが動きます。

「品質>コスト>納期」という優先順位はよく知られた一般論ですが、どの案件にもそのまま当てはまるわけではありません。この記事では、案件ごとに「固定する・最適化する・受け入れる」を1つずつ割り当てて、着手前に合意する方法を、そのまま使える表と数字つきの例で説明します。個々の指標の詳しい計算には踏み込まず、3つの釣り合いの取り方に絞ります。

確認環境(確認日 2026-10-05):トレードオフの3案と管理指標の計算例は Python 3.11 で検算しました。金額・工数・件数はすべて架空の例で、相場を示すものではありません。

この記事の結論

  • 「品質>コスト>納期」は出発点となる一般論。案件ごとの優先順位は、着手前に関係者で決める
  • 3つに「固定する・最適化する・受け入れる」を1つずつ割り当てる。3つとも固定にはできない
  • 納期を縮める手段は、増員・範囲の削減・試験の圧縮の3つ。それぞれコスト・範囲・品質のどれを動かすかが違う
  • 「範囲(スコープ)を動かす」が第4の選択肢。品質・コスト・納期を保ったまま調整できる余地になる
  • 決めた優先順位は、Q・C・Dそれぞれの指標で週ごとに確かめる

QCDの早見表

要素 意味 システム開発で指すもの 主な指標 動かすと起きること
Q 品質 求められた水準を満たしている度合い 欠陥の少なさ、性能、使いやすさ、保守のしやすさ 欠陥密度、レビュー指摘密度、試験の消化率 上げるとレビューと試験の工数が増える
C コスト かけた費用と工数 人の工数、機器やクラウドの利用料、外部への委託費 CPI、コスト差異 抑えると人数か期間か範囲を減らすことになる
D 納期 約束した日に届けること 稼働日、工程ごとの節目の日 SPI、遅延日数 縮めると人数を増やすか、範囲か試験を減らすことになる

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「QCDとは?優先順位の決め方とトレードオフの例・管理指標一覧」

「品質>コスト>納期」は一般論、案件ごとに決める

品質を最優先に置く考え方には理由があります。納期と費用を守っても、使えないものを届けたのでは目的を果たせないからです。一方で、次のような案件では順番が変わります。

案件の性格(例) 動かせないもの 理由
制度の開始日や催しの日に合わせる 納期 日付を過ぎると価値がなくなる
年度の予算の枠が決まっている コスト 枠を超える支出は承認を取り直す必要がある
多くの人が毎日使う基幹の仕組み 品質 止まったときの影響が大きい
新しい仕組みを小さく試す 納期かコスト 早く試して学ぶことが目的で、品質は試せる水準でよい

大切なのは、順番そのものよりも「誰と、いつ、どう決めたか」です。 着手したあとで問題が起きてから優先順位を話し合うと、立場ごとに答えが分かれます。着手前に決めて文書に残しておけば、問題が起きたときに「何を守り、何を動かすか」をその場で判断できます。

優先順位を合意するトレードオフ表

品質・コスト・納期の3つに、次の3つの扱いを1つずつ割り当てます。

扱い 意味 問題が起きたとき
固定する 変えられない制約として扱う これを守るために、ほかの2つを動かす
最適化する できるだけ良くする 固定を守れる範囲で、最も良い値を目指す
受け入れる 変動を許す 最初に動かす。どこまで動かしてよいかの幅を決めておく

記入例(架空の備品予約システム:稼働日が決まっている案件)

要素 固定する 最適化する 受け入れる 目標の値 動かしてよい幅 合意した人・日付
品質 ○ 稼働時の重大な欠陥0件、欠陥密度1.5件/KLOC以下 軽微な欠陥は稼働後1か月以内に直す 総務部長・開発責任者 2026-10-05
コスト ○ 1,600万円 5%(80万円)までの増加は開発責任者が判断。超える場合は協議 同上
納期 ○ 2027-04-01 稼働 なし 同上
範囲 ― ― ― 必須の機能12件は固定、希望の機能6件は調整の対象 希望の機能は次の段階へ回せる 同上

表計算ソフトに貼れるタブ区切りです。

要素  固定する    最適化する   受け入れる   目標の値    動かしてよい幅 合意した人・日付
品質      ○       稼働時の重大な欠陥0件、欠陥密度1.5件/KLOC以下 軽微な欠陥は稼働後1か月以内に直す   総務部長・開発責任者 2026-10-05
コスト         ○   1,600万円 5%(80万円)までの増加は開発責任者が判断。超える場合は協議 同上
納期  ○           2027-04-01 稼働   なし  同上
範囲  ―   ―   ―   必須の機能12件は固定、希望の機能6件は調整の対象   希望の機能は次の段階へ回せる  同上

何も記入していないひな形です。

要素  固定する    最適化する   受け入れる   目標の値    動かしてよい幅 合意した人・日付
品質                      
コスト                     
納期                      
範囲  ―   ―   ―           

記入の決まり

  • ○は、各行に1つ、各列に1つ。 「固定する」が2つ以上ある表は、問題が起きたときに守れない約束を含んでいます。
  • 「受け入れる」には必ず幅を書く。 「コストは受け入れる」だけでは、いくらまでなのかが人によって違ってしまいます。
  • 範囲の行を足す。 必須の機能と、調整の対象にできる機能を分けておくと、Q・C・Dを動かす前に使える余地になります。
  • 合意した人と日付を残す。 決めた人がわかれば、見直すときに誰と話せばよいかもわかります。

3つとも固定はできない

品質・コスト・納期の3つをすべて固定すると、見積もりと違うことが1つ起きただけで、どれかを破ることになります。開発では、要件の追加、想定より難しい処理、担当者の交代など、見積もりどおりにいかないことが必ず起きます。動かせるものを1つ決めておくことは、変化を吸収する場所を前もって用意することです。

どうしても3つとも動かせないと言われたときは、範囲の行を使います。「必須の機能は3つとも守る。希望の機能は調整の対象にする」という形なら、合意できることが多くなります。

納期を2週間縮める3案を数字で比べる

題材は、5名で16週(作業量80人週、費用1,600万円)の計画を、14週に縮めるという架空の例です。1人週の費用を20万円として計算します。5名のまま14週で進めると70人週で、10人週が足りません。この10人週をどこから出すかで、3つの案に分かれます。

案 動かすもの 期間 工数 費用 あとの作業を含む合計 残る課題
当初の計画 ― 16週 80人週 1,600万円 1,600万円 ―
A 増員(最初から1名追加) コスト 14週 84人週 1,680万円(+80) 1,680万円(+80) 加わる人が最初から確保できること
B 範囲の削減 範囲 14週 70人週 1,400万円(−200) 1,620万円(+20) 10人週分の機能が次の段階になる
C 試験の圧縮 品質 14週 70人週 1,400万円(−200) 1,640万円(+40) 稼働後に欠陥が30件残る見込み

計算の前提(すべて例)

  • 案A:加わった人は最初の2週間、半分の速さで作業する。教える側も、1名につき合計0.5人週を使う。
  • 案B:優先度の低い機能10人週分を次の段階へ回す。あとで再開するときに、準備として1人週かかる。
  • 案C:試験20人週のうち10人週を減らす。試験で見つかる見込みの欠陥60件のうち、試験の量に比例して30件が見つからずに残る。欠陥1件を直す工数は、試験中なら0.5人日、稼働後なら2.0人日とする。

検算のコードと実行結果

# 納期を2週間縮める3案の比較(数字はすべて架空の例。Python 3.11、標準ライブラリのみ)
import math

WEEK_COST = 20        # 1人週あたりの費用(万円)
TEAM, WEEKS = 5, 16   # 当初の計画:5名で16週
WORK = TEAM * WEEKS   # 作業量 80人週
TARGET = 14           # 縮めたあとの期間(週)
BASE = WORK * WEEK_COST
SHORT = WORK - TEAM * TARGET          # 5名のまま14週で進めると足りない量

def show(name, weeks, effort, later=0.0, note=""):
    cost, total = effort * WEEK_COST, (effort + later) * WEEK_COST
    print(f"{name:<10} 期間{weeks:>3}週  工数{effort:>5.1f}人週  費用{cost:>5.0f}万円"
          f"({cost - BASE:+.0f})  後の作業を含む合計{total:>5.0f}万円({total - BASE:+.0f})  {note}")

print(f"作業量 {WORK}人週 / 5名×{TARGET}週 = {TEAM * TARGET}人週 / 不足 {SHORT}人週")
show("当初の計画", WEEKS, WORK)

# 案A 増員:加わって最初の2週は半分の速さ。教える側も1名につき合計0.5人週を使う
def gain(start_week):                 # 1名が第 start_week 週から加わったときに増える作業量
    stay = TARGET - start_week + 1
    return min(stay, 2) * 0.5 + max(stay - 2, 0) - 0.5, stay

for start in (1, 5, 9):
    g, stay = gain(start)
    n = math.ceil(SHORT / g)
    show(f"A 増員(第{start}週〜)", TARGET, TEAM * TARGET + n * stay,
         note=f"{n}名追加、1名あたりの増加 {g:.1f}人週")

# 案B 範囲の削減:優先度の低い機能10人週分を次の段階へ。再開の準備に1人週
show("B 範囲の削減", TARGET, WORK - SHORT, later=SHORT + 1, note="10人週分の機能を次の段階へ")

# 案C 試験の圧縮:試験20人週のうち10人週を減らす
TEST, BUGS = 20, 60                   # 試験の工数、試験で見つかると見込む欠陥の数
FIX_AFTER, FIX_IN_TEST = 2.0, 0.5     # 欠陥1件を直す工数(人日):稼働後/試験中
left = BUGS * SHORT / TEST            # 見つける機会が減る欠陥(試験の量に比例すると仮定)
extra = left * (FIX_AFTER - FIX_IN_TEST) / 5      # 稼働後に直すことで増える工数(人週)
show("C 試験の圧縮", TARGET, WORK - SHORT, later=left * FIX_AFTER / 5,
     note=f"稼働後に残る欠陥 {left:.0f}件")
print(f"  C の補足:稼働後の修正 {left:.0f}件×{FIX_AFTER}人日 = {left * FIX_AFTER / 5:.0f}人週。"
      f"試験中に直す場合より {extra:.0f}人週多い")

# 管理指標の計算例
print("\n管理指標の計算例")
kloc, bugs, pages, comments = 30, 45, 320, 96
done, planned, passed = 850, 1000, 816
pv, ev, ac = 780, 720, 800            # 万円
print(f"欠陥密度 {bugs}/{kloc} = {bugs / kloc:.2f} 件/KLOC")
print(f"レビュー指摘密度 {comments}/{pages} = {comments / pages:.2f} 件/ページ")
print(f"試験の消化率 {done}/{planned} = {done / planned:.1%}   合格率 {passed}/{done} = {passed / done:.1%}")
print(f"CPI {ev}/{ac} = {ev / ac:.2f}   コスト差異 CV {ev}-{ac} = {ev - ac}万円")
print(f"SPI {ev}/{pv} = {ev / pv:.2f}   スケジュール差異 SV {ev}-{pv} = {ev - pv}万円")
print(f"完成時の費用の見込み BAC/CPI = 1600/{ev / ac:.2f} = {1600 / (ev / ac):.0f}万円")
作業量 80人週 / 5名×14週 = 70人週 / 不足 10人週
当初の計画      期間 16週  工数 80.0人週  費用 1600万円(+0)  後の作業を含む合計 1600万円(+0)  
A 増員(第1週〜) 期間 14週  工数 84.0人週  費用 1680万円(+80)  後の作業を含む合計 1680万円(+80)  1名追加、1名あたりの増加 12.5人週
A 増員(第5週〜) 期間 14週  工数 90.0人週  費用 1800万円(+200)  後の作業を含む合計 1800万円(+200)  2名追加、1名あたりの増加 8.5人週
A 増員(第9週〜) 期間 14週  工数 88.0人週  費用 1760万円(+160)  後の作業を含む合計 1760万円(+160)  3名追加、1名あたりの増加 4.5人週
B 範囲の削減    期間 14週  工数 70.0人週  費用 1400万円(-200)  後の作業を含む合計 1620万円(+20)  10人週分の機能を次の段階へ
C 試験の圧縮    期間 14週  工数 70.0人週  費用 1400万円(-200)  後の作業を含む合計 1640万円(+40)  稼働後に残る欠陥 30件
  C の補足:稼働後の修正 30件×2.0人日 = 12人週。試験中に直す場合より 9人週多い

管理指標の計算例
欠陥密度 45/30 = 1.50 件/KLOC
レビュー指摘密度 96/320 = 0.30 件/ページ
試験の消化率 850/1000 = 85.0%   合格率 816/850 = 96.0%
CPI 720/800 = 0.90   コスト差異 CV 720-800 = -80万円
SPI 720/780 = 0.92   スケジュール差異 SV 720-780 = -60万円
完成時の費用の見込み BAC/CPI = 1600/0.90 = 1778万円

結果の読み方

  • 案Aは、いつ加わるかで結果が変わります。 最初から加われば1名(+80万円)で足りますが、第5週からなら2名(+200万円)、第9週からなら3名(+160万円)が必要です。加わるのが遅いほど、1名あたりの増加が12.5→8.5→4.5人週と小さくなるためです。
  • 案Bと案Cは、その時点の費用は同じ1,400万円です。 違いは、あとに残るものです。案Bは「まだ無い機能」が残り、案Cは「見つかっていない欠陥」が残ります。
  • あとの作業を含めると、案Cは案Bより20万円多くなりました。 しかも案Cの残り方は、利用者が使っている最中に不具合として現れます。金額の差以上に、利用者への影響が違います。
  • あとの作業を含む合計は、3案とも当初の1,600万円を上回りました。 納期を縮めるには、どの案でも何かを支払うということです。

どの案を選ぶかは、トレードオフ表で決まります。記入例のように「納期を固定、コストを受け入れる(5%まで)」なら、+80万円の案Aは幅の中に収まります。コストが固定なら案B、という具合です。案Cを選ぶのは、品質を「受け入れる」と合意している場合だけで、その場合も、減らす試験の対象を利用者への影響が小さい機能に絞ります。

範囲(スコープ)を動かすという第4の選択肢

QCDは3要素ですが、実際の調整では「何を作るか」という範囲が4つ目の要素として効きます。

動かすもの 具体的な手段 向いている場面 気を付ける点
納期 稼働日を延ばす、段階に分けて稼働する 日付に外部の制約がない 延ばした期間の分、費用も増える
コスト 人を増やす、作業の一部を外部に任せる 早い時期で、加わる人を確保できる 遅い時期の増員は効果が小さい
品質 試験やレビューの対象を絞る 試作や、影響の小さい機能 稼働後に直すほうが工数がかかる
範囲 優先度の低い機能を次の段階へ回す、機能を簡単な形にする 必須と希望が分けられている 回した機能をいつ作るかを決めておく

範囲を動かす案は、品質・コスト・納期の3つを保ったまま調整できる点が強みです。 そのためには、着手前に機能へ優先度(必須・希望など)を付けておく必要があります。全部が必須になっている一覧では、この選択肢が使えません。

条件から選ぶ判断基準

条件 選ぶもの
稼働日が動かせず、機能に優先度が付いている 範囲を動かす(希望の機能を次の段階へ)
稼働日が動かせず、機能はすべて必須で、早い時期である コストを動かす(増員)
稼働日が動かせず、機能はすべて必須で、残りの期間が短い 段階に分けて稼働できないかを相談する。増員は人数が多く必要になる
予算が動かせない 範囲を動かすか、納期を延ばす
品質の基準が動かせない 範囲・納期・コストのいずれかを動かす。試験は減らさない
試作で、早く試すことが目的 品質を「試せる水準」と決め、範囲も最小にする

QCD別の管理指標一覧

決めた優先順位が守られているかは、指標で確かめます。目安の列は例で、過去の自分たちの値をもとに決め直してください。

要素 指標 定義 計算式 目安(例) 計算例
Q 欠陥密度 規模あたりの欠陥の数 欠陥の数 ÷ 規模(KLOC) 過去の案件の中央値の前後 45 ÷ 30 = 1.50 件/KLOC
Q レビュー指摘密度 文書の量あたりの指摘の数 指摘の数 ÷ ページ数 過去の案件の中央値の前後 96 ÷ 320 = 0.30 件/ページ
Q 試験の消化率 予定した試験のうち、終えた割合 実施した項目 ÷ 予定の項目 計画した日ごとの値に沿う 850 ÷ 1,000 = 85.0%
Q 試験の合格率 実施した試験のうち、合格した割合 合格した項目 ÷ 実施した項目 工程の終わりに100% 816 ÷ 850 = 96.0%
C CPI(コスト効率指数) かけた費用に対して、どれだけ作業が進んだか EV ÷ AC 1.0以上で計画どおり。0.9を下回ったら原因を調べる 720 ÷ 800 = 0.90
C コスト差異(CV) 進んだ作業の価値と、かけた費用の差 EV − AC 0以上 720 − 800 = −80万円
C 完成時の費用の見込み 今の効率が続いた場合の総費用 BAC ÷ CPI 合意した幅の中 1,600 ÷ 0.90 = 1,778万円
D SPI(スケジュール効率指数) 予定に対して、どれだけ作業が進んだか EV ÷ PV 1.0以上で計画どおり。0.9を下回ったら原因を調べる 720 ÷ 780 = 0.92
D スケジュール差異(SV) 進んだ作業の価値と、予定の差 EV − PV 0以上 720 − 780 = −60万円
D 遅延日数 節目の予定日と実際の日の差 実際の完了日 − 予定の完了日 0日以下 3月12日 − 3月10日 = 2日

用語:PV は予定していた作業の価値、EV は完了した作業の価値(出来高)、AC は実際にかかった費用、BAC は完成までの予算の合計です。KLOC はソースコード1,000行を表します。

要素  指標  定義  計算式 目安(例)   計算例
Q   欠陥密度    規模あたりの欠陥の数  欠陥の数 ÷ 規模(KLOC) 過去の案件の中央値の前後    45 ÷ 30 = 1.50 件/KLOC
Q   レビュー指摘密度    文書の量あたりの指摘の数    指摘の数 ÷ ページ数 過去の案件の中央値の前後    96 ÷ 320 = 0.30 件/ページ
Q   試験の消化率  予定した試験のうち、終えた割合 実施した項目 ÷ 予定の項目  計画した日ごとの値に沿う    850 ÷ 1,000 = 85.0%
Q   試験の合格率  実施した試験のうち、合格した割合    合格した項目 ÷ 実施した項目 工程の終わりに100% 816 ÷ 850 = 96.0%
C   CPI(コスト効率指数)    かけた費用に対して、どれだけ作業が進んだか   EV ÷ AC 1.0以上で計画どおり。0.9を下回ったら原因を調べる 720 ÷ 800 = 0.90
C   コスト差異(CV)   進んだ作業の価値と、かけた費用の差   EV − AC 0以上 720 − 800 = −80万円
C   完成時の費用の見込み  今の効率が続いた場合の総費用  BAC ÷ CPI   合意した幅の中 1,600 ÷ 0.90 = 1,778万円
D   SPI(スケジュール効率指数) 予定に対して、どれだけ作業が進んだか  EV ÷ PV 1.0以上で計画どおり。0.9を下回ったら原因を調べる 720 ÷ 780 = 0.92
D   スケジュール差異(SV)    進んだ作業の価値と、予定の差  EV − PV 0以上 720 − 780 = −60万円
D   遅延日数    節目の予定日と実際の日の差   実際の完了日 − 予定の完了日 0日以下    3月12日 − 3月10日 = 2日

指標は3つを並べて読む

1つの指標だけを見ると、ほかの要素にしわ寄せが出ていることに気付けません。

見えている状態 併せて見る指標 考えられること
SPIが1.0以上で順調 欠陥密度、レビュー指摘密度 レビューや試験を省いて進めていると、あとで欠陥が増える
CPIが1.0以上で順調 SPI、試験の消化率 人を減らして費用を抑えた結果、進みが遅れていないか
欠陥密度が低い 試験の消化率 試験が進んでいないために、欠陥が見つかっていないだけではないか
3つとも順調 範囲(完了した機能の数) 機能を減らした結果ではないか

記入例の案件(納期を固定、品質を最適化、コストを受け入れる)で、計算例の値(CPI 0.90、SPI 0.92)になった場合の読み方はこうです。固定している納期に対してSPIが1.0を下回っているので、まず納期を守る手を打ちます。受け入れると決めたコストは、完成時の見込みが1,778万円で、合意した幅(1,680万円まで)を超えています。幅を超える見込みになった時点で、合意した人と協議する、というのがトレードオフ表の使い方です。

QCD・QCDS・QCDSE・スコープ・時間・コストの三角形の違い

枠組み 要素 よく使われる場面 範囲(スコープ)の扱い
QCD 品質、コスト、納期 ものづくり全般、システム開発 要素には無い。品質や納期の前提として扱う
QCDS QCD + S サービスや対応まで含めて評価するとき 要素には無い
QCDSE QCD + S + E 安全と環境への配慮が欠かせない仕事 要素には無い
スコープ・時間・コストの三角形 範囲、時間、コスト プロジェクト管理 要素の1つ。品質は3つの釣り合いの結果として扱う説明が多い

QCDSの S は「サービス(対応や支援)」、QCDSEの S は「安全」、E は「環境」を指す使い方が広く見られます。派生した呼び方は使う場面によって文字の意味が変わるので、会議や文書で使うときは、最初に各文字の意味を書いておくと行き違いを防げます。

スコープ・時間・コストの三角形は、PMI(プロジェクトマネジメント協会)のサイトに掲載されている文献でも、範囲・時間・コストの3つが互いに関係し、1つが変われば別のものも変わる、という形で紹介されています(出典は末尾)。

QCDと三角形の違いは、範囲が要素に入っているかどうかです。 QCDで話していて行き詰まったら、三角形の見方を借りて「範囲を動かせないか」を加えると、選択肢が1つ増えます。この記事のトレードオフ表に範囲の行を足しているのは、そのためです。

どの枠組みで話すかの判断基準

条件 選ぶもの
成果物の出来を、発注する側と受注する側で確かめたい QCD
稼働後の対応や支援の水準まで合意したい QCDS(S の意味を最初に定義する)
計画の変更を話し合う。機能の追加や削減が論点になる スコープ・時間・コストの三角形
優先順位を着手前に合意したい QCDに範囲を足したトレードオフ表

確かめて分かったこと

  • 増員の効果は、加わる時期で大きく変わりました。 同じ10人週を補うのに、第1週からなら1名、第5週からなら2名、第9週からなら3名が必要という計算になりました。
  • 費用が増える順は、人数の順と一致しませんでした。 第5週から2名(+200万円)より、第9週から3名(+160万円)のほうが少なくなります。在籍する週の合計が、20人週と18人週で逆転するためです。人数だけでなく、在籍する期間との掛け算で見る必要があります。
  • 範囲の削減と試験の圧縮は、その時点の費用が同じ(−200万円)でした。 目先の数字では区別がつかないので、「あとに何が残るか」を並べて比べないと、試験の圧縮が選ばれやすくなります。
  • あとの作業まで含めると、3案とも当初の計画より費用が増えました。 範囲の削減でも、再開の準備の分(この例では1人週)が上乗せになります。
  • CPIが0.90のとき、完成時の費用の見込みは1,778万円で、予算より178万円多くなりました。 0.1の差は小さく見えますが、予算1,600万円に対しては11%の増加にあたります。受け入れる幅を5%と決めていれば、CPIが0.95を下回った時点で協議の対象です(1,600 ÷ 0.95 = 1,684万円)。

よくある質問

Q. QCDとは何ですか? A. 品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の3つの頭文字です。仕事の成果を測る基本の要素で、1つを動かすとほかが影響を受ける関係にあります。

Q. QCDの優先順位はどう決めればよいですか? A. 品質・コスト・納期に「固定する・最適化する・受け入れる」を1つずつ割り当て、着手前に関係者で合意します。品質を最優先とする一般論を出発点にしつつ、稼働日や予算の制約に合わせて案件ごとに決めます。

Q. QCDのトレードオフとは何ですか? A. 3つのうち1つを良くしようとすると、ほかのどれかを譲ることになる関係のことです。納期を縮めるなら、人を増やす(コスト)、機能を減らす(範囲)、試験を減らす(品質)のいずれかが必要になります。

Q. QCDとQCDSの違いは何ですか? A. QCDSは、QCDに S を加えた枠組みです。S はサービス(対応や支援)を指す使い方が広く見られますが、場面によって意味が変わるので、使うときに定義を確かめます。

Q. 品質もコストも納期も守れないときはどうすればよいですか? A. 範囲(スコープ)を動かせないかを検討します。機能に必須と希望の優先度を付け、希望の機能を次の段階へ回すと、3つを保ったまま調整できる場合があります。

まとめ

  • QCDは品質・コスト・納期。1つを動かすと、ほかが動く
  • 「品質>コスト>納期」は一般論。案件ごとに、固定する・最適化する・受け入れるを1つずつ割り当てる
  • 3つとも固定はできない。「受け入れる」には動かしてよい幅を書く
  • 納期を2週間縮める例では、増員は+80万円、範囲の削減と試験の圧縮はその時点で−200万円。あとの作業を含めると3案とも当初より増える
  • 範囲を動かすのが第4の選択肢。そのために機能へ優先度を付けておく
  • Q・C・Dの指標は3つを並べて読み、受け入れる幅を超える見込みになったら協議する

参考・出典

  • Angelo Baratta(2006)、スコープ・時間・コストの三角形(triple constraint)を論じた文献。PMI のサイトに掲載 https://www.pmi.org/learning/library/triple-constraint-erroneous-useless-value-8024 (2026-10-05 確認)

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「QCDとは?優先順位の決め方とトレードオフの例・管理指標一覧」

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