- マネジメント
優先順位の付け方|緊急度×重要度マトリクスの例と点数表
緊急度×重要度マトリクスとは、タスクを「重要か」「急ぐか」の2つの軸で4つの象限に分け、取りかかる順番と扱い方を決める方法です。 期限が近い順に片づけていると、障害の予防や自動化のような「重要だが急がない」仕事がいつまでも残ります。2つの軸で分けると、その仕事に先に時間を割り当てられるようになります。
この記事では、開発者のタスク20件を4象限に振り分けた記入例と、重要度1〜5×緊急度1〜5の点数表を、Markdownの表とタブ区切りで載せています。点数順に並べ替えるPythonのコードは実行結果つきです。重要度を決めるときに使える5つの質問と、MoSCoW・RICE・ICEとの違いもまとめました。
確認環境:Ubuntu 24.04、Python 3.11.15(並べ替えと点数の計算)、LibreOffice Calc 24.2(表計算の数式の検算)。MoSCoW・RICE・ICE の定義は、記事末尾の出典のページを2026-10-05に開いて確認しました。
この記事の結論
- 重要度は、期限の近さではなく「やらなかったときの影響の大きさ」で決めます。 期限の近さは緊急度のほうに入れます。
- 第2象限(重要だが急がない)には、毎週の時間枠を先に確保します。 空いた時間でやろうとすると、第1・第3象限に押されて進みません。
- 取りかかる順は第1象限→第2象限→第3象限→第4象限。同じ象限の中は、重要度×緊急度の点数が高い順です。
- 点数(掛け算)だけで並べると、急ぐだけの仕事が重要な仕事より上に来ます。 先に象限で分けてから点数を使います。
- 第3象限は「短く済ませる・任せる・まとめて処理する」、第4象限は「やめる・後回し」と、象限ごとに扱い方を変えます。
4象限の早見表
重要度・緊急度とも、4以上を「高い」として分けます。
| 象限 | 重要度 | 緊急度 | 扱い方 | 開発者のタスクの例 |
|---|---|---|---|---|
| 第1象限 | 高い(4〜5) | 高い(4〜5) | すぐやる | 本番の障害対応、リリース当日のレビュー、期限が迫った証明書の更新 |
| 第2象限 | 高い(4〜5) | 低い(1〜3) | 時間枠を先に取る | 自動テストの追加、リファクタリング、デプロイの自動化、設計書の更新 |
| 第3象限 | 低い(1〜3) | 高い(4〜5) | 短く済ませる・任せる | 操作方法の問い合わせ、資料の体裁直し、軽い確認の依頼 |
| 第4象限 | 低い(1〜3) | 低い(1〜3) | やめる・後回し | 使われていない機能の表示調整、通知メールの整理 |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「優先順位の付け方|緊急度×重要度マトリクスの例と点数表」
重要度と緊急度の決め方
重要度を決める5つの質問
重要度は「やらなかった場合に何が起きるか」で決めます。次の5つの質問に「はい」と答えた数を、そのまま重要度の点数にします(0個のときは1)。
| No | 質問 | 「はい」の例 |
|---|---|---|
| 1 | やらないと、外部や他チームと約束した期限・品質を守れなくなるか | リリース日、利用者への回答期限、サポート終了日 |
| 2 | 影響を受ける人が10人以上いるか | 利用者全員がログインできない、チーム全員の作業が止まる |
| 3 | 後から取り戻しにくいか | データが失われる、公開後は直しにくい |
| 4 | 放っておくと、あとで手間が大きく増えるか | 変更のたびに手作業が発生する、同じ不具合が繰り返される |
| 5 | 自分やチームの今期の目標に直接つながるか | 目標に挙げた品質向上や自動化そのもの |
「10人」は例の値です。チームの規模に合わせて決めてください。質問1は「約束があるかどうか」を聞いており、期限までの残り日数は見ません。残り日数は次の緊急度で扱います。
緊急度の目安
緊急度は、対応が必要になるまでの残り時間で決めます。
| 緊急度 | 目安 |
|---|---|
| 5 | 今日中に対応が必要 |
| 4 | 3営業日以内 |
| 3 | 今月中 |
| 2 | 3か月以内 |
| 1 | 期限が決まっていない |
「急ぎです」と書かれた依頼も、この表に当てはめて数字にします。 依頼した人に「いつまでに必要ですか」「遅れると何が起きますか」と聞くと、緊急度と重要度の両方が分かります。
重要度×緊急度の点数表
点数は重要度×緊急度です。象限の境目は4です。右上の4マス(16・20・20・25)が第1象限、左上の6マスが第2象限、右下の6マスが第3象限、左下の9マスが第4象限です。
| 重要度\緊急度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5 | 5 | 10 | 15 | 20 | 25 |
| 4 | 4 | 8 | 12 | 16 | 20 |
| 3 | 3 | 6 | 9 | 12 | 15 |
| 2 | 2 | 4 | 6 | 8 | 10 |
| 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
タブ区切り(表計算ソフトに貼れます):
重要度\緊急度 1 2 3 4 5
5 5 10 15 20 25
4 4 8 12 16 20
3 3 6 9 12 15
2 2 4 6 8 10
1 1 2 3 4 5
表計算ソフトでは、重要度がB列、緊急度がC列にあるとき、点数は =B2*C2、象限は =IF(AND(B2>=4,C2>=4),1,IF(B2>=4,2,IF(C2>=4,3,4))) で求められます(LibreOffice Calc で、Pythonの結果と20件すべて一致することを確かめました)。
開発者のタスク20件を4象限に振り分けた記入例
ある開発者の1週間のタスク20件を、上の基準で点数にして振り分けた例です(架空の例)。
| 緊急度が高い(4〜5) | 緊急度が低い(1〜3) | |
|---|---|---|
| 重要度が高い(4〜5) | 第1象限:すぐやる(5件) | 第2象限:時間枠を先に取る(6件) |
| 重要度が低い(1〜3) | 第3象限:短く済ませる・任せる(5件) | 第4象限:やめる・後回し(4件) |
第1象限(重要かつ緊急)
- 本番でログインできない障害の対応
- リリース前テストで見つかった不具合の修正
- 証明書の更新(期限まで3日)
- 今日リリース分の修正のレビュー依頼
- 明日が期限の利用者向け回答(データ不整合の調査)
第2象限(重要だが急がない)
- 設計書の更新(今月末の引き継ぎ向け)
- 自動テストの追加(障害が続いた機能)
- リファクタリング(変更が集中するモジュール)
- ライブラリの更新(サポート終了まで2か月)
- 再来月に加わるメンバー向けの説明資料づくり
- 手作業デプロイの自動化
第3象限(急ぐが重要ではない)
- 急ぎと書かれた見積もりの概算依頼
- 社内チャットの問い合わせ(操作方法の質問)
- 他チームからの「今日中に見てほしい」軽い確認
- 定例会議の資料の体裁直し
- 勉強会の参加可否への返信(今週締め切り)
第4象限(どちらでもない)
- ログの警告のうち影響が無いと分かっているものの整理
- 使われていない機能の細かな表示調整
- 読んでいない通知メールの整理
- エディタの設定の作り込み
取りかかる順に並べた一覧です。
| 順位 | 象限 | タスク | 重要度 | 緊急度 | 点数 | 扱い方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 第1 | 本番でログインできない障害の対応 | 5 | 5 | 25 | すぐやる |
| 2 | 第1 | リリース前テストで見つかった不具合の修正 | 5 | 4 | 20 | すぐやる |
| 3 | 第1 | 証明書の更新(期限まで3日) | 5 | 4 | 20 | すぐやる |
| 4 | 第1 | 今日リリース分の修正のレビュー依頼 | 4 | 5 | 20 | すぐやる |
| 5 | 第1 | 明日が期限の利用者向け回答(データ不整合の調査) | 4 | 4 | 16 | すぐやる |
| 6 | 第2 | 設計書の更新(今月末の引き継ぎ向け) | 4 | 3 | 12 | 時間枠を先に取る |
| 7 | 第2 | 自動テストの追加(障害が続いた機能) | 5 | 2 | 10 | 時間枠を先に取る |
| 8 | 第2 | リファクタリング(変更が集中するモジュール) | 4 | 2 | 8 | 時間枠を先に取る |
| 9 | 第2 | ライブラリの更新(サポート終了まで2か月) | 4 | 2 | 8 | 時間枠を先に取る |
| 10 | 第2 | 再来月に加わるメンバー向けの説明資料づくり | 4 | 2 | 8 | 時間枠を先に取る |
| 11 | 第2 | 手作業デプロイの自動化 | 4 | 1 | 4 | 時間枠を先に取る |
| 12 | 第3 | 急ぎと書かれた見積もりの概算依頼 | 3 | 4 | 12 | 短く済ませる・任せる |
| 13 | 第3 | 社内チャットの問い合わせ(操作方法の質問) | 2 | 5 | 10 | 短く済ませる・任せる |
| 14 | 第3 | 他チームからの「今日中に見てほしい」軽い確認 | 2 | 5 | 10 | 短く済ませる・任せる |
| 15 | 第3 | 定例会議の資料の体裁直し | 2 | 4 | 8 | 短く済ませる・任せる |
| 16 | 第3 | 勉強会の参加可否への返信(今週締め切り) | 1 | 4 | 4 | 短く済ませる・任せる |
| 17 | 第4 | ログの警告のうち影響が無いと分かっているものの整理 | 2 | 2 | 4 | やめる・後回し |
| 18 | 第4 | 使われていない機能の細かな表示調整 | 2 | 1 | 2 | やめる・後回し |
| 19 | 第4 | 読んでいない通知メールの整理 | 1 | 2 | 2 | やめる・後回し |
| 20 | 第4 | エディタの設定の作り込み | 1 | 1 | 1 | やめる・後回し |
タブ区切り:
順位 象限 タスク 重要度 緊急度 点数 扱い方
1 第1 本番でログインできない障害の対応 5 5 25 すぐやる
2 第1 リリース前テストで見つかった不具合の修正 5 4 20 すぐやる
3 第1 証明書の更新(期限まで3日) 5 4 20 すぐやる
4 第1 今日リリース分の修正のレビュー依頼 4 5 20 すぐやる
5 第1 明日が期限の利用者向け回答(データ不整合の調査) 4 4 16 すぐやる
6 第2 設計書の更新(今月末の引き継ぎ向け) 4 3 12 時間枠を先に取る
7 第2 自動テストの追加(障害が続いた機能) 5 2 10 時間枠を先に取る
8 第2 リファクタリング(変更が集中するモジュール) 4 2 8 時間枠を先に取る
9 第2 ライブラリの更新(サポート終了まで2か月) 4 2 8 時間枠を先に取る
10 第2 再来月に加わるメンバー向けの説明資料づくり 4 2 8 時間枠を先に取る
11 第2 手作業デプロイの自動化 4 1 4 時間枠を先に取る
12 第3 急ぎと書かれた見積もりの概算依頼 3 4 12 短く済ませる・任せる
13 第3 社内チャットの問い合わせ(操作方法の質問) 2 5 10 短く済ませる・任せる
14 第3 他チームからの「今日中に見てほしい」軽い確認 2 5 10 短く済ませる・任せる
15 第3 定例会議の資料の体裁直し 2 4 8 短く済ませる・任せる
16 第3 勉強会の参加可否への返信(今週締め切り) 1 4 4 短く済ませる・任せる
17 第4 ログの警告のうち影響が無いと分かっているものの整理 2 2 4 やめる・後回し
18 第4 使われていない機能の細かな表示調整 2 1 2 やめる・後回し
19 第4 読んでいない通知メールの整理 1 2 2 やめる・後回し
20 第4 エディタの設定の作り込み 1 1 1 やめる・後回し
Pythonで象限に分けて並べ替える
タスク名・重要度・緊急度を入れると、象限を判定し、取りかかる順に並べます。標準ライブラリだけで動きます。
# 重要度(1〜5)と緊急度(1〜5)からタスクを象限に分け、取りかかる順に並べる
tasks = [
# (タスク, 重要度, 緊急度)
("本番でログインできない障害の対応", 5, 5),
("今日リリース分の修正のレビュー依頼", 4, 5),
("明日が期限の利用者向け回答(データ不整合の調査)", 4, 4),
("リリース前テストで見つかった不具合の修正", 5, 4),
("証明書の更新(期限まで3日)", 5, 4),
("自動テストの追加(障害が続いた機能)", 5, 2),
("リファクタリング(変更が集中するモジュール)", 4, 2),
("ライブラリの更新(サポート終了まで2か月)", 4, 2),
("手作業デプロイの自動化", 4, 1),
("設計書の更新(今月末の引き継ぎ向け)", 4, 3),
("再来月に加わるメンバー向けの説明資料づくり", 4, 2),
("社内チャットの問い合わせ(操作方法の質問)", 2, 5),
("急ぎと書かれた見積もりの概算依頼", 3, 4),
("定例会議の資料の体裁直し", 2, 4),
("他チームからの「今日中に見てほしい」軽い確認", 2, 5),
("勉強会の参加可否への返信(今週締め切り)", 1, 4),
("使われていない機能の細かな表示調整", 2, 1),
("ログの警告のうち影響が無いと分かっているものの整理", 2, 2),
("エディタの設定の作り込み", 1, 1),
("読んでいない通知メールの整理", 1, 2),
]
HIGH = 4 # 4以上を「高い」とする
def quadrant(imp, urg):
if imp >= HIGH and urg >= HIGH:
return 1 # 重要かつ緊急:すぐやる
if imp >= HIGH:
return 2 # 重要だが急がない:時間枠を先に取る
if urg >= HIGH:
return 3 # 急ぐが重要ではない:短く済ませる・任せる
return 4 # どちらでもない:やめる・後回し
rows = [(quadrant(i, u), i * u, i, u, name) for name, i, u in tasks]
# 並べ方:象限 → 点数(重要度×緊急度)の高い順 → 重要度の高い順
rows.sort(key=lambda r: (r[0], -r[1], -r[2]))
print("順位 象限 点数 重要 緊急 タスク")
for n, (q, score, i, u, name) in enumerate(rows, 1):
print(f"{n:>3} 第{q} {score:>3} {i} {u} {name}")
print()
for q in (1, 2, 3, 4):
print(f"第{q}象限: {sum(1 for r in rows if r[0] == q)}件")
# 点数だけで並べた場合に、第3象限が第2象限より上に来る組み合わせを数える
by_score = sorted(rows, key=lambda r: -r[1])
q2 = [r for r in rows if r[0] == 2]
q3 = [r for r in rows if r[0] == 3]
over = sum(1 for a in q3 for b in q2 if a[1] > b[1])
print(f"\n点数だけで並べると、第3象限が第2象限より上になる組み合わせ: {over} / {len(q2) * len(q3)}")
print("点数だけの上位8件の象限:", [r[0] for r in by_score[:8]])
実行結果:
順位 象限 点数 重要 緊急 タスク
1 第1 25 5 5 本番でログインできない障害の対応
2 第1 20 5 4 リリース前テストで見つかった不具合の修正
3 第1 20 5 4 証明書の更新(期限まで3日)
4 第1 20 4 5 今日リリース分の修正のレビュー依頼
5 第1 16 4 4 明日が期限の利用者向け回答(データ不整合の調査)
6 第2 12 4 3 設計書の更新(今月末の引き継ぎ向け)
7 第2 10 5 2 自動テストの追加(障害が続いた機能)
8 第2 8 4 2 リファクタリング(変更が集中するモジュール)
9 第2 8 4 2 ライブラリの更新(サポート終了まで2か月)
10 第2 8 4 2 再来月に加わるメンバー向けの説明資料づくり
11 第2 4 4 1 手作業デプロイの自動化
12 第3 12 3 4 急ぎと書かれた見積もりの概算依頼
13 第3 10 2 5 社内チャットの問い合わせ(操作方法の質問)
14 第3 10 2 5 他チームからの「今日中に見てほしい」軽い確認
15 第3 8 2 4 定例会議の資料の体裁直し
16 第3 4 1 4 勉強会の参加可否への返信(今週締め切り)
17 第4 4 2 2 ログの警告のうち影響が無いと分かっているものの整理
18 第4 2 2 1 使われていない機能の細かな表示調整
19 第4 2 1 2 読んでいない通知メールの整理
20 第4 1 1 1 エディタの設定の作り込み
第1象限: 5件
第2象限: 6件
第3象限: 5件
第4象限: 4件
点数だけで並べると、第3象限が第2象限より上になる組み合わせ: 14 / 30
点数だけの上位8件の象限: [1, 1, 1, 1, 1, 2, 3, 2]
並べ替えのキーを「象限→点数→重要度」の順にしているのがポイントです。同じ20点でも、重要度5のタスクが重要度4のタスクより先に来ます。
第2象限に毎週の時間枠を確保する
第2象限のタスクは、期限に追われないぶん、予定に入れないと着手できません。週の初めに、第2象限のための時間を予定表に先に入れます。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 枠の大きさ | 週40時間のうち20%=8時間(例の値) |
| 置き方 | 火〜金の午前に2時間ずつ(2時間×4日=8時間) |
| 枠に入れるタスク | 第2象限の上位から1〜2件。記入例なら「設計書の更新」「自動テストの追加」 |
| 枠を守る工夫 | チームの予定表に載せる。第3象限の依頼は、枠の外の時間にまとめて返す |
| 第1象限が割り込んだとき | 枠を消さずに、同じ週の別の時間へ移す |
第1象限が毎週あふれている場合は、第2象限の仕事(自動テスト、自動化、手順の整備)が足りていない合図です。第2象限に時間を使うほど、障害や差し戻しが減り、第1象限そのものが小さくなります。
象限ごとの扱い方
| 象限 | 扱い方 | 具体的な動き |
|---|---|---|
| 第1 | すぐやる | 点数の高い順に着手する。1人で抱えず、状況を共有する |
| 第2 | 時間枠を先に取る | 予定表に入れ、作業を2時間以内の単位に分ける |
| 第3 | 短く済ませる・任せる | 15分以内で返す。よくある質問は手順書にして案内する。得意な人に頼む |
| 第4 | やめる・後回し | 一覧から外すか、「やらないことリスト」に移す。月に1度だけ見直す |
第3象限のタスクは、相手にとっては大事な用件です。「今日は16時以降に確認します」のように、いつ対応するかを先に返すと、相手も予定を立てやすくなります。
似た手法との違いと選び方
緊急度×重要度マトリクスは、個人やチームの「今週のタスク」を並べるのに向いています。機能の要望や企画案を比べるときは、別の手法が合います。
| 手法 | 対象 | 必要な入力 | 出てくるもの | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| 緊急度×重要度マトリクス | 個人・チームのタスク | 重要度と緊急度(各1〜5など) | 4象限と取りかかる順 | 今日・今週に何からやるかを決める |
| MoSCoW | リリースや期間に入れる要件 | 各要件を Must/Should/Could/Won't have this time の4区分に分類 | 入れるもの・入れないものの合意 | 期限が固定で、範囲を関係者と決める |
| RICE | 機能の要望・企画案 | Reach(届く人数)・Impact(1人あたりの効果)・Confidence(確かさ)・Effort(人月) | 案ごとの点数 | 利用データがあり、多くの案を同じ物差しで比べる |
| ICE | 改善案・試したい案 | Impact・Confidence・Ease(各1〜10) | 案ごとの点数 | 少数の候補から、手早く1つ選ぶ |
それぞれの定義は、次のとおり公開されています。
- MoSCoW:Agile Business Consortium の DSDM のページでは、Must Have を「これが無ければ期日に届ける意味が無いもの」、Should Have を「重要だが必須ではないもの」、Could Have を「あると望ましいが重要度は下がるもの」、Won't Have this time を「今回の期間では届けないと合意したもの」としています。Must Have の工数は全体の60%までにすることが勧められています。
- RICE:Intercom のブログで紹介された方法で、点数は(Reach × Impact × Confidence)÷ Effort です。Impact は 3・2・1・0.5・0.25、Confidence は 100%・80%・50% の中から選びます。
- ICE:Impact・Confidence・Ease をそれぞれ1〜10で付け、3つを掛け合わせます。少数の候補を比べて1つ選ぶ使い方に向く、と説明されています。
RICE と ICE の計算例です(Pythonで検算)。
| 手法 | 案 | 入力 | 計算 | 点数 |
|---|---|---|---|---|
| RICE | A:検索の絞り込み追加 | Reach 300、Impact 2、Confidence 80%、Effort 2人月 | 300×2×0.8÷2 | 240 |
| RICE | B:管理画面のCSV出力 | Reach 60、Impact 3、Confidence 100%、Effort 1人月 | 60×3×1.0÷1 | 180 |
| RICE | C:通知文の見直し | Reach 300、Impact 0.5、Confidence 50%、Effort 0.5人月 | 300×0.5×0.5÷0.5 | 150 |
| ICE | D:入力欄の説明文を追加 | Impact 7、Confidence 6、Ease 5 | 7×6×5 | 210 |
| ICE | E:画面の全面的な作り直し | Impact 9、Confidence 7、Ease 2 | 9×7×2 | 126 |
どれを使うかの判断表
| 条件 | 選ぶもの |
|---|---|
| 自分の今日・今週のタスクを並べたい | 緊急度×重要度マトリクス |
| リリース日が決まっていて、入れる範囲を関係者と合意したい | MoSCoW |
| 機能の要望が多く、利用者数などの数字がある | RICE |
| 改善案が数個あり、短時間で1つ選びたい | ICE |
| 機能の順位を決めたあと、担当者が日々の作業を並べたい | RICE や MoSCoW で決めた順位を重要度に反映し、緊急度×重要度マトリクスを使う |
確かめて分かったこと
- 掛け算の点数だけで並べると、順番が入れ替わります。 記入例の20件で、第3象限(5件)と第2象限(6件)の組み合わせ30通りのうち、14通りで第3象限のほうが点数が高くなりました。たとえば「社内チャットの問い合わせ」(2×5=10)は「手作業デプロイの自動化」(4×1=4)より上に来ます。先に象限で分けてから点数を使う理由です。
- 点数表には同じ点数が何度も出ます。 5×5の25マスに出てくる点数は14種類で、4点は「重要度4×緊急度1」「2×2」「1×4」の3か所にあります。同点のときに重要度の高いほうを先にする決まりを入れておくと、迷いません。
- 境目を4にすると、3は「低い」側に入ります。 重要度3・緊急度4の「急ぎと書かれた見積もりの概算依頼」は、点数は12で第2象限の先頭と同じですが、象限は第3です。3ばかり付けてしまうと全部が第4象限に寄るので、迷ったら5つの質問に戻って数え直します。
- RICE の Confidence は掛け算に入るので、根拠の薄い案は点数が半分になります。 計算例のCは、Confidence が50%のため、100%なら300になる点数が150になりました。
- MoSCoW の「W」は「やらない」ではなく「今回はやらない」です。 開いたページでは Won't Have this time と書かれており、今回の期間の対象外として記録に残す区分でした。
よくある質問
Q. 緊急度と重要度の違いは何ですか? A. 緊急度は「いつまでに対応が必要か」、重要度は「やらなかったときの影響がどれだけ大きいか」です。期限が近くても影響が小さければ、緊急だが重要ではないタスクになります。
Q. 全部が重要に見えて優先順位を付けられないときは、どうすればよいですか? A. 5つの質問に「はい・いいえ」で答えて、数で比べます。それでも並ぶ場合は「どれか1つしかできないなら、どれを選ぶか」と自分に聞くと、順番が決まります。
Q. 第2象限の仕事に時間が取れないときは、どうすればよいですか? A. 週の初めに、予定表へ先に時間枠を入れます。空き時間に進めようとすると後回しになるため、会議と同じ扱いで枠を確保し、割り込みがあった日は同じ週の別の時間に移します。
Q. 緊急度×重要度マトリクスとRICEの違いは何ですか? A. マトリクスは個人やチームのタスクを並べる方法で、RICEは機能の要望や企画案を点数で比べる方法です。RICEは届く人数や工数の見積もりが要るため、日々のタスクより、何を作るかを決める場面に合います。
Q. 上司や依頼者と優先度の考えが合わないときは? A. 点数表を見せて、重要度と緊急度のどちらの数字が違うかを確かめます。「重要だ」「急ぎだ」という言葉を数字に置き換えると、どこで考えが分かれているかが分かります。
まとめ
- 重要度は「やらなかったときの影響」、緊急度は「残り時間」で決める。期限の近さを重要度に混ぜない。
- 重要度は5つの質問(約束・影響人数・取り戻しにくさ・手間の増え方・目標とのつながり)の「はい」の数で付ける。
- 先に象限で分け、同じ象限の中を重要度×緊急度の点数で並べる。 点数だけで並べると、急ぐだけの仕事が上に来る。
- 第2象限には、週の初めに時間枠を先に確保する。 自動テストや自動化に時間を使うほど、第1象限が小さくなる。
- 第3象限は短く済ませる・任せる、第4象限はやめる・後回し。
- 機能の要望を比べるときはMoSCoW・RICE・ICE、日々のタスクを並べるときは緊急度×重要度マトリクス。
参考・出典
- Agile Business Consortium「MoSCoW Prioritisation」(DSDM Project Framework) https://www.agilebusiness.org/dsdm-project-framework/moscow-prioririsation.html
- Intercom「RICE: Simple prioritization for product managers」 https://www.intercom.com/blog/rice-simple-prioritization-for-product-managers/
- ProductPlan「ICE Scoring Model」 https://www.productplan.com/glossary/ice-scoring-model/
(いずれも2026-10-05に確認)
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「優先順位の付け方|緊急度×重要度マトリクスの例と点数表」
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