要件ヒアリングとは、システムを作る前に、依頼する側の目的・今の業務・困りごと・条件を質問で聞き出し、作るものを決めるための材料を集める場です。 聞く順番と質問文を先に用意しておくと、聞きもらしが減り、相手も答えやすくなります。

この記事では、そのまま読み上げられる質問文を60項目、業務・機能・データ・非機能・移行・運用の6分類で載せています。各質問には「聞く意図」と、架空の備品貸出システムを題材にした「回答例」「確認状況」を付けました。表計算ソフトに貼れるタブ区切りのテンプレートと、答えを深掘りする聞き返しの例文もあります。文書としての要件定義書の書き方ではなく、質問文そのものと聞き方に絞った内容です。

確認環境:Ubuntu 24.04、Python 3.11.15(質問数・分類ごとの件数・所要時間の計算)、LibreOffice Calc 24.2(タブ区切りテンプレートの読み込み確認)。確認日は2026-10-05です。

この記事の結論

  • 最初の1回で聞くのは「目的・現状業務・困りごと・期限・予算・決裁者」の6点です。機能の話は2回目以降に回します。
  • 質問は6分類×10問=60項目。1回60分で全部は聞けないので、3回に分けます。
  • 質問文はオープン質問(自由に話してもらう)で広げ、クローズド質問(はい・いいえ、数値で答える)で確定させます。
  • 答えは「確定・仮・宿題」の3つに分けて記録し、宿題には担当と期限を付けます。
  • ヒアリングで集まるのは要求(やりたいこと)です。要件(作ると決めたこと)にするには、範囲・基準・合意の3つをそろえます。

要件ヒアリングの早見表

回 時間の目安 聞く分類 質問番号 この回のゴール
1回目 60分 業務(うち★の6点を最優先) 1〜10 目的と範囲について、双方が同じ説明をできる
2回目 60〜90分 機能・データ 11〜30 画面・承認・通知・項目の全体像が出そろう
3回目 60〜90分 非機能・移行・運用 31〜60 数値の目標と、切り替え・保守の分担が決まる
初回に聞く6点 質問番号 ひとことで言うと
目的 1 何がどうなれば、うまくいったと言えるか
現状業務 2 今はどう進めているか
困りごと 3 どこで時間がかかり、何に困っているか
期限 4 いつから使いたいか、その理由
予算 5 上限と、確保の度合い
決裁者 6 誰が、どの手続きで決めるか

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「要件ヒアリングの質問一覧60項目|シートのテンプレートと記入例」

なぜ初回は6点だけにするのか

初回から「どんな画面が欲しいですか」と聞くと、相手は思いついた機能を順に挙げることになります。それらは目的とつながる前の案なので、あとで「何のための機能だったか」を聞き直すことになります。

目的・現状業務・困りごとが分かると、必要な機能はかなり絞れます。 期限・予算・決裁者が分かると、どこまで作るかの枠が決まります。この6点は、2回目以降の質問すべての前提になるため、先に聞きます。

初回の6問は、1問に聞き返しを2〜3回はさむ前提で、1問あたり8分ほどを見込みます。6問×8分=48分で、60分の枠に、冒頭のあいさつと最後の確認を入れてちょうど収まります。残りの業務の4問(7〜10)は、時間が余れば聞き、足りなければ2回目の冒頭に回します。

ヒアリングシート・RFP・要件定義書の違い

名前が似ている3つの文書は、誰が書くか・いつ使うか・どこまで確定しているかが違います。

文書 誰が書くか いつ使うか 確定度 中身
ヒアリングシート 聞く側(開発側)が質問を用意し、聞いた答えを書き込む 要件定義の前〜最中 低い。仮の答えや宿題が混ざっていてよい 質問、回答、確認状況
RFP(提案依頼書) 依頼する側(発注側) 発注先を選ぶ前 中くらい。依頼の条件としては確定、実現方法は提案待ち 背景、依頼範囲、条件、提案してほしい内容
要件定義書 開発側が書き、依頼する側が承認することが多い 設計を始める前 高い。合意した内容だけを書く 業務要件、機能要件、非機能要件、対象外

どれを使うかの判断表

いまの状況 使うもの
相手の業務をまだよく知らず、これから話を聞く ヒアリングシート
複数の会社に同じ条件で提案を頼みたい RFP
聞いた内容がそろい、作る範囲を合意して設計に進みたい 要件定義書
RFPを受け取ったが、書かれていない点を確かめたい ヒアリングシート(RFPに無い質問だけを抜き出す)
打ち合わせの答えが「確定」ばかりになってきた ヒアリングシートから要件定義書へ書き写す時期

要求と要件の切り分け基準

ヒアリングで出てくる言葉の多くは要求(やりたいこと)です。そのまま設計に渡すと、人によって受け取り方が変わります。要件(作ると決めたこと)と呼べるのは、次の3つがそろったものです。

基準 確かめる問い そろっていない例(要求) そろった例(要件)
範囲 誰が、どの場面で、何をするかが決まっているか 返却を忘れないようにしたい 返却日の前日と当日8時に、借りた本人へメールを送る
基準 できた・できていないを判定できるか 検索を速くしたい 備品400件の検索結果を3秒以内に表示する
合意 決める立場の人が「これで作る」と言ったか 担当者が「たぶんそれでよい」と答えた 決裁者が打ち合わせで承認し、記録に残した

シートの「確認状況」の列は、この切り分けに使います。3つともそろったら「確定」、答えはあるが基準か合意が足りなければ「仮」、答えが出ていなければ「宿題」と書きます。

質問一覧60項目と記入例

題材は架空の「備品貸出システム」です。社員約300人の会社で、ノートPCやプロジェクターなどの備品約400点を総務部が貸し出しており、今は紙の申請書と表計算ソフトの台帳で管理している、という設定です。金額や件数はすべて架空の例です。

No に★が付いた6問が、初回に聞く6点です。

業務(1〜10):目的・現状・体制・範囲

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
1 ★ このシステムで最終的に実現したいことは何ですか。うまくいったと言える状態を教えてください。 目的と成功の基準をそろえる 貸出状況をその場で分かるようにし、返却遅れを月20件から5件以下にしたい 確定
2 ★ いまの貸出から返却までの流れを、最初から順に教えてください。 現状業務の全体をつかむ 紙の申請書を総務部に提出→台帳(表計算)に記入→手渡し→返却時に台帳を更新 確定
3 ★ その流れの中で、いちばん時間がかかる、または困っている場面はどこですか。 困りごとの中心を特定する 空き状況の問い合わせが1日10件ほどあり、そのたびに台帳を開いて答えている 確定
4 ★ いつから使い始めたいですか。その日付になった理由はありますか。 期限と、動かせる度合いを知る 来年4月1日。新年度の入社者への貸出に間に合わせたい 確定
5 ★ 予算の上限や、すでに確保している枠はありますか。 予算の枠と確かさを知る 初期費用は300万円まで、月額は3万円までを想定(架空の金額) 仮
6 ★ 最終的に決めるのはどなたですか。承認までに通る会議や手続きはありますか。 決裁者と決まるまでの道筋を知る 総務部長が決裁。12月の部門会議で承認を得る 確定
7 この業務に関わる部署と人数、それぞれの役割を教えてください。 利用者と関係者を洗い出す 申請者は全社員約300人、貸出担当は総務部3人、承認者は各部の課長約20人 確定
8 月ごとの件数はどのくらいですか。多い時期はいつですか。 業務量と山を知る 月250件ほど。4月と10月は約400件 仮
9 通常の流れに乗らない貸出はありますか(急ぎ、長期、社外への持ち出しなど)。 例外の業務を拾う 30日を超える長期貸出は部長承認。社外への持ち出しは行き先を書く 確定
10 今回の対象に含めない業務や部署はありますか。 対象外をはっきりさせる 消耗品の払い出しと、固定資産の棚卸しは対象外 確定

機能(11〜20):画面・承認・通知・権限

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
11 申請する人が画面を開いて、最初にしたいことは何ですか。 主な利用場面を決める 借りたい日を入れて、空いている備品を探したい 確定
12 備品を探すとき、どんな条件で絞り込みますか。 検索条件を決める 種類、利用日、保管場所。型番で探すことは少ない 確定
13 申請を承認するのは誰ですか。承認が要らない場合はありますか。 承認の流れを決める 5日以内は承認不要。6日以上は課長、30日超は部長 確定
14 同じ備品に希望が重なったとき、どう決めますか。 重なりの業務ルールを決める 先着順。順番待ちは次の1人まで登録できればよい 仮
15 お知らせは、誰に、いつ、何で届けたいですか。 通知の相手・時点・手段を決める 返却日の前日と当日朝に本人へメール。3日遅れたら課長にも送る 確定
16 返却のとき、何を記録したいですか。 返却処理の項目を決める 返却日、付属品のそろい具合、故障の有無とメモ 確定
17 立場によって、できることをどう分けますか。 権限の種類を決める 申請者・承認者・貸出担当・管理者の4種類 確定
18 一覧や集計で見たい数字は何ですか。紙やファイルで出す必要はありますか。 帳票と出力形式を決める 月別の貸出件数、備品ごとの稼働日数、返却遅れ一覧。CSVで出したい 仮
19 スマートフォンから使いたい操作はどれですか。 対応する端末と操作を決める 申請と承認はスマートフォンでも。台帳の管理はPCだけでよい 確定
20 最初の公開に無くても業務が回る機能はどれですか。 優先度と段階を決める 順番待ちとQRコードの読み取りは次の段階でよい 確定

データ(21〜30):項目・件数・連携

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
21 管理したい情報の種類を挙げてください(備品、利用者、貸出など)。 扱うデータのまとまりを洗い出す 備品、利用者、部署、貸出、返却、故障の記録 確定
22 備品1点ごとに、どんな項目を持たせたいですか。 項目を洗い出す 管理番号、種類、型番、購入日、保管場所、状態、付属品 確定
23 管理番号はどう付けていますか。今の番号をそのまま使いますか。 番号の規則を決める 「PC-0001」のように種類の記号+4桁の連番。シールを貼付済みなので引き継ぐ 確定
24 利用者の氏名や部署は、どこの情報を正としますか。 マスタの出どころを決める 人事システム。社員番号・氏名・部署を月1回CSVで受け取る 確定
25 件数はいま何件で、1年でどのくらい増えますか。 データ量と増え方を見積もる 備品400点で年40点ほど増える。貸出は年3,000件 仮
26 記録は何年残しますか。廃棄した備品の記録はどうしますか。 保存期間と削除の方針を決める 貸出の記録は5年。廃棄した備品も記録は残す 宿題
27 入力するときの決まりはありますか(必須、文字数、選べる値など)。 入力規則を決める 利用目的は必須で100字まで。貸出期間は最長90日 確定
28 個人に関する情報は、どこまで扱いますか。 個人情報の範囲を決める 氏名・部署・メールアドレスのみ。扱いは社内の規程に従う 確定
29 ほかのシステムと受け渡すデータはありますか。向きと頻度を教えてください。 外部連携を洗い出す 人事システムからCSVを取り込む。資産管理の台帳へ月1回CSVを出す 仮
30 変更の記録を残したい項目はどれですか。 履歴を残す範囲を決める 備品の状態と保管場所は、誰がいつ変えたかを残す 確定

非機能(31〜40):稼働時間・性能・セキュリティ

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
31 使う曜日と時間帯を教えてください。止めてよい時間はありますか。 稼働時間を決める 平日8時〜20時。夜間と休日は止めてよい 確定
32 止まった場合、いつまでに戻れば業務が回りますか。その間はどうしますか。 復旧の目標と代わりの手段を決める 翌営業日の朝まで。その間は紙の申請書で受け付ける 仮
33 同時に使う人数は何人くらいですか。集中する時間はありますか。 同時利用の規模を知る ふだんは10人、月初の朝は30人ほど 仮
34 画面の表示は何秒以内なら待てますか。 性能の目標を数値にする 検索結果は3秒以内 仮
35 ログインはどの方法にしますか。 認証の方式を決める 社内のシングルサインオンを使う 宿題
36 社外から使うことはありますか。 接続する経路を決める 社内ネットワークとVPNからのみ 確定
37 誰が何をしたかの記録は、どの操作について、何年残しますか。 操作ログの範囲を決める ログイン、貸出・返却、マスタの変更を1年残す 宿題
38 データはどの時点まで戻せれば足りますか。 バックアップの頻度と世代を決める 前日の状態に戻せればよい。1日1回、7日分 仮
39 対応するブラウザ、端末、OSを教えてください。 動作環境を決める 社内標準のブラウザの最新版。スマートフォンはiOSとAndroid 確定
40 2〜3年のうちに、利用者や拠点が増える見込みはありますか。 拡張の余地を決める 2年後にグループ会社2社(合計500人)へ広げる可能性がある 仮

移行(41〜50):データの移し替えと切り替え

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
41 新しいシステムに移すデータはどれですか。移さないデータはどれですか。 移行の対象を決める 備品台帳400件と貸出中の約60件。過去の貸出履歴は移さない 確定
42 いまのデータは、どんな形式で、どこにありますか。 移行元の状態を知る 表計算ファイル1つ(シート3枚)。共有フォルダに置いている 確定
43 表記のゆれ、空欄、重複はどのくらいありそうですか。 データの整備量を見積もる 保管場所が「3F倉庫」「3階倉庫」のように混在。購入日の空欄が約50件 宿題
44 データの整備と、取り込みの確認は、それぞれ誰が行いますか。 移行の役割を分ける 整備と確認は総務部、取り込みは開発側 確定
45 切り替えは一斉にしますか、部署ごとに順番にしますか。 切り替えの方式を決める 4月1日に全社一斉 確定
46 今のやり方と新しいシステムを、並べて使う期間は要りますか。 並行期間を決める 3月の2週間、総務部内で並行して使う 仮
47 切り替えの日に貸出中のものは、どう扱いますか。 途中のデータの扱いを決める 貸出中の約60件は、返却予定日つきで取り込む 確定
48 切り替えが予定どおり進まない場合、どこまで戻しますか。誰が判断しますか。 戻す手順と判断者を決める 紙の申請書と台帳に戻す。判断は総務部長 宿題
49 利用者への説明は、どんな形で行いますか。 教育の方法と量を決める 手順書2ページと、全社向けの説明会30分を1回 仮
50 切り替えのあと、今の台帳はどうしますか。 移行元の扱いを決める 読み取り専用にして1年保管する 確定

運用(51〜60):使い始めたあとの体制

No 質問 聞く意図 回答例(備品貸出システム) 確認状況
51 使い始めたあと、利用者からの問い合わせは誰が受けますか。 問い合わせの窓口を決める 最初の窓口は総務部。解決しないものは開発側へ 確定
52 備品や利用者の情報は、誰が、いつ更新しますか。 マスタ保守の担当を決める 備品の追加・廃棄は総務部がその都度。利用者は月1回の取り込み 確定
53 毎月・毎年、決まって行う作業はありますか。 定期作業を洗い出す 月初に前月の集計を出力。年度末に棚卸し 確定
54 不具合を見つけたら、どこへ、どう連絡しますか。対応してほしい時間帯は。 連絡の経路と対応時間を決める 平日9時〜18時にメールで連絡。翌営業日までに最初の回答 仮
55 使い始めたあとの改修は、どのくらいの頻度で頼みたいですか。 保守の範囲を決める 年2回、小さな改修をまとめて依頼する 仮
56 自動で見張っておきたい処理や、知らせてほしい異常はありますか。 監視と通知の対象を決める 夜間の取り込みがエラーになったら総務部と開発側にメール 仮
57 管理者が異動した場合の引き継ぎは、どうしますか。 担当が1人に偏らないようにする 管理者を2人にし、手順書を共有フォルダに置く 確定
58 導入の効果は、どの数字で、どの間隔で振り返りますか。 効果を測る指標を決める 返却遅れの件数、空き状況の問い合わせ件数、稼働率を四半期ごとに見る 確定
59 入社・異動・退職のとき、アカウントはどう追加・停止しますか。 アカウント管理の手順を決める 人事システムのCSVを取り込んで自動で反映する 宿題
60 将来このシステムを別のものに替える場合、どの形でデータを受け取りたいですか。 データの持ち出し方を決める 全データをCSVで出力できること 確定

非機能の質問をさらに細かくしたい場合は、IPAが公開している「非機能要求グレード2018」が参考になります。非機能要求の項目を6つの大項目ごとに階層で示した樹系図と、項目一覧が公開されています(出典は記事末尾)。

ヒアリングシートのテンプレート(タブ区切り)

下のブロックをコピーして表計算ソフトのA1セルに貼ると、7列(No・分類・初回・質問・聞く意図・回答・確認状況)×61行(見出し1行+質問60行)の表になります。「回答」と「確認状況」は空欄にしてあります。

No  分類  初回  質問  聞く意図    回答  確認状況
1   業務  ○   このシステムで最終的に実現したいことは何ですか。うまくいったと言える状態を教えてください。   目的と成功の基準をそろえる       
2   業務  ○   いまの貸出から返却までの流れを、最初から順に教えてください。  現状業務の全体をつかむ     
3   業務  ○   その流れの中で、いちばん時間がかかる、または困っている場面はどこですか。    困りごとの中心を特定する        
4   業務  ○   いつから使い始めたいですか。その日付になった理由はありますか。 期限と、動かせる度合いを知る      
5   業務  ○   予算の上限や、すでに確保している枠はありますか。    予算の枠と確かさを知る     
6   業務  ○   最終的に決めるのはどなたですか。承認までに通る会議や手続きはありますか。    決裁者と決まるまでの道筋を知る     
7   業務      この業務に関わる部署と人数、それぞれの役割を教えてください。  利用者と関係者を洗い出す        
8   業務      月ごとの件数はどのくらいですか。多い時期はいつですか。 業務量と山を知る        
9   業務      通常の流れに乗らない貸出はありますか(急ぎ、長期、社外への持ち出しなど)。   例外の業務を拾う        
10  業務      今回の対象に含めない業務や部署はありますか。  対象外をはっきりさせる     
11  機能      申請する人が画面を開いて、最初にしたいことは何ですか。 主な利用場面を決める      
12  機能      備品を探すとき、どんな条件で絞り込みますか。  検索条件を決める        
13  機能      申請を承認するのは誰ですか。承認が要らない場合はありますか。  承認の流れを決める       
14  機能      同じ備品に希望が重なったとき、どう決めますか。 重なりの業務ルールを決める       
15  機能      お知らせは、誰に、いつ、何で届けたいですか。  通知の相手・時点・手段を決める     
16  機能      返却のとき、何を記録したいですか。   返却処理の項目を決める     
17  機能      立場によって、できることをどう分けますか。   権限の種類を決める       
18  機能      一覧や集計で見たい数字は何ですか。紙やファイルで出す必要はありますか。 帳票と出力形式を決める     
19  機能      スマートフォンから使いたい操作はどれですか。  対応する端末と操作を決める       
20  機能      最初の公開に無くても業務が回る機能はどれですか。    優先度と段階を決める      
21  データ     管理したい情報の種類を挙げてください(備品、利用者、貸出など)。    扱うデータのまとまりを洗い出す     
22  データ     備品1点ごとに、どんな項目を持たせたいですか。 項目を洗い出す     
23  データ     管理番号はどう付けていますか。今の番号をそのまま使いますか。  番号の規則を決める       
24  データ     利用者の氏名や部署は、どこの情報を正としますか。    マスタの出どころを決める        
25  データ     件数はいま何件で、1年でどのくらい増えますか。 データ量と増え方を見積もる       
26  データ     記録は何年残しますか。廃棄した備品の記録はどうしますか。    保存期間と削除の方針を決める      
27  データ     入力するときの決まりはありますか(必須、文字数、選べる値など)。    入力規則を決める        
28  データ     個人に関する情報は、どこまで扱いますか。    個人情報の範囲を決める     
29  データ     ほかのシステムと受け渡すデータはありますか。向きと頻度を教えてください。    外部連携を洗い出す       
30  データ     変更の記録を残したい項目はどれですか。 履歴を残す範囲を決める     
31  非機能     使う曜日と時間帯を教えてください。止めてよい時間はありますか。 稼働時間を決める        
32  非機能     止まった場合、いつまでに戻れば業務が回りますか。その間はどうしますか。 復旧の目標と代わりの手段を決める        
33  非機能     同時に使う人数は何人くらいですか。集中する時間はありますか。  同時利用の規模を知る      
34  非機能     画面の表示は何秒以内なら待てますか。  性能の目標を数値にする     
35  非機能     ログインはどの方法にしますか。 認証の方式を決める       
36  非機能     社外から使うことはありますか。 接続する経路を決める      
37  非機能     誰が何をしたかの記録は、どの操作について、何年残しますか。   操作ログの範囲を決める     
38  非機能     データはどの時点まで戻せれば足りますか。    バックアップの頻度と世代を決める        
39  非機能     対応するブラウザ、端末、OSを教えてください。 動作環境を決める        
40  非機能     2〜3年のうちに、利用者や拠点が増える見込みはありますか。   拡張の余地を決める       
41  移行      新しいシステムに移すデータはどれですか。移さないデータはどれですか。  移行の対象を決める       
42  移行      いまのデータは、どんな形式で、どこにありますか。    移行元の状態を知る       
43  移行      表記のゆれ、空欄、重複はどのくらいありそうですか。   データの整備量を見積もる        
44  移行      データの整備と、取り込みの確認は、それぞれ誰が行いますか。   移行の役割を分ける       
45  移行      切り替えは一斉にしますか、部署ごとに順番にしますか。  切り替えの方式を決める     
46  移行      今のやり方と新しいシステムを、並べて使う期間は要りますか。   並行期間を決める        
47  移行      切り替えの日に貸出中のものは、どう扱いますか。 途中のデータの扱いを決める       
48  移行      切り替えが予定どおり進まない場合、どこまで戻しますか。誰が判断しますか。    戻す手順と判断者を決める        
49  移行      利用者への説明は、どんな形で行いますか。    教育の方法と量を決める     
50  移行      切り替えのあと、今の台帳はどうしますか。    移行元の扱いを決める      
51  運用      使い始めたあと、利用者からの問い合わせは誰が受けますか。    問い合わせの窓口を決める        
52  運用      備品や利用者の情報は、誰が、いつ更新しますか。 マスタ保守の担当を決める        
53  運用      毎月・毎年、決まって行う作業はありますか。   定期作業を洗い出す       
54  運用      不具合を見つけたら、どこへ、どう連絡しますか。対応してほしい時間帯は。 連絡の経路と対応時間を決める      
55  運用      使い始めたあとの改修は、どのくらいの頻度で頼みたいですか。   保守の範囲を決める       
56  運用      自動で見張っておきたい処理や、知らせてほしい異常はありますか。 監視と通知の対象を決める        
57  運用      管理者が異動した場合の引き継ぎは、どうしますか。    担当が1人に偏らないようにする     
58  運用      導入の効果は、どの数字で、どの間隔で振り返りますか。  効果を測る指標を決める     
59  運用      入社・異動・退職のとき、アカウントはどう追加・停止しますか。  アカウント管理の手順を決める      
60  運用      将来このシステムを別のものに替える場合、どの形でデータを受け取りたいですか。  データの持ち出し方を決める       

確認状況の列は「確定」「仮」「宿題」の3つから選ぶ入力規則にしておくと、あとで件数を数えやすくなります。宿題の行には、右に「担当」「期限」の2列を足して使ってください。

オープン質問とクローズド質問の使い分け

オープン質問は「どのように」「どんな」で始まり、相手が自由に話せる質問です。クローズド質問は「はい・いいえ」や数値、選択肢で答えられる質問です。広げてから絞る、の順で組み合わせます。

場面 オープン質問の例文 クローズド質問の例文
現状を知る いまの貸出の流れを、最初から順に教えてください。 申請書は紙だけですか。メールでの申請もありますか。
困りごとを知る どんなときに、いちばん手間がかかりますか。 空き状況の問い合わせは、1日に10件より多いですか。
ルールを決める 希望が重なったときは、どう決めていますか。 先着順で決めてよいですか。
数値を決める 表示が遅いと感じるのは、どんな場面ですか。 検索結果は3秒以内であれば足りますか。
範囲を決める この仕組みで扱わないものには、何がありますか。 消耗品の払い出しは、今回の対象外でよいですか。
期限を確かめる 4月1日という日付は、どんな事情で決まりましたか。 4月1日が1週間遅れると、困ることはありますか。
使い分けの目安 向く質問
打ち合わせの前半、相手の業務をまだ知らない オープン質問
話が広がり、時間が残り少ない クローズド質問
相手の答えが短く、話が続かない オープン質問(「たとえば昨日の1件を例に」と具体的な場面を添える)
議事録に書く文を決めたい クローズド質問(「〜という理解で合っていますか」)
相手が迷っている 選択肢つきのクローズド質問(「AとBなら、どちらが近いですか」)

答えを深掘りする聞き返しの例文

最初の答えは短く、あいまいなことがよくあります。次の聞き返しで、要件にできる具体さまで掘り下げます。

相手の答え 聞き返しの型 例文
「なるべく早く表示してほしい」 数値にする 何秒くらいまでなら、待っても気になりませんか。
「いろいろな人が使います」 数える 部署の数と人数を、おおよそで教えてください。
「たまに例外があります」 頻度を聞く 月に何件くらいありますか。いちばん最近はいつでしたか。
「今のやり方に合わせてください」 理由を聞く その手順になっている理由をご存じですか。
「承認機能が欲しい」 目的に戻る 承認があると、どんな困りごとが減りますか。
「全部必要です」 順位を付ける 最初の公開に入らない場合、いちばん困るのはどれですか。
「たぶん大丈夫です」 確かめる人を聞く 最終的に確認できる方はどなたですか。いつ頃わかりますか。
「前のシステムではできていました」 具体的な場面を聞く その操作を、最近行ったときの流れを教えてください。
話が長く、要点が見えない 要約して返す ここまでを「〜ということ」とまとめてよいですか。
沈黙が続く 選択肢を出す たとえばAの場合とBの場合では、どちらが多いですか。

「なぜですか」を続けると、問い詰められているように聞こえることがあります。「どんな事情で」「何があると助かりますか」と言い換えると、同じ内容をやわらかく聞けます。

ヒアリング当日の進め方

時点 すること
3日前まで 質問を相手に送る。数値の質問(8、25、33など)は、調べる時間が要るので先に伝える
開始5分 今日のゴールと、聞く分類を伝える
本編 1問ごとに、オープン質問→聞き返し→クローズド質問で確定、の順で進める
終了10分前 「確定」「仮」「宿題」を読み上げて確認する。宿題に担当と期限を付ける
当日中 シートを更新して送る。次回に聞く質問番号も添える

確かめて分かったこと

  • 60問を通しで聞く時間を計算すると、1問2分でも120分、3分で180分、5分なら300分になります。60分の打ち合わせ1回には収まらないので、分類で3回に分ける進め方にしました。
  • 初回の6問は、聞き返しを含めて1問8分とすると48分です。60分の枠では、初回は6点でほぼいっぱいになります。
  • 60問の質問文は平均27.1字、最長でも45字でした。1問を1〜2文に収めると、読み上げても相手が聞き取りやすい長さになります。
  • 記入例の確認状況を数えると、確定38件・仮16件・宿題6件でした。分類ごとに見ると、業務と機能は確定が8件ずつなのに対し、非機能は確定が3件だけで、仮5件・宿題2件でした。数値の目標を聞く非機能は、その場で決まりにくいので、質問を事前に送る効果が大きい分類です。
  • タブ区切りのテンプレートは、LibreOffice Calc 24.2 で読み込むと61行×7列になり、列のずれはありませんでした。回答を書くときにセルの中へタブや改行を入れないことが、ずれを防ぐ条件です。

よくある質問

Q. 要件ヒアリングとは何ですか? A. システムを作る前に、依頼する側の目的・業務・条件を質問で聞き出す打ち合わせです。聞いた内容は、要件定義書を書くための材料になります。

Q. ヒアリングシートと要件定義書の違いは何ですか? A. ヒアリングシートは質問と答えの記録で、要件定義書は合意した内容だけをまとめた文書です。シートには仮の答えや宿題が残っていてかまいませんが、要件定義書には確定したものだけを書きます。

Q. 相手から答えが出てこないときは、どうすればよいですか? A. 具体的な場面を1つ決めて聞くと、答えが出やすくなります。「昨日の1件を例に」「いちばん最近の例外は」のように場面を絞るか、選択肢を2つ示して近いほうを選んでもらいます。

Q. 60項目を全部聞く必要はありますか? A. 全部を口頭で聞く必要はありません。資料やRFPで分かる項目は先に埋め、空欄と「仮」の行だけを打ち合わせで聞くと、時間を短くできます。

Q. ヒアリングは何回に分けるのがよいですか? A. 60項目なら3回が目安です。1回目に業務、2回目に機能とデータ、3回目に非機能・移行・運用を聞くと、前の回の答えを次の回の前提にできます。

まとめ

  • 初回に聞くのは、目的・現状業務・困りごと・期限・予算・決裁者の6点。機能の話は2回目から。
  • 質問は業務・機能・データ・非機能・移行・運用の6分類×10問=60項目。3回に分けて聞く。
  • オープン質問で広げ、クローズド質問で確定させる。あいまいな答えは、数値・頻度・具体的な場面で聞き返す。
  • 答えは「確定・仮・宿題」で記録し、宿題には担当と期限を付ける。
  • 範囲・基準・合意の3つがそろったものだけを要件として、要件定義書に書き写す。
  • 数値を聞く質問は、事前に送って調べる時間を取ってもらう。

参考・出典

  • IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)」 https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ent03-b.html (非機能要求グレード2018。2026-10-05に確認)

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(記載例)出典:株式会社RJC「要件ヒアリングの質問一覧60項目|シートのテンプレートと記入例」

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