インシデント管理とは、サービスが普段どおりに使えなくなったときに、利用者が使える状態へできるだけ早く戻すための進め方です。 原因を突き止めることよりも、まず戻すことを優先します。

この記事では、発生中の進め方に絞って、重大度レベルの定義表、検知から事後レビューまでのフロー、役割表、連絡文のテンプレート、時系列記録の表をまとめました。題材は架空の「備品予約システム」です。表と文面はそのまま貼って、役割名と時間を自分のチームに合わせて書き換えられます。

確認環境:Mermaid 11.14.0(@mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0 と Chromium で描画)、Python 3.11(重大度の判定表と所要時間の計算)。確認日は 2026-10-05 です。表の時間・割合はすべて例であり、チームの決まりに合わせて調整してください。

この記事の結論

  • 重大度は「影響ユーザーの割合」と「業務が止まるか」の2軸で、表を引いて機械的に決める。 原因や直す難しさは判定に使いません。
  • 迷ったら高いほうで宣言し、分かった時点で下げる。 上げ直すより下げるほうが、連絡も体制も整えやすくなります。
  • フローは「検知 → 宣言 → 体制構築 → 暫定対処 → 復旧 → 事後レビュー」の6段階。 原因の調査は復旧のあとに回します。
  • 役割は指揮役・作業役・連絡役の3つに分ける。 手を動かす人が連絡を兼ねると、どちらも遅くなります。
  • 第一報は原因が分からなくても送る。 「何が起きているか・誰に影響するか・次の連絡時刻」の3点があれば足ります。

重大度レベルの早見表(SEV1〜4)

SEV は severity(重大度)の略です。数字が小さいほど重大です。

レベル 影響ユーザーの割合と業務への影響 代替手段 初動までの目標時間 連絡先 更新間隔
SEV1(緊急) 50%以上が使えず業務が止まる。またはデータの消失・漏えいの疑い なし 5分以内に宣言、15分以内に第一報 責任者、関係部門、利用者全体 30分ごと
SEV2(重大) 50%以上だが代替手段がある。または5%以上50%未満の業務が止まる あり、または一部になし 15分以内に宣言、30分以内に第一報 責任者、影響を受ける利用部門 60分ごと
SEV3(中) 一部の機能が使いにくい。5%未満の業務が止まる あり 営業時間内60分以内に担当を決める チームリーダー、問い合わせ窓口 4時間ごと、または状況が変わったとき
SEV4(軽微) 表示の乱れなど、業務は止まらない 不要 翌営業日までに担当を決める チーム内 完了時に1回

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「インシデント管理のフローと重大度レベル定義|連絡テンプレート付き」

タブ区切り版

表計算ソフトのA1セルに貼ると、そのまま表になります。

レベル 影響ユーザーの割合と業務への影響    代替手段    初動までの目標時間   連絡先 更新間隔
SEV1(緊急)    50%以上が使えず業務が止まる。またはデータの消失・漏えいの疑い    なし  5分以内に宣言、15分以内に第一報   責任者、関係部門、利用者全体  30分ごと
SEV2(重大)    50%以上だが代替手段がある。または5%以上50%未満の業務が止まる  あり、または一部になし 15分以内に宣言、30分以内に第一報  責任者、影響を受ける利用部門  60分ごと
SEV3(中) 一部の機能が使いにくい。5%未満の業務が止まる あり  営業時間内60分以内に担当を決める   チームリーダー、問い合わせ窓口 4時間ごと、または状況が変わったとき
SEV4(軽微)    表示の乱れなど、業務は止まらない    不要  翌営業日までに担当を決める   チーム内    完了時に1回

重大度の決め方:2軸の表を引く

重大度は、次の2つの問いの答えだけで決めます。

  1. 影響を受けている利用者は全体の何割か(50%以上/5%以上50%未満/5%未満)
  2. その人たちの業務は止まっているか(止まる・代替手段なし/代替手段あり/止まらない)
影響ユーザーの割合 止まる(代替なし) 代替手段あり 止まらない
50%以上 SEV1 SEV2 SEV3
5%以上50%未満 SEV2 SEV3 SEV4
5%未満 SEV3 SEV4 SEV4

表の中身は「1+行の位置+列の位置(上限4)」という足し算で作ってあります。 行と列を1つずつずらすたびに1段階下がるので、覚えやすく、人によって判定がぶれません。次のコードで表を出力して確かめました。

# sev.py : 影響範囲と業務停止の2軸から重大度を決める(Python 3.11、標準ライブラリのみ)
from datetime import datetime

def scope_index(affected_percent: float) -> int:
    """影響ユーザーの割合 → 0:広い(50%以上) 1:一部(5%以上) 2:ごく一部(5%未満)"""
    if affected_percent >= 50:
        return 0
    if affected_percent >= 5:
        return 1
    return 2

STOP = {"止まる(代替なし)": 0, "代替手段あり": 1, "止まらない": 2}

def severity(affected_percent: float, stop: str, data_risk: bool = False) -> str:
    if data_risk:                      # データの消失や漏えいの疑いは範囲によらず最上位
        return "SEV1"
    return f"SEV{min(4, 1 + scope_index(affected_percent) + STOP[stop])}"

print("影響ユーザー\t" + "\t".join(STOP))
for label, pct in (("50%以上", 80), ("5%以上50%未満", 20), ("5%未満", 1)):
    print(label + "\t" + "\t".join(severity(pct, s) for s in STOP))

print(severity(100, "止まる(代替なし)"), severity(12, "代替手段あり"),
      severity(0.5, "止まらない"), severity(0.5, "止まらない", data_risk=True))

# 時系列記録から所要時間を出す
log = [("検知", "09:12"), ("宣言", "09:18"), ("第一報", "09:25"),
       ("暫定対処の完了", "09:52"), ("復旧の確認", "10:05"), ("終了の宣言", "10:10")]
t0 = datetime.strptime(log[0][1], "%H:%M")
for name, hm in log:
    print(f"{hm} {name}(検知から{int((datetime.strptime(hm, '%H:%M') - t0).total_seconds() // 60)}分)")

実行結果:

影響ユーザー  止まる(代替なし)   代替手段あり  止まらない
50%以上   SEV1    SEV2    SEV3
5%以上50%未満   SEV2    SEV3    SEV4
5%未満    SEV3    SEV4    SEV4
SEV1 SEV3 SEV4 SEV1
09:12 検知(検知から0分)
09:18 宣言(検知から6分)
09:25 第一報(検知から13分)
09:52 暫定対処の完了(検知から40分)
10:05 復旧の確認(検知から53分)
10:10 終了の宣言(検知から58分)

2軸に加える4つの決まり

決まり 内容
迷ったら高いほう 割合が分からないときは、広いほうの行で判定する
データに関わるものは最上位 消失・漏えいの疑いがあれば、範囲によらず SEV1 にする
下げるのは指揮役が宣言する 「SEV1 から SEV2 へ下げます。理由は代替手段を案内できたため」と時刻つきで記録する
判定に原因を使わない 「設定の入れ間違いだから軽い」とは考えず、利用者から見た影響だけで決める

割合の出し方も先に決めておくと、判定が速くなります。例として「直近15分のエラー応答の割合」「影響を受ける部署の人数 ÷ 全利用者数」のどちらを使うかを、表の欄外に書いておきます。

インシデント管理のフロー(Mermaidのコード)

次のコードを Mermaid に対応したエディタや Wiki に貼ると、フロー図になります。

flowchart TD
    A[検知<br>監視アラート・利用者からの連絡] --> B{利用者に影響があるか}
    B -- いいえ --> Z[通常の課題として起票]
    B -- はい --> C[重大度を判定<br>影響範囲 × 業務が止まるか]
    C --> D[インシデントを宣言<br>番号を採番し専用チャンネルを開く]
    D --> E[体制構築<br>指揮役・作業役・連絡役を指名]
    E --> F[第一報を送る]
    F --> G[暫定対処<br>切り戻し・切り離し・再起動]
    G --> H{利用者が使える状態に戻ったか}
    H -- いいえ --> I[経過報告<br>更新間隔ごとに送る]
    I --> J{重大度の見直しが必要か}
    J -- はい --> C
    J -- いいえ --> G
    H -- はい --> K[復旧を確認<br>監視値と利用者側の操作で確かめる]
    K --> L[復旧報告を送り終了を宣言]
    L --> M[事後レビュー<br>時系列・原因・再発防止]
    M --> N[恒久対策を課題として起票]

6段階でやること

段階 やること 終わりの条件 主に動く役割
1. 検知 アラートや連絡を受け、利用者への影響があるかを見る 影響の有無を判断した 最初に気づいた人
2. 宣言 重大度を判定し、「インシデントとして扱う」と宣言する。番号を採番する 番号・重大度・開始時刻を記録した 最初に気づいた人、または当番
3. 体制構築 指揮役・作業役・連絡役を指名し、やり取りの場所を1つに決める 3役の名前を全員が見える場所に書いた 指揮役
4. 暫定対処 切り戻し、切り離し、再起動、代替手段の案内など、まず戻す手を打つ 利用者が業務を続けられる 作業役
5. 復旧 監視値と利用者側の操作の両方で戻ったことを確かめ、終了を宣言する 復旧報告を送った 指揮役、連絡役
6. 事後レビュー 時系列を整え、原因と再発防止を話し合う。恒久対策を課題にする 対策に担当と期限が付いた 指揮役が進行

「宣言」を独立した段階にしているのがポイントです。 「調べてから決めよう」と様子を見ている時間は、記録にも連絡にも残りません。宣言して番号を付けると、その瞬間から時系列の記録と連絡が始まります。宣言したあとで影響が無いと分かった場合は、「影響なしのため終了」と記録して閉じれば十分です。

暫定対処の選び方

状況 まず試す手 理由
直前にリリースや設定変更があった 切り戻す 変更前の状態は動いていたことが分かっている
特定のサーバーや機能だけがおかしい 切り離す、機能を一時的に閉じる 影響を広げずに残りを使える
負荷が高まっている 台数を増やす、重い処理を止める 原因の調査より先に余裕を作れる
手が見つからない 代替手段を利用者に案内する 業務が続けられれば重大度を下げられる

体制:指揮役・作業役・連絡役の役割表

役割 担うこと 担わないこと 最初の5分でやること
指揮役 重大度の判定と変更、役割の指名、次に何をするかの決定、終了の宣言 自分でコマンドを打つこと、原因の深掘り 番号を採番し、3役の名前と次の確認時刻を書く
作業役 調査と暫定対処の操作、やったことと結果の報告 利用者や関係部門への連絡、対処方針の単独決定 直前の変更と監視値を確認し、分かった事実を1行で報告する
連絡役 第一報・経過報告・復旧報告の作成と送信、問い合わせの受け口、時系列の記録 技術的な調査、復旧見込みの独自判断 連絡先の一覧を開き、第一報の下書きを指揮役に見せる

タブ区切り版

役割  担うこと    担わないこと  最初の5分でやること
指揮役 重大度の判定と変更、役割の指名、次に何をするかの決定、終了の宣言    自分でコマンドを打つこと、原因の深掘り 番号を採番し、3役の名前と次の確認時刻を書く
作業役 調査と暫定対処の操作、やったことと結果の報告  利用者や関係部門への連絡、対処方針の単独決定  直前の変更と監視値を確認し、分かった事実を1行で報告する
連絡役 第一報・経過報告・復旧報告の作成と送信、問い合わせの受け口、時系列の記録    技術的な調査、復旧見込みの独自判断   連絡先の一覧を開き、第一報の下書きを指揮役に見せる

重大度ごとの体制の目安

レベル 指揮役 作業役 連絡役
SEV1 専任で1人 2人以上(調査と対処を分ける) 専任で1人
SEV2 専任で1人 1〜2人 専任で1人、または指揮役が兼ねる
SEV3 担当者が兼ねる 担当者1人 担当者が兼ねる
SEV4 通常の課題管理で扱う 担当者1人 なし

指揮役は、その場でいちばん詳しい人である必要はありません。 詳しい人は作業役として手を動かしたほうが復旧が早くなります。指揮役に求められるのは、状況を声に出して整理し、次の確認時刻を決め続けることです。交代するときは「ここから指揮役を○○さんに引き継ぎます」と宣言し、時系列に残します。

連絡テンプレート:第一報・経過報告・復旧報告

〔 〕の部分を書き換えて使います。記入例は架空の備品予約システムのものです。

第一報

件名:【SEV〔1〜4〕/第一報】〔システム名〕で〔起きていること〕が発生しています(〔番号〕)

1. 起きていること:〔利用者から見た事象を1文で〕
2. 影響:〔誰が・何をできないか〕。代替手段は〔あり:手順/なし〕
3. 発生時刻:〔検知した時刻〕ごろ
4. 現在の対応:〔調査中/切り戻し中 など〕
5. 次の連絡:〔時刻〕(状況が変わればその時点で連絡します)
6. 問い合わせ先:〔連絡役の名前・連絡手段〕

記入例:

件名:【SEV2/第一報】備品予約システムで予約の登録ができない状態が発生しています(INC-2026-014)

1. 起きていること:予約の登録ボタンを押すとエラー画面が表示されます。
2. 影響:全拠点の利用者が新しい予約を登録できません。予約の閲覧と取り消しはできます。
   代替手段:急ぎの予約は総務窓口のチャットで受け付けます。
3. 発生時刻:9時12分ごろ
4. 現在の対応:9時00分に行った設定変更を切り戻しています。
5. 次の連絡:10時25分(状況が変わればその時点で連絡します)
6. 問い合わせ先:連絡役 佐藤(チャット #inc-2026-014)

経過報告

件名:【SEV〔1〜4〕/経過報告 第〔n〕報】〔システム名〕〔起きていること〕(〔番号〕)

1. 現在の状況:〔前回から変わった点を先に〕
2. 影響:〔変化があれば。なければ「前回から変わりません」〕
3. 実施したこと:〔時刻つきで1〜3行〕
4. これからやること:〔次の手〕
5. 復旧の見込み:〔時刻/見込みが立ちしだい連絡します〕
6. 次の連絡:〔時刻〕

記入例:

件名:【SEV2/経過報告 第2報】備品予約システム 予約の登録ができない状態(INC-2026-014)

1. 現在の状況:設定の切り戻しが完了し、登録の動作を確認しています。
2. 影響:前回から変わりません。
3. 実施したこと:9時52分 設定を変更前の内容に戻しました。
4. これからやること:テスト用の予約を登録し、3拠点の利用者に操作を確認してもらいます。
5. 復旧の見込み:10時10分ごろ
6. 次の連絡:10時25分、または復旧を確認した時点

復旧報告

件名:【復旧/SEV〔1〜4〕】〔システム名〕〔起きていたこと〕は復旧しました(〔番号〕)

1. 復旧時刻:〔時刻〕(影響があった時間:〔開始〕〜〔終了〕)
2. 影響の範囲:〔誰が・何をできなかったか・件数〕
3. 行った対処:〔暫定対処の内容〕
4. 利用者へのお願い:〔やり直しが必要な操作があれば〕
5. 今後の予定:原因と再発防止を〔日付〕までにお知らせします

記入例:

件名:【復旧/SEV2】備品予約システム 予約の登録ができない状態は復旧しました(INC-2026-014)

1. 復旧時刻:10時05分(影響があった時間:9時12分〜10時05分)
2. 影響の範囲:全拠点で新しい予約の登録ができませんでした。エラーになった登録は37件です。
3. 行った対処:9時00分に行った設定変更を、変更前の内容に戻しました。
4. 利用者へのお願い:エラーになった予約は登録されていません。お手数ですが、もう一度登録してください。
5. 今後の予定:原因と再発防止を10月9日までにお知らせします。

文面を書くときの決まり

決まり 理由
件名の先頭に重大度と種別を入れる 受け取った人が開く前に緊急度を判断できる
利用者から見た事象で書く 「DB接続数の上限」より「予約の登録ができない」のほうが伝わる
時刻は24時間表記で書く 「さっき」「30分後」は読む時刻でずれる
次の連絡時刻を必ず書く 進展が無くても「変わりありません」と送ることで、問い合わせが減る
分からないことは「調査中」と書く 推測で原因を書くと、あとで訂正の連絡が増える

時系列記録の表

発生中に連絡役が1行ずつ足していきます。事後レビューと報告書の材料になります。

時刻 種別 内容 記録した人
09:00 変更 予約登録の入力チェックに関する設定を変更 作業役 鈴木
09:12 検知 監視でエラー応答の増加を検知。問い合わせ窓口にも3件の連絡 当番 田中
09:18 宣言 INC-2026-014 を SEV2 として宣言。指揮役 田中、作業役 鈴木、連絡役 佐藤 指揮役 田中
09:25 連絡 第一報を送信 連絡役 佐藤
09:31 判断 直前の設定変更を切り戻すと決定 指揮役 田中
09:52 対処 設定の切り戻しが完了 作業役 鈴木
09:55 連絡 経過報告 第2報を送信 連絡役 佐藤
10:05 確認 テスト予約の登録と3拠点の利用者の操作で復旧を確認 作業役 鈴木
10:10 宣言 終了を宣言。復旧報告を送信 指揮役 田中
時刻  種別  内容  記録した人
09:00   変更  予約登録の入力チェックに関する設定を変更    作業役 鈴木
09:12   検知  監視でエラー応答の増加を検知。問い合わせ窓口にも3件の連絡   当番 田中
09:18   宣言  INC-2026-014 を SEV2 として宣言。指揮役 田中、作業役 鈴木、連絡役 佐藤  指揮役 田中
09:25   連絡  第一報を送信  連絡役 佐藤
09:31   判断  直前の設定変更を切り戻すと決定 指揮役 田中
09:52   対処  設定の切り戻しが完了  作業役 鈴木
09:55   連絡  経過報告 第2報を送信 連絡役 佐藤
10:05   確認  テスト予約の登録と3拠点の利用者の操作で復旧を確認   作業役 鈴木
10:10   宣言  終了を宣言。復旧報告を送信   指揮役 田中

種別は「変更・検知・宣言・連絡・判断・対処・確認」の7つに絞ると、あとで並べ替えや集計がしやすくなります。「判断」の行(なぜその手を選んだか)を残しておくと、事後レビューで人ではなく手順や仕組みに目が向きます。

この記録から、検知から宣言まで6分、第一報まで13分、復旧の確認まで53分と計算できます(前掲の sev.py の後半で計算)。目標時間と比べる指標として、そのまま使えます。

似た概念との違いと選び方

組み合わせ 一方 もう一方 見分け方
重大度と優先度 重大度:利用者への影響の大きさ。事実で決まる 優先度:対応する順番。期限や他の作業との兼ね合いで決める 重大度は誰が判定しても同じになる。優先度は責任者が決める
インシデント管理と問題管理 インシデント管理:使える状態に早く戻す。暫定対処でよい 問題管理:根本の原因を調べ、再び起きないようにする 戻すのが目的か、原因をなくすのが目的か
インシデントとサービス要求 インシデント:動くはずのものが動かない サービス要求:権限の追加や設定変更など、あらかじめ用意された依頼 「普段どおりでない」か「普段の手続き」か

重大度が低くても優先度が高いことがあります。たとえば表示の乱れ(SEV4)でも、翌日の説明会で画面を見せる予定があれば、優先度は高くなります。逆に、深夜に一部の利用者だけが使う機能が止まった場合は、重大度は SEV3 でも、朝の対応に回す判断がありえます。

どれで扱うかの判断表

条件 扱い方
利用者が普段どおり使えない状態が今起きている インシデント管理(この記事のフロー)
復旧は済んだが、原因が分かっていない 問題管理として課題に起票し、事後レビューで扱う
同じインシデントが繰り返し起きている 問題管理(恒久対策を優先度つきで計画する)
権限の追加やパスワードの再設定を頼まれた サービス要求(定型の依頼として受け付ける)
進め方に迷い、上の判断がほしい エスカレーション(判断できる人へ上げる)
復旧後に、経緯と再発防止を文書で伝える 障害報告書(事後の文書)

この記事が扱うのは発生中の進め方です。 誰にいつ上げるかの基準や、復旧後に出す報告書の書き方は、それぞれ別の決まりとして用意しておくと、発生中に迷う場面が減ります。

事後レビューの進め方

復旧から数日以内に、関わった人が集まって振り返ります。

項目 確認すること
時系列 記録に抜けはないか。検知・宣言・第一報・復旧までの時間は目標と比べてどうだったか
検知 もっと早く気づける監視や通知はあったか
判定 重大度の判定は表のとおりにできたか。表を直す必要はあるか
対処 暫定対処の手順書はあったか。手順どおりに進められたか
連絡 連絡先に漏れはなかったか。文面で伝わりにくい点はあったか
再発防止 恒久対策に担当と期限が付いているか

問いは「誰が」ではなく「何が」で始めます。 「なぜ確認しなかったのか」ではなく「確認が抜けても気づける仕組みは何か」と聞くと、手順やチェックの改善につながる案が出やすくなります。

事前に決めておくことチェックリスト

  • [ ] 重大度の定義表と、割合の出し方が1ページにまとまっている
  • [ ] インシデント番号の採番ルールがある(例:INC-年-連番)
  • [ ] やり取りの場所(チャンネル名の付け方、通話の入り口)が決まっている
  • [ ] 当番表があり、夜間・休日の最初の連絡先が分かる
  • [ ] 指揮役を務められる人が2人以上いる
  • [ ] 重大度ごとの連絡先一覧が最新になっている
  • [ ] 第一報・経過報告・復旧報告のテンプレートがすぐ開ける場所にある
  • [ ] 切り戻しの手順書があり、定期的に試している
  • [ ] 時系列記録の表のひな形がある
  • [ ] 事後レビューを開く条件(例:SEV1・SEV2は必ず)が決まっている

確かめて分かったこと

  • 2軸の表は「1+行+列(上限4)」の足し算で書ける。 コードで出力した表と手書きの表が一致しました。式にしておくと、判定をチャットのボットや表計算に組み込みやすくなります。
  • 3×3の表では、SEV4 が3マス、SEV3 も3マスを占める。 SEV1 は左上の1マスだけです。SEV1 が頻発する場合は、しきい値(50%)の置き方を見直す材料になります。
  • Mermaid のノード内の改行は、今回の版(11.14.0)では br タグで描画できた。 上のフローは 15 個のノードとして描画されました。
  • 判定に戻る矢印を1本入れると、フローが一方通行でなくなる。 経過報告のたびに重大度を見直す流れを図に入れておくと、下げる判断がしやすくなります。
  • 時系列に時刻を書いておくと、所要時間は引き算だけで出る。 記入例では検知から宣言まで6分、復旧の確認まで53分でした。

よくある質問

Q. インシデント管理とは何ですか? A. サービスが普段どおり使えなくなったときに、利用者が使える状態へ早く戻すための進め方です。原因の調査や恒久対策は、復旧のあとに問題管理として扱います。

Q. 重大度と優先度の違いは何ですか? A. 重大度は影響の大きさ、優先度は対応する順番です。重大度は表を引いて決め、優先度は期限や他の作業との兼ね合いで責任者が決めます。

Q. 重大度レベルは何段階がよいですか? A. 3〜5段階で、チームが迷わず使い分けられる数にします。この記事では4段階にしました。段階を増やすほど細かく分けられますが、判定に時間がかかります。まず4段階で始め、使い分けられていない段階があれば統合します。

Q. 重大度が決められないときはどうすればよいですか? A. 高いほうで宣言します。影響の割合が分かった時点で、指揮役が理由と時刻を添えて下げます。

Q. 少人数のチームで3つの役割を分けられないときは? A. 2人なら「指揮役+連絡役」と「作業役」に分けます。1人のときは、最初に第一報を送ってから作業に入り、次の連絡時刻にタイマーをかけておくと、連絡が途切れません。

まとめ

  • 重大度は「影響ユーザーの割合」と「業務が止まるか」の2軸で、表を引いて決める。
  • 迷ったら高いほうで宣言し、分かった時点で下げる。 データに関わる疑いは最上位にする。
  • フローは検知・宣言・体制構築・暫定対処・復旧・事後レビューの6段階。 宣言を独立させる。
  • 指揮役・作業役・連絡役を分け、担わないことも決めておく。
  • 第一報は原因が分からなくても送り、次の連絡時刻を必ず書く。
  • 時系列は7つの種別で1行ずつ記録し、「判断」の理由を残す。
  • 事後レビューは「何が」で問い、恒久対策に担当と期限を付ける。

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(記載例)出典:株式会社RJC「インシデント管理のフローと重大度レベル定義|連絡テンプレート付き」

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