- マネジメント
インシデント管理のフローと重大度レベル定義|連絡テンプレート付き
インシデント管理とは、サービスが普段どおりに使えなくなったときに、利用者が使える状態へできるだけ早く戻すための進め方です。 原因を突き止めることよりも、まず戻すことを優先します。
この記事では、発生中の進め方に絞って、重大度レベルの定義表、検知から事後レビューまでのフロー、役割表、連絡文のテンプレート、時系列記録の表をまとめました。題材は架空の「備品予約システム」です。表と文面はそのまま貼って、役割名と時間を自分のチームに合わせて書き換えられます。
確認環境:Mermaid 11.14.0(@mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0 と Chromium で描画)、Python 3.11(重大度の判定表と所要時間の計算)。確認日は 2026-10-05 です。表の時間・割合はすべて例であり、チームの決まりに合わせて調整してください。
この記事の結論
- 重大度は「影響ユーザーの割合」と「業務が止まるか」の2軸で、表を引いて機械的に決める。 原因や直す難しさは判定に使いません。
- 迷ったら高いほうで宣言し、分かった時点で下げる。 上げ直すより下げるほうが、連絡も体制も整えやすくなります。
- フローは「検知 → 宣言 → 体制構築 → 暫定対処 → 復旧 → 事後レビュー」の6段階。 原因の調査は復旧のあとに回します。
- 役割は指揮役・作業役・連絡役の3つに分ける。 手を動かす人が連絡を兼ねると、どちらも遅くなります。
- 第一報は原因が分からなくても送る。 「何が起きているか・誰に影響するか・次の連絡時刻」の3点があれば足ります。
重大度レベルの早見表(SEV1〜4)
SEV は severity(重大度)の略です。数字が小さいほど重大です。
| レベル | 影響ユーザーの割合と業務への影響 | 代替手段 | 初動までの目標時間 | 連絡先 | 更新間隔 |
|---|---|---|---|---|---|
| SEV1(緊急) | 50%以上が使えず業務が止まる。またはデータの消失・漏えいの疑い | なし | 5分以内に宣言、15分以内に第一報 | 責任者、関係部門、利用者全体 | 30分ごと |
| SEV2(重大) | 50%以上だが代替手段がある。または5%以上50%未満の業務が止まる | あり、または一部になし | 15分以内に宣言、30分以内に第一報 | 責任者、影響を受ける利用部門 | 60分ごと |
| SEV3(中) | 一部の機能が使いにくい。5%未満の業務が止まる | あり | 営業時間内60分以内に担当を決める | チームリーダー、問い合わせ窓口 | 4時間ごと、または状況が変わったとき |
| SEV4(軽微) | 表示の乱れなど、業務は止まらない | 不要 | 翌営業日までに担当を決める | チーム内 | 完了時に1回 |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「インシデント管理のフローと重大度レベル定義|連絡テンプレート付き」
タブ区切り版
表計算ソフトのA1セルに貼ると、そのまま表になります。
レベル 影響ユーザーの割合と業務への影響 代替手段 初動までの目標時間 連絡先 更新間隔
SEV1(緊急) 50%以上が使えず業務が止まる。またはデータの消失・漏えいの疑い なし 5分以内に宣言、15分以内に第一報 責任者、関係部門、利用者全体 30分ごと
SEV2(重大) 50%以上だが代替手段がある。または5%以上50%未満の業務が止まる あり、または一部になし 15分以内に宣言、30分以内に第一報 責任者、影響を受ける利用部門 60分ごと
SEV3(中) 一部の機能が使いにくい。5%未満の業務が止まる あり 営業時間内60分以内に担当を決める チームリーダー、問い合わせ窓口 4時間ごと、または状況が変わったとき
SEV4(軽微) 表示の乱れなど、業務は止まらない 不要 翌営業日までに担当を決める チーム内 完了時に1回
重大度の決め方:2軸の表を引く
重大度は、次の2つの問いの答えだけで決めます。
- 影響を受けている利用者は全体の何割か(50%以上/5%以上50%未満/5%未満)
- その人たちの業務は止まっているか(止まる・代替手段なし/代替手段あり/止まらない)
| 影響ユーザーの割合 | 止まる(代替なし) | 代替手段あり | 止まらない |
|---|---|---|---|
| 50%以上 | SEV1 | SEV2 | SEV3 |
| 5%以上50%未満 | SEV2 | SEV3 | SEV4 |
| 5%未満 | SEV3 | SEV4 | SEV4 |
表の中身は「1+行の位置+列の位置(上限4)」という足し算で作ってあります。 行と列を1つずつずらすたびに1段階下がるので、覚えやすく、人によって判定がぶれません。次のコードで表を出力して確かめました。
# sev.py : 影響範囲と業務停止の2軸から重大度を決める(Python 3.11、標準ライブラリのみ)
from datetime import datetime
def scope_index(affected_percent: float) -> int:
"""影響ユーザーの割合 → 0:広い(50%以上) 1:一部(5%以上) 2:ごく一部(5%未満)"""
if affected_percent >= 50:
return 0
if affected_percent >= 5:
return 1
return 2
STOP = {"止まる(代替なし)": 0, "代替手段あり": 1, "止まらない": 2}
def severity(affected_percent: float, stop: str, data_risk: bool = False) -> str:
if data_risk: # データの消失や漏えいの疑いは範囲によらず最上位
return "SEV1"
return f"SEV{min(4, 1 + scope_index(affected_percent) + STOP[stop])}"
print("影響ユーザー\t" + "\t".join(STOP))
for label, pct in (("50%以上", 80), ("5%以上50%未満", 20), ("5%未満", 1)):
print(label + "\t" + "\t".join(severity(pct, s) for s in STOP))
print(severity(100, "止まる(代替なし)"), severity(12, "代替手段あり"),
severity(0.5, "止まらない"), severity(0.5, "止まらない", data_risk=True))
# 時系列記録から所要時間を出す
log = [("検知", "09:12"), ("宣言", "09:18"), ("第一報", "09:25"),
("暫定対処の完了", "09:52"), ("復旧の確認", "10:05"), ("終了の宣言", "10:10")]
t0 = datetime.strptime(log[0][1], "%H:%M")
for name, hm in log:
print(f"{hm} {name}(検知から{int((datetime.strptime(hm, '%H:%M') - t0).total_seconds() // 60)}分)")
実行結果:
影響ユーザー 止まる(代替なし) 代替手段あり 止まらない
50%以上 SEV1 SEV2 SEV3
5%以上50%未満 SEV2 SEV3 SEV4
5%未満 SEV3 SEV4 SEV4
SEV1 SEV3 SEV4 SEV1
09:12 検知(検知から0分)
09:18 宣言(検知から6分)
09:25 第一報(検知から13分)
09:52 暫定対処の完了(検知から40分)
10:05 復旧の確認(検知から53分)
10:10 終了の宣言(検知から58分)
2軸に加える4つの決まり
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 迷ったら高いほう | 割合が分からないときは、広いほうの行で判定する |
| データに関わるものは最上位 | 消失・漏えいの疑いがあれば、範囲によらず SEV1 にする |
| 下げるのは指揮役が宣言する | 「SEV1 から SEV2 へ下げます。理由は代替手段を案内できたため」と時刻つきで記録する |
| 判定に原因を使わない | 「設定の入れ間違いだから軽い」とは考えず、利用者から見た影響だけで決める |
割合の出し方も先に決めておくと、判定が速くなります。例として「直近15分のエラー応答の割合」「影響を受ける部署の人数 ÷ 全利用者数」のどちらを使うかを、表の欄外に書いておきます。
インシデント管理のフロー(Mermaidのコード)
次のコードを Mermaid に対応したエディタや Wiki に貼ると、フロー図になります。
flowchart TD
A[検知<br>監視アラート・利用者からの連絡] --> B{利用者に影響があるか}
B -- いいえ --> Z[通常の課題として起票]
B -- はい --> C[重大度を判定<br>影響範囲 × 業務が止まるか]
C --> D[インシデントを宣言<br>番号を採番し専用チャンネルを開く]
D --> E[体制構築<br>指揮役・作業役・連絡役を指名]
E --> F[第一報を送る]
F --> G[暫定対処<br>切り戻し・切り離し・再起動]
G --> H{利用者が使える状態に戻ったか}
H -- いいえ --> I[経過報告<br>更新間隔ごとに送る]
I --> J{重大度の見直しが必要か}
J -- はい --> C
J -- いいえ --> G
H -- はい --> K[復旧を確認<br>監視値と利用者側の操作で確かめる]
K --> L[復旧報告を送り終了を宣言]
L --> M[事後レビュー<br>時系列・原因・再発防止]
M --> N[恒久対策を課題として起票]
6段階でやること
| 段階 | やること | 終わりの条件 | 主に動く役割 |
|---|---|---|---|
| 1. 検知 | アラートや連絡を受け、利用者への影響があるかを見る | 影響の有無を判断した | 最初に気づいた人 |
| 2. 宣言 | 重大度を判定し、「インシデントとして扱う」と宣言する。番号を採番する | 番号・重大度・開始時刻を記録した | 最初に気づいた人、または当番 |
| 3. 体制構築 | 指揮役・作業役・連絡役を指名し、やり取りの場所を1つに決める | 3役の名前を全員が見える場所に書いた | 指揮役 |
| 4. 暫定対処 | 切り戻し、切り離し、再起動、代替手段の案内など、まず戻す手を打つ | 利用者が業務を続けられる | 作業役 |
| 5. 復旧 | 監視値と利用者側の操作の両方で戻ったことを確かめ、終了を宣言する | 復旧報告を送った | 指揮役、連絡役 |
| 6. 事後レビュー | 時系列を整え、原因と再発防止を話し合う。恒久対策を課題にする | 対策に担当と期限が付いた | 指揮役が進行 |
「宣言」を独立した段階にしているのがポイントです。 「調べてから決めよう」と様子を見ている時間は、記録にも連絡にも残りません。宣言して番号を付けると、その瞬間から時系列の記録と連絡が始まります。宣言したあとで影響が無いと分かった場合は、「影響なしのため終了」と記録して閉じれば十分です。
暫定対処の選び方
| 状況 | まず試す手 | 理由 |
|---|---|---|
| 直前にリリースや設定変更があった | 切り戻す | 変更前の状態は動いていたことが分かっている |
| 特定のサーバーや機能だけがおかしい | 切り離す、機能を一時的に閉じる | 影響を広げずに残りを使える |
| 負荷が高まっている | 台数を増やす、重い処理を止める | 原因の調査より先に余裕を作れる |
| 手が見つからない | 代替手段を利用者に案内する | 業務が続けられれば重大度を下げられる |
体制:指揮役・作業役・連絡役の役割表
| 役割 | 担うこと | 担わないこと | 最初の5分でやること |
|---|---|---|---|
| 指揮役 | 重大度の判定と変更、役割の指名、次に何をするかの決定、終了の宣言 | 自分でコマンドを打つこと、原因の深掘り | 番号を採番し、3役の名前と次の確認時刻を書く |
| 作業役 | 調査と暫定対処の操作、やったことと結果の報告 | 利用者や関係部門への連絡、対処方針の単独決定 | 直前の変更と監視値を確認し、分かった事実を1行で報告する |
| 連絡役 | 第一報・経過報告・復旧報告の作成と送信、問い合わせの受け口、時系列の記録 | 技術的な調査、復旧見込みの独自判断 | 連絡先の一覧を開き、第一報の下書きを指揮役に見せる |
タブ区切り版
役割 担うこと 担わないこと 最初の5分でやること
指揮役 重大度の判定と変更、役割の指名、次に何をするかの決定、終了の宣言 自分でコマンドを打つこと、原因の深掘り 番号を採番し、3役の名前と次の確認時刻を書く
作業役 調査と暫定対処の操作、やったことと結果の報告 利用者や関係部門への連絡、対処方針の単独決定 直前の変更と監視値を確認し、分かった事実を1行で報告する
連絡役 第一報・経過報告・復旧報告の作成と送信、問い合わせの受け口、時系列の記録 技術的な調査、復旧見込みの独自判断 連絡先の一覧を開き、第一報の下書きを指揮役に見せる
重大度ごとの体制の目安
| レベル | 指揮役 | 作業役 | 連絡役 |
|---|---|---|---|
| SEV1 | 専任で1人 | 2人以上(調査と対処を分ける) | 専任で1人 |
| SEV2 | 専任で1人 | 1〜2人 | 専任で1人、または指揮役が兼ねる |
| SEV3 | 担当者が兼ねる | 担当者1人 | 担当者が兼ねる |
| SEV4 | 通常の課題管理で扱う | 担当者1人 | なし |
指揮役は、その場でいちばん詳しい人である必要はありません。 詳しい人は作業役として手を動かしたほうが復旧が早くなります。指揮役に求められるのは、状況を声に出して整理し、次の確認時刻を決め続けることです。交代するときは「ここから指揮役を○○さんに引き継ぎます」と宣言し、時系列に残します。
連絡テンプレート:第一報・経過報告・復旧報告
〔 〕の部分を書き換えて使います。記入例は架空の備品予約システムのものです。
第一報
件名:【SEV〔1〜4〕/第一報】〔システム名〕で〔起きていること〕が発生しています(〔番号〕)
1. 起きていること:〔利用者から見た事象を1文で〕
2. 影響:〔誰が・何をできないか〕。代替手段は〔あり:手順/なし〕
3. 発生時刻:〔検知した時刻〕ごろ
4. 現在の対応:〔調査中/切り戻し中 など〕
5. 次の連絡:〔時刻〕(状況が変わればその時点で連絡します)
6. 問い合わせ先:〔連絡役の名前・連絡手段〕
記入例:
件名:【SEV2/第一報】備品予約システムで予約の登録ができない状態が発生しています(INC-2026-014)
1. 起きていること:予約の登録ボタンを押すとエラー画面が表示されます。
2. 影響:全拠点の利用者が新しい予約を登録できません。予約の閲覧と取り消しはできます。
代替手段:急ぎの予約は総務窓口のチャットで受け付けます。
3. 発生時刻:9時12分ごろ
4. 現在の対応:9時00分に行った設定変更を切り戻しています。
5. 次の連絡:10時25分(状況が変わればその時点で連絡します)
6. 問い合わせ先:連絡役 佐藤(チャット #inc-2026-014)
経過報告
件名:【SEV〔1〜4〕/経過報告 第〔n〕報】〔システム名〕〔起きていること〕(〔番号〕)
1. 現在の状況:〔前回から変わった点を先に〕
2. 影響:〔変化があれば。なければ「前回から変わりません」〕
3. 実施したこと:〔時刻つきで1〜3行〕
4. これからやること:〔次の手〕
5. 復旧の見込み:〔時刻/見込みが立ちしだい連絡します〕
6. 次の連絡:〔時刻〕
記入例:
件名:【SEV2/経過報告 第2報】備品予約システム 予約の登録ができない状態(INC-2026-014)
1. 現在の状況:設定の切り戻しが完了し、登録の動作を確認しています。
2. 影響:前回から変わりません。
3. 実施したこと:9時52分 設定を変更前の内容に戻しました。
4. これからやること:テスト用の予約を登録し、3拠点の利用者に操作を確認してもらいます。
5. 復旧の見込み:10時10分ごろ
6. 次の連絡:10時25分、または復旧を確認した時点
復旧報告
件名:【復旧/SEV〔1〜4〕】〔システム名〕〔起きていたこと〕は復旧しました(〔番号〕)
1. 復旧時刻:〔時刻〕(影響があった時間:〔開始〕〜〔終了〕)
2. 影響の範囲:〔誰が・何をできなかったか・件数〕
3. 行った対処:〔暫定対処の内容〕
4. 利用者へのお願い:〔やり直しが必要な操作があれば〕
5. 今後の予定:原因と再発防止を〔日付〕までにお知らせします
記入例:
件名:【復旧/SEV2】備品予約システム 予約の登録ができない状態は復旧しました(INC-2026-014)
1. 復旧時刻:10時05分(影響があった時間:9時12分〜10時05分)
2. 影響の範囲:全拠点で新しい予約の登録ができませんでした。エラーになった登録は37件です。
3. 行った対処:9時00分に行った設定変更を、変更前の内容に戻しました。
4. 利用者へのお願い:エラーになった予約は登録されていません。お手数ですが、もう一度登録してください。
5. 今後の予定:原因と再発防止を10月9日までにお知らせします。
文面を書くときの決まり
| 決まり | 理由 |
|---|---|
| 件名の先頭に重大度と種別を入れる | 受け取った人が開く前に緊急度を判断できる |
| 利用者から見た事象で書く | 「DB接続数の上限」より「予約の登録ができない」のほうが伝わる |
| 時刻は24時間表記で書く | 「さっき」「30分後」は読む時刻でずれる |
| 次の連絡時刻を必ず書く | 進展が無くても「変わりありません」と送ることで、問い合わせが減る |
| 分からないことは「調査中」と書く | 推測で原因を書くと、あとで訂正の連絡が増える |
時系列記録の表
発生中に連絡役が1行ずつ足していきます。事後レビューと報告書の材料になります。
| 時刻 | 種別 | 内容 | 記録した人 |
|---|---|---|---|
| 09:00 | 変更 | 予約登録の入力チェックに関する設定を変更 | 作業役 鈴木 |
| 09:12 | 検知 | 監視でエラー応答の増加を検知。問い合わせ窓口にも3件の連絡 | 当番 田中 |
| 09:18 | 宣言 | INC-2026-014 を SEV2 として宣言。指揮役 田中、作業役 鈴木、連絡役 佐藤 | 指揮役 田中 |
| 09:25 | 連絡 | 第一報を送信 | 連絡役 佐藤 |
| 09:31 | 判断 | 直前の設定変更を切り戻すと決定 | 指揮役 田中 |
| 09:52 | 対処 | 設定の切り戻しが完了 | 作業役 鈴木 |
| 09:55 | 連絡 | 経過報告 第2報を送信 | 連絡役 佐藤 |
| 10:05 | 確認 | テスト予約の登録と3拠点の利用者の操作で復旧を確認 | 作業役 鈴木 |
| 10:10 | 宣言 | 終了を宣言。復旧報告を送信 | 指揮役 田中 |
時刻 種別 内容 記録した人
09:00 変更 予約登録の入力チェックに関する設定を変更 作業役 鈴木
09:12 検知 監視でエラー応答の増加を検知。問い合わせ窓口にも3件の連絡 当番 田中
09:18 宣言 INC-2026-014 を SEV2 として宣言。指揮役 田中、作業役 鈴木、連絡役 佐藤 指揮役 田中
09:25 連絡 第一報を送信 連絡役 佐藤
09:31 判断 直前の設定変更を切り戻すと決定 指揮役 田中
09:52 対処 設定の切り戻しが完了 作業役 鈴木
09:55 連絡 経過報告 第2報を送信 連絡役 佐藤
10:05 確認 テスト予約の登録と3拠点の利用者の操作で復旧を確認 作業役 鈴木
10:10 宣言 終了を宣言。復旧報告を送信 指揮役 田中
種別は「変更・検知・宣言・連絡・判断・対処・確認」の7つに絞ると、あとで並べ替えや集計がしやすくなります。「判断」の行(なぜその手を選んだか)を残しておくと、事後レビューで人ではなく手順や仕組みに目が向きます。
この記録から、検知から宣言まで6分、第一報まで13分、復旧の確認まで53分と計算できます(前掲の sev.py の後半で計算)。目標時間と比べる指標として、そのまま使えます。
似た概念との違いと選び方
| 組み合わせ | 一方 | もう一方 | 見分け方 |
|---|---|---|---|
| 重大度と優先度 | 重大度:利用者への影響の大きさ。事実で決まる | 優先度:対応する順番。期限や他の作業との兼ね合いで決める | 重大度は誰が判定しても同じになる。優先度は責任者が決める |
| インシデント管理と問題管理 | インシデント管理:使える状態に早く戻す。暫定対処でよい | 問題管理:根本の原因を調べ、再び起きないようにする | 戻すのが目的か、原因をなくすのが目的か |
| インシデントとサービス要求 | インシデント:動くはずのものが動かない | サービス要求:権限の追加や設定変更など、あらかじめ用意された依頼 | 「普段どおりでない」か「普段の手続き」か |
重大度が低くても優先度が高いことがあります。たとえば表示の乱れ(SEV4)でも、翌日の説明会で画面を見せる予定があれば、優先度は高くなります。逆に、深夜に一部の利用者だけが使う機能が止まった場合は、重大度は SEV3 でも、朝の対応に回す判断がありえます。
どれで扱うかの判断表
| 条件 | 扱い方 |
|---|---|
| 利用者が普段どおり使えない状態が今起きている | インシデント管理(この記事のフロー) |
| 復旧は済んだが、原因が分かっていない | 問題管理として課題に起票し、事後レビューで扱う |
| 同じインシデントが繰り返し起きている | 問題管理(恒久対策を優先度つきで計画する) |
| 権限の追加やパスワードの再設定を頼まれた | サービス要求(定型の依頼として受け付ける) |
| 進め方に迷い、上の判断がほしい | エスカレーション(判断できる人へ上げる) |
| 復旧後に、経緯と再発防止を文書で伝える | 障害報告書(事後の文書) |
この記事が扱うのは発生中の進め方です。 誰にいつ上げるかの基準や、復旧後に出す報告書の書き方は、それぞれ別の決まりとして用意しておくと、発生中に迷う場面が減ります。
事後レビューの進め方
復旧から数日以内に、関わった人が集まって振り返ります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 時系列 | 記録に抜けはないか。検知・宣言・第一報・復旧までの時間は目標と比べてどうだったか |
| 検知 | もっと早く気づける監視や通知はあったか |
| 判定 | 重大度の判定は表のとおりにできたか。表を直す必要はあるか |
| 対処 | 暫定対処の手順書はあったか。手順どおりに進められたか |
| 連絡 | 連絡先に漏れはなかったか。文面で伝わりにくい点はあったか |
| 再発防止 | 恒久対策に担当と期限が付いているか |
問いは「誰が」ではなく「何が」で始めます。 「なぜ確認しなかったのか」ではなく「確認が抜けても気づける仕組みは何か」と聞くと、手順やチェックの改善につながる案が出やすくなります。
事前に決めておくことチェックリスト
- [ ] 重大度の定義表と、割合の出し方が1ページにまとまっている
- [ ] インシデント番号の採番ルールがある(例:INC-年-連番)
- [ ] やり取りの場所(チャンネル名の付け方、通話の入り口)が決まっている
- [ ] 当番表があり、夜間・休日の最初の連絡先が分かる
- [ ] 指揮役を務められる人が2人以上いる
- [ ] 重大度ごとの連絡先一覧が最新になっている
- [ ] 第一報・経過報告・復旧報告のテンプレートがすぐ開ける場所にある
- [ ] 切り戻しの手順書があり、定期的に試している
- [ ] 時系列記録の表のひな形がある
- [ ] 事後レビューを開く条件(例:SEV1・SEV2は必ず)が決まっている
確かめて分かったこと
- 2軸の表は「1+行+列(上限4)」の足し算で書ける。 コードで出力した表と手書きの表が一致しました。式にしておくと、判定をチャットのボットや表計算に組み込みやすくなります。
- 3×3の表では、SEV4 が3マス、SEV3 も3マスを占める。 SEV1 は左上の1マスだけです。SEV1 が頻発する場合は、しきい値(50%)の置き方を見直す材料になります。
- Mermaid のノード内の改行は、今回の版(11.14.0)では br タグで描画できた。 上のフローは 15 個のノードとして描画されました。
- 判定に戻る矢印を1本入れると、フローが一方通行でなくなる。 経過報告のたびに重大度を見直す流れを図に入れておくと、下げる判断がしやすくなります。
- 時系列に時刻を書いておくと、所要時間は引き算だけで出る。 記入例では検知から宣言まで6分、復旧の確認まで53分でした。
よくある質問
Q. インシデント管理とは何ですか? A. サービスが普段どおり使えなくなったときに、利用者が使える状態へ早く戻すための進め方です。原因の調査や恒久対策は、復旧のあとに問題管理として扱います。
Q. 重大度と優先度の違いは何ですか? A. 重大度は影響の大きさ、優先度は対応する順番です。重大度は表を引いて決め、優先度は期限や他の作業との兼ね合いで責任者が決めます。
Q. 重大度レベルは何段階がよいですか? A. 3〜5段階で、チームが迷わず使い分けられる数にします。この記事では4段階にしました。段階を増やすほど細かく分けられますが、判定に時間がかかります。まず4段階で始め、使い分けられていない段階があれば統合します。
Q. 重大度が決められないときはどうすればよいですか? A. 高いほうで宣言します。影響の割合が分かった時点で、指揮役が理由と時刻を添えて下げます。
Q. 少人数のチームで3つの役割を分けられないときは? A. 2人なら「指揮役+連絡役」と「作業役」に分けます。1人のときは、最初に第一報を送ってから作業に入り、次の連絡時刻にタイマーをかけておくと、連絡が途切れません。
まとめ
- 重大度は「影響ユーザーの割合」と「業務が止まるか」の2軸で、表を引いて決める。
- 迷ったら高いほうで宣言し、分かった時点で下げる。 データに関わる疑いは最上位にする。
- フローは検知・宣言・体制構築・暫定対処・復旧・事後レビューの6段階。 宣言を独立させる。
- 指揮役・作業役・連絡役を分け、担わないことも決めておく。
- 第一報は原因が分からなくても送り、次の連絡時刻を必ず書く。
- 時系列は7つの種別で1行ずつ記録し、「判断」の理由を残す。
- 事後レビューは「何が」で問い、恒久対策に担当と期限を付ける。
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「インシデント管理のフローと重大度レベル定義|連絡テンプレート付き」
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