エスカレーションとは、自分の権限や時間では解決できないことを、判断できる人へ上げて対応を求めることです。 ただの報告と違い、相手に「決めてもらう」「動いてもらう」ことを求めます。

この記事では、開発プロジェクトで使える基準表、判断フロー、メールとチャットの例文をまとめました。題材は架空の「備品予約システム」の開発チームです。表と例文はそのまま貼って、役割名と時間を自分のチームに合わせて書き換えられます。

確認環境:Mermaid 11.14.0(@mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0 と Chromium で描画)、Python 3.11(重大度マトリクスの集計)。確認日は 2026-10-05 です。基準表の時間や回数は例であり、チームの決まりに合わせて調整してください。

この記事の結論

  • 迷ったら上げる。 上げて「不要だった」と分かる手間より、上げずに時間が過ぎる影響のほうが大きくなります。
  • 基準は「影響範囲 × 期限までの残り時間」の2軸で決める。 感覚ではなく、表を引いて重大度を出します。
  • 30分自力で進まなければ報告する。 調べる時間に上限を決めておくと、抱え込みが起きにくくなります。
  • 第一報は「事実・影響・依頼・次の連絡時刻」の4点だけでよい。 原因が分かっていなくても送ります。
  • 自分の権限で決められることは、エスカレーションではなく報告で足ります。

エスカレーション基準の早見表(重大度4段階)

重大度 状態の目安 報告先 第一報の期限 続報の間隔 手段
S1 緊急 利用者や本番環境に影響が出ている。または期限を過ぎて他チーム・発注元の作業が止まっている PM、プロジェクト責任者、発注元の窓口 気づいてから15分以内 30分ごと 電話または通話+チャット。後からメールで記録
S2 高 1営業日以内の期限に間に合わない見込み。または他チームの作業を止めそう PM 1時間以内 半日ごと チャット+メール
S3 中 今週の期限に影響しそう。チーム内の作業が止まっている チームリーダー 当日中 1日ごと チャット
S4 低 自分の作業の中で吸収できる。期限まで余裕がある チームリーダー 次の定例まで 定例ごと 日次の報告に記載

時間と報告先は例です。大切なのは、重大度ごとに「誰に・いつまでに・どの手段で」を1行で決めておくことです。

本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。

(記載例)出典:株式会社RJC「エスカレーションのルールと基準|判断フローと例文テンプレート」

重大度の決め方:影響範囲と残り時間の2軸

重大度は、次のマトリクスを引いて決めます。行が影響範囲、列が期限までの残り時間です。

影響範囲 \ 残り時間 5営業日より先 2〜5営業日 1営業日以内 期限超過・発生中
自分の作業だけ S4 S4 S3 S3
チーム内の作業 S4 S3 S3 S2
他チーム・発注元の作業 S3 S3 S2 S1
利用者・本番環境 S2 S2 S1 S1

16マスの内訳は S1 が3、S2 が4、S3 が6、S4 が3 です(Pythonで集計した値)。利用者・本番環境の行は、残り時間に余裕があっても S2 以上にしています。

タブ区切り版

影響範囲    5営業日より先 2〜5営業日  1営業日以内  期限超過・発生中
自分の作業だけ S4  S4  S3  S3
チーム内の作業 S4  S3  S3  S2
他チーム・発注元の作業 S3  S3  S2  S1
利用者・本番環境    S2  S2  S1  S1

2軸の読み方

軸 確かめる質問 迷ったとき
影響範囲 このままだと、誰の作業が止まるか 広いほうを選ぶ
残り時間 影響が出る日まで、営業日で何日あるか 短いほうを選ぶ

どちらの軸も、迷ったら重いほうへ寄せます。上げた後に重大度を下げるのは簡単ですが、後から上げ直すと対応の時間が減ってしまうためです。

2軸に加える3つの決まり

決まり 内容
30分ルール 自力で30分進めても前に進まなければ、重大度にかかわらずリーダーに知らせる
権限ルール 自分の権限で決められないことは、重大度が低くても上げる
繰り返しルール 同じ問題が2回起きたら、1段階上の重大度として扱う

報告・相談・課題起票・インシデント報告との違い

似た行動は、「判断を相手に求めるか」「自分の権限で決められるか」の2つで選べます。

行動 判断を相手に求めるか 自分の権限で決められるか 急ぎの度合い 主な手段
報告 求めない(知らせる) 決められる・決めた後 定例でよい 日次・週次の報告
相談 意見を求める(決めるのは自分) 決められる 当日〜数日 チャット、対面
エスカレーション 求める(決めてもらう・動いてもらう) 決められない、または時間内に解決できない 基準表の期限内 チャット、メール、通話
課題起票 求めない(管理の対象にする) どちらもある 期限つきで追う 課題管理表
インシデント報告 求めない(起きたことの記録と再発防止) 対応後にまとめる 収束後 報告書

どれを選ぶかの判断表

条件 選ぶもの
自分で決めて対応した。知っておいてほしい 報告
自分で決められるが、ほかの見方を聞きたい 相談
自分の権限では決められない エスカレーション
権限はあるが、30分進めても解決の見通しが立たない エスカレーション
期限に間に合わない見込みが出た エスカレーション(あわせて課題起票)
すぐの判断は要らないが、追いかける必要がある 課題起票
利用者に影響が出た出来事が収束した インシデント報告

エスカレーションと課題起票は両立します。S1・S2 は先に人へ伝え、落ち着いてから課題管理表に書く順番にします。表に書いただけでは、相手が読むまで伝わりません。

権限表:どこまで自分で決めてよいか

「自分の権限で決められるか」を判断できるように、あらかじめ表にしておきます。次はひな形です。

決めること メンバー チームリーダー PM プロジェクト責任者
担当タスク内の実装方法 決定 相談先 ― ―
チーム内のタスクの入れ替え 提案 決定 報告先 ―
1日以内の作業の遅れの吸収 提案 決定 報告先 ―
マイルストーンの期日の変更 ― 提案 決定 報告先
仕様の変更・範囲の追加 ― 提案 決定(発注元と合意) 報告先
要員の追加・入れ替え ― 提案 提案 決定
本番環境の切り戻し ― 提案 決定 報告先
発注元への正式な連絡 ― ― 決定 相談先

「決定」が自分の列に無い行は、エスカレーションの対象です。

判断フロー(Mermaidのコード)

上げるかどうかを、5つの質問で決めるフローです。Mermaid 11.14.0 でエラーなく描画できることを確かめています。

flowchart TD
    A([困りごとに気づく]) --> B{利用者や本番環境に<br>影響が出ているか}
    B -->|はい| S1[S1 緊急<br>15分以内に第一報]
    B -->|いいえ| C{自分の権限で<br>決められるか}
    C -->|いいえ| UP[基準表で重大度を決めて<br>エスカレーション]
    C -->|はい| D{30分自力で進めて<br>前に進んだか}
    D -->|いいえ| UP
    D -->|はい| E{期限や他の人の作業に<br>影響するか}
    E -->|はい| UP
    E -->|いいえ| F{判断に迷いが<br>残っているか}
    F -->|はい| UP
    F -->|いいえ| G[自分で対応を続け<br>日次の報告に書く]
    UP --> H[第一報を送る<br>事実・影響・依頼・次の連絡時刻]
    S1 --> H
    H --> I{解決したか}
    I -->|いいえ| J[決めた時刻に続報] --> I
    I -->|はい| K([解決報告を送り<br>記録を残す])

図が表示できない場所では、次の表を使ってください。同じ内容です。

順 質問 はい いいえ
1 利用者や本番環境に影響が出ているか S1。15分以内に第一報 2へ
2 自分の権限で決められるか 3へ エスカレーション
3 30分自力で進めて前に進んだか 4へ エスカレーション
4 期限や他の人の作業に影響するか エスカレーション 5へ
5 判断に迷いが残っているか エスカレーション 自分で対応を続け、日次の報告に書く

第一報に書く4点

第一報は速さを優先します。次の4点がそろえば送れます。

項目 書くこと 例
事実 いつ、何が、どうなっているか。推測と分けて書く 10時20分から結合環境で予約登録がエラーになる
影響 誰の何が止まるか、期限はいつか テスト担当3名の作業が停止。結合テスト完了は10月9日
依頼 相手に何をしてほしいか、いつまでに 環境担当への調査依頼の可否を、11時までに判断してほしい
次の連絡時刻 続報を送る時刻 11時30分に続報

原因や対策が分かっていなくても構いません。「原因は調査中」と書いて送るほうが、相手は早く動けます。

例文テンプレート:メール

【 】の中を書き換えて使います。

第一報(メール)

件名:【エスカレーション/S2】【備品予約システム】結合環境で予約登録がエラー(第一報)

【宛先の名前】さん

【自分の名前】です。下記について判断をお願いします。

■ 事実
・【10月5日 10時20分】から、【結合環境】で【予約登録】を行うと【500エラー】になります。
・【開発環境】では再現しません。
・原因は調査中です(推測:【昨日の環境設定の変更】の影響)。

■ 影響
・【テスト担当3名】の作業が止まっています。
・【結合テスト完了(10月9日)】に影響する見込みです。

■ お願いしたいこと
・【環境担当チームへの調査依頼】を出してよいか、【本日11時】までに判断をお願いします。

■ ここまでに試したこと
・【アプリの再起動】→ 変化なし
・【ログの確認】→ 【データベース接続のタイムアウト】を確認

■ 次の連絡
・【11時30分】に続報を送ります。

続報(メール)

件名:【エスカレーション/S2】【備品予約システム】結合環境で予約登録がエラー(続報2)

【宛先の名前】さん

【自分の名前】です。【11時30分】時点の状況です。

■ 前回からの変化
・【環境担当チーム】が調査を開始しました(【11時05分】)。
・【接続数の上限設定】が原因の候補として挙がっています。

■ 現在の状態
・【予約登録のエラーは継続中】です。
・重大度は【S2のまま】です。

■ 次の予定
・【12時】に【設定を戻して再確認】します。

■ お願いしたいこと
・【なし/テスト担当の午後の作業を単体の確認へ振り替える判断】

■ 次の連絡
・【12時30分】に続報を送ります。

解決報告(メール)

件名:【解決/S2】【備品予約システム】結合環境で予約登録がエラー(解決報告)

【宛先の名前】さん

【自分の名前】です。下記のとおり解決しました。

■ 結果
・【10月5日 12時10分】に【予約登録が正常に戻った】ことを確認しました。

■ 原因
・【結合環境のデータベース接続数の上限が、前日の設定変更で小さくなっていた】ためです。

■ 行った対応
・【接続数の上限を変更前の値に戻した】(対応者:【環境担当 ○○さん】)

■ 影響のまとめ
・停止時間:【10時20分〜12時10分(1時間50分)】
・【結合テスト完了(10月9日)】は【変更なし】の見込みです。

■ 今後の対応
・【環境設定を変更するときの確認手順】を【10月8日】までに【自分の名前】が追加します。
・課題管理表の【No.24】に記録しました。

例文テンプレート:チャット

チャットは、最初の1行で重大度と依頼が分かるようにします。

第一報(チャット)

【エスカレーション/S2】@【宛先】 判断をお願いします
事実:【10時20分】から【結合環境】で【予約登録が500エラー】。原因は調査中
影響:【テスト担当3名】が停止。【10月9日の結合テスト完了】に影響の見込み
依頼:【環境担当への調査依頼】を出してよいか、【11時】までに判断がほしいです
次の連絡:【11時30分】

続報(チャット)

【続報2/S2】@【宛先】
変化:【環境担当が11時05分に調査開始。接続数の上限設定が候補】
現在:【エラー継続中】
次の予定:【12時に設定を戻して再確認】
依頼:【なし】
次の連絡:【12時30分】

解決報告(チャット)

【解決/S2】@【宛先】
結果:【12時10分】に【予約登録が正常に戻った】ことを確認
原因:【前日の設定変更で接続数の上限が小さくなっていた】
対応:【上限を変更前の値に戻した】
影響:【停止 1時間50分】。【10月9日の期日は変更なし】の見込み
今後:【設定変更時の確認手順を10月8日までに追加】。課題管理表【No.24】に記録

S1(緊急)の第一報は3行でよい

【エスカレーション/S1】@【PM】 @【責任者】 通話をお願いします
事実:【14時05分】から【本番環境】で【ログインができない】
次の連絡:【14時20分】。通話は【このスレッドの会議リンク】

S1 は、書くより先に通話でつなぎます。チャットは、後から読む人のための記録として残します。

例文を書くときのコツ

コツ 直す前 直した後
件名に重大度と状態を入れる 結合環境の件 【エスカレーション/S2】結合環境で予約登録がエラー(第一報)
事実と推測を分ける 設定変更のせいでエラーです エラーが出ています。原因は調査中(推測:設定変更の影響)
依頼に期限を付ける ご確認ください 調査依頼を出してよいか、11時までに判断をお願いします
影響を人数と日付で書く テストに影響があります テスト担当3名が停止。10月9日の完了に影響の見込み
次の連絡時刻を書く また連絡します 11時30分に続報を送ります
件名を変えずに続ける (毎回新しい件名) 同じ件名の末尾を「続報2」「解決報告」に変える

ルールとして決めておく7項目

チームで文書にしておくと、人によって判断が変わりにくくなります。

No. 決めること 例
1 重大度の段階と基準 4段階。影響範囲×残り時間のマトリクスで決める
2 重大度ごとの報告先 早見表のとおり
3 第一報の期限と続報の間隔 S1は15分以内・30分ごと
4 連絡手段と、相手が不在のときの次の連絡先 PMが不在なら15分後にプロジェクト責任者へ
5 自力で調べる時間の上限 30分
6 第一報の型 事実・影響・依頼・次の連絡時刻
7 終わり方 解決報告を送り、課題管理表に記録する

4の「不在のときの次の連絡先」は見落としやすい項目です。返事が無いまま待ち続けないよう、待つ時間と次の相手を決めておきます。

受ける側の決まり

上げやすさは、受ける側の反応で決まります。

  • 受け取ったら、まず「受け取りました。◯時までに返します」と返す。
  • 結果として不要だったエスカレーションも、上げたこと自体は歓迎する。
  • 判断したら、決めた内容と理由を同じスレッドに書く。

確かめて分かったこと

Mermaid 11.14.0 でフローを描画して確かめた内容です。

  1. ノードのIDに小文字の end を使うと描画が止まります。 start[開始] --> end[終了] と書くと Parse error on line 2: と表示され、got 'end' と示されました。End のように大文字を混ぜると描画できます。公式ドキュメントにも同じ注意があります。
  2. ひし形の文の中に半角の丸かっこを書くとエラーになります。 B{影響は本番(利用者)か} は Parse error on line 2: になり、B{"影響は本番(利用者)か"} と二重引用符で囲むと描画できました。
  3. 矢印のラベルには、スラッシュや矢印の文字も書けます。 -->|はい/続行| と -->|いいえ → 報告| はそのまま描画できました。
  4. ひし形の中の改行は <br> で入れられます。 質問文が長いときは、改行するとひし形が横に広がりすぎません。
  5. 同じノードへ複数の矢印を集められます。 「エスカレーション」のノードを1つにして、4つの質問から矢印を集めると、「どの質問でも上げる先は同じ」ことが図から読み取れます。

よくある質問

Q. エスカレーションとは何ですか? A. 自分の権限や時間では解決できないことを、判断できる人へ上げて対応を求めることです。知らせるだけの報告と違い、相手に判断や行動を求めます。

Q. エスカレーションと報告の違いは何ですか? A. 相手に判断を求めるかどうかです。報告は自分で決めたことを知らせるもので、エスカレーションは決めてもらうために上げるものです。

Q. エスカレーションするか迷ったときはどうしますか? A. 上げます。重大度は後から下げられますが、上げずに過ぎた時間は戻りません。基準表を引いても決めきれないときは、1段階重いほうを選びます。

Q. 原因が分からないままエスカレーションしてよいですか? A. 構いません。第一報は事実・影響・依頼・次の連絡時刻の4点があれば送れます。原因は「調査中」と書き、推測は推測と分かるように書きます。

Q. エスカレーションしても返事が無いときはどうしますか? A. 決めておいた時間だけ待ち、次の連絡先へ上げます。ルールに「不在のときの次の連絡先」と「待つ時間」を入れておくと迷いません。

まとめ

  • 迷ったら上げる。重大度は後から下げられます。
  • 基準は影響範囲×残り時間の2軸で、マトリクスを引いて重大度を決めます。
  • 30分自力で進まなければ報告。調べる時間に上限を置きます。
  • 重大度ごとに、報告先・第一報の期限・続報の間隔・手段を1行で決めておきます。
  • 第一報は事実・影響・依頼・次の連絡時刻の4点。原因は調査中のままで送れます。
  • 報告・相談との違いは、判断を相手に求めるかどうかです。権限表で「決定」が自分に無いことは上げます。
  • 解決報告を送り、記録を残して終わりにします。

参考・出典

  • Mermaid 公式ドキュメント「Flowcharts」(向きの指定、ひし形のノード、矢印のラベル、end の注意、引用符での囲み方)https://mermaid.js.org/syntax/flowchart.html (2026-10-05 確認)

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(記載例)出典:株式会社RJC「エスカレーションのルールと基準|判断フローと例文テンプレート」

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