- マネジメント
エンジニアのオンボーディングチェックリスト|30・60・90日プラン
エンジニアのオンボーディングとは、新しく加わったメンバーが「自分で課題を取り、コードを出し、チームの一員として動ける」状態になるまでを、受け入れ側が計画して支えることです。準備の大半は、本人が来る前に終えられます。
この記事は、受け入れる側(メンター・チームリーダー・管理者)が使う資料に絞っています。前任者から業務を渡すための引き継ぎ資料とは別のもので、ここで扱うのは「誰が・いつまでに・何を用意するか」です。入社前・初日・1週目・1か月のチェックリストを担当者と優先度つきで載せ、30・60・90日プランは役割別の記入例まで用意しました。例はすべて、架空の「備品予約システム」を開発するチームを題材にしています。
確認環境:チェックリストの表とタブ区切りテキストは同じデータから Python 3.11 で生成し、件数を数えています。確認日の計算も Python 3.11 で実行しました。Mermaid のフロー図は @mermaid-js/mermaid-cli 11.14.0 と Chromium で描画できることを確かめています。
オンボーディングの早見表
| 時期 | 目指す状態 | 受け入れ側の主な準備 | 本人の主な行動 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|---|
| 入社前 | 初日から作業を始められる | 機器・アカウント・権限・手順書・最初の課題 | (なし。案内を受け取るだけ) | チェックリスト A の必須8項目が完了 |
| 初日 | 全体像と質問先がわかる | 出迎え、構成図での説明、ルールの説明 | ログイン、自己紹介、環境構築を開始 | 終業前15分のふりかえり |
| 1週目 | 最初のプルリクエストがマージされる | レビューの進め方の説明、課題の用意 | 起動・テスト、手順書の更新、最初のプルリクエスト | マージされたプルリクエスト1件 |
| 30日 | 小さな課題を1人で完了できる | 週1回の1on1、質問への早い返答 | 小さな機能追加か修正を1件リリース | 30日の確認(プランの確認方法の列) |
| 60日 | 担当範囲を持ち、レビューにも加わる | 担当範囲の受け渡し、当番の同席 | 中くらいの課題を担当、レビューをする | 60日の確認 |
| 90日 | 設計から関わり、改善を提案できる | 次の目標の相談 | 設計の提案、改善を1件やり切る | 90日の確認 |
| 資料 | 使う人 | この記事の章 |
|---|---|---|
| チェックリスト(40項目) | 受け入れ側・本人・管理者 | 時期別チェックリスト |
| 権限申請一覧表 | 受け入れ側 | 権限申請一覧表 |
| 1週目の日別スケジュール | 受け入れ側・本人 | 1週目の日別スケジュール例 |
| 最初の課題の条件 | 受け入れ側 | 最初のプルリクエストに向く課題の条件 |
| 30・60・90日プラン | 管理者・本人 | 30・60・90日プランのテンプレート |
本記事の内容は、ご自由にお使いください。
ご利用の際は、出典として本ページへのリンクを記載いただけますようお願いします。
(記載例)出典:株式会社RJC「エンジニアのオンボーディングチェックリスト|30・60・90日プラン」
担当者と優先度の決め方
チェックリストは項目を並べるだけだと、「誰かがやるだろう」で残りがちです。この記事では、すべての項目に担当と優先度を付けています。
| 担当 | 指す人 | 主に受け持つこと |
|---|---|---|
| 受け入れ側 | メンター、同じチームのエンジニア | 環境・手順書・課題の用意、日々の質問への対応、レビュー |
| 本人 | 新しく加わるメンバー | 環境構築、最初のプルリクエスト、手順書への反映 |
| 管理者 | チームリーダー、マネージャー | 体制の決定、アカウント発行の依頼、プランの合意、1on1 |
| 優先度 | 意味 | 件数 |
|---|---|---|
| 必須 | 終わっていないと、その時期の「目指す状態」に届かない | 27 |
| 推奨 | やっておくと立ち上がりが早くなる | 9 |
| 任意 | 余裕があれば行う | 4 |
時間が限られるときは、必須の27項目だけを先に終える使い方ができます。担当別では、受け入れ側16項目、本人13項目、管理者11項目です。
時期別チェックリスト
入社前(12項目)
| No | やること | 担当 | 優先度 | 完了 |
|---|---|---|---|---|
| A-01 | 受け入れ担当(メンター)を決め、本人とチームに伝える | 管理者 | 必須 | ☐ |
| A-02 | PC・周辺機器を手配し、初期設定を済ませる | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| A-03 | アカウントを発行する(メール・チャット・予定表・ID管理) | 管理者 | 必須 | ☐ |
| A-04 | 権限申請一覧に沿って、リポジトリ・課題管理・ドキュメントの権限を申請する | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| A-05 | 環境構築手順書を受け入れ側が自分で1回通し、動かない箇所を直す | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| A-06 | 最初のプルリクエストに向く課題を2〜3件選んでおく | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| A-07 | 1週目の日別スケジュールを作り、予定表に入れる | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| A-08 | 初日の集合時刻・場所・持ち物を本人に連絡する | 管理者 | 必須 | ☐ |
| A-09 | 30・60・90日プランの下書きを作る | 管理者 | 推奨 | ☐ |
| A-10 | チームに着任日・役割・担当予定の範囲を共有する | 管理者 | 推奨 | ☐ |
| A-11 | 最初に読む資料の一覧を1ページにまとめる | 受け入れ側 | 推奨 | ☐ |
| A-12 | 入社前に読める公開資料を案内する(読むかどうかは自由と明記) | 管理者 | 任意 | ☐ |
入社前の必須項目は、すべて受け入れ側と管理者の担当です。なかでも A-05(手順書を自分で1回通す) は効果が大きく、初日の環境構築で止まる時間をまとめて減らせます。
初日(10項目)
| No | やること | 担当 | 優先度 | 完了 |
|---|---|---|---|---|
| B-01 | 出迎えて、チームのメンバーを紹介する | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| B-02 | PCを受け取り、ログインと多要素認証の設定を済ませる | 本人 | 必須 | ☐ |
| B-03 | チャット・メール・予定表にログインし、自己紹介を投稿する | 本人 | 必須 | ☐ |
| B-04 | システムの全体像を構成図1枚で30分説明する | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| B-05 | 情報の扱いとセキュリティのルールを説明する | 管理者 | 必須 | ☐ |
| B-06 | 質問先と質問のしかたを伝える(15分考えて進まなければ聞く、など) | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| B-07 | リポジトリをクローンし、環境構築を始める | 本人 | 必須 | ☐ |
| B-08 | 1週目のスケジュールと30・60・90日プランの下書きを一緒に確認する | 管理者 | 必須 | ☐ |
| B-09 | 終業前に15分のふりかえりをする(困ったこと・明日やること) | 受け入れ側 | 推奨 | ☐ |
| B-10 | 昼食やオンラインの雑談の時間を取る | 受け入れ側 | 任意 | ☐ |
初日は詰め込みすぎないのがコツです。「全体像」「質問先」「明日やること」の3つが伝われば十分で、細かい仕様は1週目以降に回します。
1週目(10項目)
| No | やること | 担当 | 優先度 | 完了 |
|---|---|---|---|---|
| C-01 | ローカルでアプリケーションを起動し、テストを通す | 本人 | 必須 | ☐ |
| C-02 | 環境構築でつまずいた箇所を手順書に反映する | 本人 | 必須 | ☐ |
| C-03 | ブランチ運用・コミットの書き方・レビューの進め方を説明する | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| C-04 | 最初のプルリクエストを出し、レビューを受けてマージする | 本人 | 必須 | ☐ |
| C-05 | 朝会と定例の会議に参加する | 本人 | 必須 | ☐ |
| C-06 | 足りない権限を洗い出し、追加で申請する | 本人 | 必須 | ☐ |
| C-07 | 週の終わりに30分ふりかえり、30・60・90日プランを確定する | 管理者 | 必須 | ☐ |
| C-08 | デプロイの流れを1回、横で見る | 受け入れ側 | 推奨 | ☐ |
| C-09 | 関わりの多い人3〜5人と15分ずつ顔合わせをする | 本人 | 推奨 | ☐ |
| C-10 | 知らなかった言葉を用語集に追記する | 本人 | 任意 | ☐ |
1か月(8項目)
| No | やること | 担当 | 優先度 | 完了 |
|---|---|---|---|---|
| D-01 | 小さな機能追加か修正を1件、着手からリリースまで担当する | 本人 | 必須 | ☐ |
| D-02 | 週1回の1on1を続ける | 管理者 | 必須 | ☐ |
| D-03 | 30日の確認をする(プランの「確認方法」の列で確かめる) | 管理者 | 必須 | ☐ |
| D-04 | オンボーディング資料の改善点を本人から集め、反映する | 受け入れ側 | 必須 | ☐ |
| D-05 | ほかの人のプルリクエストを1件以上レビューする | 本人 | 推奨 | ☐ |
| D-06 | 問い合わせ・障害対応の流れを説明し、当番の様子を横で見てもらう | 受け入れ側 | 推奨 | ☐ |
| D-07 | 60日の目標を、30日の結果をもとに見直す | 本人 | 推奨 | ☐ |
| D-08 | メンターとの毎日の確認を、週2〜3回に減らす | 受け入れ側 | 任意 | ☐ |
表計算ソフトに貼れるタブ区切り版
次のブロックをコピーして、Excel や Google スプレッドシートのセル A1 に貼り付けると、6列の表になります(「完了」列は空欄です)。
時期 No やること 担当 優先度 完了
入社前 A-01 受け入れ担当(メンター)を決め、本人とチームに伝える 管理者 必須
入社前 A-02 PC・周辺機器を手配し、初期設定を済ませる 受け入れ側 必須
入社前 A-03 アカウントを発行する(メール・チャット・予定表・ID管理) 管理者 必須
入社前 A-04 権限申請一覧に沿って、リポジトリ・課題管理・ドキュメントの権限を申請する 受け入れ側 必須
入社前 A-05 環境構築手順書を受け入れ側が自分で1回通し、動かない箇所を直す 受け入れ側 必須
入社前 A-06 最初のプルリクエストに向く課題を2〜3件選んでおく 受け入れ側 必須
入社前 A-07 1週目の日別スケジュールを作り、予定表に入れる 受け入れ側 必須
入社前 A-08 初日の集合時刻・場所・持ち物を本人に連絡する 管理者 必須
入社前 A-09 30・60・90日プランの下書きを作る 管理者 推奨
入社前 A-10 チームに着任日・役割・担当予定の範囲を共有する 管理者 推奨
入社前 A-11 最初に読む資料の一覧を1ページにまとめる 受け入れ側 推奨
入社前 A-12 入社前に読める公開資料を案内する(読むかどうかは自由と明記) 管理者 任意
初日 B-01 出迎えて、チームのメンバーを紹介する 受け入れ側 必須
初日 B-02 PCを受け取り、ログインと多要素認証の設定を済ませる 本人 必須
初日 B-03 チャット・メール・予定表にログインし、自己紹介を投稿する 本人 必須
初日 B-04 システムの全体像を構成図1枚で30分説明する 受け入れ側 必須
初日 B-05 情報の扱いとセキュリティのルールを説明する 管理者 必須
初日 B-06 質問先と質問のしかたを伝える(15分考えて進まなければ聞く、など) 受け入れ側 必須
初日 B-07 リポジトリをクローンし、環境構築を始める 本人 必須
初日 B-08 1週目のスケジュールと30・60・90日プランの下書きを一緒に確認する 管理者 必須
初日 B-09 終業前に15分のふりかえりをする(困ったこと・明日やること) 受け入れ側 推奨
初日 B-10 昼食やオンラインの雑談の時間を取る 受け入れ側 任意
1週目 C-01 ローカルでアプリケーションを起動し、テストを通す 本人 必須
1週目 C-02 環境構築でつまずいた箇所を手順書に反映する 本人 必須
1週目 C-03 ブランチ運用・コミットの書き方・レビューの進め方を説明する 受け入れ側 必須
1週目 C-04 最初のプルリクエストを出し、レビューを受けてマージする 本人 必須
1週目 C-05 朝会と定例の会議に参加する 本人 必須
1週目 C-06 足りない権限を洗い出し、追加で申請する 本人 必須
1週目 C-07 週の終わりに30分ふりかえり、30・60・90日プランを確定する 管理者 必須
1週目 C-08 デプロイの流れを1回、横で見る 受け入れ側 推奨
1週目 C-09 関わりの多い人3〜5人と15分ずつ顔合わせをする 本人 推奨
1週目 C-10 知らなかった言葉を用語集に追記する 本人 任意
1か月 D-01 小さな機能追加か修正を1件、着手からリリースまで担当する 本人 必須
1か月 D-02 週1回の1on1を続ける 管理者 必須
1か月 D-03 30日の確認をする(プランの「確認方法」の列で確かめる) 管理者 必須
1か月 D-04 オンボーディング資料の改善点を本人から集め、反映する 受け入れ側 必須
1か月 D-05 ほかの人のプルリクエストを1件以上レビューする 本人 推奨
1か月 D-06 問い合わせ・障害対応の流れを説明し、当番の様子を横で見てもらう 受け入れ側 推奨
1か月 D-07 60日の目標を、30日の結果をもとに見直す 本人 推奨
1か月 D-08 メンターとの毎日の確認を、週2〜3回に減らす 受け入れ側 任意
権限申請一覧表
権限は、申請から付与まで日数がかかることがあります。入社日の1週間前までに申請を出し、初日の朝に使える状態にしておくのが目安です。最初に付ける範囲は必要最小限にして、役割が広がる時点で足していきます。
| No | 対象 | 最初に付ける権限 | 付ける時期 | 申請する人 | 役割による違い |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ID管理(シングルサインオン) | アカウント発行、多要素認証の登録 | 入社前 | 管理者 | 全員共通 |
| 2 | メール・予定表 | 利用者 | 入社前 | 管理者 | 全員共通 |
| 3 | チャット | チームのチャンネル、通知用チャンネルへの参加 | 入社前 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 4 | ソースコード管理 | 担当リポジトリへの書き込み(保護されたブランチへは、プルリクエスト経由のみ) | 入社前 | 受け入れ側 | 担当リポジトリが異なる |
| 5 | 課題管理 | 課題の作成・編集 | 入社前 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 6 | ドキュメント(Wiki) | 閲覧と編集 | 入社前 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 7 | CI/CD | 実行結果の閲覧、ジョブの再実行 | 入社前 | 受け入れ側 | インフラは設定の編集も |
| 8 | パッケージの配布元(社内レジストリ) | 読み取り | 入社前 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 9 | VPN・社内ネットワーク | 接続 | 入社前 | 管理者 | 全員共通 |
| 10 | 開発環境(クラウド) | 開発用の環境での作成・変更 | 入社前 | 受け入れ側 | インフラは範囲が広い |
| 11 | 検証環境のデータベース | 読み取り | 1週目 | 受け入れ側 | バックエンド・インフラ |
| 12 | ログ・監視 | 閲覧 | 1週目 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 13 | シークレット管理 | 開発用の値の読み取り | 1週目 | 受け入れ側 | 全員共通 |
| 14 | デザインツール | 閲覧とコメント | 1週目 | 受け入れ側 | フロントエンド |
| 15 | 本番環境 | 付けない(当番に入る時点で、閲覧から始める) | 60日以降 | 管理者 | インフラは早まることがある |
| 16 | 有償ツールのライセンス(エディタなど) | 1席 | 入社前 | 管理者 | 必要な人のみ |
No 対象 最初に付ける権限 付ける時期 申請する人 申請日 付与日 確認(本人がログインできた日)
1 ID管理(シングルサインオン) アカウント発行、多要素認証の登録 入社前 管理者
2 メール・予定表 利用者 入社前 管理者
3 チャット チームのチャンネルへの参加 入社前 受け入れ側
4 ソースコード管理 担当リポジトリへの書き込み 入社前 受け入れ側
5 課題管理 課題の作成・編集 入社前 受け入れ側
6 ドキュメント(Wiki) 閲覧と編集 入社前 受け入れ側
7 CI/CD 実行結果の閲覧、ジョブの再実行 入社前 受け入れ側
8 パッケージの配布元 読み取り 入社前 受け入れ側
9 VPN・社内ネットワーク 接続 入社前 管理者
10 開発環境(クラウド) 開発用の環境での作成・変更 入社前 受け入れ側
11 検証環境のデータベース 読み取り 1週目 受け入れ側
12 ログ・監視 閲覧 1週目 受け入れ側
13 シークレット管理 開発用の値の読み取り 1週目 受け入れ側
14 デザインツール 閲覧とコメント 1週目 受け入れ側
15 本番環境 付けない 60日以降 管理者
16 有償ツールのライセンス 1席 入社前 管理者
「付与日」だけでなく「本人がログインできた日」の列を持つのがポイントです。付与されたはずの権限が、グループの設定もれなどで使えないことは珍しくありません。初日に本人と一緒に1行ずつ確かめます。
1週目の日別スケジュール例
1週目の予定は、入社前に予定表へ入れておきます。空き時間に何をすればよいかが決まっていると、本人が迷わずに済みます。
| 日 | 午前 | 午後 | その日の終わりにあるもの |
|---|---|---|---|
| 1日目(月) | 出迎え、PCの受け取り、ログインと多要素認証、チームの紹介 | 構成図での全体説明(30分)、ルールの説明、環境構築を開始、ふりかえり15分 | ログインできるアカウント一式、明日やることのメモ |
| 2日目(火) | 朝会に参加、環境構築の続き(メンターが隣で待機) | ローカルで起動、テストを実行、つまずいた箇所をメモ | 手元で動くアプリケーション |
| 3日目(水) | ブランチ運用とレビューの進め方の説明(30分)、最初の課題を選ぶ | 最初の課題に着手、手順書の直しをプルリクエストにする | 手順書を直すプルリクエスト1件 |
| 4日目(木) | 最初の課題の続き、わからない所をメンターと画面を見ながら確認 | プルリクエストを出す、レビューの指摘に対応、関係者との顔合わせ(15分×2人) | レビュー中のプルリクエスト1件 |
| 5日目(金) | 指摘への対応、マージ、デプロイの流れを横で見る | 週のふりかえり(30分)、30・60・90日プランの確定、来週の課題を選ぶ | マージされたプルリクエスト、合意したプラン |
メンターの時間も先に確保します。目安は、1日目と2日目は半日、3日目以降は1日あたり1時間です。メンターが不在の日は、代わりに質問を受ける人を決めておきます。
最初のプルリクエストに向く課題の条件
最初のプルリクエストの目的は、機能を作ることではなく、「課題を取る → ブランチを切る → 変更する → テストする → レビューを受ける → マージされる」という一連の流れを1周することです。その目的に合う課題を、入社前に2〜3件選んでおきます。
| 条件 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 変更が小さい | 変更するファイルが1〜3個、1〜2日で終わる | 流れを1周することに集中できる |
| 完了の条件がはっきりしている | 「この画面でこう表示されればよい」と1〜2文で書ける | 自分で終わりを判断できる |
| 急ぎではない | 期限が2週間以上先、またはない | 時間をかけて調べてよい |
| ほかの作業を止めない | ほかの人がその完了を待っていない | 遅れても影響が出ない |
| テストを書ける、または既存のテストがある | テストを1件足す、または直す | テストの実行方法を覚えられる |
| システムの主要な流れに少し触れる | 画面からデータベースまでのどこかを通る | コードの地図ができる |
| 仕様の判断がいらない | 関係者への確認なしで進められる | 誰に聞くかをまだ知らないため |
| レビューする人が決まっている | メンターがレビューする | 待ち時間が短くなる |
| 向く課題の例 | 見送る課題の例 | 見送る理由 |
|---|---|---|
| 環境構築手順書の、動かなかった箇所の修正 | 認証・権限まわりの変更 | 影響範囲が広い |
| 入力エラーのメッセージ文言の修正 | 性能の改善 | 完了の条件を決めにくい |
| 一覧画面に項目を1列足す | データベースの大きなテーブルの定義変更 | 手順と確認に経験が要る |
| テストが足りない関数にテストを足す | 期限の近い不具合の修正 | 急ぎで、調べる時間が取れない |
| ログの出力項目を1つ足す | 複数のチームにまたがる変更 | 調整先がまだわからない |
課題管理のツールで「最初の課題向け」のラベルを用意し、普段から条件に合う課題に付けておくと、次の受け入れのときに探す手間がなくなります。
30・60・90日プランのテンプレート
30・60・90日プランは、入社から約1・2・3か月の時点で「どうなっていたいか」を、本人と管理者が合意して書き残すものです。目標・行動・確認方法の3列で書くと、後から「届いたかどうか」を事実で確かめられます。
| 列 | 書くこと | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| 目標 | その時点でできるようになっていること | 「理解する」ではなく「〜できる」「〜を終えている」で書く |
| 行動 | 目標のために本人がやること、受け入れ側が用意すること | 件数や回数を入れる |
| 確認方法 | 何を見れば届いたとわかるか | マージされたプルリクエスト、書いた文書、同席した回数など、残るもので書く |
空のテンプレート
# 30・60・90日プラン
- 氏名:
- 役割:
- 入社日:
- メンター:
- 管理者:
- 確認日:30日( / ) 60日( / ) 90日( / )
| 時期 | 目標 | 行動 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 30日 | | | |
| 60日 | | | |
| 90日 | | | |
## 確認の記録
| 時期 | 確認日 | 届いたこと | 次の期間に持ち越すこと | 受け入れ側が変えること |
|---|---|---|---|---|
| 30日 | | | | |
| 60日 | | | | |
| 90日 | | | | |
タブ区切り版:
時期 目標 行動 確認方法 確認日 結果
30日
60日
90日
確認日を先に決める
確認日は、プランを作るときに予定表へ入れておきます。入社日から30・60・90日後を求め、土日に当たったら次の月曜にずらす計算は次のとおりです(祝日は考慮していないので、当たった場合は手で調整します)。
# 入社日から 30・60・90日後の確認日を求める(土日に当たったら次の月曜にずらす)
from datetime import date, timedelta
def review_day(start: date, days: int) -> date:
d = start + timedelta(days=days)
while d.weekday() >= 5: # 5=土曜, 6=日曜
d += timedelta(days=1)
return d
start = date(2026, 10, 5)
youbi = "月火水木金土日"
print(f"入社日 {start}({youbi[start.weekday()]})")
for n in (30, 60, 90):
d = review_day(start, n)
print(f"{n}日の確認 {d}({youbi[d.weekday()]})")
実行結果:
入社日 2026-10-05(月)
30日の確認 2026-11-04(水)
60日の確認 2026-12-04(金)
90日の確認 2027-01-04(月)
記入例1:バックエンドエンジニア
| 時期 | 目標 | 行動 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 30日 | 予約APIの小さな修正を、1人で着手からリリースまで終えられる | 最初の課題向けの課題を3件完了する。予約APIのコードを読み、処理の流れを図にする | マージされたプルリクエスト3件。Wikiに載せた処理の流れ図1枚 |
| 60日 | 予約の変更機能を担当し、ほかの人のコードをレビューできる | 予約変更APIを設計のレビューから実装まで担当する。週2件以上レビューする | リリースされた予約変更API。レビューしたプルリクエストの一覧 |
| 90日 | 新しい機能の設計を提案し、問い合わせ対応の当番に入れる | 繰り返し予約の設計書を書いてレビューを受ける。当番に2回同席したあと、1回を自分で受け持つ | レビュー済みの設計書1本。当番の記録 |
記入例2:フロントエンドエンジニア
| 時期 | 目標 | 行動 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 30日 | 既存の画面の表示修正を、1人でリリースまで終えられる | 文言と表示の修正を3件完了する。共通コンポーネントの一覧を読み、使い方を2つ試す | マージされたプルリクエスト3件。画面の表示確認の記録 |
| 60日 | 予約変更画面を新しく作り、デザイン担当と直接やり取りできる | 予約変更画面を、共通コンポーネントを使って作る。デザインの確認の会に毎週出る | リリースされた予約変更画面。画面のテスト(追加した件数) |
| 90日 | 画面の使いやすさや表示速度の改善を、自分で見つけて提案できる | 予約一覧画面の表示速度を測り、改善案を1件出してやり切る。キーボード操作での確認手順をWikiに書く | 改善前後の測定結果。Wikiのページ1本 |
記入例3:インフラエンジニア
| 時期 | 目標 | 行動 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 30日 | 開発用の環境を、構成のコードから自分で作り直せる | 開発用の環境を手順どおりに1回作り直す。構成図を最新の状態に直す。監視の通知一覧を読む | 作り直した環境で通ったテストの結果。更新した構成図 |
| 60日 | 検証環境への変更を、レビューを受けて1人で反映できる | 検証環境の設定変更を3件担当する。デプロイの仕組みの改善を1件行う | マージされた構成変更のプルリクエスト3件。デプロイ時間の前後比較 |
| 90日 | 本番環境の定期作業を受け持ち、障害対応の当番に入れる | 定期作業に2回同席したあと、1回を自分で行う。復旧手順を検証環境で1回通す | 作業の記録。復旧手順を通した結果のメモ |
3つの例に共通しているのは、30日は「小さく1周する」、60日は「範囲を持つ」、90日は「自分から提案する」という段階です。目標の大きさは、経験年数や担当するシステムの複雑さに合わせて、1週目のふりかえりで調整します。
オンボーディング進行のフロー図(Mermaid)
入社前から90日までの流れと、途中で止まったときの戻り先を図にしたものです。Mermaid に対応したエディタやWikiに貼ると、そのまま描画されます。
flowchart TD
A[入社前: 機器・アカウント・権限・最初の課題を準備] --> B[初日: 出迎え・全体像の説明・環境構築を開始]
B --> C{2日目までに<br/>ローカルで起動できたか}
C -- いいえ --> C1[メンターと一緒に構築し<br/>手順書を直す]
C1 --> C
C -- はい --> D[最初のプルリクエストを出す]
D --> E{1週目のうちに<br/>マージできたか}
E -- いいえ --> E1[課題を小さく分け直す]
E1 --> D
E -- はい --> F[1週目のふりかえり<br/>30・60・90日プランを確定]
F --> G[30日の確認]
G --> H{目標に届いたか}
H -- いいえ --> H1[妨げを取り除き<br/>60日の目標を調整]
H -- はい --> I[60日の確認]
H1 --> I
I --> J[90日の確認]
J --> K[オンボーディング完了<br/>資料の改善点を反映]
図の分岐は3か所です。
| 分岐 | 判断の時点 | 「いいえ」のときにやること |
|---|---|---|
| ローカルで起動できたか | 2日目の終わり | メンターが一緒に構築し、止まった箇所をその場で手順書に反映する |
| 最初のプルリクエストがマージできたか | 1週目の終わり | 課題が大きすぎないかを見直し、小さく分け直す |
| 30日の目標に届いたか | 30日の確認 | 本人の力不足と決めつけず、妨げ(権限・資料・質問のしにくさ)を先に取り除く |
30・60・90日の確認で聞くこと
確認の場は、評価を伝える場ではなく、プランと受け入れ方を調整する場として使います。次の質問を上から順に使えます。
| 聞くこと | ねらい |
|---|---|
| 「確認方法」の列に書いたものを、一緒に見せてもらえますか | 事実から始める |
| この期間で、いちばん時間がかかったのは何でしたか | 資料や環境の改善点を見つける |
| 質問しにくいと感じた場面はありましたか | 質問先や聞き方の案内を直す |
| 次の期間の目標は、このままでよさそうですか | 目標の大きさを調整する |
| 受け入れ側に変えてほしいことはありますか | 受け入れ方を直す |
| 次に入る人のために、資料のどこを直すとよいですか | 次回の準備に回す |
最後の質問の答えは、チェックリスト D-04 の入力になります。入ったばかりの人は、資料のわかりにくい所にいちばん気づける人です。直してもらった箇所は、次の受け入れでそのまま役に立ちます。
つまずきやすい点と整え方
| 起きやすいこと | 原因 | 整え方 |
|---|---|---|
| 初日に権限がなく、資料を読むだけで終わる | 申請が入社直前になった | 権限申請一覧表を使い、1週間前に申請する |
| 環境構築に3日以上かかる | 手順書が現在の構成と合っていない | A-05 のとおり、受け入れ側が事前に1回通す |
| 質問が来ないまま、作業が止まっている | いつ聞いてよいかがわからない | 「15分考えて進まなければ聞く」など、目安を数字で伝える |
| 最初の課題が1週間たっても終わらない | 課題が大きい、仕様の判断が必要 | 課題の条件の表で選び直す |
| メンターが忙しく、返事が遅れる | メンターの作業量を減らしていない | 1週目はメンターの担当作業を減らし、代わりの質問先も決める |
| 90日たっても担当範囲がない | プランが「慣れる」などの言葉で書かれている | 目標を「〜できる」、確認方法を残るもので書き直す |
よくある質問
Q. オンボーディングの期間は、どのくらいを見ておけばよいですか? A. この記事では、区切りを付けやすい90日を1つの単位にしています。経験者で似た技術に慣れている人は短く、担当するシステムが大きい場合は長くなります。期間よりも、30・60・90日のそれぞれで「何ができていれば届いたと言えるか」を先に決めることが大切です。
Q. メンターと管理者は、同じ人でもよいですか? A. 小さなチームでは同じ人が兼ねることもあります。その場合でも、日々の技術的な質問を受ける役と、プランを合意して確認する役は別の仕事として時間を分けておくと、どちらかが後回しになるのを防げます。
Q. リモート勤務の場合、何を変えればよいですか? A. チェックリストの項目は同じで、やり方を変えます。機器は入社日より前に届くように送り、初日はビデオ通話をつないだまま環境構築を進めます。1週目は、毎日決まった時刻に15分の通話を入れておくと、質問のきっかけが作れます。
Q. チェックリストは誰が管理しますか? A. 管理者が全体を持ち、各項目は担当列の人が完了を付けます。表計算ソフトや課題管理のツールに貼り、本人にも見える場所に置くと、次に何が起きるかを本人が自分で確かめられます。
まとめ
- 準備の大半は入社前に終えられる。入社前の必須8項目は、すべて受け入れ側と管理者の担当
- チェックリストは担当(受け入れ側・本人・管理者)と優先度(必須・推奨・任意)を付け、必須27項目から終える
- 権限は1週間前に申請し、「本人がログインできた日」まで確かめる
- 最初のプルリクエストは流れを1周するためのもの。小さく、急ぎでなく、完了の条件がはっきりした課題を選ぶ
- 30・60・90日プランは目標・行動・確認方法の3列。確認方法は、プルリクエストや文書など残るもので書く
- 段階は30日「小さく1周する」、60日「範囲を持つ」、90日「自分から提案する」
- 確認の場で集めた改善点を資料に反映すると、次の受け入れが楽になる
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(記載例)出典:株式会社RJC「エンジニアのオンボーディングチェックリスト|30・60・90日プラン」
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