- マネジメント
プロジェクト憲章の書き方|テンプレート全文とシステム開発の記入例
プロジェクト憲章とは、プロジェクトの開始を正式に認め、目的・成功基準・責任者と権限を1〜2ページにまとめて、スポンサーが承認する文書です。
この記事では、そのまま貼って使えるMarkdownテンプレートの全文、架空の「備品管理システム刷新」を題材にした記入例の全文、A4半分の短縮版を載せています。あわせて、あいまいな書き方を直す対比表、成功基準を測れる形に直す例10組、似た文書との違い、記入漏れを検出するPythonスクリプトと出力もまとめました。
確認環境:Ubuntu 24.04/Python 3.11.15(スクリプトは標準ライブラリのみで動作)。
プロジェクト憲章の早見表
| 項目 | 書くこと | 分量の目安 | 書き方のコツ |
|---|---|---|---|
| 目的 | 誰の何がどうなるか | 1〜2文 | 手段ではなく、得たい状態を書く |
| 背景 | なぜ今やるのか | 2〜4行 | 現状の数字を入れる |
| 成功基準 | 終わったと言える条件 | 3〜5項目 | 指標・現状・目標・測り方をそろえる |
| 概要スコープ | 含むもの・含まないもの | 各3〜5行 | 「含まないもの」を必ず書く |
| 主要マイルストーン | 大きな節目と日付 | 4〜6行 | 完了を誰が判定するかを書く |
| 概算予算 | 初期・運用・予備費 | 3行 | 根拠と精度の幅を添える |
| 主なリスク | 起きるかもしれないこと | 3〜5行 | 最初の対応と担当を書く |
| 前提と制約 | 仮定と、変えられない条件 | 各2〜4行 | 前提と制約を分けて書く |
| 責任者と権限 | 誰が何を決められるか | 3行+2行 | 金額と日数で範囲を示す |
| 承認欄 | 承認者・日付・署名 | 2〜3行 | スポンサーの署名を必須にする |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「プロジェクト憲章の書き方|テンプレート全文とシステム開発の記入例」
プロジェクト憲章は「詳しい計画」ではなく「始めてよいという合意」です。細かな作業や日程はプロジェクト計画書に書くので、憲章は1〜2ページに収めます。PMBOKガイド第7版でも、プロジェクト憲章は「モデル・方法・作成物」のうち作成物の1つとして扱われています。
プロジェクト憲章のテンプレート全文(Markdown)
下のブロックをそのままコピーして、{ } の部分を書き換えてください。10項目すべてを埋めるとA4で1〜2ページになります。
# プロジェクト憲章:{プロジェクト名}
- 文書番号:{PC-YYYY-NNN}
- 版:{0.1} 作成日:{YYYY-MM-DD}
- 作成者:{氏名(役割)}
- スポンサー:{氏名(役職)}
- プロジェクトマネージャー:{氏名}
## 1. 目的
{このプロジェクトで何を実現するかを1〜2文で。「誰の」「何が」「どうなる」を入れる}
## 2. 背景
{なぜ今やるのか。現状の数字と、放置した場合に起きることを2〜4行で}
## 3. 成功基準
| No | 指標 | 現状 | 目標 | 測定方法と時期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | {指標名} | {数値} | {数値} | {どのデータで・いつ測るか} |
| 2 | {指標名} | {数値} | {数値} | {どのデータで・いつ測るか} |
| 3 | {指標名} | {数値} | {数値} | {どのデータで・いつ測るか} |
## 4. 概要スコープ
**含むもの**
- {対象の業務・機能・拠点}
**含まないもの**
- {今回は対象外とするもの。理由も一言}
## 5. 主要マイルストーン
| No | マイルストーン | 予定日 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 1 | {例:要件定義の完了} | {YYYY-MM-DD} | {誰が何を承認したら完了か} |
| 2 | {例:受入テストの完了} | {YYYY-MM-DD} | {誰が何を承認したら完了か} |
| 3 | {例:本番稼働} | {YYYY-MM-DD} | {誰が何を承認したら完了か} |
## 6. 概算予算
| 区分 | 金額(税抜) | 根拠 |
|---|---|---|
| 初期費用 | {金額} | {見積りの前提} |
| 運用費用(年額) | {金額} | {見積りの前提} |
| 予備費 | {金額} | {初期費用の何%か} |
- 見積りの精度:{例:−10%〜+25%}
## 7. 主なリスク
| No | リスク | 影響 | 最初の対応 |
|---|---|---|---|
| 1 | {起きるかもしれないこと} | {大・中・小と内容} | {誰が何をするか} |
| 2 | {起きるかもしれないこと} | {大・中・小と内容} | {誰が何をするか} |
| 3 | {起きるかもしれないこと} | {大・中・小と内容} | {誰が何をするか} |
## 8. 前提と制約
**前提(正しいと仮定して計画すること)**
- {例:利用部門から担当者2名が週8時間参加できる}
**制約(変えられない条件)**
- {例:期末処理の期間は切り替え作業を行わない}
## 9. 責任者と権限
| 役割 | 氏名 | 決められること |
|---|---|---|
| スポンサー | {氏名} | {予算・期間・スコープの変更承認、中止の判断} |
| プロジェクトマネージャー | {氏名} | {予算内の発注、体制内の作業割り当て、変更の起票} |
| 業務責任者 | {氏名} | {業務要件の優先順位、受入の合否} |
- プロジェクトマネージャーが単独で決められる範囲:{例:1件50万円までの支出、5営業日までの日程調整}
- 上記を超える場合の相談先と期限:{例:スポンサーへ3営業日以内に報告}
## 10. 承認欄
| 役割 | 氏名 | 承認日 | 署名 |
|---|---|---|---|
| スポンサー | {氏名} | {YYYY-MM-DD} | {署名} |
| プロジェクトマネージャー | {氏名} | {YYYY-MM-DD} | {署名} |
| 業務責任者 | {氏名} | {YYYY-MM-DD} | {署名} |
テンプレートの使い方
| 手順 | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 1 | 目的・背景・成功基準を、スポンサーと30分話して下書きする | 1時間 |
| 2 | スコープ・マイルストーン・予算を、分かる範囲で概算として書く | 2時間 |
| 3 | リスク・前提・制約を、業務責任者と確認する | 1時間 |
| 4 | 責任者と権限を、スポンサーと合意する | 30分 |
| 5 | 記入漏れをスクリプトで確認し、承認欄に署名をもらう | 30分 |
最初から完成形を目指さず、空欄が残った版0.1をスポンサーに見せると、認識の違いが早く見つかります。
システム開発の記入例(全文)
架空の社内システム刷新「備品管理システム刷新」を題材にした記入例です。数字・日付・氏名はすべて架空です。自分のプロジェクトに合わせて書き換えてください。
# プロジェクト憲章:備品管理システム刷新
- 文書番号:PC-2026-014
- 版:1.0 作成日:2026-10-07
- 作成者:佐藤 花子(プロジェクトマネージャー)
- スポンサー:田中 一郎(管理本部長)
- プロジェクトマネージャー:佐藤 花子
## 1. 目的
総務部と各拠点の担当者が、備品の貸出・返却・棚卸しを1つのWebシステムで行えるようにし、棚卸しにかかる時間と台帳の食い違いを減らす。
## 2. 背景
- 備品台帳は拠点ごとの表計算ファイル(5拠点・計約3,200件)で管理しており、年2回の棚卸しに合計約120時間かかっている。
- 2026年3月の棚卸しでは、台帳と現物の食い違いが96件(3.0%)あった。
- 現行の貸出申請はメールで、申請から貸出までの平均日数は2.4営業日である。
- 2027年4月に拠点が1つ増える予定で、現在の方法のままでは棚卸し時間がさらに増える。
## 3. 成功基準
| No | 指標 | 現状 | 目標 | 測定方法と時期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 棚卸しの合計作業時間 | 約120時間/回 | 40時間以下/回 | 2027年9月の棚卸しで各拠点の作業記録を集計 |
| 2 | 台帳と現物の食い違い率 | 3.0%(96件) | 0.5%以下 | 2027年9月の棚卸し結果をシステムから出力 |
| 3 | 貸出申請から貸出までの平均日数 | 2.4営業日 | 1.0営業日以下 | 稼働後3か月(2027年5〜7月)の申請データを集計 |
| 4 | 稼働後3か月の利用率 | ― | 貸出申請の95%以上がシステム経由 | 申請件数とメール申請件数を月次で比較 |
## 4. 概要スコープ
**含むもの**
- 備品台帳(PC・モニター・什器・貸出用機材)の登録・検索・履歴管理
- 貸出・返却の申請と承認(Webとスマートフォンのブラウザ)
- バーコードを使った棚卸し機能
- 既存5拠点の台帳データ(約3,200件)の移行
- 利用者向けの操作説明会(拠点ごとに1回)
**含まないもの**
- 固定資産の会計処理(会計システム側で継続。連携は次期の検討事項とする)
- 消耗品(文具など)の在庫管理
- 購買申請のワークフロー
## 5. 主要マイルストーン
| No | マイルストーン | 予定日 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 1 | プロジェクト憲章の承認 | 2026-10-16 | スポンサーが承認欄に署名 |
| 2 | 要件定義の完了 | 2026-11-27 | 業務責任者が要件定義書を承認 |
| 3 | 設計の完了 | 2026-12-25 | プロジェクトマネージャーが設計レビューの指摘ゼロを確認 |
| 4 | 受入テストの完了 | 2027-03-12 | 業務責任者が受入テスト結果を承認 |
| 5 | 本番稼働 | 2027-04-05 | スポンサーが稼働判定会議で承認 |
| 6 | 効果測定と終了報告 | 2027-09-30 | スポンサーが終了報告書を承認 |
## 6. 概算予算
| 区分 | 金額(税抜) | 根拠 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 1,800万円 | 開発18人月×90万円+バーコードリーダー20台180万円 |
| 運用費用(年額) | 240万円 | クラウド利用料月12万円+保守月8万円 |
| 予備費 | 180万円 | 初期費用の10% |
- 見積りの精度:−10%〜+25%(要件定義の完了時に再見積りする)
## 7. 主なリスク
| No | リスク | 影響 | 最初の対応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 拠点ごとに台帳の項目が異なり、データ移行の手直しが増える | 大:稼働が1か月遅れる | 10月中に佐藤が5拠点の台帳を集め、項目の差を一覧にする |
| 2 | 利用部門の担当者が繁忙期(12月・3月)に参加できない | 中:要件確認と受入テストが遅れる | 業務責任者が11月初めに参加日を確定し、代理者を決める |
| 3 | バーコードラベルの貼り付けが稼働日までに終わらない | 中:棚卸し機能が一部拠点で使えない | 2月から拠点ごとに貼り付け日を決め、週次で進み具合を確認する |
| 4 | 稼働後に従来のメール申請が残り、利用率が上がらない | 中:成功基準4に届かない | 稼働日にメール申請の受付を終了すると10月中に周知する |
## 8. 前提と制約
**前提(正しいと仮定して計画すること)**
- 総務部から担当者2名が週8時間、プロジェクトの作業に参加できる。
- 既存の社内認証基盤(シングルサインオン)と連携できる。
- 各拠点にバーコードラベルを貼る作業は、拠点の担当者が行う。
**制約(変えられない条件)**
- 本番稼働は2027年4月の拠点追加より前に終える。
- 期末(3月16日〜31日)は切り替え作業を行わない。
- 初期費用は予備費を含めて1,980万円以内とする。
- 個人名を含むデータは社内の情報管理規程に従い、国内のクラウド環境に保存する。
## 9. 責任者と権限
| 役割 | 氏名 | 決められること |
|---|---|---|
| スポンサー | 田中 一郎 | 予算・期間・スコープの変更承認、稼働判定、中止の判断 |
| プロジェクトマネージャー | 佐藤 花子 | 予算内の発注、体制内の作業割り当て、変更要求の起票 |
| 業務責任者 | 鈴木 次郎(総務部長) | 業務要件の優先順位、受入テストの合否 |
- プロジェクトマネージャーが単独で決められる範囲:1件50万円までの支出、5営業日までの日程調整
- 上記を超える場合の相談先と期限:スポンサーへ3営業日以内に報告し、判断を受ける
## 10. 承認欄
| 役割 | 氏名 | 承認日 | 署名 |
|---|---|---|---|
| スポンサー | 田中 一郎 | 2026-10-16 | (署名) |
| プロジェクトマネージャー | 佐藤 花子 | 2026-10-16 | (署名) |
| 業務責任者 | 鈴木 次郎 | 2026-10-16 | (署名) |
記入例のポイント
- 目的は1文:「システムを作る」ではなく、「棚卸しの時間と台帳の食い違いを減らす」という得たい状態を書いています。
- 成功基準は4項目とも数字と測定時期つき:稼働の半年後に誰が見ても同じ判定になります。
- 含まないものを3行:会計処理・消耗品・購買申請を対象外と明記し、後から範囲が広がることを防いでいます。
- 予算は根拠つき:「18人月×90万円」のように計算の前提を書くと、要件が変わったときの再見積りが速くなります。
- 権限は金額と日数:「1件50万円まで」「5営業日まで」と書くことで、プロジェクトマネージャーが自分で決められる範囲がはっきりします。
短縮版(A4半分)のテンプレートと記入例
小規模な取り組みや、まず口頭の合意を文章に残したい場合は、同じ10項目を1〜2行ずつにした短縮版が使えます。
# プロジェクト憲章(短縮版):{プロジェクト名}
- 作成日:{YYYY-MM-DD} 作成者:{氏名} スポンサー:{氏名}
- 目的:{誰の何がどうなるか}
- 背景:{現状の数字と、今やる理由}
- 成功基準:{指標 現状→目標(測定時期)} / {指標 現状→目標(測定時期)}
- 概要スコープ:含む={…} / 含まない={…}
- 主要マイルストーン:{節目 日付} → {節目 日付} → {節目 日付}
- 概算予算:初期{金額}/運用 年{金額}/予備費{金額}
- 主なリスク:{リスクと最初の対応} / {リスクと最初の対応}
- 前提と制約:前提={…} / 制約={…}
- 責任者と権限:PM={氏名}({金額}まで・{日数}まで単独で決定)/それ以上はスポンサーへ
- 承認:スポンサー {氏名} {YYYY-MM-DD}
記入例(上の全文と同じ内容を短くしたもの):
# プロジェクト憲章(短縮版):備品管理システム刷新
- 作成日:2026-10-07 作成者:佐藤 花子 スポンサー:田中 一郎(管理本部長)
- 目的:総務部と各拠点が備品の貸出・返却・棚卸しを1つのWebシステムで行い、棚卸しの時間と台帳の食い違いを減らす
- 背景:5拠点・約3,200件を表計算ファイルで管理し、棚卸しに年2回・各約120時間。2027年4月に拠点が1つ増える
- 成功基準:棚卸し時間 120時間→40時間以下(2027年9月)/食い違い率 3.0%→0.5%以下(2027年9月)/貸出までの日数 2.4→1.0営業日以下(2027年5〜7月)
- 概要スコープ:含む=台帳管理、貸出・返却の申請と承認、バーコード棚卸し、5拠点のデータ移行 / 含まない=会計処理、消耗品、購買申請
- 主要マイルストーン:要件定義完了 2026-11-27 → 受入テスト完了 2027-03-12 → 本番稼働 2027-04-05
- 概算予算:初期1,800万円/運用 年240万円/予備費180万円(精度 −10%〜+25%)
- 主なリスク:拠点ごとに台帳の項目が違う→10月中に差を一覧化 / 繁忙期に担当者が参加できない→11月初めに参加日と代理者を確定
- 前提と制約:前提=総務部2名が週8時間参加 / 制約=2027年4月の拠点追加より前に稼働、期末(3/16〜3/31)は切り替えを行わない
- 責任者と権限:PM=佐藤 花子(1件50万円まで・5営業日まで単独で決定)/それ以上はスポンサーへ3営業日以内に報告
- 承認:スポンサー 田中 一郎 2026-10-16
| 版 | 向いている場面 | 分量 |
|---|---|---|
| 全文 | 予算の承認が必要、複数の部署が関わる、期間が3か月以上 | A4で1〜2ページ |
| 短縮版 | 1つの部署で完結、期間が1〜2か月、まず合意を文章に残したい | A4半分 |
項目ごとの「あいまいな書き方」と「直した書き方」
| 項目 | あいまいな書き方 | 直した書き方 | 直すときの問い |
|---|---|---|---|
| 目的 | 備品管理を効率化する | 棚卸しの時間と台帳の食い違いを減らす | 誰の何がどうなるか |
| 背景 | 現行の管理に課題がある | 棚卸しに年2回・各約120時間、食い違いが96件 | 数字で言うとどのくらいか |
| 成功基準 | 業務が楽になる | 棚卸し時間を120時間から40時間以下にする | いつ、何で測るか |
| 概要スコープ | 備品管理に関する機能一式 | 台帳・貸出返却・棚卸しを含み、会計処理は含まない | 含まないものは何か |
| 主要マイルストーン | 来春に稼働 | 2027-04-05 本番稼働(スポンサーが判定会議で承認) | 誰が完了と判定するか |
| 概算予算 | 2,000万円程度 | 初期1,800万円(18人月×90万円+機材180万円)、精度−10%〜+25% | 根拠と幅は何か |
| 主なリスク | データ移行に懸念がある | 拠点ごとに項目が違い手直しが増える。10月中に差を一覧にする | 最初に誰が何をするか |
| 前提 | 利用部門が協力する | 総務部から2名が週8時間参加できる | 人数と時間で言うと |
| 制約 | なるべく早く | 2027年4月の拠点追加より前に稼働する | 動かせない日付や上限は何か |
| 責任者と権限 | PMが適宜判断する | 1件50万円まで・5営業日までは単独で決定、超える場合は3営業日以内に報告 | 金額と日数の境目はどこか |
成功基準を測れる形に直す例10組
成功基準は、指標・現状の値・目標の値・測定方法・測定時期の5つがそろうと、誰が見ても同じ判定になります。システム開発でよく出てくる言い方を、測れる形に直しました。
| No | 直す前 | 直した後 |
|---|---|---|
| 1 | 作業を効率化する | 月次の集計作業を、月40時間から15時間以下にする(稼働3か月後の作業記録で測定) |
| 2 | ミスを減らす | 入力の差し戻し件数を、月平均30件から5件以下にする(稼働後3か月の平均) |
| 3 | 画面を速くする | 一覧画面の表示時間を、95パーセンタイルで2秒以内にする(稼働後1か月のアクセス記録) |
| 4 | 使いやすくする | 新しい利用者が、説明なしで貸出申請を5分以内に終えられる(受入テストで10名中9名以上) |
| 5 | 利用を定着させる | 稼働3か月後に、対象者の90%以上が月1回以上ログインしている |
| 6 | 安定して動かす | 稼働率を月間99.5%以上にする(監視ツールの月次レポート) |
| 7 | 品質を高める | 稼働後3か月の重大な不具合を0件、軽微な不具合を10件以下にする |
| 8 | 問い合わせを減らす | 操作に関する問い合わせを、月80件から30件以下にする(稼働3か月後の受付記録) |
| 9 | 納期を守る | 2027年4月5日に本番稼働し、予備費を含む予算1,980万円以内で終える |
| 10 | 引き継ぎをきちんと行う | 稼働前に運用手順書12本を運用担当が承認し、手順の予行を2回終えている |
「現状の値」が分からないときは、最初のマイルストーンを「現状の測定」にすると、目標の妥当性も一緒に確認できます。
似た文書との違いを比べる
プロジェクト憲章は、企画書とプロジェクト計画書の間に位置します。「誰が」「いつ」「何を決めるか」で比べると役割が分かります。
| 文書 | 誰が作る | いつ | 何を決める | 分量 |
|---|---|---|---|---|
| 企画書 | 起案する部署 | 予算を取る前 | やるかどうか、投資の妥当性 | 数ページ〜 |
| プロジェクト憲章 | PM(スポンサーが承認) | 立ち上げ時 | 開始の承認、目的、成功基準、権限 | 1〜2ページ |
| スコープ記述書 | PMとチーム | 計画の初め | 成果物と対象外、受入基準 | 数ページ |
| プロジェクト計画書 | PMとチーム | 計画時(随時更新) | 進め方、体制、日程、各種の管理方法 | 10ページ〜 |
| キックオフ資料 | PM | 作業開始の直前 | 関係者全員の認識合わせ | スライド10〜20枚 |
書く順番と、内容の受け渡し
flowchart LR
A["企画書<br>やるかどうか"] --> B["プロジェクト憲章<br>始めてよいという合意"]
B --> C["スコープ記述書<br>作るもの・作らないもの"]
B --> D["プロジェクト計画書<br>どう進めるか"]
C --> D
D --> E["キックオフ資料<br>全員で共有"]
| 憲章の項目 | 引き継ぐ先 | 引き継いだ後にすること |
|---|---|---|
| 概要スコープ | スコープ記述書 | 成果物の一覧、対象外の理由、受入基準まで詳しくする |
| 主要マイルストーン | プロジェクト計画書 | WBSとスケジュールに展開する |
| 概算予算 | プロジェクト計画書 | 要件定義の後に再見積りし、基準にする |
| 主なリスク | プロジェクト計画書 | リスク一覧にして、担当と見直しの頻度を決める |
| 責任者と権限 | プロジェクト計画書 | 体制図と会議体、変更管理の流れにする |
| 目的・成功基準 | キックオフ資料 | 最初のページで全員に伝える |
スコープ記述書の項目と対象外の書き方、プロジェクト計画書の目次と項目別の記入例、キックオフのアジェンダは、それぞれ別の記事で詳しく扱っています。憲章では概要にとどめ、詳しい内容はそれぞれの文書に任せるのが、1〜2ページに収めるコツです。
承認前の確認チェックリスト
スポンサーに署名をもらう前に、次の項目を確認します。コピーして使えるようMarkdownのチェックボックスにしています。
## プロジェクト憲章 承認前チェックリスト
### 内容
- [ ] 目的が1〜2文で、手段ではなく得たい状態を書いている
- [ ] 背景に現状の数字が1つ以上ある
- [ ] 成功基準が3〜5項目で、すべてに現状・目標・測定方法と時期がある
- [ ] 「含まないもの」が1行以上あり、理由が分かる
- [ ] マイルストーンごとに、完了を判定する人が書いてある
- [ ] 予算に根拠と精度の幅、予備費がある
- [ ] リスクごとに、最初の対応と担当が書いてある
- [ ] 前提と制約を分けて書いている
- [ ] PMが単独で決められる範囲が、金額と日数で書いてある
- [ ] その範囲を超えたときの相談先と期限が書いてある
### 形式
- [ ] A4で1〜2ページに収まっている
- [ ] 文書番号・版・作成日がある
- [ ] {記入} の括弧が残っていない(スクリプトで確認)
- [ ] 専門用語に、利用部門が読んで分かる言い換えを添えている
### 合意
- [ ] スポンサーと対面またはオンラインで読み合わせた
- [ ] 業務責任者が成功基準とスコープに同意している
- [ ] 承認後の保管場所と、関係者への共有方法を決めている
- [ ] 見直すきっかけ(予算・期間・スコープの大きな変更)を決めている
記入漏れを検出するPythonスクリプト
テンプレートの10項目について、見出しがあるか、本文が空でないか、{ } の括弧が残っていないかを調べるスクリプトです。標準ライブラリだけで動きます。
"""プロジェクト憲章(Markdown)の必須項目の記入漏れを調べる。
使い方: python3 check_charter.py charter.md
"""
import re
import sys
REQUIRED = [
"目的", "背景", "成功基準", "概要スコープ", "主要マイルストーン",
"概算予算", "主なリスク", "前提と制約", "責任者と権限", "承認欄",
]
PLACEHOLDER = re.compile(r"\{[^{}\n]+\}") # {記入} が残っている箇所
TABLE_RULE = re.compile(r"^|[\s:|-]+|$") # 表の区切り行
def split_sections(text):
"""「## 見出し」ごとに本文を分ける。見出しの番号(1. など)は取り除く。"""
sections, name = {}, None
for line in text.splitlines():
m = re.match(r"^##\s+(?:\d+[..]\s*)?(.+?)\s*$", line)
if m:
name = m.group(1)
sections[name] = []
elif name is not None:
sections[name].append(line)
return sections
def check(path):
with open(path, encoding="utf-8") as f:
sections = split_sections(f.read())
problems = 0
for item in REQUIRED:
if item not in sections:
print(f"NG {item}: 見出しがありません")
problems += 1
continue
body = [l for l in sections[item] if l.strip() and not TABLE_RULE.match(l.strip())]
rest = PLACEHOLDER.findall("\n".join(body))
if not body:
print(f"NG {item}: 本文が空です")
problems += 1
elif rest:
print(f"NG {item}: 未記入が{len(rest)}か所(例 {rest[0]})")
problems += 1
else:
print(f"OK {item}")
print(f"--- {path}: 必須{len(REQUIRED)}項目のうち要対応 {problems} 件")
return problems
if __name__ == "__main__":
if len(sys.argv) != 2:
sys.exit(__doc__)
sys.exit(1 if check(sys.argv[1]) else 0)
実行結果1:テンプレートのまま(10項目すべて要対応)
$ python3 check_charter.py charter_template.md
NG 目的: 未記入が1か所(例 {このプロジェクトで何を実現するかを1〜2文で。「誰の」「何が」「どうなる」を入れる})
NG 背景: 未記入が1か所(例 {なぜ今やるのか。現状の数字と、放置した場合に起きることを2〜4行で})
NG 成功基準: 未記入が12か所(例 {指標名})
NG 概要スコープ: 未記入が2か所(例 {対象の業務・機能・拠点})
NG 主要マイルストーン: 未記入が9か所(例 {例:要件定義の完了})
NG 概算予算: 未記入が7か所(例 {金額})
NG 主なリスク: 未記入が9か所(例 {起きるかもしれないこと})
NG 前提と制約: 未記入が2か所(例 {例:利用部門から担当者2名が週8時間参加できる})
NG 責任者と権限: 未記入が8か所(例 {氏名})
NG 承認欄: 未記入が9か所(例 {氏名})
--- charter_template.md: 必須10項目のうち要対応 10 件
実行結果2:記入例の全文(要対応0件)
$ python3 check_charter.py charter_example.md
OK 目的
OK 背景
OK 成功基準
OK 概要スコープ
OK 主要マイルストーン
OK 概算予算
OK 主なリスク
OK 前提と制約
OK 責任者と権限
OK 承認欄
--- charter_example.md: 必須10項目のうち要対応 0 件
実行結果3:書きかけの下書き(3種類の漏れを検出)
記入例から、成功基準の目標を1つ {数値} に戻し、主なリスクの本文を消し、承認欄の見出しごと削除したファイルで試した結果です。
$ python3 check_charter.py charter_draft.md
OK 目的
OK 背景
NG 成功基準: 未記入が1か所(例 {数値})
OK 概要スコープ
OK 主要マイルストーン
OK 概算予算
NG 主なリスク: 本文が空です
OK 前提と制約
OK 責任者と権限
NG 承認欄: 見出しがありません
--- charter_draft.md: 必須10項目のうち要対応 3 件
$ echo $?
1
要対応が1件以上あると終了コードが1になるので、Gitのコミット前チェックやCIに組み込むこともできます。項目を増やしたい場合は、REQUIRED のリストに見出しの名前を足してください。スクリプトが確認するのは「書いてあるかどうか」までです。内容が妥当かどうかは、上のチェックリストで人が確認します。
つまずきやすい点と整え方
| つまずきやすい点 | こう整える |
|---|---|
| 憲章が10ページを超える | 作業の詳細と日程表はプロジェクト計画書へ移し、憲章は節目だけにする |
| 目的に「システムを導入する」と書く | 導入した結果、誰の何がどうなるかに言い換える |
| 成功基準が「稼働すること」だけ | 稼働後の効果を測る指標を1つ以上加える |
| 含まないものを書かない | 関係者から出そうな要望を3つ挙げ、今回扱うかどうかを書く |
| 権限の欄が役職名だけ | 金額・日数・人の割り当てについて、決められる範囲を書く |
| 承認後に一度も見返さない | 予算・期間・スコープが大きく変わるときに改版する決まりにする |
よくある質問
Q. プロジェクト憲章は誰が書きますか? A. 多くの場合、プロジェクトマネージャーが下書きし、スポンサーが承認します。大切なのは、スポンサーが内容に同意して署名することです。下書きの段階からスポンサーと話しながら作ると、承認までが速くなります。
Q. プロジェクト憲章とプロジェクト計画書の違いは何ですか? A. 憲章は「始めてよいという合意」を1〜2ページで示す文書、計画書は「どう進めるか」を詳しく書く文書です。憲章の承認を受けてから、計画書を作ります。
Q. アジャイル開発でもプロジェクト憲章は必要ですか? A. 目的・成功基準・権限を合意する役割は、進め方に関係なく役立ちます。アジャイルでは、スコープを機能の一覧ではなく「解決したい課題と優先順位の考え方」として書き、短縮版を使うと進め方に合います。
Q. 承認後に内容を変えてもよいですか? A. 変えられます。予算・期間・スコープ・責任者が大きく変わるときは、版を上げてスポンサーの承認を受け直します。細かな日程の変更は、プロジェクト計画書の更新で扱います。
まとめ
- プロジェクト憲章は、開始の承認・目的・成功基準・権限を1〜2ページにまとめた文書です。
- 10項目のテンプレート(目的・背景・成功基準・概要スコープ・主要マイルストーン・概算予算・主なリスク・前提と制約・責任者と権限・承認欄)を埋めれば形になります。
- 成功基準は、指標・現状・目標・測定方法・測定時期をそろえると、誰が見ても同じ判定になります。
- 「含まないもの」と「PMが単独で決められる範囲」を書くと、後からの認識の違いが減ります。
- 詳しい内容はスコープ記述書とプロジェクト計画書に任せ、憲章は概要にとどめます。
- 記入漏れはスクリプトで、内容の妥当性はチェックリストで確認してから、スポンサーの署名をもらいます。
参考・出典(確認日:2026年10月7日)
- PMI「PMBOK Guide」:PMBOKガイドの最新版(第8版、2025年11月発行)の案内 https://www.pmi.org/standards/pmbok
- PMI「PMBOK Guide – Seventh Edition FAQs」(PDF):第7版の「モデル・方法・作成物」の章 https://www.pmi.org/-/media/pmi/documents/public/pdf/pmbok-standards/pmbok-guide-public-faqs-29-march-2021.pdf
- デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」:DS-100「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(2026年6月12日改定)を含む、政府の標準ガイドライン群の一覧 https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines
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(記載例)出典:株式会社RJC「プロジェクト憲章の書き方|テンプレート全文とシステム開発の記入例」
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