スキルマップとは、縦にスキル項目、横にメンバーを並べ、交わるマスに「どこまでできるか」のレベルを書き入れた一覧表です。 チームの中で誰が何をできるか、どの項目が手薄かを1枚で見渡すために使います。

この記事では、エンジニア向けの項目一覧40個とレベル定義を、表計算ソフトに貼れる形で全文載せます。さらに架空の5人チームの記入例を使って、項目別の充足率、1人しかできない項目、育成の優先順位を求める手順を、Pythonのコードと表計算の式の両方で示します。ひな形と集計方法に絞った内容で、人事評価の決め方は扱いません。

確認環境(確認日 2026-10-05):集計は Python 3.11.15 で実行し、表計算の式は LibreOffice Calc 24.2.7 のヘッドレス実行で同じ値になることを確かめています。

この記事の結論

  • 項目は30〜50個、レベルは4段階にする。 細かくしすぎると記入と見直しに時間がかかり、更新が止まります
  • レベルは「見て確かめられる行動」で定義する。 「理解している」ではなく「一人で〜を書ける」のように、成果物や動作で書きます
  • 集計は3つで足りる。 項目別の充足率、1人しかできない項目、育成の優先順位(不足人数×重要度)です
  • 全体の充足率だけで判断しない。 今回の記入例では全体が91%でも、40項目のうち8項目は一人でできる人が1人だけでした

スキルマップの早見表

決めること おすすめ 理由
項目数 30〜50個(この記事は40個) 1人あたり15分ほどで記入でき、四半期ごとに見直せる量
項目の粒度 「1つの成果物」または「1つの作業」 「設計」では広く、「API設計」なら成果物で確かめられる
レベルの段階 4段階(0は経験なしで別枠) 段階が多いと隣どうしの差を説明しにくい
レベルの書き方 見て確かめられる行動 本人と確認者で同じ判定になりやすい
「できる」の線 レベル2以上(一人でできる) 充足率と属人化の集計に使う基準
追加で持つ列 重要度(1〜3)と必要人数 育成の優先順位を計算で出せる
記入のしかた 本人が記入 → 確認者と差があるマスだけ話す 全項目を話し合うより短時間で済む
見直しの間隔 四半期に1回、項目の入れ替えは半年に1回 更新が続く頻度に合わせる
置き場所 チーム全員が見られる表計算ファイル1つ 複製が増えると最新がわからなくなる

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「スキルマップの作り方|エンジニア向け項目例とレベル定義テンプレート」

スキルマップの作り方(6つの手順)

手順 やること できあがるもの
1. 目的を1文で書く 例:「担当が1人だけの作業を半年で半分にする」 表の先頭に置く目的文
2. 項目を洗い出す 直近3か月の作業と成果物を書き出し、30〜50個にまとめる スキル項目一覧
3. レベルを定義する 4段階を行動で書く。まず共通の定義、次に分類別の定義 レベル定義表
4. 重要度と必要人数を決める 止まると困る作業ほど重要度3、必要人数は2人以上 重要度・必要人数の列
5. 記入する 本人が記入し、確認者が差のあるマスだけ確認する 記入済みのスキルマップ
6. 集計して育成計画に使う 充足率・属人化・優先順位を出し、上位3項目に担当と期限を付ける 育成の一覧

項目の洗い出しは、スキルの名前からではなく作業と成果物から始めるとまとまりやすくなります。 「プルリクエストを出す」「リリース手順書を書く」「障害の一次連絡をする」のように書き出し、似たものを1項目にまとめます。

項目が50個を超えたときは、次の順で減らします。

減らし方 例
全員がレベル3以上の項目を外す エディタの基本操作
同じ成果物になる項目を1つにする 「画面項目定義」と「画面遷移図」を「画面設計」に
道具の名前を作業の名前に置き換える 個別のツール名を並べず「CI/CD」に
今後半年使わない項目を別シートに移す 終了した機能でしか使わない技術

エンジニア向けスキル項目一覧(40項目)

8分類×5項目の40項目です。右端の列は、レベル2(一人でできる)と判定するときの確かめ方です。チームで使う言語や道具に合わせて、項目名を書き換えて使ってください。

No 分類 スキル項目 レベル2(一人でできる)の確かめ方
1 言語・実装 主要言語での実装 仕様書を読み、1機能を期限内に実装してレビューに出せる
2 言語・実装 SQLの作成 結合と集計を含む検索SQLを書き、実行計画を確認できる
3 言語・実装 フロントエンド実装 画面1枚を入力チェックつきで実装できる
4 言語・実装 バージョン管理 ブランチ作成からプルリクエスト、競合の解消までできる
5 言語・実装 コードレビュー 観点表に沿って指摘を書き、修正を確認できる
6 設計 要件の整理 聞き取った内容を機能一覧と未決事項に分けて書ける
7 設計 画面設計 画面項目定義と画面遷移図を1機能ぶん書ける
8 設計 API設計 エンドポイント・入出力・エラー応答を定義書に書ける
9 設計 テーブル設計 正規化したテーブル定義と索引を1機能ぶん書ける
10 設計 方式設計 構成図を書き、選んだ理由を文書に残せる
11 テスト 単体テスト 同値分割と境界値でテストコードを書ける
12 テスト 結合テスト設計 機能間の組み合わせからテスト項目を起こせる
13 テスト テスト自動化 画面またはAPIの自動テストを追加しCIで動かせる
14 テスト 性能テスト 負荷のシナリオを作り、結果を表にまとめられる
15 テスト 不具合の切り分け ログと再現手順から原因の層を特定できる
16 インフラ Linuxの操作 ログ確認・プロセス確認・権限変更を手順書なしでできる
17 インフラ ネットワークの基礎 名前解決と疎通を順に調べ、止まっている箇所を示せる
18 インフラ クラウド環境の構築 検証環境を構成定義のコードから作り直せる
19 インフラ コンテナ アプリのイメージを作り、設定を外から渡して起動できる
20 インフラ CI/CD ビルド・テスト・配備の定義を追加・修正できる
21 運用 監視の設定 しきい値と通知先を決めて監視項目を追加できる
22 運用 障害対応 初動の連絡・影響範囲の確認・復旧を手順に沿って進められる
23 運用 リリース作業 手順書に沿って配備し、確認と切り戻しができる
24 運用 バックアップと復元 バックアップから検証環境へ復元できる
25 運用 手順書の作成 他の人がそのまま作業できる手順書を書ける
26 セキュリティ 入力検証と脆弱性対策 代表的な脆弱性を説明し、対策を実装できる
27 セキュリティ 認証・権限の設計 ロールと操作の対応表を作り、実装に反映できる
28 セキュリティ 秘密情報の管理 鍵やパスワードをコードの外に置き、手順どおり更新できる
29 セキュリティ 依存ライブラリの更新 更新内容を確認し、テストを通して反映できる
30 セキュリティ ログの設計 記録する項目とレベルを決め、個人情報を伏せて出力できる
31 進行管理 見積もり 作業を分解し、根拠つきの工数を出せる
32 進行管理 WBS・スケジュール作成 2週間ぶんの作業を依存関係つきで計画できる
33 進行管理 進捗報告 予定との差と見通しを数値で報告できる
34 進行管理 課題・リスク管理 課題を担当・期限つきで一覧にし、毎週更新できる
35 進行管理 会議の進行 議題と時間配分を決め、決定事項を確認して終えられる
36 協働・育成 文書の作成 結論から書いた報告書・議事録を当日中に出せる
37 協働・育成 要件のヒアリング 質問を準備して聞き取り、認識の差を残さず記録できる
38 協働・育成 後輩への指導 課題を出し、レビューで次の一歩を示せる
39 協働・育成 生成AIの活用 指示文を工夫し、出力を自分で検証して使える
40 協働・育成 対象システムの業務知識 主要な業務の流れを図にして説明できる

レベル定義(4段階)

全項目に共通の定義

レベル 名前 定義(見て確かめられる行動) 確かめ方の例
0 経験なし まだ担当したことがない ―
1 支援があればできる 手順書や先輩の支援があれば、決められた範囲を終えられる ペア作業で1回終えた記録がある
2 一人でできる 通常の範囲を、支援なしで期限内に終えられる 直近3か月に単独で終えた成果物がある
3 応用できる 例外や初めての条件でも進められ、他の人の成果物をレビューできる レビューの指摘記録、例外対応の記録がある
4 教えられる 他の人に教えられ、手順や基準そのものを改善できる 作成した手順書・勉強会資料・改善の提案がある

判定に迷ったら、低いほうのレベルにします。 「直近3か月の成果物で示せるか」を基準にすると、本人と確認者の判定がそろいやすくなります。

分類別のレベル定義

分類 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
言語・実装 見本のコードをもとに小さな修正ができる 1機能を仕様から実装し、レビューに出せる 性能や保守性を考えた書き方を選び、他の人のコードをレビューできる コーディング規約や共通部品を整え、書き方を教えられる
設計 既存の設計書を読んで実装に反映できる 1機能ぶんの設計書を書ける 複数の案を比べ、選んだ理由を文書に残せる 設計の標準やひな形を作り、レビューで指導できる
テスト 用意された項目書に沿って実施し、結果を記録できる 観点を決めて項目を起こし、テストコードを書ける 不足している観点を指摘し、自動化の範囲を決められる テストの方針と基準を決め、やり方を教えられる
インフラ 手順書に沿って環境の確認ができる 検証環境を一人で構築・変更できる 構成の変更を設計し、不調の原因を層ごとに調べられる 構成の標準を決め、構築をコード化して引き継げる
運用 手順書に沿って定常作業ができる リリースや一次対応を一人で進められる 手順に書かれていない事象でも判断し、復旧まで進められる 手順や監視を見直し、再発を防ぐしくみを作れる
セキュリティ 決められたルールを守って作業できる 代表的な対策を実装し、設定を確認できる 設計やコードの弱い箇所を指摘し、対策を選べる チェック項目や基準を整え、やり方を教えられる
進行管理 自分の作業の予定と状況を報告できる 自分の担当範囲の計画を作り、差を報告できる 数人ぶんの計画と課題を管理し、調整できる 計画や報告のやり方を標準にし、進め方を教えられる
協働・育成 ひな形に沿って文書を書き、質問できる 相手に合わせた文書と説明ができる 関係者の認識をそろえ、後輩の成果物に助言できる 育成の計画を立て、チームの学び方を整えられる

タブ区切り版(表計算ソフトに貼り付け用)です。

レベル 名前  定義  確かめ方の例
0   経験なし    まだ担当したことがない ―
1   支援があればできる   手順書や先輩の支援があれば、決められた範囲を終えられる ペア作業で1回終えた記録がある
2   一人でできる  通常の範囲を、支援なしで期限内に終えられる   直近3か月に単独で終えた成果物がある
3   応用できる   例外や初めての条件でも進められ、他の人の成果物をレビューできる レビューの指摘記録、例外対応の記録がある
4   教えられる   他の人に教えられ、手順や基準そのものを改善できる    作成した手順書・勉強会資料・改善の提案がある

行動で書くレベル定義の直し方

直す前 直した後 直したポイント
SQLを理解している 結合と集計を含む検索SQLを書き、実行計画を確認できる 「理解」を成果物と動作に置き換えた
テストがしっかり書ける 同値分割と境界値でテストコードを書ける 「しっかり」を観点の名前にした
障害対応の経験が豊富 初動の連絡・影響範囲の確認・復旧を手順に沿って進められる 経験の量を、進められる範囲にした
コミュニケーション力が高い 質問を準備して聞き取り、認識の差を残さず記録できる 性格の言葉を、場面と成果物にした
クラウドに詳しい 検証環境を構成定義のコードから作り直せる 知識の量を、再現できる作業にした

スキルマップのテンプレートと記入例(5人チーム)

架空の「備品予約システム」開発チーム5人の記入例です。A〜K列がスキルマップ本体で、重要度は1〜3(3が最も止まると困る作業)、必要人数は「一人でできる人が何人ほしいか」です。メンバーの列を自分のチームの名前に書き換え、数字を消せば白紙のテンプレートになります。

No  分類  スキル項目   レベル2(一人でできる)の確かめ方   重要度 必要人数    佐藤  鈴木  高橋  田中  伊藤
1   言語・実装   主要言語での実装    仕様書を読み、1機能を期限内に実装してレビューに出せる 3   3   4   4   3   2   1
2   言語・実装   SQLの作成  結合と集計を含む検索SQLを書き、実行計画を確認できる 3   3   3   4   2   2   1
3   言語・実装   フロントエンド実装   画面1枚を入力チェックつきで実装できる 2   2   2   3   3   1   1
4   言語・実装   バージョン管理 ブランチ作成からプルリクエスト、競合の解消までできる  3   3   4   3   3   2   2
5   言語・実装   コードレビュー 観点表に沿って指摘を書き、修正を確認できる   3   2   4   3   2   1   0
6   設計  要件の整理   聞き取った内容を機能一覧と未決事項に分けて書ける    3   2   4   2   1   0   0
7   設計  画面設計    画面項目定義と画面遷移図を1機能ぶん書ける   2   2   3   3   2   1   0
8   設計  API設計   エンドポイント・入出力・エラー応答を定義書に書ける   3   2   3   4   2   1   0
9   設計  テーブル設計  正規化したテーブル定義と索引を1機能ぶん書ける 3   2   3   4   1   1   0
10  設計  方式設計    構成図を書き、選んだ理由を文書に残せる 2   2   4   1   0   0   0
11  テスト 単体テスト   同値分割と境界値でテストコードを書ける 3   3   3   4   3   2   1
12  テスト 結合テスト設計 機能間の組み合わせからテスト項目を起こせる   3   2   3   2   2   1   0
13  テスト テスト自動化  画面またはAPIの自動テストを追加しCIで動かせる   2   2   1   3   1   0   0
14  テスト 性能テスト   負荷のシナリオを作り、結果を表にまとめられる  1   1   1   2   0   0   0
15  テスト 不具合の切り分け    ログと再現手順から原因の層を特定できる 3   3   4   3   2   1   1
16  インフラ    Linuxの操作    ログ確認・プロセス確認・権限変更を手順書なしでできる  2   2   3   2   2   1   1
17  インフラ    ネットワークの基礎   名前解決と疎通を順に調べ、止まっている箇所を示せる   2   2   3   1   1   0   0
18  インフラ    クラウド環境の構築   検証環境を構成定義のコードから作り直せる    2   2   1   1   3   0   0
19  インフラ    コンテナ    アプリのイメージを作り、設定を外から渡して起動できる  2   2   1   2   3   1   0
20  インフラ    CI/CD   ビルド・テスト・配備の定義を追加・修正できる  3   2   1   1   3   0   0
21  運用  監視の設定   しきい値と通知先を決めて監視項目を追加できる  2   2   2   1   2   0   0
22  運用  障害対応    初動の連絡・影響範囲の確認・復旧を手順に沿って進められる    3   2   4   2   1   0   0
23  運用  リリース作業  手順書に沿って配備し、確認と切り戻しができる  3   2   3   3   1   1   0
24  運用  バックアップと復元   バックアップから検証環境へ復元できる  3   2   2   1   1   0   0
25  運用  手順書の作成  他の人がそのまま作業できる手順書を書ける    2   2   3   2   2   2   1
26  セキュリティ  入力検証と脆弱性対策  代表的な脆弱性を説明し、対策を実装できる    3   2   3   3   2   1   0
27  セキュリティ  認証・権限の設計    ロールと操作の対応表を作り、実装に反映できる  3   2   3   2   1   0   0
28  セキュリティ  秘密情報の管理 鍵やパスワードをコードの外に置き、手順どおり更新できる 3   2   2   2   3   1   0
29  セキュリティ  依存ライブラリの更新  更新内容を確認し、テストを通して反映できる   2   2   2   3   2   1   0
30  セキュリティ  ログの設計   記録する項目とレベルを決め、個人情報を伏せて出力できる 2   2   3   2   1   0   0
31  進行管理    見積もり    作業を分解し、根拠つきの工数を出せる  3   2   4   2   1   0   0
32  進行管理    WBS・スケジュール作成    2週間ぶんの作業を依存関係つきで計画できる   2   2   4   2   1   0   0
33  進行管理    進捗報告    予定との差と見通しを数値で報告できる  2   3   4   3   2   2   1
34  進行管理    課題・リスク管理    課題を担当・期限つきで一覧にし、毎週更新できる 2   2   4   1   1   0   0
35  進行管理    会議の進行   議題と時間配分を決め、決定事項を確認して終えられる   2   2   4   2   1   1   0
36  協働・育成   文書の作成   結論から書いた報告書・議事録を当日中に出せる  2   3   4   3   2   2   1
37  協働・育成   要件のヒアリング    質問を準備して聞き取り、認識の差を残さず記録できる   3   2   4   2   1   0   0
38  協働・育成   後輩への指導  課題を出し、レビューで次の一歩を示せる 2   2   4   3   1   0   0
39  協働・育成   生成AIの活用 指示文を工夫し、出力を自分で検証して使える   2   3   2   3   3   2   2
40  協働・育成   対象システムの業務知識 主要な業務の流れを図にして説明できる  3   2   4   3   1   1   0

メンバーの経験年数の想定は、佐藤(リーダー・10年目)、鈴木(7年目)、高橋(4年目)、田中(2年目)、伊藤(1年目)です。

充足率・1人しかできない項目・育成の優先順位を計算する

計算式

指標 式 読み方
できる人数 レベル2以上の人数 その項目を一人で進められる人の数
充足率 できる人数 ÷ 必要人数(上限100%) 100%なら必要な人数がそろっている
不足人数 必要人数 − できる人数(下限0) あと何人育てるとそろうか
1人しかできない項目 できる人数 = 1 その人が不在のとき作業が止まる項目
育成の優先度の点数 不足人数 × 重要度 大きい順に育成の対象にする

Pythonで計算する

上のタブ区切りを skills.tsv という名前で保存し、同じフォルダで次のコードを実行します。標準ライブラリだけで動きます。

import csv

with open("skills.tsv", encoding="utf-8", newline="") as f:
    rows = list(csv.DictReader(f, delimiter="\t"))

members = ["佐藤", "鈴木", "高橋", "田中", "伊藤"]
CAN = 2  # レベル2以上を「一人でできる」と数える

result = []
for r in rows:
    levels = [int(r[m]) for m in members]
    can = sum(1 for v in levels if v >= CAN)
    need = int(r["必要人数"])
    rate = min(can / need, 1.0)
    shortage = max(need - can, 0)
    score = shortage * int(r["重要度"])
    holder = [m for m, v in zip(members, levels) if v >= CAN]
    result.append(dict(no=r["No"], cat=r["分類"], item=r["スキル項目"], can=can,
                       need=need, rate=rate, shortage=shortage, score=score,
                       holder=holder, teach=sum(1 for v in levels if v >= 4)))

print("■ 分類別の充足率(できる人数÷必要人数の平均)")
cats = []
for r in result:
    if r["cat"] not in cats:
        cats.append(r["cat"])
for c in cats:
    xs = [r for r in result if r["cat"] == c]
    print(f"{c}\t{sum(x['rate'] for x in xs) / len(xs):.0%}\t不足{sum(x['shortage'] for x in xs)}人ぶん")
print(f"全体\t{sum(r['rate'] for r in result) / len(result):.0%}")

print("\n■ 一人でできる人が1人だけの項目")
for r in result:
    if r["can"] == 1:
        print(f"{r['no']}\t{r['item']}\t{r['holder'][0]}")

print("\n■ 一人でできる人が0人の項目")
print([r["item"] for r in result if r["can"] == 0] or "なし")

print("\n■ 育成の優先順位(不足人数×重要度の大きい順)")
top = sorted((r for r in result if r["score"] > 0), key=lambda r: (-r["score"], int(r["no"])))
for i, r in enumerate(top, 1):
    row = rows[int(r["no"]) - 1]
    cand = [m for m in members if int(row[m]) == 1] or ["(レベル1の人なし)"]
    print(f"{i}\t{r['item']}\tできる{r['can']}/必要{r['need']}\t充足率{r['rate']:.0%}\t点数{r['score']}\t次の候補:{'・'.join(cand)}")

print("\n■ メンバー別(レベル2以上の項目数/平均レベル)")
for m in members:
    lv = [int(r[m]) for r in rows]
    print(f"{m}\t{sum(1 for v in lv if v >= CAN)}\t{sum(lv) / len(lv):.2f}")

print("\n■ 教えられる人(レベル4)がいない項目数:", sum(1 for r in result if r["teach"] == 0))

実行結果です。

■ 分類別の充足率(できる人数÷必要人数の平均)
言語・実装   100%    不足0人ぶん
設計  90% 不足1人ぶん
テスト 90% 不足1人ぶん
インフラ    70% 不足3人ぶん
運用  90% 不足1人ぶん
セキュリティ  100%    不足0人ぶん
進行管理    90% 不足1人ぶん
協働・育成   100%    不足0人ぶん
全体  91%

■ 一人でできる人が1人だけの項目
10  方式設計    佐藤
13  テスト自動化  鈴木
14  性能テスト   鈴木
17  ネットワークの基礎   佐藤
18  クラウド環境の構築   高橋
20  CI/CD   高橋
24  バックアップと復元   佐藤
34  課題・リスク管理    佐藤

■ 一人でできる人が0人の項目
なし

■ 育成の優先順位(不足人数×重要度の大きい順)
1   CI/CD   できる1/必要2    充足率50%  点数3 次の候補:佐藤・鈴木
2   バックアップと復元   できる1/必要2    充足率50%  点数3 次の候補:鈴木・高橋
3   方式設計    できる1/必要2    充足率50%  点数2 次の候補:鈴木
4   テスト自動化  できる1/必要2    充足率50%  点数2 次の候補:佐藤・高橋
5   ネットワークの基礎   できる1/必要2    充足率50%  点数2 次の候補:鈴木・高橋
6   クラウド環境の構築   できる1/必要2    充足率50%  点数2 次の候補:佐藤・鈴木
7   課題・リスク管理    できる1/必要2    充足率50%  点数2 次の候補:鈴木・高橋

■ メンバー別(レベル2以上の項目数/平均レベル)
佐藤  35  3.00
鈴木  33  2.42
高橋  22  1.73
田中  8   0.78
伊藤  2   0.33

■ 教えられる人(レベル4)がいない項目数: 20

全体の充足率は91%ですが、一人でできる人が1人だけの項目が8個あります。 しかも8個のうち4個は佐藤さん、2個は高橋さん、2個は鈴木さんに集まっています。育成の優先順位の1位はCI/CDとバックアップと復元(どちらも重要度3で1人不足)でした。

LibreOffice Calcの式で検算する

タブ区切りをA1セルに貼り付けると、1行目が見出し、2〜41行目が40項目、G〜K列が5人のレベルになります。L〜O列に次の式を入れ、41行目までコピーします。

セル 見出し 式(2行目)
L2 できる人数 =COUNTIF(G2:K2,">=2")
M2 充足率 =MIN(L2/F2,1)
N2 不足人数 =MAX(F2-L2,0)
O2 点数 =N2*E2

全体の集計は次の式で求めます。右端の列は、LibreOffice Calc 24.2.7 で計算した値です。

求めたいもの 式 計算結果
全体の充足率 =AVERAGE(M2:M41) 0.9125(91%)
1人しかできない項目の数 =COUNTIF(L2:L41,1) 8
できる人が0人の項目の数 =COUNTIF(L2:L41,0) 0
分類「設計」の充足率 =AVERAGEIF(B2:B41,"設計",M2:M41) 0.9
分類「インフラ」の不足人数 =SUMIF(B2:B41,"インフラ",N2:N41) 3
佐藤さんのレベル2以上の項目数 =COUNTIF(G2:G41,">=2") 35
佐藤さんの平均レベル =AVERAGE(G2:G41) 3
点数の最大値 =LARGE(O2:O41,1) 3
点数が最大の項目名(最初の1件) =INDEX(C2:C41,MATCH(LARGE(O2:O41,1),O2:O41,0)) CI/CD

Pythonの結果(全体91%、1人だけの項目8個、設計90%、インフラの不足3人ぶん、佐藤さん35項目・平均3.00、1位はCI/CD)とすべて一致しました。1人しかできない項目を一覧で見たいときは、L列にフィルターをかけて「1」だけを表示します。

集計結果から育成の一覧を作る

計算結果の上位3項目に、担当・方法・期限・確認方法を付けます。「次の候補」はレベル1の人です。

順位 項目 今できる人 育てる人 方法 期限 レベル2になったと確かめる方法
1 CI/CD 高橋 鈴木 高橋さんとペアで定義を1本追加 → 次は単独で修正 2026-11-30 単独で出した定義変更のプルリクエストが1件ある
2 バックアップと復元 佐藤 高橋 佐藤さんの復元作業に同席 → 手順書を高橋さんが更新 2026-11-30 検証環境への復元を単独で1回終えた記録がある
3 方式設計 佐藤 鈴木 次の機能追加で構成図と選定理由を鈴木さんが起案 2026-12-25 選んだ理由を書いた文書がレビューを通っている

一度に育成の対象にするのは3項目ほどに絞ります。 期限が来たらスキルマップを更新し、次の3項目に進みます。

確かめて分かったこと

  • 全体の充足率が高くても、属人化は見えない。 記入例は全体91%で、分類別でも最低がインフラの70%でしたが、40項目のうち8項目(20%)は一人でできる人が1人だけでした
  • 充足率100%の項目にも「1人だけ」がある。 性能テストは必要人数を1人にしたため充足率は100%ですが、できる人は鈴木さん1人です。充足率と「できる人数=1」は別々に見る必要があります
  • 必要人数を1にすると優先順位に出てこない。 点数は不足人数×重要度なので、必要人数1の項目は点数が0になります。止まると困る作業の必要人数は2以上にしておきます
  • レベル4(教えられる人)がいない項目は40項目のうち20個あった。 「できる人数」とは別に、教える側がいるかどうかも数えると育成の進め方を決めやすくなります
  • 同点が多くなる。 不足人数×重要度だけだと2位以下に同点が並びました。同点のときは「レベル1の候補がいるか」「できる1人が誰に集まっているか」で順番を決めます
  • 平均レベルは人の比較には向かない。 佐藤さん3.00、伊藤さん0.33という数字は経験年数の差を映しているだけで、育成の対象を決める材料にはなりませんでした。項目別の集計を使います

スキルマップ・力量管理表・キャリアラダー・等級定義の違い

名前 何を表すか 単位 主な使い道 見直しの間隔
スキルマップ 誰が何をどこまでできるか 人×スキル項目 育成の計画、作業の割り当て、属人化の把握 四半期ごと
力量管理表 その作業を任せてよいかの認定状況 人×作業(資格・教育の記録つき) 品質マネジメントで、作業者に必要な力量があることの記録 教育や認定のたび
キャリアラダー 段階ごとに求められる役割と行動 段階×観点 本人が次の段階をめざすための道しるべ 年1回
等級定義 等級ごとの役割・責任の範囲 等級×役割 人事制度の基準 制度の改定時

スキルマップは「今のチームの状態」を写す表で、キャリアラダーや等級定義は「段階ごとのあるべき姿」を書いた文書です。 スキルマップのレベルを等級にそのまま結び付けると、記入が控えめになったり高めになったりして、育成の材料として使いにくくなります。別の文書として分けておくと、それぞれの目的に合わせて運用できます。

どれを作るかの判断表

やりたいこと 作るもの
担当が1人だけの作業を減らしたい スキルマップ
次に誰に何を教えるかを決めたい スキルマップ
特定の作業を任せる条件と教育の記録を残したい 力量管理表
メンバーに数年先までの成長の道すじを示したい キャリアラダー
役割と責任の範囲を制度として定めたい 等級定義

公開されているスキル標準を使うか、自作するか

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は、IT人材のスキルを体系化した「ITスキル標準(ITSS)」を公開しています。IPAのページによると、ITSSは11職種・35の専門分野について、7段階のレベルを定めたもので、要素となるスキルを束ねたものではなく、課題解決のために選び、組み合わせて使う総合的な能力を表す「ものさし」と説明されています。また、ITSSのレベルは人事制度における役職のレベルを表すものではない、とも明記されています。

比べる点 公開されているスキル標準(ITSSなど) 自作のスキルマップ
対象 職種・専門分野ごとの人材像 自分のチームの作業と成果物
レベル ITSSは7段階 4段階ほど
強み 会社をまたいで共通の言葉で話せる 明日の作業の割り当てにそのまま使える
手間 自社の仕事への読み替えが必要 項目の洗い出しと見直しが必要
向いている規模 会社全体・部門 チーム(3〜15人ほど)

判断基準

条件 選ぶもの
1つのチームで、育成と属人化の解消に使いたい 自作(この記事の40項目を書き換える)
会社全体で職種ごとの人材像をそろえたい 公開されているスキル標準を土台にする
社外の人とスキルの水準を共通の言葉で話したい 公開されているスキル標準のレベルを併記する
自作したが、項目の抜けが心配 自作を続け、公開されている標準を抜けの確認に使う
部門の標準はあるが、チームの作業と合わない 部門の標準は残し、チーム用に自作を1枚足す

チームで使う1枚目は自作が向いています。 公開されている標準は範囲が広いので、最初から全部を取り入れるより、自作した項目に抜けがないかを見比べる使い方から始めると無理がありません。

更新が続く運用のしかた

場面 やること 時間の目安
四半期の初め 本人がレベルを見直し、変えたマスに色を付ける 1人15分
確認 確認者が色の付いたマスと、判定が違うマスだけ話す 1人10分
集計 充足率・1人だけの項目・優先順位を出す(式は入れたまま) 5分
育成の一覧を更新 上位3項目に担当・期限・確認方法を付ける 15分
半年に1回 項目の入れ替え(増やしたら同じ数を外す) 30分

続けるための決めごとは次の4つです。

  • 項目を1つ増やすときは1つ外す。 項目数を一定に保ちます
  • レベルを上げるときは、根拠の成果物を1つ書く。 セルのメモにプルリクエストや文書の名前を残します
  • 新しく入った人は、最初の1か月は記入だけ行う。 集計の対象には2か月目から入れます
  • 表は1つだけにする。 複製して個人用の版を作らず、変更の履歴は表計算ソフトの履歴機能に任せます

つまずきやすい点と整え方

起きること 整え方
項目が100個を超えて記入が進まない 全員がレベル3以上の項目を外し、成果物が同じ項目をまとめて50個以内にする
人によってレベルの付け方が違う 「直近3か月の成果物で示せるか」を基準にし、迷ったら低いほうにする
全員がレベル2か3に集まる 各レベルの確かめ方の例を足し、レベル3は「レビューの記録がある」を条件にする
作ったきり更新されない 四半期の初めの定例に15分の記入時間を入れる
道具の名前だけが並ぶ 道具ではなく作業の名前にし、道具は備考に書く
集計しても育成に結び付かない 上位3項目に担当・期限・確認方法を付けた一覧を必ず作る

よくある質問

Q. スキルマップとは何ですか? A. 縦にスキル項目、横にメンバーを並べ、マスにレベルを書いた一覧表です。チームの中で誰が何をできるか、どの項目が手薄かを見渡すために使います。

Q. スキルマップの項目はいくつが適切ですか? A. 30〜50個が扱いやすい数です。1人15分ほどで記入でき、四半期ごとの見直しが続けられる量に収めます。

Q. スキルマップのレベルは何段階にすればよいですか? A. 4段階(経験なしの0を別枠にして1〜4)がおすすめです。「支援があればできる・一人でできる・応用できる・教えられる」の4つなら、隣どうしの差を行動で説明できます。

Q. スキルマップと力量管理表の違いは何ですか? A. スキルマップは育成と割り当てのための現状の一覧、力量管理表は作業を任せる条件と教育・認定の記録です。前者はレベルの数字、後者は認定の有無と根拠の記録が中心になります。

Q. 充足率はどう計算しますか? A. 「レベル2以上の人数 ÷ 必要人数」で、上限を100%にします。表計算では =MIN(COUNTIF(G2:K2,">=2")/F2,1) の1つの式で求められます。

Q. スキルマップが更新されないときはどうすればよいですか? A. 項目を50個以内に減らし、四半期の初めの定例に記入時間を入れます。集計の式を入れたままにしておくと、記入するだけで結果が出るので続けやすくなります。

まとめ

  • 項目は30〜50個、レベルは4段階。 作業と成果物から洗い出し、行動で定義する
  • 「一人でできる」の線をレベル2に置く。 充足率と属人化の集計はこの線で数える
  • 重要度と必要人数の列を足す。 不足人数×重要度で育成の優先順位が計算できる
  • 全体の充足率と「1人しかできない項目」は別々に見る。 記入例では全体91%でも8項目が1人だけだった
  • 集計したら上位3項目に担当・期限・確認方法を付ける。 一覧にして四半期ごとに更新する
  • チームの1枚目は自作、会社全体は公開されているスキル標準を土台に。 ITSSのレベルは抜けの確認や共通の言葉として使える

参考・出典

  • IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「ITスキル標準(ITSS)」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/index.html (ITスキル標準V3 2011の公開ページ)
  • IPA「ITスキル標準とは -ものさしとしてのスキル標準」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/itss2.html (7段階のレベルと「ものさし」の考え方)
  • IPA「ITスキル標準とは -キャリアフレームワーク」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/career-framework.html (11職種・35専門分野、レベルと役職の関係)

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(記載例)出典:株式会社RJC「スキルマップの作り方|エンジニア向け項目例とレベル定義テンプレート」

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